ゲストさん ログイン ログアウト 登録
 言葉の森の暗唱と他の教室の暗唱との違い(その3) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 390番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
言葉の森の暗唱と他の教室の暗唱との違い(その3) as/390.html
森川林 2009/02/17 10:53 
 暗唱の目的を記憶と考えることからいくつかの問題点が出てくることを書いています。
 第一は、記憶することを優先するために、記憶術のようなテクニックを使いすぎてしまうということです。記憶術は役にたつ技術ですが、低学年の時期はまだそういう技術に頼らない方がいいと思います。
 第二は、記憶する対象を文化と考えることから、教育よりも文化を優先し、有名な文章や古くからある文章を使うことが当然のように考えられていることです。現代にはもっと現代という時代にふさわしい文章があるはずです。
 ここまでが前回の話です。

 問題点の第三は、教材に頼りすぎる傾向があるということです。つまり、限られた有名な文章を使うことで、その限られた少数の文章を歌やイメージによって、何しろ早く覚えるということが優先されていることです。
 これは逆に言えば、教材がなければ勉強ができないような勉強の仕方をしているということになります。従って、教材に依存せざるをえないので教材が高額になるという問題も出てきます。
 言葉の森の暗唱の仕方は、どんな文章でも、CDやドリルのような教材なしでできるやり方です。勉強するのに便利なように、音声や印刷物の教材は作っていますが、その教材は無料です。なぜこのようにしたかというと、勉強は、本来独学で進めていくものだと考えるからです。勉強は、わからないところだけをよく知っている人に聞くのがいちばんいいやり方で、自分がわかっているところもわからないところもすべて含めて、最初から他人に教えてもらうというのは無駄の多いやり方です。方法と素材だけを教えてあとは各人が自由に行えるというのが理想的な勉強です。細かい手順や道具や材料をすべて与えると、勉強は複雑になり、かえってひとりで行えないようになってきます。

 問題点の第四は、暗唱の過程ではなく、暗唱の結果を大事にしすぎている点です。暗唱を料理のようなものと考えると、暗唱の結果は料理そのものです。大事なのは、料理の仕方、つまり暗唱の覚え方を身につけることであって、出された料理を食べること、つまり暗唱がうまくできること、ではありません。
 暗唱の結果そのものを目的とすることから、歌やイメージによって、暗唱する対象を早く能率よく覚えることが暗唱の目的のようになっています。これが、暗唱の対象を文化と考えることと結びついて、百人一首を覚えたり、有名な短歌を覚えたり、県庁所在地を覚えたりするという暗唱のスタイルになっています。このような暗唱の結果を数多く知っているということは、単にクイズ番組に出る知識をたくさん知っていることと変わりません。そのような知識は、学年が上がり勉強上の必要や生活上の必要に迫られてから覚えれば十分です。
 もちろん、暗唱の方法は暗唱の対象と不可分に結びついていますから、暗唱の対象を何にするかということも重要です。しかし、ここで大事なのは、暗唱の対象を、先の学年で出てくる勉強の知識を先取りするもののように考えることではありません。暗唱の対象は、人生を豊かにする知識を身につけるという方向で考えていくべきです。
 例えば、もし覚えることそのものを重視するのであれば、日本語の持っているいろいろな色の名前を覚え、微妙な色合いの差を子供のころに感じ取れるようにするとか、野山の植物の名前を覚え、雑草にも親しみを感じられるようにするとかいう方向で考えていくといいのです。それらは、今の受験勉強には役立たないとしても、その子の生活に大きな潤いを与えると思います。
 しかし、いちばん大事なのは、覚える対象ではなく、覚える方法を身につけることです。覚える対象は、それぞれの人が自由に選べるようにした方が勉強に広がりが出てきます。

 問題点の第五は、暗唱が、覚えることを目的としているために、やりやすい方法として、聴くだけで覚えるというような方法がとられることもあるということです。
 何度も聞いて覚えるというのは、覚える勉強というよりも、単に何度も聞いたことに適応したという、人間の持つ適応力の一つに過ぎません。「門前の小僧習わぬ経を読み」という言葉があります。それは決して無意味なことではありませんが、そのことによって小僧が立派なお坊さんになるかというとそうではありません。成長には、主体的な意思が必要で、ただ環境になれることで成長するというものではないのです。
 また、聴くだけで覚えるというのは一見便利なようにも見えますが、逆に聴くために作られた教材がないと勉強ができないという問題にもつながります。教材を必要としない暗唱の仕方は、自分の口で言って自分で聴いて覚えるという方法です。この「自分で言って自分で聴く」というのが、記憶力の本質に近い方法で、また特別な教材が不要になる方法です。
 言葉の森でも速聴のページを作っています。しかしこれは、通常の暗唱の方法では敷居が高くて難しいと感じる子供たちを挫折させないための便宜的な方法です。本当は、ただ人に録音してもらったものを聴いて覚えるというな覚え方ではなく、自分で何度も口で言って覚えるというな覚え方をしていった方がいいのです。
 ですから、速聴のページを利用する人は、ただ聴くだけでなく、できれば、聴いたあと何度かは自分の口で言ってみるという覚え方をするといいと思います。

 言葉の森の暗唱の主要な目的は、記憶することでも記憶力を育てることでもありません。いちばん大事なのは、読解力と表現力を育てることです。それに付随するものとして、記憶力や記憶した結果があります。

 通信クラスでも通学クラスでも、毎週しっかり300字を暗唱してくる子が増えています。10分間暗唱はいったん軌道に乗れば、続けやすいものです。
 軌道に乗せる一つの方法として、朝ご飯を食べる前に10分間暗唱と決めておいてもいいと思います。記憶は夜寝る前に行う方が定着しますが、寝る直前に10分間、暗唱の時間をとるというのは、かえって忘れがちになり習慣化しにいという家庭も多いと思います。それぞれの家庭の生活の時間帯の中で、いちばん例外の少ない時間帯を10分間暗唱の時間にあてていくといいと思います。

(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)


 国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。


コメント欄

コメントフォーム
言葉の森の暗唱と他の教室の暗唱との違い(その3) 森川林 20090217 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
らりるれ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「らりるれ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。

コメント1~10件
森リンベストの 森川林
じすけ君、ありがとう。 統合失調症のような、また似たような 4/21
森リンベストの じすけ
こわばんは 今日は元気一杯、体験発表をさせて頂きます。 4/20
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
【合格速報】栃 森川林
 おめでとう!  受験勉強中も、硬い説明文の本をばりばり読 3/13
受験作文と入試 森川林
将来の作文入試は、デジタル入力になり、AIで自動採点するよう 3/13
大学入試が終わ 森川林
大学生になっていちばん大事なことは学問に志すこと。 18歳 3/12
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
近所のローソン 森川林
毎日新聞を見たけど、記事はまだ載っていまでした。 4/25
毎日新聞に言葉 森川林
 しばらく前に、毎日新聞の人が取材に来ました。  そのとき 4/24
テスト送信 森川林
https://www.mori7.com/za2024d0 4/24
4月保護者懇談 森川林
シラン ●今後の「森からゆうびん」の学習デ 4/22
マスクにしても 森川林
マスクにしても、ワクチンにしても、消毒にしても、 自分たち 4/21
イエスも釈迦も 森川林
イエスも釈迦も、理想の社会を築きたいと思っていた。 しかし 4/21
日本復活の道筋 森川林
 工業製品を経済発展の原動力をした資本主義は終わりつつある。 4/17
メモ 森川林
https://www.mori7.com/za2024a0 4/16
単なる作業 森川林
勝海舟は、辞書を買うお金がなかったので、ある人から夜中だけ辞 4/8
勉強は、人に教 森川林
勉強は、人に教えてもらうのではなく、 自分で学べばよい。 4/7

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習