言葉の森新聞に掲載した、過去の記事の再掲です。
小学校6年生の中高一貫校などの入試作文で、30分800字などの試験課題が課せられる場合があります。高校生の大学入試小論文では90分1000字などが普通ですから、30分800字というのは異常な速さです。このような時間と字数でまともに書ける子はほとんどいません。その結果、大きな差がつくので点数をつけやすくなるということです。
しかし、これまで言葉の森から入試に臨んだ子供たちは、ほとんどが30分で800字ぐらいの作文を書いてきました。入試では、気合いが入るので練習のときよりも速く書けるからです。
もちろん、練習のときに速く書く方法もあります。
しかし、速く書く練習をするのは、試験の前の1-2ヶ月にしておく方がいいと思います。それまでは、時間を計りながら書きますが、速さよりも内容を優先していきます。なぜかというと、内容がよければ、その内容を試験の材料として生かせるからです。
普段の練習は、実戦のための予行演習ではなく、材料作る準備のための練習と考えておいてください。普段の作文の練習でよい材料とよい表現を蓄積しておくと、それを試験で生かすことができます。試験で速く書くためには、普段の作品で時間を速くするよりも、充実した内容を書くことに力を入れておくことです。
試験の1ー2ヶ月で速く書く練習をするときのコツは次のようになります。まず第1は、問題を読んだあと、作文用紙の余白に3、4ヶ所の箇条書きでメモをしておくということです。第2は、作文を書いている間は、消しゴムで消さない、書いたところを読み返さない、書くことを考えない、という三つのことを守ることです。第3に、書くことを考えずに書くためには、作文を書いていて書くことに詰まったときに、最初のメモを見ます。メモを見てすぐに書き続けるというやり方をしていけば、途中で考える時間を減らすことができます。第4に、作文の4分の3ぐらいまでの長さはほぼノンストップで書いていきます。途中で話が多少脱線したりずれたりしていても構いません。第5に、作文の結びの4分の1ぐらいに来たときに、初めて全体を読み返してまとめる体制に入ります。まとめる場面では、書き出しの意見とできるだけ対応するように考えるのが大事です。
このように、ノンストップで速く書く練習は、1、2ヶ月でできます。毎週1回作文を書いている人は、同じテーマで同じ内容の文章を書く練習をする形で、毎日作文を書いていきます。1ヶ月毎日30分で800字を書く練習をしていると、速く書く感覚がつかめると思います。
森リンは、既に文章力十分にある高校生や大学生にも、小中学生と同じように使えます。
その方法は、こういう形です。
生活作文や身辺雑記的なことでは、高校生や大学生になると、作文の上手な子の文章力にはほとんど差がなくなります。ところが、知識の得意分野は人によってそれぞれ違います。
政治経済のジャンルでいい文章を書ける人が、心理学や哲学の分野でいい文章が書けるとは必ずしも言えません。また、もちろんその逆もそうです。
森リンの点数によってその差がはっきり表れれば、自分が、ある分野では専門的なことが言えても他の分野ではありきたりのことしか言えないということがわかってきます。
そこで、その自分の苦手な分野を、自分なりに学んで強化するという流れに勉強が進んでいきます。これが、高校生や大学生の文章練習の方法です。
以上のことからわかるように、森リンは、小学校低中学年向けのソフトではなく、小学校高学年以上、中高生や大学生向けのソフトです。
そして、文章の本当の価値は、そこに創造性があるかどうかということによって決まってきます。
この世の中にまだない美や思想や知識を作り出すのが、文章の役割です。
そのようなレベルに達すると、文章を書くことは、他人の評価を超えて、書くこと自体がひとつの喜びとなってきます。
しかし、そのために、小中高の教育において、もっと文章をたくさん書く機会を作る必要があり、そのために森リンのようなソフトを活用する必要があると思います。(おわり)