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子供のころの暗唱が理解力を育てる as/989.html
森川林 2010/08/10 21:01 



 教室が休みなので、この1、2ヶ月読みっぱなしだった本を再読しました。普段、付箋をつけながら読んでいるので、その付箋の箇所だけ飛ばし読みをしていけば、再読したことになります。再読するときにメモを取りながら読んでいき、そのメモもまた再読すれば、同じ本を3回読んだことと同じになります。

 再読しメモをとると、自分が一度読んだはずなのに、その本の中身がいかに定着していないかよくわかります。定着率はS字曲線を描くようです。感覚的に言うと、1回読んだだけだと定着率は20%ほどで、2回読むと50%ほどになり、3回読むと60%ほどになるという感じでしょうか。


 ところで、この定着率が1回目から高い人がいます。昔の人で言うと、南方熊楠や塙保己一です。塙保己一は、盲目でありながら、一度読んでもらった本の中身は全部自分の頭に入ったようです。頭の中に、それまでに読んでもらった本のデータベースができていたので、独力で群書類従のような大事業ができたのです。

 この定着率の高さは、生まれつきというよりも、幼少期の学習法にあるような気がします。その学習法とは、同じ文章を繰り返し音読するという一種の暗唱の練習ではないかと思います。塙保己一は、18歳のときに般若心経を毎日100回ずつ1000日間暗唱しました。その般若心経の暗唱自体にも効果があったと思いますが、そういう修行を思いつく土台として、それまでに文章を暗唱する練習をしていたのではないかと考えられます。


 そこで、そういう記憶力が抜群だった人を何人か思い出して調べてみました。ひとりは安岡正篤です。安岡正篤は、東洋の古典に精通しており、政治家や財界人にそのときどきの時局に応じた的確なアドバイスを与えた人です。

 調べてみると、安岡正篤は、少年時代に四書五経の素読をしていました。1898年(明治31年)生まれですから、その当時はみんなが素読をしていたのではないかと思うかもしれませんが、そうではありません。湯川秀樹も、子供のころ四書五経の素読をしていましたが、湯川秀樹は1907年(明治40年)の生まれで、その当時家庭で素読をするようなところはほかになかったと述べています。

 江戸時代に寺子屋で大勢の子供が集まって行う素読に比べて、家庭でひとりで静かに行う素読は、かなり徹底したものだったでしょう。その素読が、その後の学習の定着率に影響したのではないかと思います。


 もうひとりは、コンピューター付きブルドーザーを言われた田中角栄です。田中角栄も、一度聞いたことを確実に覚えていたことで有名です。調べてみると、田中角栄は、少年時代、吃音を治すために浪花節の練習をしたそうです。つまり、浪花節を何度も音読して暗唱していたということです。


 記憶力というのは、ただ覚えているだけの力のように思われていますが、その記憶した知識をそのときどきの必要に応じて自由に使えるという場合、それは記憶力というよりも定着力と言った方がよいでしょう。定着力の高い人は、本を1回読んだだけでも、内容のほとんどを自分のものにできる人です。こういう定着力は、言い換えれば理解力です。

 暗唱のように、同じ文章を繰り返し音読し身につけることによって、その暗唱した文章だけでなく、その後の学習全体に通用する理解力が育つのだと思います。


 創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

コメント欄

mi 2010年8月11日 15時1分  
言葉の森ってすごいネ                   

森川林 2010年8月15日 18時28分  
 すごいでしょう。
 でも、実際はまだそんなすごくないです(笑)。

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