●考える力の土台となる親子のベータ対話
考える力のもとになるものがベータ読みだとすると、ここで親子の対話という方法の重要性が出てきます。
わからない話を聞くというベータ聞きを続けられる人はあまりいません。同じように、わからない本を読むベータ読みを続けられる人も、あまりいません。特に、子供であればそうです。
しかし、親子という身近な間柄では、ベータ対話ができるのです。それは、親は子供にとってはわからない話をしながら、その子の反応によって、話を面白くしたり、少し易しくしたり、脱線したり、発展させたりできるからです。
このベータ対話のきっかけになるものが、ベータ読みです。そのベータ読みの手軽な方法が、言葉の森の課題長文の音読や問題集読書なのです。
●これからの子育て
親子の楽しいベータ対話で考える力をつけ、易しく面白い本の読書で多読力をつけ、長文音読や問題集読書のベータ読みで考える力を伸ばし、8割の学力を確保するために教科書レベルの1冊の教材を百パーセントマスターし、その子の興味関心を発見するために多様な経験をさせ、その興味関心を伸ばすために無駄と思えるような自由な時間を確保し、受験期でない普通の勉強の時期に教科書レベルの教材の学年先取りを進めておき(それは、教科書レベルの教材を毎日普通にやっていると、自然に学年よりも進んでしまうからです)、受験期には過去問をもとにした受験のための集中学習を親子の協力で行い、将来は自分の個性を伸ばして生活の糧となる小船を作ることを考える、というのが、これからの子育ての基本になると思います。
●言葉の森の教育のビジョン
言葉の森では、このような現代の子育てに対応するために、作文学習とともに、寺子屋オンエアを行い、プレゼン作文発表会を行い、夏休み自然寺子屋合宿を行い、作文検定試験や各種自習検定試験を行っています。今、新しく企画しているのは、新たに作る暗唱長文集をもとにした暗唱検定です。
これらの企画をインターネットのクラウドサービスを利用して、世界中にいる日本の子供たちが誰でも気軽に参加できる形で広げていきたいと思っています。
教育は、その時代の社会に広く対応しています。言葉の森が考えているのは、教育だけの教育ではなく、新しい日本の社会のビジョンも含めた教育です。
これからの教育は、教育の専門家によってではなく、子育てをするすべての人たちの手によって作られていく仕事なのです。(完)
●学力と個性を共に育てる社会
教育の基本は(センタ試験)8割の学力と個性だと考えると、子供にどういう勉強をさせたらよいかということがわかってきます。
念頭に置く必要があるのは、その子が将来大きくなったときに、大きな船に乗り仕事に追われている姿ではなく、小さな船を作り上げてそこで楽しく仕事を追っている姿です。
そのために必要なのは、8割の学力と個性の育成です。8割の学力とは、教科書の百パーセントをマスターすることです。個性の育成とは、多様な経験と自由な時間を確保することです。8割の学力と個性の育成の先に創造が生まれ、その創造は、社会生活としては小船の創造となり、その無数の小船の創造が日本の文化となり、新しい時代の産業の基盤となっていくのです。
●8割の学力と質の違う受験勉強の進め方
今の時代では、東大の推薦入試のようなものを除けば、8割の学力と受験の学力とは異なります。受験は、中学入試であれ、高校入試であれ、大学入試であれ、8割の学力つまり教科書の百パーセントでは足りないからです。しかし、8割の学力があれば、受験に必要な学力まで高めるのは、長くて1年、短ければ半年か3ヶ月の集中学習で充分です。そして、むしろ受験前の短期間に集中的に受験のための勉強をした方が、勉強の方法としてはずっと能率がよいのです。
もちろん、受験勉強には、受験勉強のための正しい方法が必要です。その方法は、一言で言えば過去問に合わせた勉強で、1冊を徹底的にマスターする勉強法です。
塾や予備校や周囲の声に流されず、自分で決めた方法を貫いていけば、答えのある受験は合格するようにできているのです。
●考える力をつける勉強
今の子供たちの勉強を見ていると、受験などまだ先にある低中学年から受験的な勉強をしているところに問題があります。それは、教科書レベルを超えたちょっとひねった難問を解かせるという勉強です。
難問を解くのは、考える力のある子にとっては、一種の喜びがあります。だから、良質な難問は、子供の成長にとってはプラスです。しかし、その難問を解く時間によって、読書や遊びや自由な時間が削られると、その方が将来大きなマイナスになるのです。
小中学校時代に考える力をつけるために、勉強的な難問を解く必要はありません。考える力が最もバランスよくつくのは、親子の対話と読書によってです。中でも、親子の対話は、子供の年齢に関係なく、幼児から中高生までいつでも自由に取り組めます。
しかし、この対話と読書にも、アルファ的なものとベータ的なものとがあるのです。
●アルファ対話とベータ対話
90歳を超えた外山滋比古さんは、最近の著書の中で、読書には、わかったものを読むアルファ読みと、わからないものを読むベータ読みとがあると述べています。
物語のような本はほとんどがアルファ読みの本です。娯楽の読書は娯楽の読書であって、その読書によって自分自身が向上するという面はあまりありません。
対話も同じです。わかったことを話すのがアルファ対話、わからないことを話すのがベータ対話だとすると、親子の対話で必要なのはベータ対話の方です。