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コミュニケーション・ラーニング(その2) as/1106.html
森川林 2010/12/25 11:37 


 国語のセルフ・ラーニングは、経験と知識の裾野を広げる学習です。高学年になって国語の問題の出来が悪くなったときに、その前の学年に戻って国語の問題を解いても力はつきません。その高学年に応じた知識と経験の裾野を広げることが力をつける方法になるのです。(前回までの記事)


 したがって、実際に経験する、話を聞く、本を読む、知識を得るという裾野を広げる学習が、国語におけるセルフ・ラーニングになります。

 しかし、それは単に漢字や単語や熟語を身につけるというレベルではなく、文章によって表されたその状況の、感じ方、考え方、受け取り方、認識の仕方、つまり状況理解の仕方を身につけるというような裾野の広げ方なのです。つまり、国語的な理解の裾野とは、単語や熟語などの裾野ではなく、より長い文脈を持った裾野なのです。

 国語力を育てるセレフ・ラーニングは、状況理解の仕方の裾野を広げることで、その最も自然な形は、年齢が上がることによって知識と経験が増えるということです。

 しかし、算数のセルフ・ラーニングが、学んだことによって理解が進み、わからなかったことがわかるようになるという直接的な喜びがあるのに対して、国語におけるセルフラーニングは、裾野を広げたことが理解に直接結びつくという関係にないために、学ぶこと自体に喜びを見いだしにくいという特徴があります。

 そこで、国語の裾野を広げるセルフ・ラーニングの学習には、そのセルフ・ラーニングを支えるものとしてコミュニケーションが必要になってくるのです。



 国語におけるセルフ・ラーニングにどのようなものがあるかというと、第一に、幼児期における語り聞かせや読み聞かせです。

 第二に、学齢期における音読や暗唱という繰り返し読む学習です。

 第三に、読書や問題集読書のような幅広く読む学習です。

 第四に、作文という書く学習です。

 子供が、語り聞かせや読み聞かせを喜ぶのは、そこに親とのコミュニケーションがあるからです。だから、語り聞かせや読み聞かせは、楽しい雰囲気で進めることが大事です。

 音読や暗唱は、毎日の習慣になれば自然にできますが、それでも同じことを続けるというのは子供にとっては退屈なことです。そこで、その音読や暗唱を聞いて励ましてあげる身近な人が必要になります。これが、コミュニケーションです。

 読書は、読む力のないうちは、読んでいることを励ますことが必要になりますが、ある程度の読書力がついてくると、子供が自分で進んで読むようになります。しかし、問題集読書のような難しい文章の読書は、やはり身近な人がその内容を聞いて励ましてあげることが必要になります。

 そして、セルフ・ラーニングが最も難しいのが、作文を書く練習です。(つづく)

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森川林 2010/12/24 09:24 



 「あのブドウは、すっぱい」という文を理解するためには、何が必要でしょうか。この文を理解するためには、知識と経験の裾野が必要です。ブドウとはどういうもので、食べるとはどういうことで、すっぱいとはどういうことかという経験や知識がなければなりません。

 しかし、たとえ一部に知らない知識があったとしても、それ以外の経験や知識の裾野が豊富であれば、内容を類推することはできます。例えば、ブドウという既知の単語ではなく、自分の知らないフルフルという単語が使われていて、「あのフルフルは、すっぱい」という文を見たとしても、自分のこれまでの経験から、「フルフルとはたぶん食べ物のことで、すっぱいときもあるが、本来すっぱくない状態で食べるものだろう」と見当をつけることができます。

 文を理解するとは、自分の持っている知識と経験の裾野の広さに応じて、より高い山頂をきわめるということです。裾野の広がり具合によって理解の度合いが規定されるということは、同じ理解でも、浅い理解と深い理解、ある方向からの理解と別の方向からの理解があるということで、これが国語の理解の特徴です。

 これに対して、算数数学の理解は、論理のつながりに基づく理解です。このため、算数数学は、わからなくなったら前の単元に戻り、論理のつながりを回復することによって理解するという方法をとります。

 その論理のつながりの最初の出発点は、物理的世界に対する身体的感覚です。例えば、3つのリンゴと2つのミカンを合わせると5つの果物になるという足し算の場合、3つのリンゴと2つのミカンは、物理世界に属しています。同様に、長さや角度や時間や形という物理的世界も、算数の論理の出発点になっています。

 裾野によって理解する国語と、論理によって理解する算数数学の違いは、もっと複雑な文を考えてみるとよくわかります。

 例えば、「民主主義は教科書に書かれていない」という文です。この場合、知識や経験の裾野として、民主主義という言葉、教科書という言葉、書かれるという言葉を知っていることは当然必要ですが、それとともに、民主主義というものが自主性、自立性、創造性に結びついた概念で、教科書というものが他者依存、ありきたり、お仕着せなどに結びついた概念だという理解がなければ、この「民主主義は教科書に書かれていない」という文を正しく理解することにはなりません。

 国語力における理解は、論理のつながりを回復するという理解の仕方ではなく、裾野を広げることによってより高い山頂をきわめるという理解の仕方です。ここから、国語のセルフ・ラーニングの特徴が出てきます。

 国語のセルフ・ラーニングは、経験と知識の裾野を広げる学習です。高学年になって国語の問題の出来が悪くなったときに、その前の学年に戻って国語の問題を解いても力はつきません。その高学年に応じた知識と経験の裾野を広げることが力をつける方法になるのです。(つづく)

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