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玄海原発の再開を認めれば、日本人は何も学ばなかったことになる as/1282.html
森川林 2011/06/30 22:54 



 原発の安全を一体だれがどういう根拠で保証できるというのか。
 だれにも安全が保証できないことが今回の事故でわかっていながら、
 夏場の電力を確保するという目先のことだけの動機で
 原発の再開を認める政治家がどこにいるのか。

 このような愚かな選択を認めるならば、日本人は何も学ばなかったことになるだろう。

補足説明「言葉の森と政治」(2011年7月1日追加)

 言葉の森は、作文教室です。子供たちの個性、知性、感性を育てることを目的にしています。
 だから、子供たちの未来が脅かされる可能性については、教育の分野を超えることであっても意見を明確にしたいと思っています。
 しかし、既に多くの人が述べている事柄については、それ以上自分の意見を追加するつもりはありません。それは政治団体がすることだからです。
 玄海原発については、まだほとんどの人が自分の考えを述べていないうちに、政治の意向だけが表明されました。

 政治的な力を持っている人は、議論をするよりも自分たちに都合のよい既成事実を積み重ねようとします。
 たとえそれが実行されたとしても、そこで国民が声を上げれば、その事実を黙認したことにはなりません。
 歴史は、左右に揺れ動き、時に逆流しながら進歩していきます。
 政治的な立場は人それぞれに違いますが、日本がよりよい社会になるようにオープンな議論の中でともにがんばっていきましょう。

【参考「玄海関係のニュース」】
http://news.google.co.jp/news/search?pz=1&cf=all&ned=jp&hl=ja&q=%E7%8E%84%E6%B5%B7

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日本(39) 

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facebook会員五千名以上。これから対話の教育を as/1281.html
森川林 2011/06/30 15:09 



 言葉の森のfacebook会員が五千名以上になりました。(6月30日現在5737名)

http://www.facebook.com/kotobanomori

 言葉の森のサイトの特徴は、facebookを単なるウェブサイトのひとつとしてではなく、つながりのあるメッシュのひとつとして位置づけていることです。

 これから、このfacebookを利用して、従来のインターネットではできなかった新しい教育のシステムを作っていきたいと思っています。



 今回は、その応用例のひとつとして、「対話の教育」を取り上げます。



 親子の対話というと、親と子がただお喋りをするだけのように聞こえると思います。実際、そういう面もありますが、それだけではありません。

 親子の対話は、年齢と話の質との関係で、話をすることがきわめて強力な学習の要素を持つことがあるのです。

 その最も顕著な例は、幼児期に表れます。



 0~2歳の幼児期は、まだ対話を交わすようなレベルではありません。しかし、この時期に実は、対話の核となる能力が急成長しています。

 幼児期に、親との生きた会話のかわりに、テレビやCDの音声が流れている環境で成長すると、対話の能力が阻害されるおそれがあります。おもしろくもないのに笑い声が聞こえてきたり、悲しくもないのに泣き声が聞こえてきたりすると、幼児は、対話を感情のないものとして学習してしまうのです。

 いったん最初の学習が成立すると、あとは、人間が話しかけても、その話を感情のないものとして聞くようになります。こういう子供が人間との人間らしい対話の能力を回復できる時期は、3歳ぐらいまでと言われています。

 幼児期の対話というのは、それほど重要なものなのです。



 音楽の世界では、幼児期に絶対音感を育てる方法があります。同じことが、音楽だけでなく言葉についてもあてはまります。

 幼児期は、絶対語感の育つ時期です。この時期に、親が実物とかかわりのある状態で、いろいろな話しかけを行うと、子供の思考力が大きく成長します。

 しかし、その場合に大事なのは、できるだけ実物との関連を持たせて話をするということです。その点で、絵本の読み聞かせよりも、実際に何かをきっかけにして話をすると方が話の中心になります。



 読書の場合は、それぞれの年齢に応じた発達段階があります。

 好きなものを読むのが基本と言っても、年齢相応よりも易しいものを読み続けると、逆に読む力が低下する場合があります。例えば、漫画は小学校低学年では、読む力を育てる面の方が強いのですが、高学年になると逆に読む力を低下させます。

 それは、ちょうど、やわらかいものばかり食べているとあごが丈夫にならないと同じようなことです。絵の助けを借りて読めるようなものばかり読んでいると、文字だけの文章を読む力が育ちません。

 高校生以上になると、本をよく読んでいるといっても、それが小説のような本ばかりであれば、やはり読む力はあまり伸びません。



 同じことが、対話の場合にもあてはまります。

 対話というのは、ただ親子でお喋りをすればいいというのではなく、考える喜びを育てるという面を重視して話していく必要があります。

 だから、子供が小学校低学年から中学年、高学年とだんだん成長していったときに、その子供の成長に応じて、親が考える楽しさを伝えられるような話をしていくことです。



 そういう話が自然にできる人もいます。しかし、ほとんどの人は、準備や努力なしにそういう話をすることができません。

 しかし、いったん中身のある知的な対話を親子でできるようになると、それは、その家庭の文化となり、その子供が大人になったときにも受け継がれていくようになります。

 食事中にみんなでテレビを見ながらごはんを食べるというようなこともひとつの文化です。そういう環境で育った子供は、自分が大人になり親になったときにも、やはり同じように子供たちにテレビを見せながら食事をするでしょう。

 逆に、食事中に、年齢の違う親子がそれぞれ自分なりに話をしながらごはんを食べるということができればそれもひとつの文化です。

 子供の教育のほとんどは、この家庭の文化の中で行われます。家庭の文化が崩壊している中で育った子が、学校や塾の教育で成長するというのは難しいのです。反対に、学校や社会環境がどんなに悪くても、家庭の文化さえしっかりしていれば、子供はのびのびと成長します。



 その家庭の教育文化を作ることに、facebookが活用できます。

 今、言葉の森のfacebookサイトには、「読書」や「遊び」や「季節の行事」のグループがあります。グループというのは、参加者が自由に投稿やコメントを交わせる掲示板のようなものです。

 このグループの中に、今後、課題の長文をもとに子供が作文の勉強をする際に、親子でどういう対話ができるかという情報交換のページを作っていく予定です。

 対話というのは、対話自体と目的として行うものではありません。そういう対話ができるのは、よほど趣味や関心が一致している場合ですし、その場合も毎日話せば話題はなくなってしまいます。

 作文の勉強という毎日の新しい課題があって、その課題に沿って対話をするということができれば、話題は尽きることはありませんし、何よりも考える喜びの感じられる知的な対話ができます。

 幼児期の語りかけのあと、子供が小学生になったら、その年齢に応じて自然に知的な対話が交わしていけるような発展性のあるサイトをこれから作っていきたいと思っています。



※5月からfacebookサイトの更新に取り組んでいたため、ホームページの更新が遅れていました。

 言葉の森のfacebookは、ほかのサイトにはないユニークな取り組みがいくつもあります。まだ会員になっていない方は、ぜひ言葉の森のfacebookページの会員になってくださるようお願いいたします。

http://www.facebook.com/kotobanomori

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インターネット(25) 対話(45) 

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インターネットを金本位制に戻すfacebook(フェイスブック) as/1280.html
森川林 2011/06/16 21:11 


 言葉の森では、facebook(フェイスブック)を情報提供の場としてだけでなく、コミュニケーションの場として活用していきたいと思っています。そこで、現在、行っているのは、さまざまなグループ活動です。

 これは、facebook内に、メンバー制によるグループを作り、その中で日常的に話ができるようにしていく仕組みです。グループに参加すれば、自分の関心のある分野に特化した情報でコミュニケーションを交わすことができます。

 今あるのは、36グループです。活発なところもそうでないところもありますが、自分の気が向いたときに、グループの記事を読んだり書いたりすればいいので気が楽です。

 そして、そういうゆるいつながりで参加しているグループであっても、そのグループでのやりとりは、ときどき自分のウォール(自分用の掲示板のようなもの)に表示されるので、つながりが切れてしまうことはありません。



 日本では、まだfacebookが広がっていないので、参加する個人や団体の中には、毎日きわめて頻繁に記事をアップロードするところと、ほとんどfacebookを開かず何日かに一度見にくるだけのところとの両極端があるようです。

 アメリカのようにfacebookが普及して日常的なプラットフォームになれば、1日1、2回定期的にチェックするというような使い方が多くなってくると思います。そういう無理のない生活に溶け込んだ使い方がされるようになって初めて共通のプラットフォームとして使いやすくなっていくと思います。



 さて、ここで、facebookの持つコミュニケーションの特徴を少し考えてみたいと思います。

 インターネットは、これまで一部の人や組織でなければできなかった情報発信を、誰の手でもできるように解放しました。

 その典型的なブログやyoutubeです。情報を提供するということは、それまでは新聞社やテレビ局のようなところでなければできませんでした。しかし、技術の制約とコストの制約が急速になくなった結果、今では誰もが特別の苦労なしに、自分で創造した情報を世界中の人に向けて発信できるようになりました。

 しかし、これらの情報を自由に情報を発信する人や組織が増えた結果、今度は、求めている情報がどこにあるかを探すための検索エンジンの必要性が増してきました。

 ところが、検索エンジンの利用が広がるにつれて、検索エンジンのアルゴリズム(計算方式)の裏をかくSEO対策が現れてきました。

 単に裏をかくSEO対策に対応するだけなら話は簡単です。しかし、問題は、そういうSEO対策を意識的に行っているあまり品質のよくないサイトと、SEO対策をほとんど行っていない品質のよいサイトとが混在していることです。

 そのため、現在、googleやYahoo!の検索の上位に来ているサイトは、必ずしも上位にふさわしいサイトではないという結果になってきました。

 こうなると、インターネットで何かを探す人は、検索エンジンが登場する以前の世界に戻ってしまったことになります。

 情報は年々増えていく。しかし、検索エンジンはあまり使えなくなってきた。このような状態で頼りになるのは、信頼できる個人のクチコミです。そこで、facebookのような特定の個人とつながることのできるコミュニケーションサイトが価値を持つようになってきたのです。



 googleの検索結果を上位にするためには、被リンク数をかせぐ必要があります。つまり、検索結果の上位に来るのは、ほかのサイトからリンクされている数の多いサイトだということです。

 しかし、今は匿名でいくらでもブログが作れる時代ですから、例えば、ある人がいろいろな名前で100個のブログを作り、そこから自分のサイトにリンクをはれば、一挙に100ヶ所のサイトからリンクされたホームページが登場することになります。

 そこで、このSEO対策に対応するために、検査エンジンの側が、今度は被リンク数だけでなく、中身のコンテンツの量を評価するようにしたとしても、コンテンツは、いくらでもコピー&ペーストで作ることができます。

 バーチャルな世界を前提にするかぎり、人間が作ったアルゴリズムであれば、人間が裏をかくのは容易なのです。

 ところが、facebookには、実名制というリアルな世界が結びついていました。これまでのインターネットが、金(きん)の裏づけのないマネーシステムだとすると、facebookは一昔前の金(きん)の裏づけのあるマネーシステムに戻ったというふうにも言えると思います。

 実名の裏づけのある個人が評価しているサイトは、匿名のブログから多数のリンクされているサイトよりも評価が高いはずです。(今はまだfacebookも過渡期なので、そうは言いきれない面もあると思いますが)

 こうして、多くの人が、googleやYahoo!の検索結果よりも、facebookでの知人の評価の方を信頼するようになっていったのです。

 金本位制が復活したら、金(きん)の裏づけを持たないマネーをいつまでも持っていようと思う人はいません。同じ金額が表示されているなら、金(きん)と交換できるマネーを持ちたいとだれもが思うはずです。

 facebookがこれから脚光を浴びると思われるのは、こういう時代の大きな流れが背景にあるからなのです。



 この言葉の森のホームページをごらんのみなさんも、ぜひfacebookに登録して、言葉の森のfacebookサイト、 言葉の森作文ネットワークにおいでください。


主なグループ紹介


読書の好きな子になる庭  子供を読書の好きな子になるにはどうするか、また、読書の好きな子にはそのあとどう対応していくか、ということを話します。 具体的な本の紹介などもしながら進めていきたいと思います。

親子で遊ぼうワンワンワン  主に小学生ぐらいの子供と、お父さんお母さんが楽しく遊ぶための方法を考えるグループです。 もう子供が大きくなった方も大歓迎。経験談を教えてください。 まだ子供が小さい方、まだ子供がいない方もぜひどうぞ。

教育の丘コミュ  子育て、教育、勉強に関する雑談、親睦、交流を行ってます。 お気軽にご参加ください。


高校大学入試小論文の岸  最近増えている、高校、大学の入試小論文。かなり書きにくそうなテーマも出されています。そういうテーマにどう取り組むか、という実践的な話を中心に。 実際の小論文課題を取り上げながら話をしていきたいと思います。

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ファンレター 20110623  
横浜市教育委員会、学校給食会は、放射線量も測らず小学校の給食に福島県の計画避難区域内の牛肉をたべさせています。
誠実な市議でも時間がかかっております。
中根先生の作文でなんとか横浜を説得できないでしょうか。
ヒントを下さい。

森川林 20110630  
 お返事遅れてすみませんでした。
 国民の大多数は、正しい情報があれば正しい判断をすると思います。
 しかし、今はまだ、マスメディアが情報をゆがめ、政治が判断をゆがめるという状態が続いているようです。
 その原因は、利権と脅迫です。
 そのことに、多くの人が気づきはじめたので、これから世の中は大きく変わっていくと思います。

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インターネット(25) 

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facebook(フェイスブック)の本質とその対応方法 as/1279.html
森川林 2011/06/06 22:00 


 今回は、facebookの本質を、今後の言葉の森の学習にどう結び付けるかということについて考えていきます。

 例によって、一般論から始めるので、最初は教育や作文に関係のない話が続きますが、あとの方で具体的な勉強に結びついていきます。

---------------------------------------------------------------------

 まず、私たちがいま生きている社会がどういうものかと考えると、それは、情報の封鎖が不可能になりつつある時代だということです。

 これまで、人類は、多くの戦争を経験してきました。しかし、その戦争の中で、民衆が自らの希望と意志で行った戦争などはひとつもありません。すべて、そのときどきの支配層が、自分に都合のいいシナリオを民衆に信じ込ませて、うまく戦争に誘導していっただけです。

 それは、決して未開の人類の話ではありません。第一次世界大戦も、第二次世界大戦もそうでしたし、今、世界で行われているさまざまな戦争、紛争もすべてそうだと言って差し支えないと思います。

 日本人であれ、アメリカ人であれ、中国人であれ、ロシア人であれ、それぞれの国民がひとりの個人として相手の国のひとりの個人と対立する必然性は何もありません。そういうことが理屈ではわかっていながら、これまで国家間の戦争が止められなかったのは、情報を独占しそれをゆがめて発信するマスコミが健在だったからです。

 しかし、今急速に、その情報独占の構造がゆらぎつつあります。その情報の民主化を推進しているのは、もちろんインターネットです。



 ところが、私たちはその状況を手ばなしで喜べるほど余裕のある情勢にあるわけではありません。現代の各国の支配層は、インターネットによる情報の民主化が進み自分たちのシナリオが通用しなくなる前に、最後の賭けをしようとしているのです。

 ですから、私たちの対応もそれに応じて、できるだけ速く情報の民主化を進めていくことにあります。それは、インターネットを中心に、あらゆる情報をだれもが自由に発信し、それを広範に公開する機会を広げていくことです。

 例えば、日本と中国、日本と北朝鮮、あるいは日本とアメリカを戦争状態に引きずり込みたがっているさまざまな勢力が今もあるはずです。しかし、例えば、日本人の何割かが中国人の何割かとインターネットで情報を共有できる間柄になったとしたら、両国の間で戦争を起こすことはもはや不可能です。もし両国の間に利害の対立があったとしても、その解決は話し合いによるしかありません。武力に訴えるという方法は、まともな感覚の人間ならとるはずがないのです。それをとらせたがっているのは、民衆ではなく支配層だけです。



 facebookをはじめとするインターネットのソーシャルサービスの広がりは、私たちの住むこの地球をこれ以上悪い星にしないための重要な足がかりとすることができます。そして更に、地球を悪くしないだけでなく、よくするための方法としても、これらのソーシャルサービスを使っていくことができるのです。

 インターネットは、政治的には真の民主主義を実現し、経済的には創造産業を作り出し、社会的には教育文化を生み出すことができます。今の段階で人類の力が統合できれば、あらゆる天災や人災に対応できると同時に、これまでにない新しい愛と平和と活力に満ちた社会を作り出すことができます。

 この展望をこれから実現していくのが、私たちすべての課題なのだと思います。

(つづく)

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暗唱の自習をどう進めるか as/1278.html
森川林 2011/06/02 18:09 



言葉の森が、暗唱の自習を始める前



 言葉の森が長文暗唱の自習を始める前、自習の内容は長文音読でした。(一時これに短文暗唱が加わっていた時期もありますが)

 長文音読の自習は、その後、学校などが始めるようになったため、学校の宿題と言葉の森の自習がぶつかるという問題が出てきました。

 また、長文音読は同じ文章を繰り返し読むことが大事なのですが、ただ声を出して読むことに意義があるような受け取られ方をするという問題も出てきました。

 そこで、長文音読よりも繰り返しの効果がはっきり表れ、達成感のある長文暗唱を自習の中心とするようにしました。



 この長文暗唱を始めるようになってから、子供たちが勉強を進める上で大きな変化がありました。いちばんの大きな変化は、作文力をつけるための努力の方向がわかるようになったことです。

 作文の実力というものは、一般になかなか上達しません。まだ、だれでもスランプというものがあります。

 従来の作文指導では、ただ書かせて添削するという形がほとんどだったので、子供たちが毎週いくらがんばって書いても、思ったようには上手にならないというジレンマがありました。

 ところが、この長文暗唱の自習を始めてから、作文は苦手だが毎日必ず自宅で暗唱を続けるという子が出てきました。その子供たちが、半年ほどたつと確実に作文力がついてきたのです。



家庭で暗唱の自習が続けにくいとき



 しかし、長文暗唱の自習は、長文音読の自習よりもずっとやりがいがあるにもかかわらず、やはり続けにくいものです。その理由は、ただひとつ、同じことを毎日繰り返すという勉強の仕方にあります。

 今の子供たちは、ビジュアルなメディアを利用した日々変化のある面白い教材や勉強法に慣れています。そういう子供たちにとって、毎日同じことを同じように続けるというのは、たとえそれが1日10分間であっても苦痛に感じることが多いのです。

 子供たちの実力を本当につけるのは、この同じことを繰り返すという勉強法です。目先の変わったものを次々とやっていく勉強では、確実なものはなかなか身につきません。これは、参考書や問題集の利用の仕方でも同じですが、高校入試や大学入試の勉強で実力をつける子は、例外なく同じ教材を何度も(普通は四回以上)繰り返してやっています。

 高校入試や大学入試の場合は、子供たち自身に勉強の自覚が出てくるので、この繰り返しの勉強も意義がわかれば無理なく取り組めます。しかし、小学生の場合は、この繰り返しを苦痛と感じてしまう子がほとんどなのです。



大事なのは、親の確信と忍耐



 ここで大事になってくるのは、親の確信と忍耐です。「毎日10分、暗唱の自習をしなさい」と、親や先生が何度か言うだけで、それを毎日しっかり続けられるような子はひとりもいません。人間は、創造性に富んだ生き物なので、同じことを繰り返すというのはすぐに飽きるのです。

 子供が毎日の自習に飽きて嫌がったときに、確信をもって続けさせられる親はあまり多くありません。というのは、暗唱の自習というのは、親自身もやったことがないので半分不安なところがあるからです。子供があまり嫌がると、これでいいのかと不安になってしまうのです。

 これと反対なのが九九です。九九を覚えることを子供がどれだけ嫌がっても、親は確信をもって続けさせることができます。九九は、親自身も子供のころに覚えた経験があり、やればだれでも例外なくできるようになることがわかっているので確信を持てるからです。

 暗唱の自習で、もうひとつ大変なのは、毎日、毎日親が口を酸っぱくして言わなければ続けられないということです。言葉の森の暗唱は、毎日10分間の練習でだれでも完璧に1ヶ月で1000字近くをよどみなく暗唱できるようになりますが、これが毎日ではなく、2日に1回とか、3日に1回ということになると、完璧とは言えない暗唱になってしまいます。そして、一応できたとしても、不完全な暗唱というのは、子供にとってはあまり達成感がありません。

 だから、暗唱の自習は毎日やることが大事なのですが、毎日できるかどうかの責任の半分以上は、親が毎日ひとこと声をかけてあげられるかどうかにあります。ここが、親の忍耐が必要なところです。

 また、小学校高学年や中高生の場合は、毎日一定の時間を確保するということ自体が難しくなるので、これは子供の生活状況の問題としてまた別に考える必要が出てきます。



無理なく毎日続けさせられればそれが家庭の文化になる



 勉強のさせ方の上手な親は、

1、子供に苦痛を感じさせず、
2、親もほとんど負担にならず、
3、毎日同じことを同じように続けさせて、
4、それを明るく楽しく褒めるだけ

という勉強のさせ方ができます。

 ちょうど、こんな感じです。

親「あ、今日の暗唱の時間よ」
子「はあい」
子(素直に暗唱の自習をする)
親「わあ、すごい。よく上手に読めるね」



 反対の場合は、こんな感じになると思います。

親「あ、まだ暗唱やっていないでしょう」
子「えー、やりたくない」
親「やらなきゃだめでしょ」(と、小言を言ったり、叱ったりする)
子(しぶしぶ暗唱の自習をする)
親「もっとちゃんと読みなさい」(などと注意するか、読み終えたあとも褒めない)



 こういう家庭での学習スタイルは、一種の家庭の文化ですから、一朝一夕にできるものではありません。そして、いったんできた文化を作りかえるというのは、とても大変なことなのです。

 だから、小学校1、2年生のころに、親が、子供にほとんど強制と感じさせない形で毎日の自習をする習慣をつけることができれば、その後の家庭学習はすべてうまくいきます。

 逆に、子供に強制を感じさせたり、毎日ということが徹底できない場合は、その後の家庭学習はなかなかうまく進みません。

 では、既に、子供に毎日の自習を続けさせることに困難を感じている家庭の場合はどうしたらいいのでしょうか。



暗唱が難しい場合は、読書の自習に切り替える



 小学校低中学年の勉強でいちばん大事なことは、何を勉強するかということではなく、どう勉強するかということです。

 毎日同じことを同じようにやるという勉強の仕方を定着させることが大事で、何をするかということはそのあとに出てくる問題です。

 そして、何をするかということについて、最も大事なのは、解く勉強をするのではなく、読む勉強をするということです。特に、国語の勉強については、読む時間を確保することが最優先です。

 暗唱の自習も読む勉強ですが、暗唱を毎日続けるというのは難度が高い勉強ですから、暗唱を続けにくい場合は、暗唱はやめて、読書という勉強に切り替えていくのです。

 子供が嫌がったり、親が毎日叱ったりしながら続けるような勉強は、どのような勉強であっても、プラスの面よりもマイナスの面の方が大きくなります。叱ってやらせるぐらいなら、やらない方がやはりいいのです。

 そのかわり、毎日の読書であれば、難度はずっと低くなるので、毎日続けさせることももっと簡単にできるようになります。

 これは、毎日一定の時間を確保しにくくなった小学校高学年や中高生の場合も同じです。また、小学校高学年以上の場合は、ただの読書のかわりに問題集読書に取り組むという自習に切り替えることもできます。



毎日の読書の続けさせ方



 読書や問題集読書の方が自習として簡単だと言っても、やはり毎日続けさせるには、親の確信と忍耐が必要になってきます。

 確信というのは、読む時間を確保することが、国語力、思考力、表現力をつける最も確実な土台になるという確信です。

 忍耐というのは、やはり毎日同じように、本を読ませるためにひとこと声をかけるということです。

 ここで大事なのは、毎日欠かさずにということです。ときどき読むとか、読みたいときに読むとか、忙しいときは読まないというのでは、家庭の文化にはなりません。

 読む本は、絵のスペースの方が字のスペースよりも多くないということを基準にするといいでしょう。具体的には、絵本でないこと、漫画でないこと、学習漫画でないこと、図鑑や雑誌でないことです。

 しかし、それは、絵本や漫画や学習漫画を読まないということではありません。どんなものでも読んでいいのですが、毎日の読書の自習として読むのは普通の本だということです。

 本の内容で、親のほとんどだれもが共通して陥りやすい失敗は、難しいものや有名なものを読ませようとすることです。

 読書で大事なことは、何を読むかということよりも、毎日読むということですから、子供が興味を持って読めるものを読ませることが大事です。

 そして、ときどき、「よく本を読むね」とか「読書が好きなんだね」などと声をかけてあげ、子供自身が自分は読書好きなのだという自覚を自然に持たせていくのです。



facebookで相談を



 トルストイの「アンナ・カレーニナ」の冒頭に、「幸せな家庭はみんな似通っているが、 不幸な家庭はそれぞれに不幸である」という言葉があります。同じように、「勉強のうまくできる家庭は、どこも似通っているが、勉強のうまくできない家庭は、それぞれにできない事情がある」ということが言えるようです。

 このときに大事なのが、個別の相談です。一般論としての自習の意義や方法はだれでもわかります。しかし、自分のうちの子にはできないというとき、そこにはその家庭の独特の事情ががあります。

 言葉の森では、現在facebookでさまざまなグループを作っています。自習のさせ方だけに限らず、読書のさせ方、読解問題の解き方、小論文試験の取り組み方など、多くのグループがあります。

 グループ参加には、何も制約がありませんので、ご希望の方はぜひ見学においでください。

http://www.facebook.com/kotobanomori

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手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習