ログイン ログアウト 登録
 未来の社会と教育の役割 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 992番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/12/17
未来の社会と教育の役割 as/992.html
森川林 2010/08/15 15:04 


 これまでの社会は、分業による生産、金銭による評価、生活の目標の中心としての消費、という仕組みの中で営まれてきました。これから来る未来の社会は、自給自足的で協業的な生産、生きがいによる評価、生活の中心としての生産という仕組みで営まれるようになるでしょう。

 そういう未来の社会を可能にするのは、一つには、これまでの分業生産によってもたらされた巨大な生産力です。したがって、個人や地域のレベルにおける自給自足的な生産は、機械化された工業製品やインフラのグローバルな生産と並行して成り立ちます。

 もう一つには、公開された情報によってもはや不自然な支配や統制を行うことができなくなったことによる民主主義の広がりです。未来の社会では、好むと好まざるに関わらず、純粋に技術的な理由から隠し事ができなくなります。隠し事ができないということは、裏取引や陰謀もできなくなるということです。そのような社会では、人間は互いに家族の一員として暮らすような生き方を選択せざるを得なくなります。

 今、世界はまだ生みの苦しみの中にいます。貧富の差は拡大し、民族や宗教の違いによる戦争が企てられ、争いを作り出すための無知が再生産されています。

 そして、経済の世界でも、アメリカのドル崩壊は時間の問題と言われています。日本の財政危機は、改善される展望がないどころか破綻に向かって一直線に進んでいるかのようです。中国の情報のカーテンの向こう側では、独裁政権の持つ矛盾がいつ濁流となって噴出するかわからない状態が続いています。

 しかし、このようにすべてが否定的に見える状況があるにも関わらず、人間の社会は大きく明るい方向に舵を切ったという気がしてなりません。今すべきことは、既に退場しつつある悪を排除することでも、収束に向かいつつある危機に備えることでもなく、これから来る新しい未来の展望を具体的に提案していくことのように思えます。


 これまでの教育は、分業生産の社会の中で性能のいい部品とするための教育でした。そして、人間の生きがいは、豊かな消費の中にあると教えられてきました。しかし、未来の教育は、消費する個人でなく、生産をする個人に焦点を当てたものになります。そして、その生産は、人間が部品となって行う生産ではなく、人間の全面的な自己実現として行う生産になるのです。

 これまでは、18歳での高校卒業や大学受験を目標にした教育が行われてきました。しかし、これからは、20代から80代までの人生を生きがいのある生産者として過ごすための教育が行われるようになります。人生の本番である20代以降を、幸福、向上、創造、貢献の人生として送るための教育が行われるようになるのです。

 このように大きな枠組みの変化があるにもかかわらず、小学校や中学校では、勉強の内容は今とそれほど変わらないように見えるでしょう。基礎的な教育の部分は、社会の仕組みが変わっても大きくは変わりません。

 しかし、小中学校の教育でも、次のような変化があるはずです。一つは、どの教科も満遍なく勉強するとともに、これまでの勉強の枠には入らなかった社会生活を送る上での教育も行われるようになります。どの教科も満遍なくということは、国語・数学・英語だけではなく、音楽や美術や体育や技術家庭などの技能教科も同じように主要な教科になるということです。

 また、点数の差をつけることを目的とするような不必要な難問はなくなり、将来の知的な生活に必要な知識や技能を誰もが確実に身につけられるような仕組みになります。その結果、勉強は、将来の自分の人生の創造に結びついているという実感から、遊び以上に楽しいものになるでしょう。

 中学生の後半から高校生、大学生にかけては、本人の個性、希望、得技を生かして、その長所を更に伸ばしつつ、短所となりうる部分を能率よく補強するプログラムが組まれ、個人が社会に出て価値ある生産者となるための方針が作られるでしょう。

 すべての個人が、その個性を生かした生産活動で、社会に貢献するとともに、自身も幸福を感じられるような能力を育てることが教育の目的になるのです。それは、教育というよりも文化に近いものになるでしょう。

 このようにして、地球全体が多様性に富んだ大きな学校になるような未来が、人間の社会の展望です。なぜなら、人間は限られた身体を持ち、特定の過去に制約され、不完全な言語と感情を持って生きている存在であり、人間の持つこの不完全性こそ、もしそれが教育によって本来の姿を発揮できるならば、人間の持つ最も大きな特徴である創造性を開花させる土台となるからなのです。



コメント欄

コメントフォーム
未来の社会と教育の役割 森川林 20100815 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
ふへほま (スパム投稿を防ぐために五十音表の「ふへほま」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
政治経済社会(63) 教育論文化論(255) 
コメント1~10件
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
子どもの文章力 森川林
今の受験は知識の詰め込みの勉強になっています。 考える問題 12/8
記事 5392番
作検研究。森リ 森川林
作文は、褒められても注意されても、そこに客観的な基準がなけれ 12/7
記事 5391番
「作文検定」「 森川林
 今は、AI社会の前夜。  昔は新聞やテレビが中心だった。 12/7
記事 5390番
AI時代に子ど 森川林
AI時代には、先生の役割は「教えること」ではなくなります。 12/6
記事 5389番
【合格速報】順 森川林
Rさん、合格おめでとう!! よくがんばりましたね。 受験 12/4
記事 5387番
森リン大賞9月 森川林
 従来の作文評価は、小学校低学年では「正しい表記ができている 11/9
記事 5382番
作文の学習で大 森川林
 「何でも自由に書いてごらん。いつでも褒めてあげるから」とい 11/7
記事 5381番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
3I/atla 森川林
日本にはかつて穏やかに何万年も続いた縄文文明があった。そのよ 12/12
森川林日記
Re: 11月 森川林
 これは、解き方の問題ではなく、読む力の問題です。  読解 12/5
国語読解掲示板
Re: ICレ 森川林
 ChatGPT、あまり文章うまくないなあ(笑)。  音声 12/5
森川林日記
ICレコーダと 森川林
AI時代に子どもが伸びる――全科学力クラスという新し 12/5
森川林日記
noteのペー 森川林
https://note.com/shine007 12/4
森川林日記
11月分 4  あういと
問題7と問題8が分かりません。 キーワードはわかるのですが 12/3
国語読解掲示板
Re: 森川林
 字がきれいだったのは、そのあとの日記の内容を見ると、弟が葛 11/30
国語読解掲示板
Re: 11月 森川林
 お返事遅れて失礼しました。  易しい国語問題は、「同じ言 11/30
国語読解掲示板
ともとも
小5の11月の読解検定のBの問題が誕生日だから字が綺麗だと思 11/28
国語読解掲示板
2025年11 森川林
△ムラサキシキブ ●作文検定スタート  学校 11/26
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン