ゲストさん ログイン ログアウト 登録
 平和な日本の文化が、武力と策略の文化を包み込むためには―知のパラダイム(その8) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1140番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/17
平和な日本の文化が、武力と策略の文化を包み込むためには―知のパラダイム(その8) as/1140.html
森川林 2011/01/25 11:02 


 無の文化は、日本の社会の中でしか存在することができません。無の文化と有の文化が遭遇すると、無の文化は、有の文化によって一方的に収奪され消滅してしまうからです。

 かつて無の哲学が生まれたインドや中国においても例外ではありません。極東の端にあり海から隔てられた日本だけが、かろうじてユーラシア大陸の有の文化とは距離を置いた無の文化を保ち続けてきたのです。

 しかし、日本は、これから好むと好まざるにかかわらす国際化していきます。しかも、その国際化が、これまでと違うのは、従来の国際化が、日本の工業生産物を海外に輸出する、あるいは人間が海外に学びに行くという外に出る国際化であったのに対し、これからの国際化は、海外からの移民が日本に入ってくるという内に入る国際化であることです。

 有の文化に住む人間にとって、無の文化に住む人間は、一種のカモです(笑)。笠地蔵がのんびりと平和に暮らしている里に、次々とハゲタカがやってくるというのが、これからの国際化のイメージです。穏やかな文明人の老人が暮らしているところへ、武器を持った野蛮な若者が押し寄せるイメージと言ってもよいでしょう。

 古代の日本の社会では、これまでも同様の移民の流入がありました。しかし、海に囲まれた日本には、流入する人口に制約があったために、年月を経るうちに、少数の侵略的な有の文化は、日本の無の文化の中に解消し、有の文化の知的技術的な刺激だけが日本の文化の中に取り込まれていきました。

 ところが、今後予想される海外からの移民は、これまでとは規模が異なります。そのような中で、日本は、自国の無の文化をどのように守り、発展させていったらいいのでしょうか。

 鎖国という選択肢は、進歩を否定することにしかなりません。日本が自らも有の文化に変身するという選択肢は、日本のよさを否定することです。優しい文明国の老人の無の文化が、武力を持った野蛮な若者の有の文化を包み込む中で、有の文化も生かした無の文化を作っていくことがこれからの課題です。



 有の文化が、なぜ一方的に無の文化を収奪することができるのでしょうか。それは、有の文化が、相手を対象物として見ているのに対して、無の文化は、相手を自分と結びついた全体の一部として見ているからです。

 相手を利用の対象と考える文化と、相手を共感の仲間と考える文化では、利害関係の相違は、そのまま支配被支配の関係につながります。正直者のインディアンは、策略を弄する白人の前で、多くの場合無抵抗で居住地を奪われ文化を滅ぼされていきました。

 有の文化が無の文化を一方的に支配できるのは、有の文化には、無の文化があまり持っていない独自のツールがあるからです。そのツールの一つは策略で、もう一つは強力な武器です。

 有の文化は、互いの抗争の中で、武器を発達させることに強い関心を持ってきました。しかし、無の文化は武器を発達させることにはほとんど関心を持ちませんでした。

 織田信長の時代、日本は、ヨーロッパよりも優れた鉄砲の技術と戦術を持っていました。しかし、天下が統一され無の文化が復活すると、鉄砲の技術は発達を停止し、日本刀の芸術的な面だけが進化していきました。

 武器を持たない平和な無の文化が、優れた武器を持つ野蛮な有の文化を包容し、正直な無の文化が、策略にたけた有の文化を包容するためには、何が必要なのでしょうか。(つづく)


 国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
知のパラダイム(15) 

コメント欄

コメントフォーム
平和な日本の文化が、武力と策略の文化を包み込むためには―知のパラダイム(その8) 森川林 20110125 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
ひふへほ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「ひふへほ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
知のパラダイム(15) 
コメント1~10件
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
【合格速報】栃 森川林
 おめでとう!  受験勉強中も、硬い説明文の本をばりばり読 3/13
受験作文と入試 森川林
将来の作文入試は、デジタル入力になり、AIで自動採点するよう 3/13
大学入試が終わ 森川林
大学生になっていちばん大事なことは学問に志すこと。 18歳 3/12
【合格速報】東 森川林
 T君、いつも椅子に腹ばいになってずっと本を読んでいたものね 3/11
1月の森リン大 森川林
 小1から高3までの作文が並ぶと、学年に応じて、みんなの考え 3/11
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
日本復活の道筋 森川林
 工業製品を経済発展の原動力をした資本主義は終わりつつある。 4/17
メモ 森川林
https://www.mori7.com/za2024a0 4/16
単なる作業 森川林
勝海舟は、辞書を買うお金がなかったので、ある人から夜中だけ辞 4/8
勉強は、人に教 森川林
勉強は、人に教えてもらうのではなく、 自分で学べばよい。 4/7
タイマー勉強法 森川林
 勉強も、家事も、仕事も、やらなければならない細かいことがた 4/2
人間の役割 森川林
うちの子が1歳か2際のとき、 車で30分ほどの三浦海岸につ 4/2
舞岡のシラサギ 森川林
舞岡八幡宮に行ったら、帰りにシラサギがいた。 3/29
身体や物理的現 森川林
身体や物理的現実は、時間や空間に限定されているが、意識はそれ 3/29
メジロとか、ヒ 森川林
メジロとか、ヒヨドリとか、スズメとか、ヤマバトとかが、毎日わ 3/28
批判と創造 森川林
人を批判することはたやすい。 大事なことは、批判ではなく創 3/27

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習