浪人時代に難しい本を読むことによって国語の成績が上がったという石田さんは、自分の経験から、難しい内容の文章をやさしく解説することによって子供たちの読む力がつくと考えました。そこで、子供たちに、わかりやすい解説をすることによって難しい本を面白く読めるようにするという形の勉強を進めたそうです。
言葉の森でも、高校生の課題は長文自体が難しくなってくるので、その難しい課題をわかりやすい例で説明すると、子供たちは興味深く聞いています。ただ、事前に自分なりに読んでくる子は力がつきますが、自分なりに読まずに面白い解説だけ聞いていると力はなかなかつきません。
この難しい内容のものをやさしく解説するということは、高校生だけでなく、小中学生にもそれぞれの学年に応じてあてはまります。そして、その役割はもっぱら家庭の中にあるのではないかと思います。
全国の学力テストで、学力の高い県を調べてみると、意外なことに学習塾が盛んでないところほど全体の学力は高い傾向があるようでした。つまり、家庭生活の中での文化的な力が、学力の土台になっているのではないかと思われるのです。
家庭の中で、難しい話を子供の理解力に応じてわかりやすく説明するような機会があれば、子供たちの学力は向上します。学力は、問題集を解くような形の勉強によってではなく、家族の知的で楽しい対話の中でこそつくのです。
(つづく)
「勉強脳をしつける勉強法」の著者石田勝紀さんは、大学受験の浪人時代に、それまで読まなかった難しい本を読むようになると、40ぐらいだった国語の偏差値が20以上アップした、と述べています。また、国語の成績が上がるのと並行して、英語や数学も勉強を特にしたわけでもないのに成績が上がったという体験談を書いています。
私も、高校3年生のときに、総合月刊誌を何冊も読むようになると、不思議なことに国語の点数が上がったという経験があります。当時の総合月刊誌は、学園紛争の影響で新左翼的な難解な文章が流行していました。そういう文章を読んで、自然に読解力が伸びたのではないかと今は思っています。
私が大学を卒業するとき、学生時代の四年間にあまり勉強をした感じがしなかったので、古今の名著と呼ばれるものなるべくたくさん読もうと決心して、数年間いろいろな本を読みました。
そのときに読んだ本のひとつがケインズの「雇用利子及び貨幣の一般理論」です。内容は難しかったので十分に理解したとはいえませんが、こういう古典と言われる名著を読むと、作者が、考えている道筋を自分も一緒にたどって読むという感じがあります。古典を読むことが大切なのは、こういう経験ができるからです。「ケインズ入門」のような教科書や入門書では、すでに完成した答えが死んだ知識として並べられているだけなのに対し、原典には、作者が思索をしているその現場を自分も一緒に思索しながら読み進められるという利点があります。
当時読んだ本の中に、デカルトの「方法序説」がありました。書名は難しそうでしたが、書かれている内容はわかりやすく、デカルトが自分の考え方の道筋をできるだけわかりやすく読者に知らせようという情熱の感じられる本でした。その後、言葉の森で高校生を指導しているとき、高校生ぐらいで読むにはとてもいい内容のものだと思ったので、高校生の感想文課題に「方法序説」を取り入れました。当時は長文ではなく、本のひとつの章を読んで感想文を書かせる課題でした。4人ぐらいいた高校生に本を配って、同じ章を読ませていると、数分後、全員が寝ていました。
(つづく)
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)
マインドマップ風構成図
記事のもととなった構成図です。
(急いで書いたのでうまくありません)