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対話の中で育つ思考力 as/1514.html
森川林 2012/04/09 19:55 



 新年度が始まり、どの学年の作文も、一段階難しくなりました。

 小学校3年生は、急に題名課題や感想文課題が出てきて戸惑っていると思います。毎年、何人かの方から、「題名が決まっていると書きにくい。自由な題名にしてほしい」という要望があります。しかし、やがて子供自身が題名課題に慣れてきて、どの子も課題に合わせて書くことを考えてくるというようになります。

 小学校5年生は、課題そのものが急に難しくなりました。感想文の課題の週が増え、それも難しい文章を読んでの感想文ですから、どの子もしばらく苦労すると思います。しかし、5年生は、難しいことにチャレンジすることを喜ぶようになる年齢なので、この難しさも正面から取り組めばかえってやりがいのあるものになってきます。

 中学1年生は、意見文の書き方で構成を重視した文章を書くようになります。これも、新しい書き方なので、最初はなかなか書きにくいと思います。しかし、慣れてくると、ひとつのパターンに当てはめて書くということがわかってくるので、将来小論文の試験があったときも、わかりやすい構成で書くことができるようになります。


 さて、学年ごとにそれぞれ難しい課題になった今日、通学教室の4.2週の勉強を見ていて、生徒がみんなよく準備してきているのに驚きました。どの子も、事前に長文を読んだり、課題を考えたりしてきていました。あらかじめ構成図を書いて、お父さんやお母さんの話を取材している子もかなりいました。

 事前の準備でお父さんやお母さんと対話をしてくることが、子供たちの理解力、思考力、表現力に大きなプラスになっていると感じました。家族との対話が、子供たちの学力にどういう影響を与えるかという研究はたぶんまだどこでもやっていないと思います。だから、データ的にはっきりしたことは言えませんが、子供たちの様子を見た感じとしては、対話によって生きた国語力が身についているという印象でした。それは何かというと、人の話を理解し、その話を自分なりに咀嚼し、それに対して自分なりの考えを組み立てる力です。


 家族との対話で、いちばんいいと思ったのは、どの子も家庭で楽しく話しているということでした。お父さんやお母さんや兄弟と、普段話さないような分野でいろいろな実例を出し合って、時には脱線しながら話している様子が作文の中から伝わってきました。楽しく勉強しているときは、頭脳が活性化するので、勉強全体の定着率がよくなります。家族との対話は、国語の力をつけるだけでなく、勉強全体の力をつける支えてになっているのではないかと思いました。

 こういう対話を毎週している子は、たぶん、将来大人になったときも、この楽しさを思い出して、子供に言葉の森を習わせるだろうと思います(笑)。毎週、勉強的なことをテーマにして家族で話をするというのは、これから作文の文化として少しずつ広がっていくのではないかと思いました。


 家族との対話で、もうひとついいと思ったのは、家庭によってはかなり深い話を子供にしているということです。長文の感想文を書く場合、既にあるヒントを見て先生の説明を聞くだけでは、その範囲のところまでしか考えが及びません。しかし、家庭によってはお父さんやお母さんが、自分の体験などをもとに更に深い話をしているということがあります。身近なお父さんやお母さんが、実感を込めて話す内容は、普通に本を読んで得る知識よりもより深く子供たちの心の中に入ります。これは、人と話をしているとき、だれでもときどき感じることだと思いますが、相手に確実に何かが伝わったという感覚です。そこで伝わるものは、表面的な知識ではなく、その奥にあるお父さんやお母さんの生き方のようなものだと思います。こういう話を聞いてくる子は、考えの深い子になるだろうと思いました。


 作文を書くというのは、勉強のひとつの結果です。書くこと自体にももちろん意義はありますが、最近感じるのは、書く前のところでもっと大きな得るものがあるということです。そのためには、子供が毎日長文を音読し、それをお父さんやお母さんに説明し、また、その子供の説明を聞いてお父さんやお母さんが似た話をしてあげてと、かなり回りくどい過程があります。しかし、それらの過程は、面倒だと思えばもちろん面倒ですが、その過程が楽しいと思えばまたとても楽しいものなのです。対話を生かした勉強というのは、まだ必ずしも全体に広まっているとは言えず、あいかわらず子供がひとりで授業の直前に長文を読んで、先生の説明だけで感想文を書いているということもあると思います。しかし、今日の子供たちの勉強の様子を見て、これから少しずつこの対話の面白さと勉強における意義が広がっていくと思いました。

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ちゃくちゃく 20120410  
先日森の便りに載った作文を祖父母に見せたら、たくさん褒めてくれ、感想まで書いて送ってくれました。今週のはまだ載らないのとも催促されました。入力は大変ですが、出来るだけ読ませてあげたいです。

森川林 20120410  
 ちゃくちゃくさん、それはいいですね。
 今度、感想文の課題を書くときなど、おじいちゃんやおばあちゃんに似た例を取材して、それを書いてあげると面白いと思います。

りゅうきんふく 20120415  
感想文の課題を書くことではなく、日常生活でも対話が思考力を育つ野に非常に役立つとおもいます。

りゅうきんふく 20120415  
それにしても、筆者が生徒たちが両親との対話を通し自分の思考力を育ち文章の中にもそれを示させるのを発見したのは、かなり珍しいものです。

森川林 20120415  
 作文を書くというのはひとつの結果で、その結果を出すために事前に読書をしたり対話をしたり考えたりするところが本当の勉強の中身になっているのだと思います。

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塾ではない言葉の森 as/1513.html
森川林 2012/04/08 08:10 



 言葉の森は、作文や国語の塾のように思われていますが、そうではありません。

 その理由は第一に、塾というのは、何かの手段(おもに勉強の成績を上げるための手段)を提供するものだからです。成績を上げる究極の目的は、志望校に合格することですから、受験のための力をつける手段を提供するのが塾です。言葉の森は、そういう手段としての勉強ではなく、目的としての勉強として作文を考えてきました。その目的とは、理解力、思考力、表現力、そして創造力を育てる勉強としての作文という意味です。

 第二の理由は、言葉の森の勉強が目指しているものは文化としての勉強だからです。文化としての勉強には、ピアノ、バレエ、そろばん、書道などがあります(そろばんは、実益的な面がありますから多少性格が違いますが)。文化としての勉強は、その学習の中に進歩する目安と目指すべき目標があります。同じように、言葉の森も、作文の勉強の中に、他に依存せず言葉の森の中だけで進歩していける基準として、森リンの点数、進級制度、さまざまな賞を作っています。

 確かに、作文の文化というものはまだはるかに未完成です。それは、その勉強の成果の頂点となるものが、まだはっきりと現れていないからです。また、文化として確立されるためには、もっと日本の古典に根差したものにしていく必要があります。しかし、文化としての作文という方向さえ定まっていれば、これらは時間の経過の中で必ず達成されていくと思っています。この文化としての作文の勉強をすすめていくと、その副産物として作文の試験や国語の試験に合格する、というのが言葉の森の作文と今の受験体制の中での勉強との関係です。

 将来、受験体制というものはなくなっていきます。それは、選抜などしなくてもだれでも自由に学べる環境が整い、他人に評価されるための勉強ではなく、自分の向上のための勉強へと、勉強の性格が大きく変わってくるからです。言葉の森は、そういう先の展望を見ているからこそ、塾としての作文ではなく、文化としての作文を目指しているのです。

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