ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1563番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/12/31
激動の時代に子供たちをどう育てるか 2 as/1563.html
森川林 2012/06/20 16:54 



●我が家の例

 私(森川林)の家では、子供たち2人は、小中高と塾や予備校には行かなかったので(中3の一時期だけ下の子は短期間通ったことがありますが)、家庭での時間の余裕はたっぷりありました。しかし、そういう子は、ほかにはほとんどいなかったらしく、子供が保育園に通っていたころ、友達が「もう足し算を習っている」というのを聞いて、「そういう世界があるんだ」と思ったそうです。小学校の低学年のころ、近所の友達と遊ぶと、「もう、何の計算を習った」「もう、何という漢字を書ける」という話題になることがあり、学校でしか勉強していないうちの子供たちは、ただ感心するだけだったようです。

 ただ、私自身が、小中と自由に遊んで暮らして成長し、それで何も問題なかったと思っているので、子供たちも読書さえしていれば、小さいころから特にどこかに通って勉強する必要はないと思っていました。だから、子供たちは、結局勉強は言葉の森以外何もしませんでした。ただ、そのために小学生のときは、算数などでたまにひどい点数を取ってくることがありました。

 子供の学力というのは、話していれば大体わかります。普段の会話で普通に理解力があると思っていたので、算数のそのひどい点数を見たとき、学校は教育力がなくなったのだと思いました。もちろん、それは先生のせいではなく、学校の中で一斉授業ができないくらい、子供たちの学力格差が進みつつあったせいだと思います。

 私は、自分自身が中3のころ、高校受験をきっかけに勉強に目覚めたので、子供たちもそうだと思っていました。すると、その予想どおり、中3で自覚的に勉強を始めるとぐんぐん成績が上がりだしました。それまで余裕のある生活でたっぷり遊んでいたから勉強に飽きていないので、かえって中3から勉強に気合いが入り出したようです。

 比較するのはよくありませんが、小学校低学年のころから塾で先取り勉強をしすぎた子は、勉強に飽きてしまうせいか、肝心の高校生あたりになると、勉強に燃えなくなるようでした。

 たぶん、勉強の理想は、小中とたっぷり遊んで勉強は中の上くらいを維持し、受験期の1年間でぐんと伸ばすことだと思います。これは高校生も同じで、1、2年のときはたっぷり高校生活を楽しみ、成績は上の下ぐらいを維持し(微妙ですが)、受験期の1年間でぐんと伸ばすことだと思います。小さいころから成績がよいというのは悪くはありませんが、そのために勉強のしすぎと自由時間の不足が続くのは、長い目で見るとかえってマイナスになると思います。

●いい大学とは言っても

 保護者からの電話相談でよく感じるのは、親が子供の今の成績の上下に振り回されすぎていることです。5年後、10年後の子供たちの学力を考えれば、小中学生のころは読書に力を入れていく方がいいのに、読書の時間を削ってまで勉強させ、今の成績を上げることに追われているように感じるのです。なぜそういう状況が生まれているかというと、受験勉強の中身が科挙化しているからです。今の受験勉強は、本来の学力を測る面ももちろんありますが、それ以上に受験勉強のノウハウを知っているかどうかで合否が左右される面が大きいのです。そして、塾や予備校の広がりの結果、そのノウハウで左右される部分は、年々大きくなっています。

 例えば、こういう例があります。同じ学力の子がいて、一方は塾で、「易しい問題で確実に点を取り、難しい問題は後回しにする」というノウハウを教えてもらっていたとします。他方の子は、そういうノウハウを知らずに1問目から順に解いていこうとします。すると、ノウハウを知っている子の方が常に成績はいいはずです。そしてまた、試験を出す学校の側も、そういうノウハウを知っていることを前提に、だれもがつまずくような難問を最初の方で出すようになるのです。こういうノウハウのやりとりが増える結果、学力はそれほどでもないのに、ノウハウの力で難関校に合格する子が増えています。それが最も典型的に表れているのが東大の入試です。

 確かに、東大などに受かる子の中には、学力もあり、思考力もあり、音楽やスポーツにも秀で、性格もよく、人間性豊かな子も多くいます。(言葉の森に来ている子はなぜかそういう子たちばかりでしたが)。しかし、その一方、学力は普通で記憶力だけが優れ、あとはノウハウの力で合格した子や、勉強しかすることがないような面白味のない子がただ長時間かけて成績を上げた結果合格したというような子もいるのです。そして、そういう記憶力とノウハウと長時間だけの子が、近年じわじわと増えている感じがします。本当の学力とは、理解力と思考力と創造性だと思いますが、。特に、思考力と創造性のない子が多くなっている感じがするのです。そのことが、3.11をきっかけに東大話法などという言葉で普通の人にも直感的に感じ取られるようになっているのだと思います。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

ちゃくちゃく 20120621  
 こどもとしての時間を大切に過ごすというのは、小さな大人になるのを強要されないことでしょうか?心身の発達にあった充実した時間を過ごすといえば簡単ですが、情報や誘惑の多い現代、また東大話法のような誤謬がまかり通る世の中では難しいのが現実です。それでも、親が毎日を楽しそうに過ごす姿を見せること、今の時点のわが子が大好きだと伝えることはできます。多少不自由なこども時代をすごし、早く大きくなりたいと思うことが成長の原動力となると思います。

森川林 20120622  
 ちゃくちゃくさん、こんにちは。
 確かに、今の子供にとって、魅力的に生きる大人の姿を見せることは大切ですね。
 子育ての前提は、まず親が楽しく生き生きと生活していることだと思います。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 

記事 1562番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/12/31
激動の時代に子供たちをどう育てるか as/1562.html
森川林 2012/06/19 23:36 


 お父さん、お母さんは、不安の中で子育てをしています。特に、少子化で一人っ子の場合、比較する対象が近くにないので、不安が増幅されやすいところがあります。
 まず、今の学校だけでは、教育が不十分だという現実があります。昔は、学校の勉強と宿題で大部分の子は確実な学力を身につけていました。これは、親の世代かその一回り上の世代あたりからの人は、すべて実感していること思います。昔は、子供は学校から帰ると、ランドセルを家の中に放り投げ、すぐに近くの広場に走り、夜遅くなるまで友達と野原で遊んでいました。夕方は、家族みんなでラジオを聴いたりお喋りをしたり本を読んだりして過ごしていました。そして、学力的には何も問題がなかったのです。だから、小中学生で塾に行く子はほとんどいませんでした。高校でも、学校の勉強だけで十分で、予備校に行く子もほとんどいませんでした。(1970年代の横浜です)。しかし、今は、学校だけでは学力がつきません。それは生徒の家庭環境が多様になったため、一斉授業が効果を上げられなくなったからだと思われます。そこで、子供たちは学校の授業で不足している分、塾に通うようになります。すると、学校はますます塾に学習の補完又は先取りを任せるようになります。そのため、格差が更に広がり、その結果、親は他の子と比較して焦りを感じるようになるのです。PISAの調査によると、学力格差が決定的になったのは、ちょうど小泉政権の時代で、社会全体で格差が広がった時代でした。(つづく)

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 
コメント331~340件
……前のコメント
作文の上達度は 森川林
 作文力がどのくらいついたかということは、本人にはわかりませ 12/17
記事 4382番
幼長、小1、小 森川林
 基礎学力コースは、小1の子にはおすすめです。  国語と算 12/5
記事 4377番
即自存在、対自 森川林
 中学生のころは、たぶん子供が人生で最も打算的に生きる時期で 12/3
記事 4374番
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習