ログイン ログアウト 登録
 足あとが肥料になる家庭教育 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 2619番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/12/16
足あとが肥料になる家庭教育 as/2619.html
森川林 2016/07/12 16:15 


 「主人の足跡は畑のこやし」という言葉があります。畑をこまめに見て回ることが、植物の成長にとって最も大事な肥料となるというのです。
 子供の教育も同じです。子供の実態をこまめに見ることが、成長にとって最も大事なことなのです。
 しかし、今はその逆をいってしまう家庭も多いのです。

 よく、国語の成績が悪かったので見てくださいという相談を受けることがあります。すると、次のようなことがあるのです。
 こちらがその子の国語のテストを見て、そのテストの点数の原因を分析し、保護者に連絡しようとします。
 すると、「今から説明します」と言うのに、お母さんの中には、「子供に直接説明してください。私はそのテストをまだ見ていないので」という人がいるのです。
 結局、母親が見ていたのは、そのテストの点数だけで中身ではなかったのです。

 子供のテストに限らず、何事でも現場に直接行ってみることが大事です。
 同じことは高校生ぐらいの受験生の過去問への対応についてもよく言えます。志望校の過去問は受験の1年前にやっておくことが大事なのですが、そのことを何度説明しても受験の直前になってからやる人が多いのです。
 それは、現実に直面することに対する心理的負担があるからだと思います。
 しかし、そういう生徒に限って模擬試験のような間接的なテストではよく頑張るのです。

 子供のテストの点数だけを見て中身を見ない保護者と、過去問に取り込まず模擬試験に熱心に取り組む受験生には共通する背景があります。その背景となっているものは、至れり尽せりの学習環境です。
 分からないことがあったらすぐに聞く。できないことがあったらすぐに頼る。そういう恵まれ過ぎた学習環境が広がっているのです。
 またもうひとつの背景として考えられるのは、教育のブラックボックス化です。子供が小さい頃から通信教育の教材や学習塾などの学習で勉強をさせていると、親はだんだんと子供がどんな勉強をしているのか把握できなくなります。

 学習塾によっては、家庭では何もしなくていいというぐらい塾で勉強の面倒を見てくれるところがあります。更に、塾の最後の合否判定で過去問を使うから、それまで過去問は家庭でやらないようにという塾さえあります。

 小学生時代、このような環境で勉強してきた子は、中学でも当然同じような勉強をするようになります。中学3年生になり子供に自立心が育ち、自分で勉強したいというようになっても、今後は親が不安になってその試みを止めようとしてしまうのです。

 そしてやがて高校生になっても、大学生になっても、社会人になっても、失敗を恐れずに自分でやってみるという姿勢をなかなか持つことのできない子供が育っていくのです。

 人間の成長は一言で言えば挑戦と難読によるものです。小学生時代のまだ選択できる範囲が広い時期に直面する勇気を持たなかったことが、その後の長期間の挑戦しない人生のもとになってしまうのです。

 現在の教育は、図式的に言えば、子供と塾の関係で成り立っていて、親がそれを金銭的にバックアップする形になっています。しかし、将来の勉強は子供と親の関わりの中で行われ、塾のような専門機関がそれにアドバイスをするという形になっていくと思います。
 こういう家庭での親子関係の中で成長した子供は、自分が親になったときもその文化を引き継いでいけるようになります。

 国の教育方針の転換によってテストの傾向が変わるというようなことはこれからもあるかもしれませんが、義務教育の段階で必要なものは昔からほとんど変わらない同じ能力です。

 自分の畑は自分が見て回る。他人に見てもらい、その報告を受けるだけでは畑は荒れる。そういうことをまず自覚する必要があるのです。
 そして、このことを自覚させてくれる場所として必要なのが、心ある人とのコミュニティになっていくのだと思います。



コメント欄

sizuku 2016年9月7日 8時50分 51 
塾や予備校に行くと親も子もなぜか安心してしまいます。
「とにかく空き時間は全部来てください」と言ってくれる塾が最も面倒見のよい塾のようにも感じます。
これが教育のブラックボックス化なんですね。
最終的には誰の責任でもなくなります。


コメントフォーム
足あとが肥料になる家庭教育 森川林 20160712 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
ひふへほ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「ひふへほ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
家庭学習(92) 
コメント1~10件
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
子どもの文章力 森川林
今の受験は知識の詰め込みの勉強になっています。 考える問題 12/8
記事 5392番
作検研究。森リ 森川林
作文は、褒められても注意されても、そこに客観的な基準がなけれ 12/7
記事 5391番
「作文検定」「 森川林
 今は、AI社会の前夜。  昔は新聞やテレビが中心だった。 12/7
記事 5390番
AI時代に子ど 森川林
AI時代には、先生の役割は「教えること」ではなくなります。 12/6
記事 5389番
【合格速報】順 森川林
Rさん、合格おめでとう!! よくがんばりましたね。 受験 12/4
記事 5387番
森リン大賞9月 森川林
 従来の作文評価は、小学校低学年では「正しい表記ができている 11/9
記事 5382番
作文の学習で大 森川林
 「何でも自由に書いてごらん。いつでも褒めてあげるから」とい 11/7
記事 5381番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
3I/atla 森川林
日本にはかつて穏やかに何万年も続いた縄文文明があった。そのよ 12/12
森川林日記
Re: 11月 森川林
 これは、解き方の問題ではなく、読む力の問題です。  読解 12/5
国語読解掲示板
Re: ICレ 森川林
 ChatGPT、あまり文章うまくないなあ(笑)。  音声 12/5
森川林日記
ICレコーダと 森川林
AI時代に子どもが伸びる――全科学力クラスという新し 12/5
森川林日記
noteのペー 森川林
https://note.com/shine007 12/4
森川林日記
11月分 4  あういと
問題7と問題8が分かりません。 キーワードはわかるのですが 12/3
国語読解掲示板
Re: 森川林
 字がきれいだったのは、そのあとの日記の内容を見ると、弟が葛 11/30
国語読解掲示板
Re: 11月 森川林
 お返事遅れて失礼しました。  易しい国語問題は、「同じ言 11/30
国語読解掲示板
ともとも
小5の11月の読解検定のBの問題が誕生日だから字が綺麗だと思 11/28
国語読解掲示板
2025年11 森川林
△ムラサキシキブ ●作文検定スタート  学校 11/26
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン