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 メディアとしての教育 言葉の森 | 作文国語教室【公式】
 
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メディアとしての教育 as/959.html
森川林 2010/07/11 17:02 
修 削



 「メディア」という言葉を、ここでは、世論形成に影響力を持つ理念や情報の「媒体」となるものという意味で使います。


 江戸時代、貝原益軒は「和俗童子訓」を著しました。「和」は「漢」の反対で、「俗」は「雅」の反対です。つまり、益軒は、当時のエスタブリッシュメントである「漢」と「雅」に迎合しない立場を鮮明にして、教育論や人間論を著したのです。

 益軒の著作は、当時台頭した版木による出版方法で、一躍日本中に広がりました。江戸時代の主要なメディアは、政治のシステムと宗教のシステムでしたが、出版という新しいメディアが、これら既存のメディアを超えて、新しい日本の文化を作ったのです。


 では、現代のメディアは何でしょうか。

 テレビや新聞というマスメディアは、かつて大きな影響力を持っていましたが、経営が広告料に依存するような仕組みになっていたために、次第に金権化していきました。このため現在、メディアとしての影響力は、急速に低下しています。

 広告に依存するという点では、グーグルなどのネット産業も金権化する可能性を持っています。グーグルは、今検索エンジンのトップを走っていますが、そのサービスの本質はリアルなものではなく、アルゴリズムというバーチャルなものですから、今後何かのきっかけで影響力が急に減少するということもあり得ます。

 出版やインターネットは、金権による影響力を排した自由な発言が可能な場ですが、これらのメディアは選択した人にしか届かないという弱点を持っています。

 宗教は、昔も今も一定の影響力を持っていますが、根本的に民主主義と両立しない面があるので、日本ではある程度以上広がることはありません。

 日本の政治を実質的に動かしていた官僚制は、責任の所在が不明なまま大きな影響力を持っていましたが、今後の政治改革で権限を制限されていくと思われます。

 日本の表の政治は、権力の中枢が分散化していたために、統一性のあるリーダーシップを発揮できないでいました。この傾向は今後変わっていくと思いますが、まだしばらくは混乱が続きそうです。

 教育もまた、ひとつのメディアとしての役割を持っています。しかし、教育を担う現在の学校は、理念という価値観が不在のまま、進学実績だけを目標にした塾や予備校と同じようなものになっています。

 一方、進学の目標となっている大学も、就職予備校化するとともに、AO入試などにより学力の裏づけのない学歴を量産し、国際的な評価からはずれたガラパゴス化した教育機関になっています

 日本で唯一成功したメディアは、企業による仕事を通しての教育でしたが、これは現在、派遣労働の常態化によって急速にその力を失いつつあります。


 日本という国の最も優れた点は、国民ひとりひとりの知的、倫理的水準が高いことでした。

 世界中のほとんどの国は、国民性悪説に基づいて政治を運営していますが、日本の政治は基本的に国民性善説に基づいて運営することができました。しかし、その土台となる国民性も、自然に任せて維持できるものではなく、日々の教育的な営みの中で初めて高い水準を保てるものです。

 こう考えると、これからのメディアとして期待されるものは、新しい教育に支えられた新しい政治になるのではないかと思います。



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