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記事 2396番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/11/15
これからの世の中と子供の教育 その2 as/2396.html
森川林 2015/08/06 18:05 


●大きな船に乗る時代は過去のものに

 競争の価値観が後退し、共感の価値観が前面に出てくる時代に、社会はかつての縄文時代や江戸時代のように長い停滞期に入るのでしょうか。そうではありません。今度来る新しい共感の時代は、単なる共感だけではなく創造を伴った共感の時代になるからです。
 子供の教育を考える場合、その子が大きくなったときの社会がどのようになっているかを考える必要があります。
 競争の時代には、小さい船からより大きい船に乗り移ることが勝利で、そのために同じ大きな船を目指す他人と競争をしなければなりませんでした。
 大きい船を例えば大企業とか、難しい資格とか、高い地位とか、人気や名声などと考えると、これからはその魅力が相対的に低下していく時代です。
 これまで大きな船に魅力があったのは、いったんその船に乗りさえすれば、小さい船に追い越されることはまずなかったからです。これまでは、大きい船に乗りさえすれば、大きい船はますます大きくなり、小さい船は相対的にますます小さくなるという厳然たる傾向がありました。それが、限られた資本と、資本に支えられた工業生産というこれまでの社会の特徴でした。
 これからの時代はそうではありません。資本は既にあり余っています。だから、何も生産しない金融ゲームにまでお金が回っています。工業生産物は既に人々の生活に深く入り込んでいて、多くの人がその性能に満足しています。だから、もはや小さな改良しか工夫する余地がないものが増えているのです。

●生き残りのための競争

 これまでは大きな船に乗れば、ほぼ一生安泰でした。これからは、大きな船に乗っていると、強いニーズに支えられた新しい技術革新がない中で、その船全体がグローバルなコスト競争に巻き込まれていきます。すると、競争は、ブルーオーシャンを切り開く競争から、レッドオーシャンで生き残る競争へと変化していきます。そうすると、個性的な知識や技能を持っている人以外は、機械化やIT化やより低賃金の労働力への代替によって、常にリストラの圧力にさらされるようになります。
 これまで、大きな船は安定の象徴でした。これからは、大きな船は、リストラの風雨をまともに受ける競争と淘汰の象徴になっていきます。それはちょうど巨大な恐竜が、小さな哺乳類に取って代わられたような、あるいは、戦艦巨砲主義が小さな飛行機の機動戦に取って代わられたような歴史の大きな曲がり角に現代の私達が到達しているからなのです。

●物の幸福から物以外の幸福へ

 生産は消費の影に過ぎません。物が作られるのは、それが売れるからで、それが売れるのはそれを買いたい人がいるからです。つまり、「欲しい」という欲望が世の中の動因となっています。
 今、供給の側の巨大化、効率化が行き詰まってきているのは、人々のニーズつまり欲望が物の所有という点でほぼ満足の限界にまで来ているからです。
 確かに、物に対するニーズはまだいくらかは残っています。広い家、別荘、自家用の船舶やジェット機などのような夢なら、誰でも思いつくことができるでしょう。また、世界中の砂漠の緑化、海洋開発なども人類全体の大きな目標になっています。しかし、先進国で物の豊かさをそれなりに実感してきた人は、それらの物の豊かさの先に本当の幸福はないとわかっているのです。
 物の所有はほどほどでよいと多くの人が考えるようになっています。食べ物を安全でありさえすればよく、安全と低価格と両立させるために自家菜園を行う人も増えています。家電製品は、機能がシンプルで使いやすく壊れにくいものでありさえすればよく、必要以上の飾りや付加価値に目を奪われる人はもういません。
 人間の幸福の焦点は、物の所有から、自分自身の経験、交流、向上、貢献、創造へと移ってきているのです。

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これからの世の中と子供の教育 その1 as/2395.html
森川林 2015/08/06 07:41 


●「子ども」か「子供」か

 9月号の「致知」という月刊誌の記事の中に、「子ども」か「子供」かという話が載っていました。これはたまに話題になることなので一言。
 「子ども」と書く人が多いのは、「供」には「お供」のように人を見下す意味があるからだそうです。その説自体も不確かなものですが、私はたとえその語源がどういうものであろうと、言葉の使い方を論じる際に、その中身ではなくニュアンスを前面に出すのは、思考を中断し、話を混乱させる原因になると思います。ニュアンスは各人の好みに任せるもので、共通の基準にするものではありません。ですから、普通の書き方は「子供」でいいと思います。

●競争に勝つことを目的にする時代は終わりつつある

 これまでの時代は競争の時代でした。競争には勝者と敗者がいます。敗者が遅れた者、劣った者、弱い者であり、勝者がその敗者を倒し敗者を支配することで世の中が急速に進歩してきました。
 これはあたりまえのことように思われるかもしれませんが、日本で一万数千年続いた縄文時代は、たぶん競争も勝者も敗者もない時代でした。江戸時代の庶民の生活も、同じように競争も勝者も敗者もきわめて希薄な生活だったでしょう。少なくとも競争に勝つことが人間の価値観の中心である社会ではなかったのです。
 では、競争ではなく、何が社会の中心になっていたかというと、それは助け合いです。強い者と弱い者がいた場合、強い者が弱い者を助ける社会だったのです。
 競争社会の喜びは勝利です。助け合い社会の喜びは共感です。相互の助け合いと相互の共感が、社会の絆となっていたのです。

●競争という価値観がこれからなぜ後退していくか

 競争が善だという価値観は、主に近代の欧米から世界に広がりました。その競争文化のひとつがスポーツで、そのひとつの象徴がオリンピックです。
 2020年に日本で開かれるオリンピックは、お祭りとしては多くの人に歓迎されていますが、いずれ今のように人と人とが競い合うことに激しく熱中する人は少なくなってくるでしょう。それは、野球でも、サッカーでも、ゴルフでも、すべて同じです。競争に勝つとか負けるとかいうことを、今のように大きな問題とは考えない人が増えてくるのです。
 では、なぜ競争という価値観が、これからは社会では後退していくのでしょうか。それは、単に人間の意識が変化するからではありません。その社会の特に経済の仕組みの根幹が、競争よりも助け合いの方に傾くからです。つまり、競争によって豊かになる時代は過去のものとなり、これからは助け合いによって豊かになる時代に移行していくからです。
 矛と盾が競い合い互いにより強い矛と盾になるという時代から、矛と盾が共存しさまざまな矛と盾のセットが生まれる時代へと変化していくのです。

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中1のころの作文は下手で当然。音読と問読で気長に作文力をつける as/2394.html
森川林 2015/08/05 14:29 


 小6から中1になると、説明文から意見文へと作文のジャンルが変わってきます(言葉の森で「作文」と呼んでいるのは、小論文も含めた幅広い文章作成とその文章のことです。人によっては「作文」と「小論文」をわざわざ分けて考える人がいますが、文章を書くという点ではどちらも同じです)。なぜ中1になると作文が下手になるかというと、意見文のジャンルの語彙がまだ十分に備わっていないからです。

 私立の有名中学に合格し、その後、東大や早稲田大や慶応大に進んだ人たちも、中1のころの作文は驚くほど平凡でした。
 しかし、その子たちのいいところは、定期試験のとき以外はほとんど毎週出席し、自分で長文を読んで自分なりに考えて書いていたことです。だから、高3のころはそれぞれ自力で立派な文章を書き、森リン点もほぼコンスタントに高得点を取っていました。

 家庭で子供の作文を見ていると、「長年やってきて、まだこんな文章しか書けない」とがっかりすることが必ずあります。しかし、そこでそのことを子供に言っても何の解決にもなりません。作文力は、体力と同じで、知識や理屈ではなく時間をかけることによってしか身につかないのです。
 では、何に時間をかけるかというと、それが音読です。課題フォルダの長文の音読を続けていれば、それによって次第に意見文の語彙力がついてきます。更に余力のある人は、問題集読書でやはり難しい文章に慣れておくといいのです。
 書く力は読む力に支えられています。ときどき、書くことがないとか、長く書けないとかいう子がいますが、その原因は読書をしていないことです。本を読んでいれば、自然に書くことが浮かんできます。本を読んでいないから書くことが出てこないのです。

 読書は食事と同じで、毎日読み続けていくことが大事です。3日分まとめて食べて、あとは食べないという食事のとり方をする人がいないように、読書も、昔たくさん読んだから今は読まなくてよいというわけにはいかないのです。
 読書は、易しい本をたくさん読むよりも、難しい本を少しでも読む方が力がつきます。しかし、難しい本を読むことだけに絞ると、全体の読書量が減り結局難しい本も読めなくなります。易しい本の多読を一方でしながら、問題集読書のような難しい文章の復読を平行して進めていくのがいいのです。

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コトタマ 20150805  
紹介

日本語の起源・言霊百神

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記事 2393番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/11/15
寺子屋オンエアの夏休みはウェブ講座で as/2393.html
森川林 2015/08/04 14:27 


 言葉の森の8月10日~15日は、休み宿題になります。
 寺子屋オンエアも、8月10日~15日は、休み宿題になります。
 先生からの話はありませんが、いつもと同じように家庭学習を続けていってください。
 先生の話がないかわりに、ウェブ講座を開催しますので、時間のあるときにごらんください。8月10日から、通常の寺子屋オンエアの入口になっている「生徒ページ」にリンク先が表示されるようにします。
https://www.mori7.com/teraon/seito.php
 youtubeの限定ページですので、その期間内であればいつでも見られるようにしておきます。

■夏休み
 いずれも15分ぐらいの短めの講座にする予定です。

●19×19の掛け算を覚える一九一九講座
 夏合宿でも行いましたが、九九を9×9=81で終わらせずに、19×19=361まで広げていく練習です。やる前は簡単そうに見えますが、実際にやってみるとこれがかなり難しい。しかし、やり方がわかれば誰でも必ずできるようになります。覚えているうちに、数字が友達のように感じられるようになります。

●中学入試から大学入試まで使える読解満点講座(保護者にもおすすめ)
 選択式の読解問題を解くときの考え方を説明します。例として取り上げるのは実際の入試問題で、それをどのように解いていくか理詰めで詳しく説明します。
 保護者の皆様もぜひごらんください。

●構成図の書き方講座(保護者にもおすすめ)
 作文を書くとき、複雑な問題を考えるとき、構成図の書き方を知っていると便利です。お母さんが子供に作文の書き方を教えるときにも使える構成図の書き方を説明します。

●読書がどんどんはかどる付箋読書講座(保護者にもおすすめ)
 1冊の本がいつまでも終わらないとか、読書がなかなか進まないなどという人には、付箋読書という方法が役に立ちます。付箋をつけて読んでいくと、難しい本もすぐに手にとって読めるようになり、長時間読んでいても読書に飽きなくなります。

●いいお話講座
 子供向けの心の洗われる話、勇気の出る話、明るい気持ちになる話を紹介します。

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寺子屋オンライン(101) 

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夏休み自然寺子屋合宿終わる as/2392.html
森川林 2015/08/02 10:59 


 今年の夏休み自然寺子屋合宿は、7月29日から31日までの2泊3日で行いました。
 宿泊場所は、横浜市の野島青少年センターで、学年は幼長から小6まで合計24名の子供たちが参加しました。

 取り組んだ内容は、勉強面は、暗唱と作文でした。1日目の暗唱は、12×11=132、12×12=144、12×13=156と12の段の九九の暗唱。暗唱の内容そのものよりも、ただ繰り返せばだれでも暗唱できるようになるということを実感してもらうための勉強でした。2日目の作文は、遊びの記録を書いてもらうことが目的でしたが、海に行ったあとの2日目の夜の勉強だったので、みんなくたびれていたようです。

 遊びの企画は、1日目はいかだ作り、ナイトウォーク、2日目は荒崎海岸で海遊び、バーベキュー、カニ釣り、スイカ割り、3日目は教室に戻って自己紹介ゲームでした。

 1日目のイカダは、子供たちが作り方を工夫して面白い形のものを作っていました。
http://www.youtube.com/watch?v=nKAQkY9GhMs&feature=youtu.be

 2日目の荒崎海岸は、ちょうど大潮だったので普段なら行けないような沖まで潮が引き、ウニやカニやタコが取れました。
https://youtu.be/0lLBamgKKAI

 言葉の森は、通信の生徒が多いので、普段はなかなかリアルな接触ができません。
 今回、2日間一緒に寝泊まりしたことによって、親しくなった子供たちも多かったと思います。

 寺子屋オンエアに参加している子は、画面でお互いの顔がわかりますから、このあと寺子屋オンエアの中で、交流の続きが始まる子もいると思います。

 今回参加したのは、ほとんどが関東地方の子供たちでしたが、今後は関西地方でも合宿を企画していきたいと思っています。


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合宿(14) 

記事 2388番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/11/15
「褒める子育て」の経済学の向こう側 as/2388.html
森川林 2015/07/24 08:24 


 「褒める子育て」と「高い学力」に相関関係はありますが、それは単純な因果関係ではありません。むしろ、短期間で言えば、「叱る子育て」の方が学力の伸びは高い傾向があります。
 しかし、「叱る子育て」を基本にしていると、勉強はだんだん暗い雰囲気になってきます。

 競争も同じです。競争のない状態よりも競争のある状態の方が、学力の伸びは高くなります。しかし、競争を基本にしていると、物事や人間に対する視野が狭くなるのです。

 だから、「褒める子育て」は、経済学として考えるのではなく、人間の生き方や社会のあり方として考える必要があります。
 江戸時代の教育は、叱ることや競争を煽ることを極力避けて、子供の本来の自然を伸ばすような教育でした。しかし、それで学力が低下していたかというとそういうことはなく、当時の世界最高水準の教育が実現していたのです。

 子育ては、学力の面だけで考えるのではなく、人間の成熟という面で考える必要があります。
 大人でも、不満や愚痴をよく言い、世の中を批判し、機嫌のいいときよりも悪いときの方が多いような人は未熟な人です。そういう大人に「叱る教育」をされて学力が伸びたとしても、その子が望ましい成長をしているとは言えないでしょう。

 教育に関する客観的な調査や研究は、もっと進められる必要があります。しかし、同時にその客観的なデータの向こう側を見る人間観を持つことは、もっと大事なことなのです。

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子育て(117) 

記事 2387番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/11/15
子供のころから生き物のいる生活を as/2387.html
森川林 2015/07/23 10:41 

 子供たちは、生き物が大好きです。言葉の森の港南台教室には、犬が1匹と鳥が4羽いて、最近はメダカもいます。教室の階段を登ってくるところには、スズメがいつも飛んでいます。教室の外にある電気メータの中に巣を作っているのです。
 こういう生き物を見ると、子供たちはすぐさわりたがります。犬や鳥は迷惑そうにしていますが、子供たちは生き物が大好きです。

 さまざまな動物と人間との交流が描かれている「ソロモンの指輪」という本には、動物と一緒の生活をしたことのない人には人生の喜びの半分が隠されている、というようなことが書かれています。犬や猫や鳥を飼っている人には、こういう言葉は実感を持って感じられると思います。

 この動物と接する喜びの感情というのは、人生の初期に形成される気がします。
 私(森川林)の場合は、物心ついたときから、家には犬とチャボとアヒルがいました。それらの動物が家族と同じような感じで暮らしていました。
 また、昔は野良犬がよくいたので、小学生のころは、近所の友達と一緒に近くの野原で野良犬を半分飼っていました。飼うといっても、野原で一緒に遊びときどき餌をやるという程度でしたが。
 中学生になると、親に頼んでジュウシマツを2羽買ってもらい、生まれた雛を何羽も手乗りにして遊んでいました。
 そういう小動物が近くにいると、それだけで何となく幸せな気持ちになるのでした。

 そこで、自分の子供が生まれたときにも、できるだけ早く動物を飼おうと思いました。
 幸いというか何というか、子供が小学校に上がる前のころ、近所の公園から野良猫を1匹連れてきました。そのうち、その野良猫が家に居つくようになり、やがて子猫が何匹も産まれました。
 同じころ、ゴールデンリトリバーの子犬を飼うようになり、猫と犬と人が共存する不思議な暮らしになりました。ゴールデンリトリバーは温和な性格で躾もよくできたので、海や山に遊びに行くときもいつも一緒に連れていきました。海では子供たちと一緒に泳ぎ、山ではテントで一緒に寝るという生活が、ちょうど子供たちの成長に合わせて十数年続きました。

 人間になつく動物というのは、一緒にいるだけで幸福な気持ちになれます。
 今ふりかえると、自分が子供にしてあげた中でいちばんのプレゼントは、この犬を飼ってやったことではないかと思うのです。


※現在の住宅環境では、犬を飼える家は少ないと思います。そういう家では、文鳥やオカメインコなどを手乗りにして飼うといいと思います。(ただし、オカメインコはコードをかじったり、パソコンのキーボードをはずしたりします。)

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子育て(117) 

記事 2386番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/11/15
新しい教育方法の提案、寺子屋オンエア講師養成講座の募集開始 as/2386.html
森川林 2015/07/22 08:41 


 日本の教育は、諸外国と比べれば総体ではうまく行っていると思います。しかし、教育の本来の理想から見れば、不十分なところが数多くあります。

 第一は、受験のための枝葉の知識の詰め込みに追われ、真に実力をつける教育になっていないことです。
 第二は、学校や塾という外部の機関に依存し、家庭や地域に根ざした教育になっていないことです。
 第三は、点数化されるものだけを重視し、文化を伝える教育になっていないことです。
 第四は、競争に勝つことが目標になり、独立と創造を目標にした教育になっていないことです。

 これらを克服する新しい教育方法として言葉の森が提案するのが寺子屋オンエアです。
 これは、インターネットを利用して子供が家庭で自由な時間に勉強し、それを講師がリアルタイムでトータルに見守り必要なアドバイスをするという教育方法です。

 リアルタイムでというのは、子供が勉強している間、常に実際の先生が近くにいるということです。
 現在のネット教育の多くは、子供の勉強の結果を機械が処理するだけで、人間の先生はネットの向こう側にいます。
 だから、子供の興味をひくいろいろな工夫がなされているように見えても、それで意欲を持続できる子は少ないのです。

 トータルにというのは、子供が勉強している様子が、そのまま先生には手に取るようにわかるということです。
 通常の通信教育では、先生には勉強の結果が伝わるだけで、その子がどのような状況で勉強したかまではわかりません。
 勉強の結果と同時にその過程も見られるので、勉強だけでなく、勉強の仕方や、勉強以前の生活の工夫のようなこともアドバイスすることができるのです。

 更に大事なことは、寺子屋オンエアは、家庭での自学自習を勉強の基本としていることです。
 今の子供たちは、学校でも塾でも人に教わることに慣れています。しかし、教わっている間は本当の実力はつきません。
 教わったあと、自分なりにその勉強を身につける学習をすることによって初めて実力がつきます。
 勉強の基本は自学自習で、手取り足取り教えてもらうのではなく、わからないときだけ質問できる人がいれば、それが最もよい勉強環境なのです。

 この寺子屋オンエアの講師になるためには、どのような能力が必要でしょうか。
 第一は、バランスが取れていること、明るく前向きなこと、どのような子供に対してもそのよい面を引き出そうとする姿勢を持っていることです。
 第二は、学力です。しかし、社会人になってからも、子供と同じような全教科の勉強のレベルを維持している必要はありません。必要があればできるということでいいのです。
 学力のいちばんの基礎は、国語の読解力です。センター試験の現代文でコンスタントに8割取れる力があれば、小中学生の英数理社は必要に応じてできると考えてよいのです。
 第三は、新しいことに対する適応力です。寺子屋オンエアは、パソコンとインターネットを使うために、新しい技能を習得する場面が数多くあります。
 しかし、パソコンやインターネットにあらかじめ詳しい知識や技術を持っている必要はありません。適応力と読解力さえあれば、努力次第で誰でもできるようになるからです。

 日本の教育は、家庭から変えていく必要があります。
 家庭での学習さえできていれば、学校はその結果をときどきチェックするぐらいでも十分なのです。
 しかし、家庭学習を親と子だけで進めようとすると、途中で必ずと言っていいほど行き詰まることが出てきます。それは、親自身が子供に勉強を教える方法を試行錯誤で進めなければならないからです。
 だから、寺子屋オンエアで客観的な教育方法のフォローを受けながら、親と先生が二人三脚で子供の教育にあたるというやり方が最も理想的なのです。

 寺子屋オンエアの講師は、一般的には、既に子育てを終えた年配の人が理想です。もちろん若くて情熱のある人も、そのよさを生かせばよい教育ができます。
 しかし、講師には、ただ勉強ができるだけでなく、社会生活の経験の豊富な人の方が向いています。社会的な経験のある人は、勉強の面だけでなく生活面や文化面でも自然に子供に大事なことを伝えることができるからです。

 言葉の森が考えている日本の教育改革のイメージは、全国の子育てを終えた高齢者が、自分の社会生活の経験を生かして、全国の子供たちの家庭学習をインターネットを通じて自宅で毎日見て上げられるようになることです。
 インターネットを利用した教育ですから、遠方の子でも海外の子でも、どの時間帯でも、毎日勉強を見ることができます。
 また、勉強だけでなく、ネットを利用した子供たちの交流もできますし、時には集合場所を決めて実際に集まって交流することもできます。

 言葉の森は、こういう新しいバランスの取れた自然な教育を、低価格で日本中に広げていきたいと思っています。

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村本 滋 20150723  
寺子屋ってのは、江戸時代の諸藩が、次の時代の藩政を担う人材を育てることを目的に、一堂に会して切磋琢磨させることが原点だとしたら、この企画は、なんか得心に至らないです。
発案者の方には、批判的で申し訳ありませんが、わたしの率直な感想です。すみません。

森川林 20150724  
 村本さん、コメントありがとう。
 その考えは違います。(あっさり)
 藩校はどちらかと言えばより権威主義的、寺子屋はより庶民的大衆的なものでした。
 教育の方法論は共通していましたが、先生も生徒も大衆の自発性に依拠していたというところが当時の世界では画期的だったのです。

こねこ 20160202  
寺オンの講師はまだ募集していますか?資格など必要ですか?

森川林 20160203  
 こねこさん、お問い合わせありがとうございます。
 2月から寺オン講師講座の研修が続いてしまうため、今は一時休止にしています。研修が終わりましたら、また再開します。ホームページでお知らせしますのでお待ちください。

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小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
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手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習