ログイン ログアウト 登録
 家庭で育てる日本語教育文化 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 996番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/4/30
家庭で育てる日本語教育文化 as/996.html
森川林 2010/08/19 18:40 


 日本語力を育てるのは家庭生活ですが、現在の問題は、家庭における日本語教育力が弱くなっていることです。

 江戸時代、寺子屋で素読や手習い(習字)が普及していたのは、その寺子屋の教育に対応する文化が家庭にもあったためです。

 例えば、子供が素読する文章を多くの親は知っていました。親自身も子供時代に同じような素読をして大きくなったからです。ちょうど、現代の九九のように、親が知っているから、学校で宿題として出されるだけでも、ほぼ全員が九九を言えるようになるというのと同じ家庭の文化があったのです。

 また、家庭生活でも仕事生活でも、手紙によるやりとりが頻繁におこなわれていました。手習いの練習は、手紙を書くための教育として普及していました。

 「インド式すごい勉強法」(ニヤンタ・デシュパンデ著)によると、インドの家庭では、親が子供に古典を朗読させるという昔ながらの教育文化があるそうです。学校や塾に行かなくても、家庭で朗読ができるというのは、親と子に共通する言葉の文化があるからです。

 ひるがえって今、日本の家庭に日本語を教育する文化があるかと考えると、残念ながらそれはほとんどありません。

 親が小さい子供に読み聞かせをするときでも、多く場合、本を用意して読んであげるという形です。このため、読み聞かせは親にとって負担の大きいものになります。しかし、もし親が自分が子供のころに聞かされたいろいろな昔話を知っていて、それを思い出しながら子供に話して聞かせるのであれば、この読み聞かせ(話し聞かせ)は、もっと楽に長い時間できるものになるでしょう。

 教室に通っている子供たちに、感想文の似た話の例として昔話を挙げると、多くの子供がそういう昔話を知りません。また、日常生活でよく使われるようなことわざも、知らない子がかなりいます。昔話は、テレビの「日本むかしばなし」で、ことわざは、学習漫画の「まんがことわざ辞典」で学ぶようになっているのです。

 また、現代の日本の社会では、手紙のやりとり自体がありません。そのため、日常的な言葉とかけ離れた形式やルールが生き残り、手紙を書くことが日常生活からますます縁遠いものになっています。家庭生活の中では文章を書く機会や必要がないため、子供たちが文章を書く場所は、学校の作文やレポートに限られています。しかし、その学校での機会も、それほど多いとは言えません。

 更に、親子の対話の時間が限られています。親と子が家庭で談話をする時間がなかなかとれないのです。それは、父親の帰りが遅いこと、母親も遅くまで仕事をしていること、そして、テレビが茶の間に主役になっていることが主な理由です。その結果、親が子に話すのは、勉強に関する小言のようなものが中心になっているのです。

 本当は、親が子供に、親の子供時代の話をしてあげるなどということが日常的にできれば、小学校低学年の子に対しても、中学生、高校生の子に対してもそれなりに中身のある対話ができるでしょう。しかし、そういう話が家庭で行われないのは、親子の間に家庭で話をするという文化がなくなっているからです。

 家庭で知的で楽しい対話の機会がなく、テレビを見ることが日本語の生活の中心になっているので、たまに親子が話をすると、成績のこと、テストのこと、受験のことになり、内容を深める話よりも表面的な掛け声のような話になってしまうことが多いのです。(つづく)


 対話と個別指導のあるオンライン少人数クラスの作文教室
小1から作文力を上達させれば、これからの入試は有利になる。
志望校別の対応ができる受験作文。作文の専科教育で40年の実績。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 

コメント欄

コメントフォーム
家庭で育てる日本語教育文化 森川林 20100819 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
むめもや (スパム投稿を防ぐために五十音表の「むめもや」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 
コメント1~10件
【合格速報】東 ののはな
東北大学へのご入学、おめでとうございます。 晴れ晴れとした 4/10
記事 5324番
【合格速報】東 とうこ
Yちゃん、ご入学おめでとうございます! 嬉しいご報告を、あ 4/10
記事 5324番
【合格速報】兵 匿名
すごい 3/26
記事 5281番
新しい教育のビ 森川林
 この勉強の目的は、どこかいい大学に入るようなことではありま 3/17
記事 5309番
これからの学力 森川林
発表広場に発表作品を入れています。 (カメラオフの発表のみ 3/5
記事 5306番
暗唱のコツは早 音楽
本当にありがとうございました。 テスト合格できそうな気がし 3/3
記事 700番
優しい母が減っ 森川林
あきろあさん、コメントありがとうございます。 子供は、もと 2/13
記事 979番
優しい母が減っ あきろあ
森リン先生の投稿をみて、母は甘やかしていいんだと、初めて気付 2/7
記事 979番
中根の担当する 森川林
YKさん、ありがとう。 私が子供にさせたいと思っていたのは 1/27
記事 5267番
中根の担当する YK
創造発表クラス面白くなりそうですね!イギリスの私立学校のカリ 1/27
記事 5267番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
2025年4月 森川林
●作文クラス ○小1の作文  小1のころ 4/22
森の掲示板
Re: 120 森川林
 小6以上の生徒は、1200字の作文を基準として評価していま 4/22
森の掲示板
Re: 人数報 言葉の森事務局
 人数報告のページはこちらです。 https://www. 4/21
森林プロジェクト掲示版
人数報告ページ Yumi Hasegawa
みつかりません 4/20
森林プロジェクト掲示版
作文、小論文と 森川林
 作文は、題材を中心にした文章です。小論文は、主題を中心にし 4/20
森川林日記
1200字換算 花ちゃん
小6,中2の生徒を担当しています。AI森リンの評価で、 4/20
森の掲示板
作文も小論文も 森川林
 作文も小論文も同じ。算数も数学も同じ。  内容のない人が 4/20
森川林日記
本日、森リン案 森川林
 本日、東京都の私立中の一部118校に、森リン案内を送付。 4/14
森川林日記
愛子さま天皇論 森川林
 大事なのは、近年のここまで続いてきた歴史を尊重することだ。 4/13
森川林日記
バースデイ ゆめ
 今日、私は16歳になりました。  誕生日のことなんて 4/10
ゆめ日記

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習