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教育の世界でも、物のデフレと文化のインフレが進む as/2242.html
森川林 2014/10/16 20:06 
修 削


 昔は、ただでくれるものなら、要らなくてももらっておくという発想をする方が普通でした。
 しかし、今は、要らないものなら、ただでも、お金をもらっても要らないという人が増えています。

 物の価値がどんどんなくなり、物でないものの価値が大きくなってきたのです。
 要らないものなら、もらいたくないという考えのもとになっているものは、自分らしい生活スタイルで生きていきたいという価値観です。
 つまり、物よりも、形のない文化の方が、人間の価値観の基準になりつつあるのです。

 これは、教育の世界でも起こっています。
 今は、優れた教材が低価格で豊富に手に入るようになっています。
 しかし、だから、今の子供の方が昔の教材の乏しかった時代の子供たちよりも賢くなっているかというとそういうことはありません。
 物としての教材がいくら豊富でも、それをどう使うかという文化が伴わなければ、豊富な物はその豊富さゆえにかえって学ぶことの邪魔にさえなるのです。

 勉強のコツは、1冊を繰り返して完璧に仕上げることです。同じものを同じようにやることが、退屈ではあっても勉強の王道です。
 しかし、教材が豊富な環境にいると、1冊をそこそこに仕上げたら、すぐに次の新しい教材に取り組むという人が多いのです。
 その結果、どの教材も8割か9割しかできないことになり、その子はいつまでたっても学力が向上しないのです。


 これから、物はますます低価格化が進みます。低価格化が進行するものは、ごく少数の大企業の寡占化の状態に陥ります。それは、競争によって活性化する市場ではなく、ひとつの安定した公企業の提供するインフラのようになっていきます。
 松下幸之助が述べていた水道哲学の社会、つまり、水道のように物が安価に大量に行き渡る社会になっていくのです。

 一方、文化は高価格化が進行します。人間が関わる個性的なものは、物の値段とは桁が違う形で高価格が進みます。
 例えば、かつての茶道の文化の中では、一つの茶道具が現在の価格で数億円、数十億円で取引されていたものもありました。文化というものは、必需性の希薄なものです。
 お茶、お花、俳句、ゴルフ、サッカーなど、今の世界で文化として確立し、一定の経済規模のあるものも、その文化が全くなかった状態から立ち上げるとすれば、参加者を募るだけでも難しいと思います。
 それは、その文化が、人間の必要性に根ざしていない個性的、文化的なものだからです。

 このような時代には、教育の内容も、その重点が物から文化へと移っていきます。
 物の教育とは、実力をつけるための教育で、MOOCなどに見られるように安価で優れた教材が豊富に出てくるので、誰もがその教材を利用して最高の教育を受けられる環境を手に入れます。

 しかし、人間はブロイラーではないので、優れた教材を豊富に与えられてもそれにすぐに取り組めるわけではありません。
 物の教育を習得するためには、意欲づけや、その子に応じた取り組み方の手順や、うまくいかなかったときのフォローなど、個性的な対応という文化的なものが必要になってきます。

 文化の教育とは、その物の教育の受け方のノウハウと、その教育によって実力をつけたあとの個性と創造の教育です。

 言葉の森では、今、この教育の「物」的側面より、「文化」的側面を生かす教育の方法を考えています。
 それは、具体的には、これまでの作文指導に寺子屋オンエアの仕組みを組み合わせたようなものになる予定です。



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