ログイン ログアウト 登録
 受験の教育から、実力の教育へ Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 1227番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/8/27
受験の教育から、実力の教育へ as/1227.html
森川林 2011/04/06 18:42 


 これから、日本の教育は大きく変わろうとしています。そのひとつは、受験のための教育から実力のための教育へという流れです。



 日本の社会はこれまで、いい学校に入ることがそのままいい仕事につくことと同じ意味を持っていました。日本では労働市場の流動性が低いために、官庁などでは、入省時の学歴が一生ついて回るという仕組みになっています。このため、日本の社会では、勉強の目的が最もわかりやすい形で表れるものが、いい学校に入ること、更に言えば難関大学に入ることになっていたのです。

 この仕組みも、最初のうちはそれなりにうまく機能していました。しかし、勉強の目的が難関大学に入ることだと狭く絞られるようになると、やがて塾や予備校が、受験の合格のために特化した勉強を行うようになりました。志望校の出題傾向に合わせて点数の取れる勉強をするのですから、塾や予備校の勉強はすぐに大きな成果を上げました。すると、今度は学校側が、そういう受験テクニックを上回るような問題を出すようになりました。

 しかし、どんなにいい問題を出しても、答えのある問題は必ず知識の問題として処理されるようになります。つまり、思考力を見るような問題も、しばらくすると解き方のテクニックの知識に還元されるようになっていくのです。

 このようにして、受験問題の多くは、本当に大事なことをよりも、点数の差のつきやすいこと、うっかり間違えやすいこと、わかりにくいことを中心に出題されるようになっていきました。

 この結果、学校の勉強も、子供たちにとって大事なことよりも、点数の差のつきやすいことを中心に行われるようになりました。そのような環境で勉強を教えていると、先生の中にも、子供たちに何かを教えることよりも、テストをして点数の差をつけることを目的にしてしまう人も出てきます。そして、子供たち自身も、勉強とは自分を向上させるものだと考えるよりも、テストでいい点をとることだと考えるようになっていったのです。



 現在、日本の社会では、高校を中退する人の割合が毎年約2パーセント、人数にして約6万人ほどいると言われています。この中退の理由はさまざまですが、学力不足が背景になった勉強嫌いが根本にあるのは確かででしょう。

 これらの子供たちは、今の受験のための教育の犠牲者です。小学校から、本当に大事なことではなく、テストで差がつくようなことばかり教えられてきたために、いったん授業が理解できなくなると、そのまま勉強嫌いにならざるをえなくなってしまうのです。

 では、本当に大事なこととは何だったのでしょうか。それは、子供たちが日本語の文章をしっかり読む力をつけることだけです。そのことさえできれば、極端な話、英語が0点でも、数学が0点でも、理科や社会の知識がゼロでも、社会人として立派にやっていくことができます。逆に言えば、小学校から文章を読む力さえ確実に育てていれば、中学や高校で、英語や数学が途中で難しくなってもそれほど決定的な勉強嫌いにはならなかったはずなのです。



 こう考えると、日本の社会の今後の教育の方向がわかってきます。それは、受験のための勉強から、実力のための勉強へという転換です。

 今、首都圏では小学生の約20パーセントが中学を受験すると言われています。その子供たちを教える塾が何をいちばん大事にしているかというと、最難関校への合格者数です。大学受験の予備校の場合は、もっとはっきりしています。東大の合格者数が何人かということがそのまま予備校の評価になっています。

 しかし、そういう華やかに見える競争のかげで、もっとはるかに多くの子供たちは、塾や予備校で勉強しているとはいっても、その内実は学校の勉強の延長のようなことをやっているだけなのです。それは、結局、学校が子供たちに実力をつけるという最も大事な機能を果たせなくなっているからです。



 今後必要なのは、日常的に子供たちの実力の向上を測定する仕組みです。学校や塾や予備校の評価も、トップクラスの子がどこに合格したかでなく、生徒全体がどれだけ実力を向上させたかで行われるようにならなければなりません。

 トップクラスの子の合格結果だけを教育の目的にしているかぎり、先生は、できのよくない生徒をテストの評価でおどして勉強させるという役割を持つようになります。また、子供たちも、テストという競争の中で、友達どうしをライバルと考えて勉強への意欲をかきたてるということになりがちです。

 しかし、全体の実力を上げることが教育の目的になれば、先生と生徒は同じ目標に向かって協力するという関係になります。また、生徒どうしも、同じ目標に向かって助け合うという関係になります。勉強の目的は、他人と競争して相手よりもいい点数を取ることではなく、学ぶに値する本当に大事なことを、みんなができるように努力するということになるからです。

 しかし、受験のための勉強が、実力のための勉強に変わると言っても、それは受験のための勉強を否定することではありません。逆に、実力という大きなものを目的にすることによって、受験という小さな目的もその中に含まれていくような勉強を進めていくということなのです。


 低学年から学力の基礎を作る
幼長、小1、小2、小3の基礎学力をひとつの講座で学ぶ。
読書の習慣、国語算数の勉強、暗唱の学習、創造発表の練習をオンラインで。


コメント欄

コメントフォーム
受験の教育から、実力の教育へ 森川林 20110406 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
みむめも (スパム投稿を防ぐために五十音表の「みむめも」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
知のパラダイム(15) 
コメント1~10件
「この世」と「 匿名
温かいコメントをありがとうございます。 ゆめもあの世で読ん 8/21
記事 5359番
「この世」と「 かささぎ
ゆめちゃん 亡くなられたのですね。 ゆめ日記好きでした。お 8/18
記事 5359番
昔テレビで一億 森川林
最近の研究では、ゲームは頭をよくするということが言われていま 7/17
記事 2968番
昔テレビで一億 匿名
最新の医学研究でYouTubeを筆頭としたスマホコンテンツが 7/10
記事 2968番
掛け声だけでな 森川林
 あおさん、ありがとう。  読書会、確かにいいですね。 6/12
記事 5344番
掛け声だけでな あお
読書会っていいと思います。私は2年ほど前から地域の読書会に入 6/10
記事 5344番
【合格速報】東 ののはな
東北大学へのご入学、おめでとうございます。 晴れ晴れとした 4/10
記事 5324番
【合格速報】東 とうこ
Yちゃん、ご入学おめでとうございます! 嬉しいご報告を、あ 4/10
記事 5324番
【合格速報】兵 匿名
すごい 3/26
記事 5281番
新しい教育のビ 森川林
 この勉強の目的は、どこかいい大学に入るようなことではありま 3/17
記事 5309番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
無題 はむすけ
高1の7月の読解検定で質問です。 問5と問6が全然わかりま 8/22
国語読解掲示板
2025年8月 森川林
■1.夏期講習と夏期振替  8月は夏期休業の期間が 8/22
森の掲示板
Re: 読解検 森川林
 よく読んでいるね。 「やせがまんをはったときの正三の目に 8/21
国語読解掲示板
Re: 読解検 森川林
 国語の問題は、数学のような厳密な正解というものはありません 8/12
国語読解掲示板
Re: 読解検 みきひさ
問題文にある「うれしい」と本文にある「愉快、得意な気持ち」は 8/11
国語読解掲示板
読解検定小4 みきひさ
本文7行目に「はじめ自分と同じ年くらい」と書いてあるので、は 8/11
国語読解掲示板
Re: 読解検 森川林
 易しい読解問題は、同じ内容が同じ言葉で書いてあります。 8/11
国語読解掲示板
読解検定小4 みきひさ
問題3ーBに「正三は、自分より強そうな相手にはっきりと意見が 8/11
国語読解掲示板
日本保守党 森川林
日本保守党、 反対勢力の悪口は言ってもいいけど、 少しで 8/6
森川林日記
四行詩:枠組み 森川林
 教育には枠組みが必要だ。  しかし、これまでの教育では、 8/6
森川林日記

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン