ログイン ログアウト 登録
 「Power vs Force」から「Truth vs Falsehood」へ Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 13番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/12/15
「Power vs Force」から「Truth vs Falsehood」へ as/13.html
森川林 2005/12/04 05:24 
 昨年、「パワーVSフォース」という本の紹介をしました。そこで、キネシオロジーという人間の筋肉の反応を利用した正誤判定が可能らしいということを書きました。
 その後、同じ著者の本が何冊か出版されているので、アマゾンで注文して読んでみました。と言いたいところですが、英語で書いてあったのでほとんど読めませんでした。
 ところで、最近の著書「トゥルースVSフォールスフッド」をつまみ読みすると、このキネシオロジーテストの限界が逆に明らかになっていました。

 今回は逆に、このキネシオロジーという発想のマイナス面に光を当てておきたいと思います。
 これは、キネシオロジーに限らず、宗教や占いをはじめとするすべての超越的なもの(現実の理解を超えたもの)について当てはまることです。一言で言えば、これらの超越的なものには、正しい要素と誤った要素が分かちがたく結び付いており、人間が強力な常識を持たなければその正誤を分別することができないということです。そして、多くの人は、超越的なものの力に圧倒されて常識の方を放棄してしまうようです。
 このような意味で、すべての宗教は基本的にオウム真理教と同じ性質を持っています。個々の宗教で、例えば輸血をしないとか肉食をしないとかいうのは、個人の信条の自由として尊重されなければならないことは当然です。しかし、その宗教がもし政治的権力を持つようになった場合、他の人に対して「輸血をすべきではない」とか「肉食をすべきではない」ということを強制する可能性があるのです。なぜならば、それらの信条は個人の自由意志によって為されたものであるにも関わらず、神からの命令として実行されているからです。「私がしたいから」という話であれば、対話の余地がありますが、「神様がそう言ったから」では人間どうしの対話は成り立ちません。そして、対話がない中で対立を解決する手段は、結局暴力にならざるを得ないのです。これが宗教の弱点です。
 キネシオロジーは、のべ何百万人もの実験データによって科学的な裏づけを持っているかのように叙述されています。しかし、ここにはその実験データを解釈する仮説の側に大きな誤まりがあるのです。それは、キネシオロジーは、客観的な正誤を判定しているのではなく、その人の意識(又は無意識)の中にある正誤を判定しているに過ぎないということです。
 同様のことは、水の結晶のようなことにも言えると思います。「ありがとう」という紙をはったコップではきれいな結晶ができ、「ばかやろう」という紙をはったコップでは醜い結晶しかできなかったという実験です。ここでも、考えられることは、水が紙に書いてある字を読んだわけではなく(笑)、紙をはった人の意識を反映したのだろうというのが、普通の常識的判断です。
 エドガー・ケイシーは、無意識のリーディングの中で、人間が知ることのできなかったさまざまな真実を明らかにしました。しかし、ここに登場する神様は、キリスト教というきわめてローカルなものに限られています。キリスト教以外のあらゆる宗教の神が登場することのない真実は、やはり一面的な真実だろうというのが、普通の常識的な考えです。
 心理学の実験で、被験者に苦痛を与えることが必要なのだと説明された人のほとんどは、平気で他人に苦痛を与えることができたそうです。この場合も、「たとえ必要なことであっても、他人に苦痛を与えることはしたくない」と言うのが常識を持った人間です。そして、「苦痛を必要としない方法を考えよう」と提案するのが創造的な人間です。しかし、整然とした理屈に対抗するだけの強力な常識を持つ人さえほとんどいなかったということをこの実験は示しています。

 キネシオロジーは、自分の肉体にとってプラスかマイナスかということは正確に判断できると思います。これはOリングテストと同じです。ビタミン剤と人工甘味料を袋に入れて、キネシオロジーテストによって中身を判断するというのは可能だと思います。
 また、自分の知っている身近な人が、自分にとってプラスかマイナスかということも、同様に判断することは可能だと思います。これは、常識で考えてもありうることで、何となく話が合う人と合わない人がいることは多くの人が経験していることだからです。
 しかし、ここから話を拡大して、自分が直接には知らない人、例えばガンジーとかマザー・テレサをキネシオロジーが判断すると言った場合、そこで判断されているのは、ガンジーやマザー・テレサというリアルな人間ではないはずです。キネシオロジーが判断しているのは、人々の意識の中にある、又は、メディアを通して知らされた知識の中にあるガンジーやマザー・テレサです。これが常識です。
 キネシオロジーは、自分に直接影響のあるものごとを判断するには、有効なテストだと思います。しかし、自分の直接的な関わりを離れて、客観的な事象を判断しようとするとき、そこに数々の主観的偏向が入り込む余地があるのです。テストに参加する人が多くなればなるほど、そのテストはそれらの参加者の集合的な意識に影響されるようになり、あたかも客観的な数値であるかのように振る舞いはじめます。しかし、それは科学ではありません。ただのマジックなのです。ところが、この科学とマジックは、科学の要素が強い部分からマジックの要素が強い部分まで境目がない状態で分かちがたく結び付いています。それは、すべての宗教と同じです。普遍的な要素とその宗教だけに当てはまるローカルな要素が分かちがたく融合しています。それを見分けることができるのは、人間の人間的な常識です。しかし、その常識は、科学的装いと拮抗できるほど強力な常識でなければならないのです。
[:ねずみ:][:きつね:][:うし:][:チューリップ:]



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。


コメント欄

コメントフォーム
「Power vs Force」から「Truth vs Falsehood」へ 森川林 20051204 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
まみむめ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「まみむめ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。

コメント1~10件
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
子どもの文章力 森川林
今の受験は知識の詰め込みの勉強になっています。 考える問題 12/8
記事 5392番
作検研究。森リ 森川林
作文は、褒められても注意されても、そこに客観的な基準がなけれ 12/7
記事 5391番
「作文検定」「 森川林
 今は、AI社会の前夜。  昔は新聞やテレビが中心だった。 12/7
記事 5390番
AI時代に子ど 森川林
AI時代には、先生の役割は「教えること」ではなくなります。 12/6
記事 5389番
【合格速報】順 森川林
Rさん、合格おめでとう!! よくがんばりましたね。 受験 12/4
記事 5387番
森リン大賞9月 森川林
 従来の作文評価は、小学校低学年では「正しい表記ができている 11/9
記事 5382番
作文の学習で大 森川林
 「何でも自由に書いてごらん。いつでも褒めてあげるから」とい 11/7
記事 5381番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
「給与の決め方 佐藤隆
経営者・経営層の皆さまへ 突然ですが、御社の人件費?? 12/12
森の掲示板
3I/atla 森川林
日本にはかつて穏やかに何万年も続いた縄文文明があった。そのよ 12/12
森川林日記
Re: 11月 森川林
 これは、解き方の問題ではなく、読む力の問題です。  読解 12/5
国語読解掲示板
Re: ICレ 森川林
 ChatGPT、あまり文章うまくないなあ(笑)。  音声 12/5
森川林日記
ICレコーダと 森川林
AI時代に子どもが伸びる――全科学力クラスという新し 12/5
森川林日記
noteのペー 森川林
https://note.com/shine007 12/4
森川林日記
11月分 4  あういと
問題7と問題8が分かりません。 キーワードはわかるのですが 12/3
国語読解掲示板
Re: 森川林
 字がきれいだったのは、そのあとの日記の内容を見ると、弟が葛 11/30
国語読解掲示板
Re: 11月 森川林
 お返事遅れて失礼しました。  易しい国語問題は、「同じ言 11/30
国語読解掲示板
ともとも
小5の11月の読解検定のBの問題が誕生日だから字が綺麗だと思 11/28
国語読解掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習