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公立中高一貫校の受験対策は、低学年の作文の家庭学習から as/515.html
森川林 2009/06/08 09:22 


 公立中高一貫校が人気です。この理由は、私立に比べて経済的に楽だということもあります。しかし、それ以上に、公立中高一貫校が本気でいい教育をしようと考えていることを、多くの人が感じているからではないでしょうか。それは、それぞれの県のトップ高や準トップ高が公立の中高一貫校になっていることにも表れています。また、問題を見ても、よく考えられた良問が多く、いい生徒を集めたいという気合が感じられます。


 更に、これまでの私立中学受験で無理な勉強を小学校のうちからすることへの反省も、公立中高一貫校の人気を支えているのではないかと思います。


 人間の成長の自然な姿は、小さいころはたっぷり遊び、成長するにつれて勉強するという形です。小学校時代はよく遊び、中学高校大学になるにつれて学問に目覚めていくというのが、本来の成長の姿です。

 そのような成長の仕方をした子の方が、将来活躍します。小学校時代から単調な勉強に縛られているようでは、これからは、人間の幅が狭くなります。小さいころは、読書や趣味や家族との対話によって幅広い人間力の土台を作っていくことが大事なのです。


 言葉の森では、公立中高一貫校の入試に向けて、作文試験の受験コースを開設しています。これは入試の五ヶ月前から毎週一回の割合で過去問に合わせた作文課題を書く練習をしていくコースです。

 しかし、五ヶ月では実は、実力はあまり変わりません。その生徒が持っている今の実力のままで最もよい作文を書けるように練習していくというのが受験コースの目標です。そして、この目標で、毎年多くの生徒が受験に合格しています。


 言葉の森での作文の勉強は、通常次のような形で進みます。

 まず、生徒が入会したあと、すぐに上手に書けるようになります。来てすぐに上手になるというのが、言葉の森の指導の一つの特徴です。

 しかしそのあと、進歩はなだらかな曲線に入ります。このなだらかな進歩の期間も、先生が見る目からはその子は上達していますが、本人にとってはあまり上達しているように見えない時期です。

 けれども、一年間ぐらいたつと、本人自身が自分でもうまくなったということを実感してきます。上手になったことが確実に実感できるのに、一年間かかります。

 ただし、これは、熱心に取り組んだ生徒の場合です。熱心というのはどういうことかというと、課題を事前に見て、書くこと自分なりに準備してくることです。それは、書く材料を考えてくることもありますし、家族に似た例を取材してくることもあります。また、暗唱、音読、読書などもそれなりにやっていることが必要です。つまり、熱心といっても、普通に真面目にやっていればいいのです。

 しかし、一年間で、自覚できるぐらい上達したとはいっても、根本にある思考力の差はなかなか埋まりません。上手な子と普通の子の実力が短期間で逆転するようなことは、なかなかないのです。


 そこで、作文の勉強は小学校から低学年からスタートした方がいいということになります。

 小学校1、2年生から始めると、まず暗唱などの自習の習慣がつきます。そして、1、2年生から始めた習い事は、長続きすることが多いのです。日本の昔からの言い伝えで、六歳の六ヶ月目ごろから始めた習い事は長く続くといわれています。(六歳の六月六日とも言われています)

 低学年のころは、勉強の中身よりも、勉強をスタートすることに意味があります。なぜかというと、その時期にスタートすると、それがその後の生活の習慣になるからです。


 生活習慣は、子供だけではなく親も変わります。言葉の森の勉強で生活習慣のどこが変わるかというと、まず子供に毎日の勉強の習慣がつきます。一方、親は、勉強のことでやたらに怒らなくなり、家族の対話を大事にするようになります。


 この親子の生活習慣の変化が、実は公立中高一貫校の学力の土台になっているのです。

 毎日の積み重ねで育った学力があれば、たとえ受験をしなくても、その後の勉強のしっかりした基礎ができたことになります。

 基礎のできた子は、やる気になったときにいつでも力を伸ばすことができます。


 低学年の勉強は、一言で言えば、愛情と日本語です。

 それ以外の勉強や習い事は、すべておまけのようなものだと考えていくとよいでしょう。いろいろな習い事や勉強をするのは子供の可能性を広げるという点でいいことですが、最優先するのは日本語をしっかり使えるようになることと、愛情のある子供に育てることです。

 この「愛情と日本語」を具体的な勉強の形で表すと、作文の勉強を通した毎日の自習と親子の対話ということになるのです。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

マインドマップ風構成図
 記事のもととなった構成図です。

(急いで書いたのでうまくありません)

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読解力をつけるには as/514.html
森川林 2009/06/07 11:56 


 読解力とは何でしょうか。よく使われる言葉ですが、意味が漠然としています。

 文章を読んで理解することは誰でもできます。しかし、なぜその理解力に差があるのでしょうか。その差は、一つには理解の速さです。もう一つは、理解の深さです。

 これらの差が、鋭く表面に出てくるのは主に国語のテストにおいてです。読解力が焦点になるのは、日常生活ではなく、国語のテストの中でなのです。

 日常生活の中では、読む力があるかないかということは、あまり表面に出てきません。生活の中では、間違って読み取ったことでも、あとで修正できます。また、問題自体易しいものが多いのが通常の生活です。難しい問題に直面したときでも、わからないときはよくわかる人に聞くことができます。また、多くの場合、自分の専門にだけ詳しければ、大体のことは間に合います。つまり、読解力はなくても、知識でカバーしたり経験でカバーしたりできるというのが日常の生活です。

 ですから、生活の中での学力とは、読解力がそのまま出てくるのではなく、柔軟性とか、他人との協調性とか、持続力などが、その人の総合的な学力として表れてきます。しかし、国語のテストでは、柔軟性や他人との協調性や持続力などは評価に含まれません。そこで、読解力のエッセンスが国語のテストにおいて焦点になってくるのです。


 国語のテストということを、入試問題で考えてみます。というのは国語のテストの中には易しい問題もあり、そういうテストでは日本語が普通に理解できればできてしまうものも多いからです。

 入試問題は、差をつけるためのテストですから、敢えて何割かができないような問題として作られています。

 難関中学の受験で多いのが、長い文を読ませる形の問題です。これは、読解力を主に速さの面から評価するテストです。一回読んだだけですぐに頭に入るというような読み方のできる子が、読解力の速度のある子です。そして、この速さは、主にそれまでの読書量に比例しています。

 難関大学の入試で多いのが、難しい文章を読ませる形の問題です。高校の入試は、中学と大学のちょうど中間にあり、長い文を読ませる面と難しい文章読ませる面の両方が重なっています。

 難しい文章読ませるということについては、二つの難しい文章が考えられます。一つは、見た目の難しい文章、つまり読みにくい文章、いわゆる悪文といわれるものです。もう一つは、本当の難しい文章です。入試問題では多くの場合、見た目の難しい文章と本当に難しい文章が混ざり合った形で問題が出されます。

 では、本当に難しい文章とはどういう文章なのでしょうか。それは、一言で言えば、発見や創造のある文章です。つまり、これまでの読書生活あるいは実生活の中で、接したことのないような新しいものの見方や考え方をその場で理解する力が難しい文章を読み取る力なのです。


 ここで、私の個人的な例を挙げます。学生のころ、サルトルの「存在と無」を読みました。哲学のジャンルの本を読んだのはそのサルトルが初めてだったので、中に書かれている用語がなかなか理解できませんでした。「即自存在」「対自存在」「即自かつ対自存在」という概念を理解するのに、図をかいたり別の言葉で言い換えたりしてやっと何とか頭に入りました。その後、この概念がヘーゲルから出ていることを知り、ヘーゲルの「精神現象学」や「大論理学」を読みましたが、このときも新しい概念が次々と出てきてかなり苦労しました。

 同じように、さまざまなジャンルの古典と呼ばれる本を読んでいくと、古典というものに共通する本質がだんだんわかってきました。古典とは、その時代にそれまでになかった新しい発見や創造を提案した本だったのです。

 これらの本を読んでいくうちに、新しい概念が出てくる難しい文章もだんだん早く読み取れるようになってきました。そして、読解力というものは、決して学校時代の国語のテストで評価されるだけでなく、生涯進歩していくものだということが実感できたのです。


 本の中には、単に知識が増えるだけの本と、発見のある本とがあります。また発見のある本の中にも、小さな発見のある本と、大きな発見のある本とがあります。

 入試問題で出されるのは、大なり小なり発見のある文章なので、ここで難しい文章、つまり新しい概念を読み取る力があるかないかが問われてきます。


 では、難しい文章を読み取るための勉強はどのようにしたらいいのでしょうか。実は入試問題は、そういう文章の宝庫なのです。

 問題集に載っている問題文を読むと、それぞれの問題文が小さな発見のある文章であることが多いので、読む力のある子は読んでいて面白さを感じるようです。

 高校生が、言葉の森で勉強していて、高校3年生になると急に文章力がついてくるというケースがよくあります。これはなぜかというと、受験勉強で現代文の難しい文章を読むようになるので、難しい文章を読む力がついてきて語彙力と思考力が深まるからです。

 難読力をつけるには、入試問題の問題文を読んで理解するということが最も手軽で最も本質的な勉強法です。そして、文章の中で理解できないところがあれば、先生に聞きます。これは必ずしも国語の先生でなくてもいいのです。読解力のある大人であれば、難しい文章をやさしく解説することができます。

 この勉強法は、数学や英語の勉強法と同じです。数学や英語でも、わからない問題やわからない文を、問題の解法や文の構造から理解し直すことが学力になります。


 国語の入試問題は、読解力を評価することが大きな目的になっていますが、その読解力の評価にも、二つの形があります。

 一つは、記述型の問題で評価される読解力です。もう一つは選択式の問題で評価される読解力です。

 実はその文章を本当に読む力があるかどうかは、記述型の問題でなければ把握できません。選択式の問題は、選択のテクニックも必要になります。逆にいうと、読む力が低くても、読むテクニックあればある程度正解が得られるというのが選択式の問題の特徴です。ところが採点が大変なので、記述型の問題よりも選択式の問題が多いのです。


 国語の家庭学習というと、すぐに漢字の書き取りのようなことを連想する人がいますが、漢字力は、国語力のごく一部です。国語力の本質は読解力で、その読解力は、もって生まれたものではなく、学習によって身につくものです。

 しかし、読解力の本質を知らないと、問題集を解くような勉強で読解力がつくと思ってしまいます。ただ問題を解いて解説を聞くような勉強では、読解力はつきません。塾に行っても国語の成績が上がらないとよく言われるのは、塾では問題を解かせる形の勉強になりがちだからです。


 では、音読や暗唱がいいかというと、音読や暗唱そのものの意義もありますが、それ以上に大事なのが、何を音読し暗唱するかということです。

 昔からある有名な文章、例えば「平家物語」や「日本国憲法」を読めばいいというのではなく、発見や創造のある文章を読むところに読解力と思考力を深めるポイントがあります。昔からある有名な文章を読む意義は、文化に接するという文化的意義であって、読解力を高めるという教育的意義とは別のものだと分けて考える必要があります。


 音読と黙読の違いは、音読の方が反復しやすく定着度を高めやすいが、黙読の方が早く楽にできるという点にあります。

 問題集の問題文を毎日読む勉強をする場合、音読ではくたびれるので黙読でいいのですが、勉強の自覚がまだ不十分な年齢の間は、黙読では読み方が形骸化します。多少苦しくても、音読で読み続けた方が中身のある勉強になります。

 要約という勉強法も国語の力をつけるためには有効ですが、要約をチェックする人がいないと勉強が進まないという欠点があります。

 いい勉強法とは、教材や先生の制約がなく、本人の力で進めていけるものです。要約よりも、文章を音読し暗唱し、その暗唱した文章を筆写するという勉強を基本にした方が勉強の能率が上がります。


 また、要約も何を要約するかという要約の対象選びが最も重要です。よく「天声人語」の要約ということが言われますが、「天声人語」では文章が内容的に易しすぎます。難読という点でものたりなさがあるのです。やはりいちばんいいのは、発見と創造のある入試問題の問題文です。

 ただし、入試問題を作成する人自身も、読解力の本質を知らないことが多いので、ただ読みにくいだけの悪文を問題文としていることもあります。入試問題の文章ならどれでもいいのではなく、ある程度大人が文章を選択してあげる必要があります。


 以上まとめて言うと、読解力には二種類あり、一つは速さの読解力、もう一つは深さの読解力です。

 速さの読解力は多読によって身につくので、読書量を増やしていく必要があります。

 深さの読解力は難読によって身につくので、入試問題集や難しい本を理解できるまで読むというような勉強が必要になります。


 これらの本質を押さえた上で、読解力をつける勉強をしていってください。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)
マインドマップ風構成図
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