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 海外に住む生徒の日本語教育―外国語も日本語もどちらも苦手にするか、どちらも得意にするか Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
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海外に住む生徒の日本語教育―外国語も日本語もどちらも苦手にするか、どちらも得意にするか as/863.html
森川林 2010/04/13 11:44 



 海外赴任で、子供が小さいころ日本を離れる人は、日本語の教育が不安になると思います。

 子供は、生活の中で言葉を学ぶので、幼児期は母親との対話が子供の言葉の生活の中心になります。ところが、学齢期になると、学校での友達との会話が言葉の生活の中心になり、次第に日本語を忘れていきます。しかも、この過渡期には、一時的に日本語も外国語もともに劣ってくるという時期があります。

 しかし、この時期にうまくやれば、日本語も外国語も両方自由に使えるようになるバイリンガルのチャンスもあるのです。そのポイントは、母語である日本語を充実させることです。

 「バイリンガル教育の方法」(中島和子著)の中に、面白い例が出ています。

 「兄が小5、弟が小1の日本生まれの兄弟が、カナダのトロントに来て、同じ公立小学校に入学し、英語で授業を受けることになった。この場合、どちらの方が早く必要な英語力が身につくであろうか。……予想としては、『会話力』では弟が早く、『読解力』では兄の方が習得が早いであろうということであった」という話です。

 結果は、兄の方が、会話力も読解力も早かったというのです。つまり、母語を通して言葉というものがしっかり身についていれば、外国語もその言葉の力の土台の上にマスターするのが早いということなのです。

 だから、学校で、友達や先生と外国で話をした分、家庭での日本語の対話を充実させていけば、両方の言葉をマスターできるようになります。そのために、言葉の森の、長文音読、暗唱、作文、そして、その暗唱や作文をきっかけにした対話が役にたつと思います。

 この構図は、外国語と日本語の関係以外にも、さまざまなことにあてはまります。例えば、漫画と読書の関係でも、大事なことは、漫画を読むか読まないかということではなく、いかに読書をしっかりするかということです。同様に、テレビやゲームと実際の体験の関係についても、大切なことはテレビやゲームをどれぐらいしているかということではなく、実際の体験をどれだけしているかということです。作文指導についても、間違いをいかに直すかではなく、よい文章にいかにたくさん触れさせるかということが大事です。

 もちろん、弱点を放っておいていいのではありません。しかし、従になるものは尻尾です。主になるものは頭です。尻尾を押さえるのではなく、頭さえしっかり押さえていれば、尻尾はどちらに動いても、結局は頭の動きについていくことになるのです。

 小学校からの英語教育についても同様です。大事なのは、英語をやるかやらないかということではなく、子供時代に日本語をしっかり学ぶということです。

 海外にいる人は、海外生活を日本語がおろそかになる不安の面から考えるよりも、外国語も日本語も同時に学べるチャンスとして前向きに考えていくことが大事です。そのための要になるのは、家庭の外で外国語に接する以上に、家庭の中での日本語の密度を高めていくことです。


 国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

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コメント欄

touko 2016年11月21日 23時54分 77 
子どもに日本「も」学ばせたい・・・そう思う日本人ママもたくさんいます。国際結婚で海外に住んではいても、日本語も母語として育てるためには、家庭の中での小さな積み重ねが大切です。

torontomom 2016年11月23日 2時35分 77 
母国語の土台が必要というのはわかるのですが、

「兄の方が、会話力も読解力も早かったというのです。つまり、母語を通して言葉というものがしっかり身についていれば、外国語もその言葉の力の土台の上にマスターするのが早いということなのです。 」

すごく短絡的な感じがしてしまいます。
6歳と11歳では言葉の学び方は違ってくるだろうし、その子の性格にもよるかと…

森川林 2016年11月23日 8時37分  
 これは、そういう調査結果が、ある程度再現性のある事実として報告されているということです。
 小1~小3では外国語をマスターするのは早いが、その分母語である日本語が十分に成長しない、小4~小6では最初は外国語をマスターするのに苦労をするが、母語である日本語が既に確立しているので途中から上達が早くなるということです。
 だから、海外にこの時期の子供を連れて赴任される方は、事前に子供の言語教育について十分に作戦を考えておく必要があると思います。この点で、あてになるような話は、公の機関からは出ていないのではないかと思います。

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