これからの教育で最も大事なことは、子供たちのトータルな人間力を育てることです。そして、その人間力の土台の上に専門の学力を身につけられるようにすることです。そういう教育の基盤は、家庭にあります。
小学生のころから塾で詰め込まれる勉強をしてきた子の中には、肝心の高校生になっても自分の力で勉強できないという子も多くいます。大事なのは、成績という結果ではなく、自分の力で勉強するという過程なのです。
今は、教育の目標が混迷しています。子供の将来について、漠然と、医者、弁護士、公務員などになれればいいと考えている家庭は多いと思います。しかし、それらの仕事が果たして今後もあてのある仕事であるかどうかはわかりません。
大きな企業に入ればそれなりに安心ですが、ずっと先には大企業の将来もどうなるかはわかりません。世界をリードしてきたアメリカのGMもフォードもクライスラーも、昔は将来を心配する人など誰もいませんでした。日本という国全体が、他のアジア諸国との相対的な関係で後退し始めている中では、日本の国内での場所だけ考えていることはできません。
そして、今は会社に入っても仕事が続かずに途中でやめてしまう子も多いのです。この原因は、これまでの教育が、トータルな人間力というものを軽視して、勉強の成績だけに目を向けてきたことによります。だから、成績は一応よくても、たくましく生きていく力に欠けている子も増えているのです。
このトータルな人間力を育てる核となるものは家庭です。家庭で、子供たちが将来社会人として自立する土台を育てておく必要があります。そして、その人間力の土台の上に、大学で専門の学力を身につけ、それを武器に世の中を渡っていく必要があります。
では、人間力とは何なのかというと、それは、共感力、自立心、向上心、思考力のような能力と特性です。ところが、今の受験を目指す塾の教育の中では、その人間力と対極の教育が行われてしまうことも多いのです。
受験勉強を能率よく進めるためには、競争に勝つことを目標にし、与えられたことに嫌でも素直に従い、合格以外のことには気をつかわずに、スピードを要求される勉強に慣れなければなりません。これらの特性は、自己中心性、従順性、小さな自己満足心、条件反射的な学力です。
小学生という人間形成の初期に、こういう特性を身につけてしまうと、家庭の中でそれを挽回する力がないと、そのまま人間力の乏しい大学生になってしまいます。大学生になって、より大きな人間力を身につけ、より専門的な学力を身につけるという土台は、実は小学生時代の家庭教育に結びついています。
だから、子育てを勉強だけに絞らないこと、勉強を他人任せにしないこと、家庭で勉強を通して人間力を育てることを、子供の教育の目標としていく必要があるのです。
言葉の森は、この春から、作文という自分で考える勉強に加えて、家庭学習のアドバイスに力を入れていきます。中学3年生までは、塾に行かなくても家庭で充分に勉強ができます。しかし、その土台は、小学校の低学年から作っていく必要があるのです。
====今日のfacebook記事の引用====
これまでの勉強は、日本丸のいい場所に乗ることでした。
日本という国自体が、欧米のキャッチアップという目標で大きく動いていたので、それでよかったのです。
そして、そのために、受験勉強が過熱し子供たちの教育が塾任せになってきました。
子供の教育で最も大事なことは、将来仕事のできる社会人となることです。
そのために必要な能力は、共感力、自立心、向上心、思考力という人間力と、専門の学力です。
ところが、勉強の目的が受験の合格に絞られると、そういう人間力のついていない大学が増えてきたのです。
大学入試はゴールではありません。
本当は、大学はそこで専門の学力を身につけ、リーダーシップのような人間力を更に育てる場です。
大学生になってから、そういう生活ができるかどうかは、子供が小さいころの家庭教育に結びついています。
日本丸の動きが遅くなった分、アジア全体は大きく動いています。
人間力と専門の学力さえあれば、自分でボートを作って漕ぎ出すこともできるのです。
====引用ここまで====
2月10日ごろから、家庭学習の理論と方法を研究していました。併せて、幼児教育や公立中高一貫校対策の研究もしていたので、日常的な仕事がどっさりたまってしまいました。
今日、やっと具体的な家庭学習システムの案ができたので、これから普通の仕事に戻る予定です。
ところで、この家庭学習システムというのは、かなり画期的なものです。(と、いつも自分では思ってしまうのですが)
この方法で家庭学習ができれば、小学生のころに無理な詰め込み学習をする必要はなくなり、余裕のある生活の中で、親子の対話を楽しみながら、子供の学力は確実に向上していきます。
今は、勉強や受験というと、早い時期から塾に行ってガンガンやるようなことを連想する人が多いと思いますが、本当はもっとのんびりできるのです。がんばるのは、最後の1年間か半年で充分です。
受験勉強で、第一志望の難関校に合格した子の中には、こういうゆとりのある勉強をしてきた子が少数ですが、いるのです。
そういう家庭学習をこれから広げていきたいと思っています。
今日のfacebookページに、学習の本質と関連させて、「解く勉強から読む勉強へ」の話を書きました。
能率のよい勉強法は、試行錯誤してあれこれ考えて答えに到達するような勉強ではなく、最初から答えと一緒に問題を読む勉強です。
試行錯誤してあれこれ考える勉強は、答えのない勉強のためにとっておけばいいのです。
そして、そういう考える勉強(遊びも含む)の時間を確保するために、答えのある勉強は、答えと問題を一緒に読んで理解してしまうのです。
もちろん、すぐに大勢の人がこういう勉強法に慣れるということはないでしょう。しかし、こういう理屈を知っていれば、今よりもずっと楽な勉強ができるようになると思います。
====今日のfacebook記事====
今の合格はゴールではありませんが、もっと先の試験がゴールだというのでもありません。
ゴールは、もっと大きな、自分の向上や社会への貢献です。
人間が動物と違って学習能力が高いのは、前に学んだことを訂正できるからではなく、前に学んだことをより大きな概念で包み直すことができるからです。
例えば、叱られた犬は、いつまでも叱られたと思っていますが(というか、すぐ忘れてしまいますが)、叱られた子供は、いつかそれが自分のプラスになったと考えるかもしれません。
訂正ではなく、より大きな概念の中で見直すことができるのが人間です。
解く勉強よりも読む勉強の方がいい理由のひとつは、解く勉強では間違えたことを訂正しなけれならないからです。
能率のよい学習をするためには、初めから正しい答えを読んでいた方がいいのです。
====引用ここまで====