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吉田松陰「留魂録」を伝えた信頼関係 as/1161.html
森川林 2011/02/05 12:21 
修 削


 吉田松陰の「留魂録」は、松陰が処刑される前日に、門下生に向けて書いた約5000字ほどの手紙のような書です。半紙を四つ折りにして十九面に細書きしてコヨリでとじて冊子にしてあります。

 この書の初めに、松陰の和歌が書かれています。「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留置(とどめおか)まし大和魂」。

 この書は、内容ももちろん心を打ちますが、私はそれ以上に、これを十数年も守り続けた囚人沼崎吉五郎(ぬまざききちごろう)の生き方に感銘を受けました。

 松陰と同じ獄舎にいた牢名主の沼崎は、処刑の前日、松陰に次のように頼まれます。「自分は、(この書を)別に一本郷里に送るが、無事に届くかどうか危ぶまれる。そこで、(あなたが)出獄したらこの書を長州人に渡してもらいたい」と。

 松陰の「留魂録」は、門下生らによって郷里の萩に送られ、ひそかに回覧されますが、やがて所在が不明になってしまいます。

 もう一本の書を預けられた沼崎は、その後三宅島に流されます。十数年後、幕府が倒れ、沼崎は流人の身から解放され本土に戻ることができましたが、既に老人になっていました。

 神奈川県の権令(ごんれい)という役職にいた野村靖という松陰の門下生のところに、沼崎が突然訪れたのは、松陰の処刑から十七年もたったころでした。

 沼崎は、野村に、「貴殿が長州人と聞いたので」と、変色した「留魂録」を渡すと、そのまま静かに去っていきました。



 私は、ここに、目先の損得や欧米流の合理主義とは異なる、人間どうしの義を重んじる生き方の強さを感じました。

 日本は、今、不況に沈み、格差は拡大しています。子供たちの教育も、果たして確実に行われているのかどうか不安が残ります。

 しかし、日本が今後復活するための最も確実な土台は、経済力よりも、学力よりも、何よりも国民一人ひとりが、相手の信頼に応えるという、この義の精神を失わないことだと思いました。



 では、なぜ、「経済力よりも」なのかというと、経済力は今後の工夫次第で必ず発展させることができるからです。それも、中国依存や移民拡大というような方向ではなく、日本独自の工夫で内需の拡大ができるようになるはずです。

 また、なぜ、「学力よりも」なのかというと、学力は、よりよい社会を作るための必要条件ではないからです。もちろん、将来の日本は学力の大国にしていかなければなりません。それは未来の子供たちの教育にかかっています。しかし、今の若者たちの学力に不安があるとしても、学力の不足は信頼感さえあれば補うことができます。

 「葉隠」の中で、山本常朝は、人間に必要なものとして「勇・知・仁」の三つを挙げ、「知」とは、「人に相談することだ」と述べています。社会の中に信頼感さえあれば、学力の不足は克服できるのです。

 日本の社会の治安のよさは、先進国の中では群を抜いています。タクシーの中に置き忘れた財布が、無事に持ち主のところに戻るだろうとほとんどの人が思っている国は日本だけです。

 私たち大人の役割は、この信頼感を確実に守り、その土台の上に、新しい経済力と学力の花開く国を作っていくことだと思います。



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mino阿弥 20120912  ▽
「遥かなり三宅島」吉田松陰「留魂録」外伝(永富明郎著)
吉田松陰先生の真筆「留魂録」を世に伝えた人は、松陰先生が投獄された折の牢名主沼崎吉五郎であった。
「留魂録」を託されてから17年後、門人野村靖に「留魂録」を手渡し松陰先生との約束を果たした。
沼崎吉五郎は、至誠の人であり、松陰先生にとって恩人でもある。
この沼崎吉五郎に対する長州人の「惻隠の情」の欠落を嘆き、小説として取り上げたものであり、松陰先生没後153年、著者永富明郎氏が長州人として沼崎吉五郎の厚志に報いた書でもある。


森川林 20120912  ▽
 mino阿弥さん、貴重な情報をありがとうございます。
 こういう形で、歴史に残らずに自分の義務を貫いた人が維新の時代には数多くいたのでしょうね。
 

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言葉の森のホームページ―SEOからSGOへ as/1160.html
森川林 2011/02/04 14:53 
修 削


 2月3日(木)、東京でセミナーがあったので、片道1時間、手持ちぶさたにならないように本を2冊持っていきました。

 行きは、吉田松陰の「留魂録(りゅうこんろく)」を、帰りは、「下流社会」(松田展著)を読んできました。

 電車の中では付箋読書はしにくいので(するときもありますが)、シャーペンで線を引きながら読んでいます。あとで、この線を引いた箇所だけ読み返せば、2回読んだのと同じです。読んだ本の定着度が、かなり違ってきます。



 さて、東京でのセミナーの内容は、「Web戦略をどう進めるか」というような内容のものでした(本当のタイトルは、少し違いますが)。2005年ごろのWeb状況と今の状況は、大きく変わっているという話を聞いてきました。例えば、今、習い事を探すのに「ケイコとマナブ」を見るような人はいず、すべてインターネットになっているというようなことでした。

 言葉の森のWeb開始は、1996年ですから、インターネットの本当の黎明期です。当時は、Yahoo!の学習塾というカテゴリーに、数えるほどのサイトしかありませんでした。言葉の森のサイト開設は、たぶん学習塾のようなところではいちばん早かったぐらいだと思います。

 Webを動的なページにするために、PHPとMySQLで全ページを作り直したのも、言葉の森が最も早く、コンピュータの専門の業界の人から、「今度うちの会社もウェブデータベースを入れようと思うのですが、言葉の森は、なぜMySQLにしたのですか」という質問があったほどです。(当時、MySQLは少数派でしたから)

 その後、プログラミングを独学で勉強し、調子に乗って作文の自動採点ソフトを作り、やがてソフトの特許も取得しました。また、言葉の森のホームページをブログ仕様にしたのも、まだブログが普及していなかったころです。

 しかし、そのように先進的に取り組んでいたインターネットにも、だんだん飽きてきて(笑)、今いちばん関心を持っているのは、人間の知的能力の開発についてです。そのため、インターネットの開発の方は、あまり手をかけなくなりました。その結果、現在の言葉の森のサイトは、ごちゃごちゃしてかなり見にくく、動作も不十分なものが多くなっています。いずれ時間をとって、もっとすっきりしたものにする予定です。(^^ゞ



 東京のセミナーで聞いたことは、「これからは、SEOではなくSGOだ」ということでした。(SEO=サーチ・エンジン・オプティマイゼーション。SGO=ソーシャル・グラフ・オプティマイゼーション。グラフとは、人間どうしの関係の図のようなもの)

 これは、私もかなり前から思っていたことで、これからは宣伝のよしあしよりも、やはり本物が生き残るというという社会になっていくのだと思いました。

 しかし、ソーシャル・グラフというと、人間どうしのコミュニケーションの得意な人が活躍しそうな気がしますが、そういう状態は初期のうちだけです。

 人間が他の人間になぜ関心を持つかというと、その相手がおもしろいことを言うからです。おもしろいことというのは、独創性や創造性のあることです。その独創性や創造性が基本にあって、そのあとそれを補強するものとして、コミュニケーションのリテラシーがあるということです。

 作文も同じです。表現力というのは確かに大事ですが、それはあくまでも表現する当の内容の価値を伝える手段であって、表現力そのものが価値あるものなのではありません。

 というようなことをふと考えました。(つづく。次回は「留魂録」と「下流社会」について)

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