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頭をよくする日本語を世界の共通語に as/677.html
森川林 2009/11/10 21:21 

 △11月3日文化の日の朝

 未来の世界における日本の役割を考えると、次のようなことがわかります。第一に、軍事力ではアメリカがトップの位置を占め続けるでしょう。第二に、経済力では、工業生産の分野での覇権は次第に中国やインドに移行するでしょう。また、金融の分野では、欧米に一日の長があるという状態が今後も続くでしょう。
 このような中で日本が優位に立てる分野は、知力、技術力、精神力など文化力といわれるもので、この文化力が政治力や経済力に波及する未来というものを考えることができます。

 日本文化のすぐれている点としてよく取り上げられるものに次のようなものがあります。江戸時代の識字率は当時の世界の最高水準の70-80%を達成していました。戦後、世界でもまれな一億総中流化という経済文化状況が生まれました。現在、格差は拡大したと言われながら大衆の知的水準の高さは世界の中でも際立っています。それは例えば、ごみ収集の方法の徹底などというところに表れています。また、世界の先進国の中で最も治安がよいというのも日本の長所としてよく言われるところです。一言で言えば、すぐれた庶民、一般大衆がいるというのが日本文化の特徴なのです。

 この原因は、実は日本語にあります。よく言われる例ですが、日本語の特徴として左脳で自然の音を聞くということが挙げられます。このため日本語では擬声語や擬態語が発達し、自然を人間化して見るという見方が生まれました。この自然の人間化が、自然との一体感や自然を大切にする気持ちを生み出したと考えられます。
 しかしそれ以上に大事なのが、漢字とかなが混在している日本語という特徴です。漢字が表意文字で主に絵として描けるような名詞を表すのに対し、かなは表音文字で主に動きや関係を示す助詞や助動詞を表すという役割分担が日本語では自然に行われています。
 このことは一方では、日本語の複雑さの大きな要因になっています。一つの言葉に音読みと訓読みの両方があり、その音読みと訓読みにもまた多様な読み方があります。例えば「下」という一つの文字でも、「か」「げ」「した」「しも」「さ(がる)」など多くの読み方があります。しかし、他方では、この漢字かな混じりで多様な音読み訓読みという性格が、あとに述べるように日本語のすぐれた特徴にもなっているのです。

 世界中のほとんどの言語は、英語に代表されるような表音文字の言語です。表音文字では、言葉が意味を示さないので、視覚の助けを借りて一目で理解するというようなことが得意ではありません。そのため、表音文字では論理の展開で物事を理解するという方法が主流になりました。
 欧米流の三段論法では、A→BでB→CならばA→Cである、という理解の仕方をします。しかし、視覚の助けを借りられる表意文字の日本語では、A即Cというような見方を一瞬ですることができます。
 「武士道とは死ぬことと見つけたり」(葉隠)というような言い方は、日本人ならば、その意見に対する同意不同意を別にすればそのまま理解することができます。しかし、表音文字の欧米人は、その意見に対して「WHY」という質問をするでしょう。
 デカルトは、「我思う故に我あり」と言いました。葉隠の著者は、「武士道とは」に「WHY」と聞かれても途方に暮れるでしょう。「見つけたり」と言っているものに「WHY」と聞かれても答えようがないからです。しかし、デカルトは、「我思う」に「WHY」と聞かれれば、その理由をこと細かに説明したはずです。その説明が「方法序説」という著書でもあったのです。
 物事を論理の展開を通してでなければ理解できない表音文字に対して、表意文字は物事を視覚的、空間的に一目で理解するという長所を持っています。これが、日本人が、理解力の点で欧米人よりもすぐれていたという一つの背景になっていたのです。
 更に、世界の他の言語に比べて音素数が少ない日本語は同音異義語が多く、耳で話を聞いているときでも常に視覚的に言葉を思い浮かべなければなりません。それが日本人の視覚的発想の訓練にもなりました。言葉そのものではなく、思いやりや察し合いという文脈の中で言葉を理解することが得意なのも、この日本語の特徴によるものだと考えられます。

 では、表意文字の本家である中国語はどうなのでしょうか。中国語は、全部が漢字なので、かなのような表音文字のある日本語に比べて漢字を操作しにくいという面があります。日本語では、助詞や助動詞のかながニュアンスの違いを表します。「国破れて山河あり」は、中国語では「国破山河在」です。これをもっと日本語的に言うならば、「国は破れてしまって山河がある」と詠嘆調に言うこともできますし、「国が破れても山河はある」と意志的に言うこともできます。日本語が、かなという水の上に漢字というタイルを浮かべているような水性の言語だとすると、中国語は、漢字のタイルがびっしりと敷き詰められた土性の言語だと言うことができます。このため、中国語はタイルを操作することが難しく、自由な発想を広げることが日本語に比べて行いにくいのです。このことは、中国語でダジャレというものがあまりないというところにも表れています。日本語は、全部が表意文字の中国語語に比べると、想像力に富んでいるということが特徴になっているのです。
 日本語は、すべてが表意文字の欧米語に比べると理解力の点ですぐれていて、すべて表意文字の中国語に比べると想像力の点ですぐれている。これがこれまでだれも指摘しなかった日本語の秘密です。
 理解力と想像力ですぐれているという日本語の特徴は、逆に言えば、漢字かなまじり文という複雑さと裏腹の関係にあります。漢字かなまじりの複雑さをわかりやすく整理して、日本語を世界の人にとって学びやすい言語にすれば、それは、世界の文化にとって大きな朗報となるに違いありません。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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パソコン入力から手書きの時代へ as/676.html
森川林 2009/11/09 22:11 


 言葉の森の通学の小学校5年生以上の生徒は、もう何年も前からほぼ全員がパソコンで作文を書いています。また、通信でも、かなりの生徒がパソコンで作文を書くようになりました。
 しかし、次に来るのは、新しい手書きの時代だと思います。それはなぜでしょうか。最大の理由は、手書きの方が、文章と人間が一体化しているからです。書く内容が高度で微妙になるほど、その差ははっきりしてきます。
 パソコン入力の一番の問題点は、変換する必要があることです。それが、道具と人間の間に隙間を生み出します。理想の道具は、身体と一体化したものでなければなりません。
 もう一つの理由は、パソコン入力は1次元が中心になっていることです。それに対して手書きは2次元です。つまり、構成図を書くような図形的な書き方も手書きであればそのまま対応できます。
 第三の理由は、手書きは、アナログ的なところに個性が出せるということです。
 確かに、文章には、読む人を意識した読みやすさという要素もあります。パソコン入力の最大の利点は、デジタル化されたテキストという普遍性を持っているということです。この普遍性の故に、編集が可能になり、他人との共有が可能になり、検索が可能になっています。
 では、将来手書きはどういう方向に進んでいくのでしょうか。一つは草書のような速書きの方向です。もう一つは、OCR化しやすい文字の書き方という方向です。
 未来のOCRは文脈解析能力を持つので、手書きの草書体の文字もすぐに活字化されるというようになっていくと思われます。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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記事 675番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
技術の教育から心の教育へ as/675.html
森川林 2009/11/08 21:15 


 作文指導は従来、主観的感覚的に行われている面が強くありました。例えば、指導や評価の方法でも、「自分らしく」「心をこめて」「深く考えて」などというあいまいな言葉がよく使われていました。

 それに対して言葉の森は、客観的合理的な作文指導を心がけててきました。その指導の技術が、一段落しつつある今、改めて心の教育に取り組む必要があると考えています。


 作文に限らずあらゆる教育に言えることですが、同じように教えても、生徒の出来不出来というものは常にあります。先生は、それをやむを得ないことと考えて点数をつけます。同じように教えても、90点の子もいれば、60点の子もいれば、30点の子もいます。

 教育を技術的なものと考えると、人間の能力には差があることは当然のように見えます。確かに、2、3年あるいは4、5年という短い期間で言えば、能力の差はすぐには埋まるようには思えません。


 しかし、20年、30年、あるいはもっと長い期間を考えてみると、どの子もいつか自分の人生で100点をつけられるようなときが来ます。小学生のときに30点しかとれなかったことも、その100点の一部になるような時期が来るのです。

 その可能性に確信を持つことが、心の教育です。それは、生徒が学ぶことを当然の前提として点数をつける教育ではなく、何のために学ぶのか、あるいは何のために教えるのかを常に自問する教育でもあると思います。

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記事 674番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
国語力をつける問題集読書の方法 as/674.html
森川林 2009/11/07 21:27 


 よく「国語の成績を上げるにはどうすればいいのですか」と聞く人に、問題集の問題文を繰り返し読む問題集読書の方法を説明してきました。しかし、この方法を実行できる人はあまり多くいませんでした。単純すぎて物足りない勉強法だからです。また、成果が形として残らない勉強でもあるからです。
 やったあとが形に残らないので、始めてはみたものの結局しばらくやって飽きてしまい、続かなくなってしまいます。そして、問題集を解くような形に残る勉強をしてしまうのです。
 問題集を解く勉強がよくないわけではありません。しかし、解く勉強は時間がかかります。問題集を解く時間をただ読むだけの時間にあてれば、5倍から10倍も勉強がはかどります。

 そこで手順をもっとわかりやすくして、先生のチェックが入る方法にすれば、この問題集読書も実行しやすいのではないかと考えました。
 方法は、まず昨年の全国の入試問題集を買ってもらいます。国語という教科は英語、数学などの他の教科と違って、高校1年生でも大学入試の問題文を読むことができます。同様に、中学1年生でも高校入試の問題文を読むことができ、小学校5年生でも中学入試の問題文を読むことができます。
 用意した問題集をまずバラバラにします。これは1冊丸ごとのまま利用すると、結局問題集が重くて持ち運べないからです。その結果、問題集を家に置いていくことになります。すると、勉強の方法は本人任せになり、実行できなくなってしまいます。
 買ってきた問題集を1ページごとバラバラにして、それを3枚ぐらいにまとめてホッチキスなどでとじます。3枚の中には、だいたい2、3編の問題文が載っているので、全部黙読で読むと10分ぐらいかかります。毎日10分読んで1週間読んだ分を教室に持ってきます。(通信の場合は、別のやり方になります)。先生が検印を押して返却します。そして、1年間の間にどのページも4回以上繰り返して読むといいう仕組みにしていきます。(まとめるのは1日3枚でなく、1週間20枚という形でもかまいません)
 文章を読むときに大事なことは、面白いところ、よくわかったところに線を引くことです。
 そして、線を引きながら読むだけでなく、その読んだ文章の中の一つを選んで、4行で感想を書くという練習をすれば更に深い読み方ができます。通信の場合は、この4行の感想を提出するという形にすることができます。
 小学4年生までの生徒は、入試問題の問題集読書をするのではなく、普通の読書をしていきます。この読書は、付箋をはりながらの読書で、読み終えたあとにやはり4行で感想を書きます。先生には、その感想を提出するという形になります。
 現在、通信でも実行きる方法を考えているところです。

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反復学習の問題点と対策(漫画版) as/673.html
森川林 2009/11/04 14:50 
 反復学習が問題になるのは、それがまだ不徹底のときと、反復そのものが自己目的化してしまうときです。
 消化された反復学習は、知識が自分の手足のように自然に使えるようになるという点で理解や思考の土台となります。
 しかし、言葉と体験に関しては、言葉が先行しすぎないように常に豊かな体験で言葉を補っていく必要があります。

お菓子を分ける


さわやかな朝

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