ログイン ログアウト 登録
 笠地蔵の文化―知のパラダイム(その5) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 1134番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2026/5/2
笠地蔵の文化―知のパラダイム(その5) as/1134.html
森川林 2011/01/21 19:58 


 有の文化と無の文化を図式的に説明すると、次のように言うことができます。例えば、投げられた石は、質量、速度、方向などに分解されます。同じように、生きている人間も、内臓、筋肉、骨格、感情、意識などに分解されます。その分解をつきつめて最小単位にまで分解し、その最小単位を理解して、再度組み合わせれば全体がわかるというのが分析哲学の考えです。

 無の文化は、そうではありません。人間というものを考えるとき、日本には、「カゴに乗る人、かつぐ人、そのまたワラジを作る人」という言葉があります。自分は、自分以外の、つまり自分の無であるところの、カゴと、カゴをかつぐ人と、ワラジを作る人とによって初めて存在すると見るのです。

 日本にある「おかげさま」文化は、この無の文化のひとつの表れです。「おかげさまで」という言葉は、何か具体的な利益を受けたことに対して言うのではありません。そのような自分と他人という有の関係を前提にした「サンキュー」ではなく、自分以外のすべてのものが自分を支えてくれているはずだということを前提にした、見返りのない「おかげさま」です。

 有の文化は、「有るから有る」という考え方です。無の文化は、「無いものによって支えられているから有る」、つまり無とのつながりにおいて有が存在するという考え方です。



 さて、今なお世界は、デカルト哲学の有の文化の延長で運営されています。そして、日本には、世界のほとんどの国々で消滅した無の文化が、今も日常生活の中で生きています。しかし、有の文化と無の文化が直接対峙すると、有の文化は一方的に収奪する側に回り、無の文化はやはり一方的に収奪される側に回ります。

 日本の昔話に「笠地蔵」があります。里まで笠を売りにいったおじいさんは、ひとつも売れなかった笠を持って家路につきます。途中で、雪に降られている地蔵たちを見ます。おじいさんは、自分の持っていた笠を地蔵にかぶせますが、最後の一体の地蔵にはもうかぶせてあげる笠がありません。そこで、おじいさんは、自分のかぶっていた手ぬぐいを地蔵にかぶせて家に帰るのです。こういう昔話を聞いて育った子供は、笠地蔵の文化を身につけます。それは、ギブ&テイクの文化とは次元の異なる思いやりの文化です。

 しかし、そこへハゲタカが飛んできます(笑)。ハゲタカは、自分の利益を第一に考えていますから、笠も地蔵もおじいさんも、自分の外側にある単なる対象です。もし、おじいさんが里から帰る道に、雪に降られたハゲタカがいたら、おじいさんはそのハゲタカにも笠をかぶせてあげたでしょう。しかし、そのハゲタカは、ほかの地蔵たちの笠も奪いに行くかもしれないのです。

 笠地蔵とハゲタカでは、勝負の次元が違います。笠地蔵は一方的に奪われ、ハゲタカは一方的に奪います。では、笠地蔵が収奪されつづけ、世界がハゲタカだけになることが世界の平和かというとそうではありません。また、笠地蔵が立ち上がって自らもハゲタカになり、元のハゲタカを駆逐することが世界の平和になるかというとこれもそうではありません。

 今必要なのは、日本の無の文化のパラダイムで、欧米の有の文化のパラダイムを包み込む工夫なのです。(つづく)

 話が更に大きくなった(笑)。



コメント欄

コメントフォーム
笠地蔵の文化―知のパラダイム(その5) 森川林 20110121 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
てとなに (スパム投稿を防ぐために五十音表の「てとなに」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
知のパラダイム(15) 
コメント1~10件
なぜ公立中高一 森川林
 志望校の過去問に特化した受験対策を進めるためには、まず「春 4/28
記事 5498番
作文検定のプレ あお
お返事ありがとうございます。暗唱検定が早くできてほしいです。 4/9
記事 5493番
作文検定のプレ 森川林
 日本語教育で、簡単なのは会話で、次が読書で、最後が作文です 4/8
記事 5493番
作文検定のプレ あお
日本語作文検定は、日本語を学ぶ外国人のための作文教育にも対応 4/8
記事 5493番
【合格速報】東 ふつ
合格おめでとうございます。 毎週真剣に取り組み、どんどん上 1/7
記事 5403番
国語力、読解力 森川林
読検の解答は個別れんらくでお送りください。 12/29
記事 4331番
国語力、読解力 すみひな
本日の読解検定を受け忘れてしまいました。回答をどちらに送れば 12/27
記事 4331番
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 読解検 森川林
 これは、その言葉があるかどうかではなく、文脈として読み取る 4/28
国語読解掲示板
読解検定小5の みきひさ
読解検定 小5 4月について3問教えてください。 どうぞよ 4/27
国語読解掲示板
茨木のり子さん 森川林
 茨木のり子さんが晩年に書いていた言葉、 「倚(よ)りかか 4/27
森川林日記
軽くて意味のな 森川林
軽くて意味のない広告の文面を書いていたのでくたびれた。 嘘 4/27
森川林日記
Re: 例えば 森川林
 この歌の本質は、「言えない」又は「言わない」というところに 4/27
森川林日記
例えば、敷島の 森川林
 本居宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日ににほふ山桜花」は、 4/27
森川林日記
AIに文章を直 森川林
 AIに文章を直してもらうと、  詩的な文章が散文的になる 4/27
森川林日記
雨は龍のメッセ 森川林
 雨は龍のメッセージ。  晴れは太陽のメッセージ。  ど 4/27
森川林日記
五月の薄曇りの 森川林
 五月の薄曇りの空の下をゆっくりと歩く。  自分の心の中に 4/27
森川林日記
走水神社 森川林
 走水神社に行ってきた。  神社の横の山の途中に、弟橘媛( 4/24
森川林日記

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン