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競争の教育から、独立の教育へ2 as/1251.html
森川林 2011/05/01 12:17 



 これまでの工業時代における消費産業においては、消費したいものを消費者が買うので、その物財が売れることによって生産者が豊かになり、それが労働者の賃金という形で消費者に再び還元されるという仕組みでマネーが回っていました。

 これからの創造産業においては、そうではありません。まず創造したいものを創造者が作るので、その創造物の価値を賞賛するために、他の創造者がその創造物を買うという形でマネーが社会の中を回ります。マネーの流れの源泉が、欲求をもとにした消費から、新しい価値の創造をもとにした賞賛に変わってくるのです。ちょうど、文化祭の模擬店で、面白いものを買ってあげるためにチケットを使うというような形に似た経済と考えるといいでしょう。

 そして、その面白いもの、つまり新たに創造されたものが、新しい需要を作り出します。つまり、既存の需要を奪い合う社会から、新しい価値の創造によって新しい需要を創造する社会へ向かう途上に、現在の日本はあるのです。

 その新しい社会がまだ実現していないのは、お金を持っている人が、その使い道がないために、マネーの流れをとどめているからです。そして、そのことによって日本中が互いに貧しくなっていることに多くの人が気づいていないからです。

 だから、まずお金のある人が、新しい価値の創造を賞賛するために、そのお金を使うことから始めなければなりません。



 ケインズ経済学の本質は、供給力の過剰によって社会にたまったお金を、社会が再び使わざるを得ない仕組みを作ることにありました。ケインズは、有効需要を作るためには、ピラミッドを作ることでも、大きな穴を掘ってそれを再び埋めることでも何でもよいと言いました。需要が新たに作られさえすれば、それが無駄な需要であってもかまわないと考えたのです。しかし、その延長に、「その無駄は戦争であってもいい」ということも成り立ちました。



 日本がこれから目指す新しい需要は、そのようなものではありません。ケインズが、有効需要は無駄な需要であってもよいと考えたのは、当時の欧米の社会では、大衆はそれぐらいしかできないと思われていたからです。これに対して、日本では、ブルーカラーの労働者も職場でのカイゼンに参加するだけの知的創造性を持っています。社会全体の知的平均値が高いというところに、日本で世界初の創造産業社会が誕生する条件があるのです。



 これまでの社会では、生産技術の未発達による生産力の不足が、需要-生産-労働のサイクルを作り出し、それが、不足に対する競争を生み出していました。その競争の仕組みが、社会のすべての分野に浸透していた結果、教育も競争の中で行われるようになっていたのです。

 しかし、その結果、勉強の目的が競争に勝つことになり、何のための競争かということよりも、どれだけ激しい競争で相手に勝つかということが重視されるようになりました。

 勉強の真の目的は、自分を向上させ、社会に価値ある創造を付け加えることによって社会に貢献することであるにもかかわらず、勉強の過程で競争が重視されるようになった結果、受験のための教育や点数のための教育が広がるようになっていったのです。

 この競争教育は、ふたつの問題を生み出しています。

 ひとつは、競争に勝つような優れた能力を持った人たちの勘違いです。優れた能力を持つ人は、その個性を生かして社会に役立つ仕事をしようとするのでなければなりません。それが、できるだけいいイスを取って自分が安泰に暮らすための人生を送ることを目標にするようになってきたのです。このことが,社会全体の大きな損失を生み出しています。

 もうひとつは、競争に負けたと思う人たちの自信喪失です。人間は本当はだれでもが自分の個性を生かした創造ができる存在です。にもかかわらず、自信を持たない人は、自分でその可能性を閉ざし、消費と労働の世界に安住してしまうのです。ここにもまた、社会全体の大きな損失があります。

 競争教育は、競争に勝った人の私利私欲の価値観と、競争に負けた人の早めの自信喪失を生み出しています。

 多くの人は、月曜から金曜までは我慢して働き、土日は休んで英気を養うというような日々の送り方をしています。土日の休養と消費生活のために、月曜から金曜の労働があるという生活です。

 競争に勝った人も、同じ罠にはまっています。だれもが、より豊かな消費生活とより多い休養のために、いかに割りのよい労働に携わるかということを人生の目標にするようになっているのです。



 競争ということを考えるとき、私は、30代のころ、房総半島の磯で見た光景を思い出します。激しく波の打ち寄せる岩場で、たくさんの小さな海草が岩場にしがみついていました。ある海草は、波の穏やかな日当たりのいい場所に根をはっていました。ある海草は、波の荒い日陰に小さく根をはっていました。しかし、それぞれの海草が、自分の今いる場所で自分にできるかぎりの光合成という創造を営んでいました。

 人間社会も、本来はそうであったはずです。人よりもいい場所を取ることを目的にするのではなく、自分の今いる場所で自分なりの新しい価値を創造することが本当は自然な生き方です。

 ところが、今まさに、そういう社会が生まれる条件ができつつあるのです。(つづく)


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