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記事 1024番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/29
中国から離れ、日本の文化創造に目を向けよう as/1024.html
森川林 2010/09/25 20:27 



 日本は、敗戦後の復興を、国内産業の保護、輸出産業の育成という方向で行ってきました。それが、やがて日本と欧米との貿易摩擦を生み出すまでに成功を収めてきました。

 この成功体験に目をくらまされているのが、現在の日本の姿です。

 アメリカが金融資本主義の行き過ぎで失速し、日本からの輸出を受け入れられなくなってきたとき、日本の輸出産業は、アメリカ以外の新たな輸出先を探しました。

 ただし、アメリカの輸入代金は、日本が米国債という形でアメリカに貸したお金でしたから、本当は日本は輸出に力を入れるよりも、もっと国内を豊かにすることに力を入れていけばよかったのです。

 さて、日本が輸出先を新たに見つけようとしたときに、最初に目についたのが、発展途上の中国の14億の人口でした。

 しかし、これが実は、日本にとって成功体験の罠になろうとしているのです。

 アメリカでの消費は、その先進国という性格上、自動車にしても家電製品にしても、比較的新しいものや高級なものに重点が置かれてきました。

 中国での消費は、その発展途上国という性格から、既にある古い製品で安いものを中心に需要される傾向があります。

 ここで、日本の企業が何しろ売れればいいと考えて生産をすると、日本の産業が、中国の消費の性格から変質する可能性があります。

 顧客が高度な審美眼を持ち、製品に高性能を要求するものであれば、生産者は、そういう生産に適応しようとします。顧客が、多少粗悪品でも安ければいいと考えるならば、生産者はやはりそういう生産になじんでいきます。

 例えば、観光客用の料理店を考えてみると、その店に来る人が味と雰囲気にうるさければ、洗練された料理を作るために、人にも材料にも配慮しなければなりません。しかし、店に来る客の多くが、味や雰囲気よりも安さやボリュームを要求するならば、その店は、腕のいい料理人よりも安いアルバイトを使い、いい材料の調達よりも何しろ安いものを使うという体制になります。

 そして、いったんそういう生産体制になると、ほかにも同じような安さとボリュームの店が次々とできるようになったときに、元の洗練された料理店に戻ろうとしても戻れなくなります。

 中国での需要は、そういう性格を持っています。需要に合わせて最初は売れても、やがてそういう製品は中国でも同じように生産できるようになります。そのときに、元の高度な製品作りに戻ろうと思っても、そのための人材やノウハウがなくなっている可能性があるのです。

 大きなマーケットに目を奪われて、どこでも作れるものをより安く作る方向に向かうならば、日本の持ち味はなくなります。だから、中国のマーケットに進出することや、中国の観光客を受け入れることは、一考を要することなのです。

 もちろん、中国が日本の製品を輸入するとか、日本に観光に来るとかいうことは、拒むことではなく歓迎することです。しかし、それは、日本が日本独自の持ち味を保っていることが前提になります。中国に合わせて、製品を買ってもらうとか、観光に来てもらうとかいう態度で対応するものではありません。

 今の日本で、中国に輸出しなければやっていけないという産業は、大きな目で見ると過去の産業です。大きな企業は急には方向転換ができませんから、しばらくは中国のマーケットをあてにしてやっていくことはやむをえません。しかし、長期の戦略は、中国から離れてやっていく力をつけることです。

 そして、今の中国から離れる力をつけることは、実は、未来の世界のマーケットを先取りする力をつけていることになるのです。

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日本語脳と暗唱の仮説 as/1023.html
森川林 2010/09/22 12:35 



 日本語脳というのは、自然の音や感情の動きを、左脳という言語脳で処理する仕組みを持った脳のことです。世界中で、日本人とポリネシア人だけがこの日本語脳を持っているため、日本の文化は世界のどの文化と比べても異質な面を持っています。

 ところが、この日本語脳は、遺伝的なものではなく、子供時代に日本語の環境にいたかどうかで決まってくるものであり、その適齢期が6歳から8歳であることがわかってきました。


 ここから、日本語脳と暗唱の学習について、いくつかの仮説が考えられます。

 まず第一は、6歳以前の学習には意味がないということです。幼児期に英会話を習う人も増えていますが、6歳以前に習得したものは、たとえそれが外国の環境で習得したものであっても、環境が変われば数ヶ月でなくなってしまうようです。日本に住んでいながら、外国語の学習をするとなると、その効果は更に一時的なものになると思います。6歳以前は、勉強という知的なことをするよりも、もっと感覚的、身体的なことを身につける時期なのだと思います。


 第二に、日本語脳が形成される6歳から8歳の時期の過ごし方です。この時期は、日本にいる日本人の子供にとっても、暗唱の適齢期のようです。言葉の森でも、暗唱の練習が最もスムーズにできるのが、この小1から小3にかけてです。これは、日本語脳が形成されるという成長の時期と、暗唱の学習がぴったり合っているからだと思います。

 今後増えることが予想される外国人移民の子供の教育についても、この6歳から8歳の時期にいかに日本語脳を形成させるかという観点から取り組む必要があると思います。

 一方、日本人でありながら、この時期海外で暮らさなければならない子供は、かなり大きなハンディを背負うことになります。6歳から8歳の3年間をたまたま海外で過ごしたために、コオロギの声や風の音を雑音としてしか処理できない感性の持ち主になってしまうからです。

 それは、逆に言えば、論理と感情をすっきり使い分ける西欧語脳を身につけることにもなりますが、日本人の親で、自分の子供がそのような西欧的な人間になってほしいと思う人はまずいないと思います。


 そこで、私は、日本語脳の形成を助けるのに、暗唱の学習が使えるのではないかと考えています。日本語脳と西欧語脳を分けるものは、日本語に含まれる母音という音声です。6歳から8歳の子供がアメリカで暮らしていれば、学校でも地域でも、友達と話す会話は英語です。その英語の量を上回るほどの日本語を家庭で話すことはまずありません。日本人はもともとおしゃべりではないので、家庭での日本語に接する方法は、主に読書などになると思います。そのため、海外で暮らす日本の子供は、家庭でいくら日本語を使うようにしても西欧語脳になってしまうのです。

 これをカバーするためには、母音のある日本語を、英語よりも数多く音声として使うことです。暗唱は、普通の会話よりも短時間で密度の濃い日本語音声との接触の機会になります。また、暗唱は意味を理解して読む必要は特になく、音声だけを自分で言って聞けばいいのですから、6歳から8歳でまだ日本語の読書が不自由な子でも十分に取り組めます。

 言葉の森では、今後、アメリカで通学指導を行う予定があるので、早速暗唱の自習がアメリカ在住の子供たちにどれぐらい効果があるのか確かめてみたいと思っています。この実験の結果、6歳から8歳の日本人の子供が、海外にいながら日本語脳を形成することができれば、海外に赴任する同じ年齢の子供たちを持つ親にとって朗報となると思います。

 しかし、この実験を行う際、脳の機能をイメージングする機器や技術者が必要になります。ご協力いただける方がいらっしゃいましたら、ご連絡くださるようお願いいたします。


 さて、第三に、バイリンガルになるための最適な年齢は何歳かということです。6歳から8歳の日本語脳を形成する時期に日本人が例えばアメリカで英語を身につけてしまうと、西欧語脳のバイリンガルになってしまいます。日本語以外はすべて西欧語脳になるからです。6歳から8歳の時期は確実に日本語脳を形成し、そのあとに英語や他の言語を習得する必要があります。すると、その時期は9歳ないし10歳から、13歳ないし14歳にかけてになると思います。

 逆に言うと、海外にいかなくても、日本でもこの時期に集中的に外国語を学ぶことが大事だということです。そして、言語は音声ですから、英語の文章の暗唱などが小学校高学年から中学生の時期にかけて効果があるのではないかということが考えられます。


 第四に、では、14歳を過ぎてからの、音声による脳機能の変化はないかということです。塙保己一は18歳で般若心経の暗唱を始めました。本多静六がドイツ語の文献の集中的暗唱をしたのは20歳前後でした。話はかなりさかのぼりますが、空海が虚空蔵求問持法の暗唱を始めたのも20歳前だったと思います。これらを見ると、この時期の集中的な暗唱が脳の機能に影響を及ぼすのではないかということが考えられます。しかし、これはまだ実験データがないので、これからの研究課題にしたいと思います。


 こんなことばかり考えているから、肝心の仕事が進まない(笑)。

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小4母 20100922  
私の夫の大学時代の友達や、会社関係の友人で、海外駐在を経験している人がいます。
夫の話では、やはり小さい頃に海外生活していても、日本に戻ってきてそのままずっと
お子さんが英語を話せるかというと、まったくいなそうです。小学校時代6年間在住
していてもです。
 
夫は、社会人10年経験後、アメリカのビジネススクールで勉強しました。
帰国後、社会人の英語論文の指導についたり、香港で働いた経験があり、現在は、
日本で働いていますが、電話・メール・会議すべて英語をつかう立場にいます。
最近、会社の若い男性や女性に「どうしたら英語が上手になるでしょうか?」と聞かれる
そうです。みんな英会話学校に行ったりしてがんばっているけど、なかなか上達しなくて
悩んでいる人が多いです。夫は、「英語を勉強するまえに、もう少し読書をしてほしいなあ」
と思うそうです。まず、たくさん読書をして、きちんとした日本語の文章を書けるように
なってから英語に目を向けてほしいと願うばかりだそうです。
もちろん、まだ、日本語も話せない0歳児、1歳児を英会話学校に通わせるのも反対しています。やはり、小さい頃からの絵本の読み聞かせ、家族との対話など日本語力はとても
重要に思えます。私自身、結婚するまで、大手総合商社で働いていた経験があり、
もちろん、事務職でもそれなりの英語力が必要でしたが、やはり読書や文章力の重要性
をとても身にしみています。

 テレビゲーム・DS・携帯電話・テレビなどにかこまれている今、言葉の森はとても
ありがたく思います。娘が言葉の森をはじめてから、まる一年が経ち、この一年で家族の
対話が増え、テレビは決めたものだけ見る、ゲームは1時間だけ、という我が家のルールができつつあります。

 それから、前にテレビで、海外駐在ではなく、外国でずっと生活している少し裕福な
家庭が何世帯か紹介されていた番組がありました。みなさん、子供が中学生、高校生くらいになると、きちんとした日本語や日本文化などを勉強させるために子供たちだけを日本に一時帰国させていました。
今後、海外に言葉の森の教室ができれば、日本語の読み書きの重要性が伝わると思います。

ながながと書いてしまいました。 すいません。


森川林 20100922  
 貴重なご意見をありがとうございました。

 そうなんです。自分でしっかり勉強をした経験のあるお父さんやお母さんは、子供をあまり小さいころから勉強であおらないようです。「やるときはやる」ということがわかっているからです。

 しかし、現代の子育ては、ゲーム機などの誘惑が多く、かなり難しいです。また、学習塾なども、得点を上げるテクニックや競争が多く、長い目で見るとかえって子供をスポイルするようなところがあります。

 やはり、家庭で子供と両親が知的な対話をする機会を増やしていくのがいちばんだと思います。

 言葉の森では、しばらく前から暗唱の自習に取り組んでいるため、課題の長文の音読はいま力を入れていませんが、本当は課題の長文をお父さんやお母さんの前で音読し、その長文をもとにいろいろ話をしていくと楽しいと思います。

コロコロコローリ 20100924  
 日本語脳についての記述を大変興味深く拝読しました。

 若いころ、ドイツに住んでいたことがあります。春から初冬にかけて、農家の離れに暮らし、秋には友人たちと庭で食事をしたり、近隣の村々のワイン祭りへ出かけたりしました。まわりには常に虫がわんさかいる環境であったのにもかかわらず、虫の音についての記憶が全くありません。おそらく、虫の音
に注意せずに過ごしていたからではないかと思います。
 虫の音が聴こえるか聴こえないかについては、脳の働きだけでなく、聴こうとするかどうかの意思も重要なポイントではないかと思います。(学術的な根拠は一切ありません。)
 言葉の森の作文の、季節にかかわる課題は、子供の情緒を養うよい機会だと、改めて思いました。

森川林 20100924  
 なるほど。まわりの環境がそうだと、聴こうとする気持ちにならないのですね。
 日本人どうしの場合は、たぶんだれかが、「あ、コオロギの声」などと言い出して、みんなで「秋だねえ」などと相槌を打つのではないかと思います。
 季節や行事の課題は、うまく使うと、家庭の文化作りに生かせるかもしれませんね。

akko 20100925  
海外にて作文教室を開いている者としては、漢字が難関だと私は感じます。家庭では日本語、学校では英語で生活している子供ですと、英語、日本語とも発音はほぼ完璧です。
でも、日常生活で漢字を目にしない、(例えば、看板、道路標識、お菓子のパックや、アニメキャラクター、教科書、まんが本でも英語)となると、教える方も一苦労です。見慣れていない、って、大変だなぁと思っています。
バイリンガルとは、会話、読み、書きができるということですよね?でも、両国の文化や歴史も知らないと、知的なバイリンガルにはなれないだろうなぁ。



森川林 20100925  
 akkoさん、コメントありがとうございます。

 なるほど、日本語の文字環境にいないと、漢字が苦手になりやすいんですね。
 漢字というのは、できる人はできて当然ぐらいに思っている一方、できない人はそうは思わないというギャップの強い勉強です。
 それは、漢字が単なる知識ではなく、思考のツールとして無意識のうちに使われているからだと思います。
 漢字の勉強は、簡単にできると思わずに、本腰を入れて取り組む必要がありそうです。
 言葉の森でも、これから漢字の学習について(それから書写の学習について)研究していきたいと思っています。

touko 20170216 77 
日本語脳が形成されることで、日本語が母語になるのだと思います。やはり8歳位までの幼少期の過ごし方が大切ですね。

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6-8歳で形成される日本語脳 as/1022.html
森川林 2010/09/21 12:16 



 「続日本人の脳」(角田忠信著 大修館書店)によると、日本人は左脳で、子音の言葉、母音の言葉、自然の音、虫の声などほとんどの音を聞き取り、右脳では、西洋音楽、機械音だけを聞き取ります。

 これに対して、日本語以外の世界中のほとんどの言語、例えば、英語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語などは、左脳で、子音の含まれる言葉だけを聞き取り、それ以外の母音の言葉、自然の音、虫の声、西洋音楽、機械音などはすべて右脳で聞き取ります。

 コオロギの声を聞いて、「もう秋だなあ」としみじみ思うのは、日本人だけです。風がビューッと吹いたり、海の波がザブーンと打ち寄せたりするのも、日本人なら、風の言葉、波の言葉として聞き取りますが、日本人以外のほとんどの民族は、無関心か、ただの雑音としてしか聞き取りません。


 ところで、この日本人の脳の仕組みを形成したものは日本語です。日本語は、母音だけが単独でも意味を持つ世界でもまれな言語だからです。例えば、「ああ」「いい」「あお」「うえ」「いえ」「いう」「あい」など、母音だけで成り立つ言葉がかなりあります。

 日本人は、言葉を処理する左脳で自然の音も処理するため、自然との一体感を持ちやすく、また、論理と情緒が同じ左脳に同居しているため、論理にいつも情緒的なニュアンスが伴いやすいのです。


 この日本人に特有の脳を日本語脳と呼び、それ以外の脳を仮に西欧語脳(中国語や韓国語などアジアの言語も含まれますが)と呼ぶとすると、日本語脳と西欧語脳の違いは、6歳から8歳の言語環境で決定されます。

 日本人が6歳よりも前にアメリカなどで暮らすようになった場合、現地の英語はすぐに習得しますが、このときの英語力は日本に戻ると消えてしまいます。6歳以前では、習得した言語は定着しません。

 ところが、6歳から8歳にかけてアメリカで暮らすと、この時期の言語環境は決定的で、脳の仕組みは西欧語脳になってしまいます。こうなると、たとえバイリンガルとして日本語も英語も同じように自由に使えるとしても、基本の脳は西欧語脳ですから、日本人の持つ情緒がわからないという問題が出てきます。


 今、子供をつれて海外に赴任する日本人はかなりいます。その子供たちが、現地の言葉と日本語の両方を自由に使えるようになるということも大変ですが、日本語脳を形成した上でバイリンガルにするとなると、更に難しくなるということです。

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言葉の森の受験作文指導(その2) as/1021.html
森川林 2010/09/18 09:15 



 ところで、受験に合格するための作文は、少し性格が違います。根っこの部分を充実させることはもちろん大切ですが、受験までの数ヶ月で実力をつけるというわけにはいきません。

 受験のための作文は、今既にある実力の範囲で、できるだけ合格できそうな作文を書くことにあります。(と、ここまでが前回の話)


 合格を目的として作文を書く場合も、言葉の森の独自の指導法が生きてきます。言葉の森の指導の特徴は、作文を書く前に事前の指導をする点です。どういう構成で、どういう点に注意して書けばいいかということを事前に指導できるので、子供たちは迷わずに書き出すことができます。

 そして、普段からこのように構成的に書く練習をしていると、試験の本番でも自然に全体の流れを意識して書くことができるようになります。

 作文を書く場合、ほとんどの人は、まず書き出して、あとは考えながら書き進めるという形で書いていきます。自分の趣味で文章を書く場合は、これでいいのですが、受験という限られた時間で与えられた課題で書くときは、書きながら考えるというやり方では出来不出来の差が大きくなりすぎます。

 全体の構成を意識して書くと、常にある一定の文章が書けるようになります。つまり、全体の構成を考えて書く書き方は、上手に書くための条件ではなく、下手に書かないための条件なのです。

 そして、この下手に書かない書き方ができたら、あとは、実例と表現の部分で上手に書く練習をしていきます。

 作文というものを、構成、題材、表現、主題、表記という5つの面から見た場合、構成は、意識的に構成を考えて書くことによって力がつきます。言葉の森で勉強している生徒は、構成のしっかりした作文を書くという特徴があります。

 題材(実例)と表現は、偶然に左右されやすいものです。だれでも、たくさん書く中には、必ずいい実例といい表現が出てきます。その実例と表現を自分の作文の武器としていつでも使えるようにしておきます。合格する作文を書く場合、この実例と表現の練習をすることが最も重要です。

 主題(意見・感想)は、人による差がそれほど大きくはありません。人間の考えることはだれでの同じようなもので、特にユニークな意見を書こうと無理をすると大体失敗します。自分が普通に考える意見や感想を書き、そのかわり、実例と表現の部分で個性を出していくというのが上手な作文を書くコツです。

 表記というのは、「漢字を使って書く」「誤字がないようにする」「常体か敬体に統一して書く」「段落をつける」などのことです。誤字をなくす練習は、かなり時間がかかります。しかも、誤字は勘違いして覚えているというケースがほとんどですから、実際に作文を書く中で誤字を発見するというやり方しかありません。そのためにも、作文の練習では、まず書いてみるということが大事です。

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作文教室「言葉の森」の受験作文指導 as/1020.html
森川林 2010/09/17 11:34 



 世の中には、作文教室という名前の教室はいくつもありますが、言葉の森のように作文だけを専門に教えているところはほとんどありません。しかも、幼稚園年長から高校3年生、場合によっては社会人まで一貫して指導しているところはまずありません。

 世間の多くの作文教室は、国語の勉強に付属する形で作文の指導をしています。それは、ひとつには、作文を学びたいというニーズが生徒の側にそれほどないからです。もうひとつには、作文の指導は教えるにも評価するにも手間がかかるが、そのわりには成果が出ないからです。国語の勉強として漢字の練習や読解の練習などを中心に行えば、教えやすく成果も出やすくなります。

 言葉の森で、国語的な勉強をほとんど行わないのは、国語の力は先生が教えるようなものではなく、生徒が自分で身につけるものだと考えているからです。その具体的な方法として、今力を入れているのは、長文の暗唱、毎日の読書、問題集読書、四行詩、課題をもとにした親子の対話などです。

 作文力は、国語力の集大成のようなものです。作文の実力の中に、その子のトータルな国語力が表れます。しかし、その作文に見られる実力は、国語力の結果ですから、作文だけを指導しても作文力はなかなかつきません。親や先生がよく誤解するのは、ここです。

 樹木を育てる例で言うと、問題は根っこの部分にあるのに、つい表面に出ている葉っぱや花の部分を手直しすれば、いい木になるように勘違いしてしまうのです。根の部分をそのままにして、葉や花の部分を注意するという形で指導することはできなくはありません。しかし、それは指導をする形ができているだけであって、そういう指導で作文の実力がつくわけではないのです。

 よくたっぷり赤ペンを入れることがいい指導をしたことになるような錯覚を多くの人が持ちがちですが、その赤ペンには先生の努力のあとが見られるだけであって、生徒の実力がつくことにはつながりません。生徒の実力がつくのは、根の部分である家庭での暗唱や読書や対話を充実させることによってです。

 ですから、毎週作文を書くのは、その作文を直して上手にするためではなく、毎日の自習の成果が作文に出てくることを確認するためなのです。


 ところで、受験に合格するための作文は、少し性格が違います。根っこの部分を充実させることはもちろん大切ですが、受験までの数ヶ月で実力をつけるというわけにはいきません。

 受験のための作文は、今既にある実力の範囲で、できるだけ合格できそうな作文を書くことにあります。(つづく)

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