◆◆勉強は成績を良くするが、読書は頭を良くする
私の基本的な考え方は、「勉強は成績を良くするが、読書は頭を良くする」というものです。
もちろん、勉強は成績を良くするだけにとどまらず、将来仕事するときも勉強したことが役に立ちます。
また一方、読書は頭を良くするとか心を豊かにするとかいう面もありますが、時間つぶしの読書のようなものもあります。
しかし、そういういろいろな但し書きも含めて、すべてまとめて一言で言うと、勉強は成績を良くするが、読書は頭を良くする、ということが言えると思っているのです。
◆◆読書の効果は学年が上がるほど現れてくる
読書をしていることは、そのときの勉強の成績にすぐ結びつくわけではありません。
成績はもちろん、勉強している子の方が良くなるのが普通です。
しかし、学年が上がるにつれて、勉強をよくしている子よりも、読書をよくしている子の方が成績の上がる度合いが大きくなることがあるのです。
これは、私のこれまでの経験から言っていることでしたが、実際に大規模な調査の結果、読書をしている子は成績の伸び方が大きい傾向があるということがわかってきました。
さらに、読書は、将来の成績に結びつくだけでなく、将来の人生を変える力も持っています。
だから、読書教育を見直すことが大事なのです。
◆◆作文教室を始めたころから考えていた読書教育
私が昔作文教室を始めたとき、本当は、その教室を読書作文教室にしたいと思っていました。
しかし、当時は作文の指導法も読書の指導法も参考にできるようなものはなかったので、自分なりに作文の指導法を考えました。
そのため、読書の指導法まで考える余裕はありませんでした。
読書について、私が子供たちに言っていたことは、
1.なるべく難しい本を読むこと。
2.同じ本を繰り返して読むような読み方が読書力をつける。
3.小学生時代は楽しい本、面白い本を中心にたっぷり読むことが大事。
ということでした。
◆◆AIによって可能になった新しい読書指導
しかし、ここに来て、AIを利用することによって読書指導ができる展望を持てることがわかってきました。
それが、今計画している推薦図書検定という仕組みです。
◆◆小学生から高校生までの推薦図書を選ぶ
推薦図書検定は次のように行います。
まず、言葉の森が、小学生から高校生までの生徒が読むのにふさわしい本のリストを作ります。
このリストは、現在200冊ぐらいになっています。
日本の生徒だけでなく、海外の生徒もその本を入手して読めるように、Kindle化された本を中心にしています。
◆◆○×問題と記述問題で読書のきっかけを作る
推薦図書検定は、それぞれの本について、○×問題と記述問題があります。
○×問題は、1冊について8問です。
これは、本を読んでいれば大体わかるというレベルの問題です。
記述問題は、2問あります。
1つは、印象に残ったこととその感想を60字以上、100字以内で書くことです。
60字から100字という字数を指定しているのは、将来、記述の試験を受けるときに、字数内に収めるという感覚をつかんでもらうためです。
もう1つは、「もし……だったら」などと想像したことで、自由に自分の考えを書くことです。
これは60字以上で上限はありません。
人によってはたっぷり書きたいことがある人もいるので、それを自由に書いてもらうという記述問題です。
この○×問題と記述問題の内容に合わせて、AIが生徒の解答について200字の講評を書きます。
◆◆点数ではなく読書を進めることが目的
○×問題も記述問題も、点数をつけることが目的ではありません。
問題を解くという目標を持つことを、読書を進めるきっかけにすることが目的です。
◆◆読書の記録が一生のアルバムになる
この推薦図書検定の結果は蓄積されるので、長年続けていると、自分が小学生から高校生までどんな本を読み、どんな感想を書いていたのかという記録が残ります。
これはその生徒の読書生活の一種のアルバムになります。
紙の本は絶版になることがありますが、Kindle化された本はずっと継続するので、その生徒が成長して親になったときに、自分の子供に読んだ本を見せてあげるというようなこともできます。
これが推薦図書検定の仕組みです。
◆◆今の子供たちの読書が抱える二つの問題
さて、今の子供たちの読書には、2つ問題点があります。
第一は、やさしい本、楽しい本ばかりを読んで、それ以上先に進まないことが多いという問題です。
もちろん、小学生時代はやさしい本、面白い本、楽しい本をたっぷり読むことが大事なので、それはそれでいいのですが、そこから先に進まない子も多いのです。
やさしい本、面白い本を読み続けていると、勉強が忙しくなるにつれて読書をやめてしまうようになります。
第二は、中学生や高校生になると、読書をしない人が増えることです。
中学生・高校生時代は勉強が忙しいというのはわかりますが、勉強が忙しいという理由で本を読まなくなった人が、受験が終わったあと大学生になってから本を読むかというとそうでもないことも多いのです。
◆◆情報を得るだけでなく考え方の骨組みを作る
知識や情報を得るだけならば、インターネットも、YouTubeも、AIも使えます。
しかし、自分の考え方の骨組みを作るというのは、やはり読書を通して行う必要があります。
◆◆成長に合わせて「読む楽しさ」から「考える楽しさ」へ
推薦図書検定は、小学生時代は人気のある楽しい本を中心にします。
中学生になると、考える要素のある楽しい本にします。
高校生になると、内容そのものが高度になるので、考える楽しさを得られる本というように発展させていきます。
推薦図書検定のリストには多くの本がありますが、本当に大事な本はもっと絞られたものになります。
かつては、四書五経のような定番となる本がある時代がありました。
これからの子供たちの読書生活も、ある一定の推薦図書を基準に読むという方向に進んでいくと思います。
◆◆自由な読書だけでは続きにくい
さて、この推薦図書検定の進め方ですが、図書リストを元にして自由に本を読んでくださいと言っても、やり続ける人はまずいません。
自由な読書であれば、毎日、本を読んでいる人は多いと思います。
しかし、中学生、高校生の読書へと発展する方向性を持った読書については、ある程度その読書を指導する道を作る必要があります。
それが、これから企画する推薦図書クラスという新しいオンラインクラスです。
◆◆推薦図書クラスという新しいオンラインクラス
現在の作文クラスや全科学力クラスのように、ある特定の曜日と時間を決めたオンラインクラスを作り、生徒にそこに参加してもらうという形です。
推薦図書クラスでは、最初に推薦図書のリストの本の紹介文を読んだり、その本の問題を見たりして、自分が興味を持てそうな本を決めます。
すでに読んだことのある本でもかまいません。
その本の検定問題を見ていいのは、点数をつけることが目的ではなく、問題を見て本の内容を推測し、その本を読むきっかけを作るためです。
そして、自分の読む本が決まったら、その本をKindleで用意しても、紙の本を購入しても、図書館などで借りてもいいですから、家庭でその本を読んでいきます。
◆◆みんなで集まって本を読む時間を作る
小学生でしたら本1冊を1日で読み終える人もいるでしょうが、小学校高学年、中学生、高校生の場合は1週間ぐらいかかる本が多いと思います。
そこで、家で読むだけでなく、推薦図書クラスに参加して本を読む時間を確保します。
推薦図書クラスは4人から5人のクラスで、みんなが集まって本を読むので、授業のあとに互いの読書紹介や感想を話す時間も作ります。
◆◆365日24時間使えるオンライン自習室
推薦図書クラスの教室となるZoomは、自習室のZoomとし、担当の先生は自習室の中のブレイクアウトルームのひとつをそのクラスに決めます。
そして、先生も生徒も指定したブレイクアウトルームに入って、読書をします。
読書だけでなく、勉強をしてもかまいません。
自習室のZoomは、365日、24時間、100ルームのブレイクアウトルームを利用できるようにしているので、自分の参加するクラスの授業がないときでも、自由に自習室のメインルームに入って読書や勉強をすることができます。
メインルームで、他の生徒と一緒に読書をしたり勉強をしたりすることもできるし、自分だけ空いているブレイクアウトルームに入ってひとりで読書や勉強をすることもできます。
自習室の利用は自由ですので、誰にことわることもなくいつでも使えます。
ただし、マイクはオフにしておくこと、すでにほかの人がいるブレイクアウトルームには入らないことが、基本のルールです。
気の合った友達と一緒に同じルームで勉強したり話をしたりするのはかまいません。
◆◆少し難しい本を読むための「きっかけ」を作る
何かを始めるときには、きっかけが必要です。
作文には、大きなきっかけが必要です。
苦手な勉強をするときも、それなりのきっかけが必要です。
それらに比べると、読書はあまりきっかけを必要としません。
しかし、それでも、少しむずかしい本を読むときは、ある程度のきっかけが必要になることがあります。
そのときに、自習室のZoom会場に入ることを1つのきっかけ作りにしていくといいのです。
◆◆推薦図書クラスの受講料と参加方法
推薦図書クラスの受講料は、月4回で月額3200円です。
推薦図書クラスにはそれぞれ担当の先生がいるので、そのクラスの曜日時刻に間に合わない場合や欠席する場合は、事前に連絡するようにしてください。
◆◆日本だけでなく海外にも広げる読書教育
私は、この推薦図書クラスを言葉の森の中だけでなく、子供たちの読書教育に関心のある多くの人に取り組んでいただきたいと思っています。
Kindleの本を中心にしたオンラインクラスなので、日本だけでなく海外にいる生徒も参加できるオンラインクラスです。
勉強する習慣とともに、本を読む習慣を子供たちの生活の中に作ることが、これからの教育には必要です。
日本の子供たちの読書教育を充実させていきたいと思っています。
(注)推薦図書クラスは、読書の授業と推薦図書検定をセットにしたクラスです。
推薦図書検定は、クラスに参加していなくても受けられます。
◆◆確認テストで見える「読みの深さ」と「読みの浅さ」
全科学力クラスや国語読解クラスでは、問題集読書の確認を行っています。
その子がそれまでに読んだページの中から、任意のページを取り出して、どんなことが書いてあったかを聞くのです。
その時に元の文章をちらっと見ただけで、すぐに詳しく答えられる子がいます。
その一方で、元の文章を見ながら、切れ切れに読んだことをつなげて答える子もいます。
この違いが読みの深さと読みの浅さです。
◆◆浅い読みを深めるための「繰り返し読書」と学年別のコツ
読みが浅いというのは、読み方が甘いということです。
内容を理解して読むというよりも、表面の文字を追ってわかった気になるような読み方をしているということです。
だから、問題集読書は1回読んで終わりにするのでなく、繰り返し何回も読む必要があるのです。
繰り返し読むためには、小中学生の場合は黙読ではなく、小さな声でいいので音読をする必要があります。
高校生は勉強の自覚があるので、黙読でも繰り返し読めば頭に入ります。
◆◆家庭でのチェックと「褒めて待つ」教育法
この読みのチェックは家庭でもできます。
ただし、大事なことは、子供の読み方をチェックした後、必ず褒めるだけにすることです。
子供が正しく説明できなかったとしても、「よく読んでいるね」と褒めるだけでいいのです。
これを繰り返すことによって、子供は自然に、内容をよく読んでおこうと思うようになります。
子供の教育は、注意をしてすぐに直そうとするやり方ではなく、褒めることによって長く継続して自然にできるようになるのを待つやり方で取り組むことです。
◆◆継続がもたらす変化――まずは半年続けてみる
その待つ期間というのは、私の経験では6ヶ月です。
毎日同じようなことを繰り返していても、半年経つと必ず変わってきます。
多くの人は2日か3日やっただけで成果が出ないと諦めてしまうことが多いのですが、成果が出ないように見えることを6ヶ月続けていくことが大事なのです。
続けていると、いつの間にかうまくできるようになっていた、という日が来ます。
◆◆「精読とは復読のこと」――繰り返すことで身につく読解力の土台
「精読とは復読のこと」という言葉があります。
深く読むとは、じっくり読むことではなく、繰り返し読むことです。
だからこそ、褒めて読ませ続けることが大事なのです。
繰り返し読むことによって、読んだ文章に書かれていることがわかるだけでなく、その文章に使われている語彙が自分の身体の一部のようになってきます。
繰り返し同じ文章を読んでいると、自分が何かの文章を書く際にも、そこで使われている語彙や文体が自然に出てくるようになります。
読む力がつくと、初めて見る文章についても、始めのいくつかの文を読んだだけで、全体にどんなことが書かれているか推測できるようになります。
これが読解力の土台なのです。
※言葉の森のnoteの記事もごらんください。
https://note.com/shine007
◆◆おすすめ図書と読書記録の現状
おすすめ図書の6月分は、
https://www.mori7.com/teraon/dsax.php?nenn=2026&tuki=06
です。
各学年の「おすすめ図書」の下の方に、その月の全員の読書記録が載っています。
それを見ると、毎週、読書記録をしっかりつけている子がたくさんいることがわかります。
◆◆読書記録が人生の貴重な記録になる
言葉の森が読書記録を始めてから、まだ3年しか経っていませんが、その間ずっと読書記録をつけていた人にとっては、この読書記録が、大げさに言えば自分の人生の貴重な記録になっていると思います。
将来、その子がお父さんやお母さんになったときに、その子供から「昔はどんな本を読んでいたの」と聞かれたとき、その読書リストを見せてあげると、子供はお父さんやお母さんを尊敬すると思います。
以前は、年数が経つと絶版になってしまう本もありましたが、今はKindle化されている本が増えているので、お父さんやお母さんが読んだ本と同じものを、将来子供が読むようになることもあるでしょう。
◆◆大学入試での読書記録の活用
次は、私が想像している話です。
現在、大学入試では総合型選抜入試や推薦入試が増えています。
そこで、入試の合否の基準になるのは、そのときの一発勝負の試験よりも、高校時代にどういう態度で勉強してきたか、成績だけでなく、出席日数や部活動その中で担った役割など、そういう自分の経歴です。
志望理由書には、自己アピールを書く欄があることが多いですが、そこに自分の読書記録を書くことができます。
例えば、小学3年生から毎週読書記録をつけていた人は、
「私は小学3年生の時から、毎週読書記録をつけていて、今年で○年目になり、○冊読んだ記録が残っています。」
などと書いて提出することができます。
私が調査書を評価する立場の先生であったら、その生徒を優先的に合格候補とします。
なぜなら、読書というのは、テストがあるから勉強するとか宿題があるから勉強するとかいった他律的なものでなく、その生徒の個性と自律的な向上心の表れだからです。
生徒の皆さんは、オンラインクラスで毎週読書記録をつける機会があるので、その機会を利用して自分の読んだ本を記録していくといいと思います。
◆◆読書と学力の関係
全国学校図書館協議会が発表した「学校読書調査」によると、高校生の不読率(1か月間に読んだ本が0冊の割合)は55.7%です。
一方、読書をしている人は学力全体が向上するという調査結果もあります。
(
東洋経済オンラインのページより)
私がいつも言っているのは、小学生は勉強よりも読書が大事、中学生高校生は勉強と同じくらい読書が大事ということです。
読書さえしていれば、勉強は短期間でできるようになります。
しかし、勉強がいくらできても、読書の蓄積を後から取り返すことはなかなかできません。
だから小学生のうちは、勉強よりも読書が大事だと考えるくらいでちょうどいいのです。
◆◆歴史と実例が示す読書の力
明治維新の際、日本が短期間で欧米の科学技術に追いつくことができたのは、その当時の若者が音読・暗唱と読書をしていたからです。
だから、初めて目にする外国語や初めて目にする数学や理科や医学の考え方も、短期間で吸収することができたのです。
「中学生の自宅学習法」を書いた内藤勝之さんは、幼いころにかかった病気のために小・中学校はほとんど行けず、家で本を読んでいたそうです。
やがて、学校に行けるようになったときに、お父さんが急ごしらえで教えてくれたのが四則計算でした。
それぐらい、勉強的なこととは無縁でしたが、その後、京都大学に進学しました。
読む力があれば、知識的な勉強は短期間で身につくということです。
◆◆読書は頭を良くする
私が常々思っているのは、勉強は成績を良くするが、読書は頭を良くするということです。
勉強は知識を身につけるものですが、読書はその知識を受け入れる土台を作るものです。
生徒の皆さんは、ぜひ、これからも毎週の読書記録をつけていってください。
※言葉の森のnoteの記事もごらんください。
https://note.com/shine007