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絶対語感の世界(その3) as/1102.html
森川林 2010/12/20 21:12 


 読み聞かせや語り聞かせが親にとって苦痛なのは、そこに創造性がないからです。

 子供に絵本を読んで聞かせるということは、大人にとっては何の難しさもない、誰にでもできる退屈なことです。そして、読み聞かせを始める前からそういうことがあらかじめわかっているがゆえに、大人は読み聞かせというものに意欲が持てないのです。易しすぎてやる気になれないのが、大人にとって読み聞かせです。

 しかし、幼児は、その読み聞かせの反復を、自分の知的能力の発達のために何よりも求めています。

 そこで考えられのは、その読み聞かせの物語を親が暗唱してしまうという方法です。

 言葉の森の暗唱自習の方法であれば、2、3分の文章は、すぐに暗唱できるようになります。ストーリーのある話であれば、さらに容易で、5分や10分の暗唱による語り聞かせは誰にでもできるようになります。

 現代の新しい読み聞かせは、親が持っている幾つもの暗唱物語のレパートリーの中から、子供が希望するものをその時々の雰囲気に応じて聞かせてあげるというやり方です。

 親はその物語を暗唱しているので、その日の気分によって登場人物を微妙に変化させることができます。例えば、「桃太郎」の話で、おじいさんとおばあさんを実際の田舎のおじいちゃんとおばあちゃんにしたり、主人公の桃太郎を聞いているその子供にしたり、サルや犬やキジを近所の友達にしたり、というようなことが自由にできます。そういう創造的な工夫ができると、読み聞かせは急に楽しいものになってきます。

 人間はもともと、創造的でありさえすれば、話すことが大好きな動物です。それは、長電話がいつまでも終わらないことを考えるとよくわかります。

 母親は楽しくおしゃべりをする感覚で物語を聞かせてあげ、子供はその話を聞いて絶対語感を身につけるということが、これからの幼児教育の新しい姿になると思います。

 しかし、ここで大事なことは、どんなにいい方法であっても決してやりすぎないことです。(つづく)

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絶対語感の世界(その2) as/1101.html
森川林 2010/12/18 13:03 


 言葉は、実体と結びつくものだと思われています。例えば、「おじいさん」という言葉は、おじいさんという実体に対応しています。

 では、「おじいさんは山へ柴刈りに行きました」は、何に対応しているかというと、それは、おじいさんが山へ柴刈りに行ったという事実に対応しています。あたりまえですが。

 では、そのあとさらに続けて、おばあさんが川へ洗濯に行ったり、桃太郎が桃から産まれたり、犬とサルとキジが登場したりするという一連の物語は何に対応しているかというと、世界というものの認識の仕方に対応しているのです。



 一方、人間は、世界に対して、言語として対応する以前に、行動として対応しています。

 水は、「水」という言葉とも結びついていますが、それ以上に、「飲む」という形で飲む行動と結びつき、「泳ぐ」という形で泳ぐ行動に結びついています。

 人間がこのような行動によって手に入れるものは成果です。人間は、「飲む」という行動によって、のどの渇きをいやすという成果を得ます。「泳ぐ」という行動によって、無事に向こう岸までたどり着くという成果を得ます。

 しかし、人間はそこで行動によって成果を得ただけでは満足しません。よりよい成果を得るために、その行動を学習しようとします。そのときの学習の方法は反復です。

 例えば、泳ぐ場合であれば、何度も同じように泳いでみるという繰り返しで、次第に泳ぐ行動に熟達していきます。

 行動における反復は、行動の身体化という学習の方法です。小さい子供は、同じ行動を繰り返すことによって、行動を身体に刻みこんでいるのです。



 その行動と同じように、人間は言葉によって世界を認識するときに、認識の成果としての理解を得るだけでは満足しません。より素早くより的確な認識ができるようになるために、認識の仕方を学習しようとします。その学習の方法が、同じ物語を繰り返し聞くことです。

 小さい子供が同じ話を繰り返し聞きたがるのは、その話に盛り込まれている世界認識の方法を、その子供が身体化しようとしているからです。

 親は大人の感覚で、物語は一度読んでそのストーリーを理解したり味わったりすればそれでよいと考えがちです。しかし、子供が求めているものは、理解でも味わいでもなく身体化なのです。3歳から5歳のころの子供が同じ話を繰り返し聞きたがるとき、親はそのつど同じ話を同じようにしてあげるといいのです。



 しかし、同じ話を繰り返すというのは、大人にとってはかなり退屈なことです。(つづく)

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