ゲストさん ログイン ログアウト 登録
 世界共通語となる可能性を持った日本語 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 954番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/19
世界共通語となる可能性を持った日本語 as/954.html
森川林 2010/07/07 03:14 


 日本語という言語には、他の言語には見られない特徴があります。

 第一は、外界を人間化してとらえる母音言語という特徴です。日本語では、自然の音を左脳の言語脳で把握します。「雨がザーザー降っている」「セミがミンミン鳴いている」という表現です。音だけでなく、様子についても、「雲がふんわり浮かんでいる」「太陽がぽかぽか照っている」と様態を母音で表します。

 母音を人間世界の音、子音を非人間世界の音とすると、自然の音も含めてすべて母音の含まれる音で表す日本語は、自然そのものを人間的なものとして受け入れる言語だと言えます。日本文化におけるアニミズムは、この言語における自然の人間化と密接な関係を持っています。

 この外界を人間世界と同じようなものとして受け入れる発想から、自然に対する繊細な観察眼が生まれました。日本人は、自然を、人間が征服すべき単なる外界の素材と考えるのではなく、人間に協力してくれる意志を持つ仲間のように考えます。例えば、針供養は、針を道具としてではなく、仕事の協力者として見る発想から生まれました。

 自然や道具に対するこの人間化した見方が、自然や機械と対話する日本文化を生み出しました。日本の工業製品の品質が優れているのは、人間と製品の間に、人間どうしの間に見られるような対話があるからです。その対話の土台となっているものが、日本語の母音性から来るアニミズム的な発想だと思います。


 第ニは、表意文字と表音文字を組み合わせて視覚的な理解を促す漢字かな混じり文という特徴です。日本語における漢字とかなは、脳の異なる部位で処理されています。漢字は、絵と同じようなものとして認識されているので、日本語の文章を読むと、文字が視覚的な映像を伴って処理されます。このため、漢字かな混じり文は、一目で全体を理解しやすいという特徴を持っています。

 アルファベットのような表音文字の場合でも、文章を読む量が増えてくるにつれて、単語という文字の塊を一種の図形のように認識するようになるようです。しかし、図形化の度合いは、もともと表意文字である漢字の方が優れているので、日本語は西欧のアルファベット言語よりも、物事を理解する手段として有利な言語なのです。

 また、漢字が主に名詞として概念を表すのに対して、ひらがなは主に概念と概念をつなぐ媒介としての役割を果たします。中国語が語順によって概念と概念の間にある関係を表すのに対して、日本語は語順ではなく、漢字と漢字の間にひらがなをはさむことによって概念相互の関係を表します。ひらがなが介在することによって、概念を表す漢字の組み合わせ方が自由になるというところに、日本語の発想の豊かさがあります。

 日本語は、表意文字の部分で理解力を高め、表音文字の部分で創造性を高めるという不思議な特徴を持った言語なのです。


 第三は、助詞や助動詞という語尾のニュアンスで微妙な差異を表現する膠着言語という特徴です。英語や中国語と異なり、日本語は、文の最後まで聞かないと、その文を正しく理解できません。例えば、「私は、明日、学校に行く……」まで聞いても、そのあと、「行くでしょう」か、「行くかもしれません」か、「行く気はありません」か、どのように続くか判断できません。

 そのため、日本語は、話し言葉でなかなか句点をつけずに、いつまでも続くような形をとりがちです。「その件については、前向きに善処したいと、このように考えているわけである、と言いたいところですが、やはり、何と申しましても……」というような言い方になると、聞き手は最後まで気を緩めることができません。

 この膠着語における文末の微妙さが、日本文化における微妙な差異に対する関心を生み出しました。そのため、話し言葉では、文末は、しばしばぼかされる形で微妙な雰囲気を相手の受け取り方にゆだねます。「この間は、どうも……」「はい、おかげさまで……」「ちょっと、そこまで……」などという言い方です。

 話し言葉の特徴は、書き言葉にも表れます。書き言葉では、文末をぼかす形がとれないので、言い切らない表現が多様されます。「そうである。」という断定ではなく、「そうであろう。」「そうだと思われる。」「そうだと言える。」「そうだと言いたい。」などという表現です。また、ニュアンスを表すための顔文字や「(汗)」「(笑)」などが多用されるのも、相手の微妙な受け取り方を前提にして文章を書くという日本語の特徴です。

 膠着語は、微妙な差異を生み出せるために、互いに相手の受け取り方に気をつかうという配慮の文化を生み出したと言えます。


 20世紀の世界言語は英語でした。それは、世界共通の言語としてコミュニケーションのツールに役立つ特徴を備えていたからです。

 しかし、今後は人工知能の発達によって、言語は次第に自動翻訳が可能な表現手段になってきます。

 世界に何千もの言語があることを考えると、個人が学習によってそれらの言語に精通することは不可能です。英語が世界の共通語になったのは、言語の習得に時間がかかることから、言わば消去法として選ばれたという事情があります。

 人工知能が世界中の言語の自動翻訳を可能にする時代に、言語に求められる役割は、もはや世界の人々とのコミュニケーションではありません。新しい時代の言語の役割は、コミュニケーションのツールではなく、理解や認識や思考のツールとしての役割です。

 しかし、言語が認識のツールになるためには、その言語が個人の母語になっている必要があります。コミュニケーションのツールであれば、後天的に習得することが可能でした。しかし、ある言語が認識のツールとなるためには、その言語が母語として血肉化されている必要があります。また、バイリンガルの教育法が開発され整備されれば、母語は複数であることも可能です。

 こう考えると、日本語は、感受性と理解力と創造性を育てる言語として、将来の世界共通語になる可能性があります。しかし、このことは、まだ日本人以外には、ほとんどの国の人が気づいていないと思います。


 対話と個別指導のあるオンライン少人数クラスの作文教室
小1から作文力を上達させれば、これからの入試は有利になる。
志望校別の対応ができる受験作文。作文の専科教育で40年の実績。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 

コメント欄

オノチャン 2014年7月6日 22時36分  
世界中に日本語学校を作ろう
世界中に日本企業を作ろう
日本語を世界の第2共通語にしよう




 

 






に日本企業を作ろう

コメントフォーム
世界共通語となる可能性を持った日本語 森川林 20100707 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
ひふへほ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「ひふへほ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 
コメント1~10件
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
【合格速報】栃 森川林
 おめでとう!  受験勉強中も、硬い説明文の本をばりばり読 3/13
受験作文と入試 森川林
将来の作文入試は、デジタル入力になり、AIで自動採点するよう 3/13
大学入試が終わ 森川林
大学生になっていちばん大事なことは学問に志すこと。 18歳 3/12
【合格速報】東 森川林
 T君、いつも椅子に腹ばいになってずっと本を読んでいたものね 3/11
1月の森リン大 森川林
 小1から高3までの作文が並ぶと、学年に応じて、みんなの考え 3/11
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
日本復活の道筋 森川林
 工業製品を経済発展の原動力をした資本主義は終わりつつある。 4/17
メモ 森川林
https://www.mori7.com/za2024a0 4/16
単なる作業 森川林
勝海舟は、辞書を買うお金がなかったので、ある人から夜中だけ辞 4/8
勉強は、人に教 森川林
勉強は、人に教えてもらうのではなく、 自分で学べばよい。 4/7
タイマー勉強法 森川林
 勉強も、家事も、仕事も、やらなければならない細かいことがた 4/2
人間の役割 森川林
うちの子が1歳か2際のとき、 車で30分ほどの三浦海岸につ 4/2
舞岡のシラサギ 森川林
舞岡八幡宮に行ったら、帰りにシラサギがいた。 3/29
身体や物理的現 森川林
身体や物理的現実は、時間や空間に限定されているが、意識はそれ 3/29
メジロとか、ヒ 森川林
メジロとか、ヒヨドリとか、スズメとか、ヤマバトとかが、毎日わ 3/28
批判と創造 森川林
人を批判することはたやすい。 大事なことは、批判ではなく創 3/27

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習