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記事 2881番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/19
書き出すのにエネルギーが必要な作文の勉強も、みんなと一緒なら書きやすくなる as/2881.html
森川林 2017/03/10 04:55 


 作文の勉強というのは、始めるのに大きな精神的エネルギーを必要とします。
 読書感想文の宿題を思い出してもわかるように、締め切りぎりぎりにならないと、なかなか始められないのです。

 お母さん方は、よく「ほら、早く作文書いてしまいなさい」などと言いますが、それですぐに、「はい」と始められる子はあまりいません。

 作文の通信教育が続けにくいのは、そういう事情があるからです。

 言葉の森の場合は、先生から直接電話があるので、その電話をきっかけに始めることができますが、教材だけ送られてくる通信教育では、作文の勉強を続けるには、親の関与がかなり必要になります。

 小学校低中学年のころは、書く内容も事実中心なので、それでもある程度強制して書かせることはできますが、高学年になり考える課題になってくると、書けないときはどうしても書けないとなるときもあります。

 ある意味で、作文の勉強が家庭でしっかり続けられる子は、どの勉強もできる子だと言えると思います。
 これは、以前、社会人で最初の級から最後の級まで全部続けた人が言っていたことですが、「この作文の勉強を続けている子だったら、何でもできる」ということは本当なのです。

 そこで、通信教育よりも、通学教育の方が続けやすいと思う人もいると思いますが、この通学教育がまた難しいのです。
 通学教室で大勢が作文を書いていると、中に、必ずぶつぶつとお喋りする子が出てきます。

 喋るという意識なく、独り言を言いながら作文を書く子です。すると、その言葉に反応する子が出てきます。
 1クラスに数人そういう子が出てくると、全員が作文を書けなくなります。それは、特に日本人は、人の話し声のあるところでは、ものを考えることが難しいという脳の構造を持っているからだと思います。

 数学や英語など他の教科の勉強でしたら、多少お喋りのあるところでも、そのお喋りを無視して勉強を続けることはできますが、作文を書くという勉強は、話し声のあるところではなかなかできません。
 だから、テレビをつけっぱなしの環境で作文を書かせるなどということはしてはいけないことなのです。

 ところで、こういう通信教育の長所短所と、通学教室の長所短所をうまく組み合わせることができるのがオンラインのグループ教育です。
 先生との話は個別のやりとりですから、ほかの人には聞こえません。だから、静かな環境で作文やほかの勉強の集中することができます。
 しかし、決して孤独な勉強ではなく、同じ時間に一緒に勉強している友達の姿が見えます。ウェブカメラを机上に向けていれば、互いにどういう勉強をしているのかもわかります。
 すると、自然に自分も自然に勉強を始められるようになるのです。

 物理学で、静止摩擦と運動摩擦というものがありますが、最初のスタートに必要なエネルギーに比べると、動き出してからのエネルギーはずっと少なくて済みます。場合によっては、動きを止めるのにかえってエネルギーが必要なほど、動く慣性が出てくることもあります。

 この集団の力学をプラスの方向で生かせる勉強を作っていきたいと思っています。

====
「寺子屋オンエアをなぜ始めたか」
https://www.mori7.com/index.php?e=2089

 小学校低学年までの子供たちは、お父さんやお母さんを基準にして暮らしています。だから、この時期は、親の言うことをよく聞きます。

 しかし、小学3年生から、次第に親よりも友達を基準にすることが多くなり、その状態が中学2年生くらいまで続きます。

 中学3年生になると、自我が成長してくるので、友達という他人よりも自分自身の内面が基準になってきます。

 したがって、小中学生の勉強を軌道に載せるためには、友達関係を生かしていく必要があります。

 江戸時代の寺子屋で多くの子供たちが早朝から昼過ぎまで素読やなぞり書きのような単調な学習を続けられたのは、一緒に机を並べる多数の友達がいたからです。つまり、一緒に同じことをする仲間がいると、退屈なことでも続けられるのです。

 「見える学力見えない学力」を書いた岸本裕史さんが始めた家庭塾でも、運営がうまく行くコツは、やはり友達が数人集まるということでした。ただし、その代わりに、私語は厳禁という明確なルールがありました。子供たちの集団学習に、先生や親という大人が必要なのは、子供たちだけでは必ず最もお喋りな子に全体が引きずられるからです。

 教育法制化運動の向山洋一さんの著書に、受験時代に経験した集団学習の効用の例が載っていました。向山さんは、受験生時代、友達の家に行って一緒に勉強をしたそうですが、ただ一緒にいるというだけで、互いに別のことを黙々とやっていたそうです。そして、勉強が終わって帰るときに、二人で囲碁や将棋をして短いおしゃべりを楽しんだということです。

 このような例を見ると、勉強でも仕事でも、長時間続ける意欲は、同じことをしている誰かが一緒にいるというところから来ていることがわかります。ところが、友達と一緒に勉強するという環境が、個人ではなかなか用意できません。岸本裕史さんが提唱したように、近所の家族どうしの持ち回りで家庭塾を開くというのが理想ですが、狭い住宅環境という問題や、少子化で近所に友達が少ないという問題で、なかなか簡単に集まって勉強するという仕組みは作れません。

 そこで、ほとんどの家庭は、近くの学習塾に子供を通わせるようになります。家で子供がひとりで勉強するだけでは、すぐに飽きてくるからです。しかし、学習塾の問題は、勉強が他人依存になりがちだというところにあります。

 自分のペースでできる自習を家庭で行えるようにし、しかも家庭をネットでつなぎ、同年齢の子供たちが一緒に勉強している様子がわかるようにして、先生も(時には親も)そのオンエアの勉強に参加できるようにするというのが寺子屋オンエアの構想です。

 現在、寺子屋オンエアに参加されるモニターを募集しています。詳細をお知りになりたい方は言葉の森までお問い合せください。
====

▽寺子屋オンライン
https://www.mori7.net/teraon/

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森川林 20170310 1 
 小学校3年生ぐらいまでは、親子だけで勉強を続けることができますが、子供が小学4年生ぐらいになると、親子だけの勉強には次第に限界が出てきます。
 しかし、本当は、中学3年生まで、子供の勉強は親が見てあげられるぐらいの方がいいのです。
 中学生で成績のいい子は、ほぼ例外なく親が勉強の内容を把握しています。
 塾に任せっぱなしで、どういう勉強をしているのかわからないという家庭では、子供はかなり無駄な勉強の仕方をしているからです。
 そこで生かせるのが、昔、岸本裕史さんが行っていた「家庭塾」のようなグループで行う家庭学習です。


nane 20170310 1 
 子供の勉強をいちばんよく見てあげることのできるのは親です。
 それは、親が最もよくその子の成長を願っているからです。
 だから、小さいころを特に親が子供の勉強に関わってあげるといいのです。
 しかし、親だけでは偏りが出てきます。いちばん問題になるのは、やりすぎてしまうことがあるということです。
 子供が初めての勉強で大変なように、親も初めての子育てで実は大変なのです。


namura 20170310 10 
同じ空間にいると遊んでしまうこともありますが、頑張っているみんながむこうにもいると思うだけで、やる気が出そうですね。

touko 20170310 77 
帰国子女や海外在住のお子さんは特に、読み書きに苦手意識が強く、書き出しに苦労しているようです。みんなががんばっている姿が見えるというのは、モチベーションアップに大変有効です。

kira 20170310 52 
 インターネットを気軽に使用できるようになったことで、理想的な勉強のかたちがとれるのですね。

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ユーザーエクスペリエンスの時代と寺子屋オンライン as/2880.html
森川林 2017/03/09 20:28 


 最近「UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか」という本を読み、これからの世の中の流れを再確認できた気がしました。
http://amzn.asia/gfzxl1B
 UXとは、ユーザーエクスペリエンスのことです。

 例えば、消費者がパン屋さんにパンを買いに行くとき、消費者は実はパンを買いたいのではなく、パン的なおいしいものを食べるという経験を買いたいのだということです。

 これまでの経済観で考えると、パンを買いに行った人が、もし、パン屋さんに、「パンじゃなくてもいいから、何かおいしいものがありますか」などと聞けば、パン屋は、「それはうちの仕事ではない」と思ったでしょう。

 しかし、これからは、自分のパン屋という都合よりも、消費者の希望する経験の方を優先する考え方が必要になってきます。
 そこに登場するのが、クラウドサービスを中心にした新しいツールと、消費者自身が生産にも参加する仕組みです。

 寺子屋オンラインが目指している方向も同じです。
 まず、キーとなるツールの一つは、googleハングアウトというウェブ会議システムです。
 そして、勉強の中身は、先生の授業よりも、生徒の主体的な参加です。
 そこに、生徒と保護者の家庭におけるコミュニケーションが加わります。

 ただし、これだけでは基礎学力をつける時間がとれないので、そこはgoogleハングアウトを使った自学自習の仕組みでカバーしていきます。
 また、勉強の先取りは、スタディサプリなどの活用でそれぞれの家庭でやっていけるようにします。

 また、消費者のユーザーエクスペリエンスが、生産者の側の勝手な思い込みにならないように、できるだけ頻繁に保護者懇談会などの形で互いの考えを交流するようにします。

 未来の教育は、今とはかなり違う形のものになると思います。
 そして、それは教育に限らず、社会のあらゆる分野で起こりつつある一つの革命的な変化なのです。

====
「寺子屋オンエアの未来形―勉強力をつけたあとは個性を伸ばす教育」
https://www.mori7.com/index.php?e=2308

 寺子屋オンエアは、家庭学習だけで基本となる勉強力をつけるという企画です。
 勉強は、誰かに教えてもらうよりも、自分ひとりでやった方がずっと能率よくできるものです。しかし、家庭でひとりでやっていたのでは、あまり張り合いがありません。また、たまには、誰かに聞きたいことが出てきます。そのときに、一緒に勉強している友達がいて、見守っていてくれる先生がいれば、家庭でのひとりでの勉強もずっとやりやすくなります。
 インターネットは、そういうグループ学習と個人の学習を結びつけることができるようになりました。家庭という最も居心地のよい環境で、友達や先生と一緒に勉強することができるようになったのです。

 ところで、今言葉の森が考えているのは、この寺子屋オンエアの未来の形です。
 基本となる学習は、確かに寺子屋オンエアでできるようになります。しかし、その能率のよい勉強でできた自由な時間を、ただテレビを見たりゲームをしたりしているだけでは、充実した時間の使い方とは言えません。
 そこで、その自由な時間も、寺子屋オンエアの特別コースに参加できるようにするのです。その特別コースには、ロボット作りコース、音楽交流コース、ファッションコース、お菓子作りコース、テーマ別た読書会コースなど、教える先生の個性と生徒の個性がマッチしたものが多数できるはずです。
 通常の交流は、家庭でネットを使って行いますが、時どきは実際に会って交流する機会も作ります。
 これからの時代は、特に個性や創造性が必要となってきます。その個性や創造性もまた、人間どうしの交流の中で進んでいくのです。
====

 寺子屋オンラインの受講案内を大幅に改定して読みやすくしました。
https://www.mori7.net/teraon/
 全20ページの長い受講案内ですが、内容は必要なものだけにおさえています。
 しかし、内容はこれまでの受講案内よりも豊富になっています。


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森川林 20170309 1 
 ウーバーやエアビーアンドビーが、これまでの社会で当然のように成り立っていたビジネスを根底から崩しています。
 同じようなことが、これから社会のさまざまな分野で起こってきます。
 教育の分野では、これまでの教わる教育から、自ら学ぶ教育へ、そして、聞くだけの受け身の教育から、思考と発表を中心とした教育へという大きな変化が起こっているのだと思います。



nane 20170309 1 
 ふと、あと数年したら、世の中が大きく変わっているだろうと思いました。
 大事なことは、世の中の流れに乗ることではなく、自分の望む流れを作ろうとすることです。
 みんながそれぞれによい流れを作ろうとすれば、そういう流れが現実のものになってくると思います。


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記事 2879番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/19
子供は家庭の中で育つ as/2879.html
森川林 2017/03/07 20:48 


 子供が成長する場は家庭です。
 学校でも塾でも何かの習い事の教室でもありません。

 家庭でのお父さんとお母さんの関わり方が、子供の成長のエネルギーになっています。

 子育てに手がかかって大変だというのは、あとからふりかえればほんのわずかの時期です。
 そのわずかの時期に手をかけることが、あとで親にも子にも何倍にもなって戻ってくるのです。

 では、具体的にどうしたらいいかというと、それは、読書と対話と経験です。
 お金をかけてどこかのレジャーランドに連れていくようなことではなく、日常の生活の中で、子供が興味を持つようなことを一緒にやってみるのです。

 先日の小2と小3の思考発表クラブで紹介した話は、「ジグも釣り」でした。
 今日の新小4の思考発表クラブでで紹介した話は、「山菜採り」でした。

 こういう実際の自然の体験をもとに、親子でいろいろなことを話してみるのです。
「どうして、ジグモは土の中に巣を作るような生活を始めたんだろう」とか
「どうして、タラの木には棘が生えているんだろう」とかいう話です。

 今の社会には、答えのある質問にどれだけ早く答えられるかいう評価が溢れています。
 だから、家庭では、答えのない考える対話を親子でたっぷりしていくといいのです。

 では、答えのある問題に早く答える力はどう育てたらいいかというと、それは自学自習です。
 勉強の基礎と先取りは、自学自習でしっかり身につけ、その結果余裕のできた時間は、読書と対話と経験で充実させていくといいのです。

====
「仕事優先の社会から子供優先の社会へ」
https://www.mori7.com/index.php?e=1464

 今は、大人の仕事や生活が中心の社会だが、
 将来は、子供の幸福な成長が中心の社会になる。
 仕事優先から子供優先になったとき、
 社会の質も変わってくる。

 子供が小学生なのに、父親だけ単身赴任という家庭があります。

 会社の都合が優先され、父親不在の家庭が生まれることによって、社会全体としては大きな損失を被っているはずですが、そのことを指摘する人はほとんどいません。

 仕事優先の考えが行きわたっているからです。

 子供が小学生なのに、仕事にくたびれたお父さんが、せっかくの日曜日に昼まで寝ている家庭があります。(あ、たまにはいいんですけど(笑))

 やはり、仕事優先の考えが行きわたっているからです。

 子供たちの成長の基盤になるのは家庭です。

 どういう家庭が理想かということは、自分が子供だったときのことを思い出してみればわかります。

 優しい父と母、楽しいお喋り、自由な時間が子供たちの宝物の時間だったはずです。

 そういう家庭文化を作っていくのが、これからの親も含めた社会全体の課題になると思います。


 今日は雨模様の静かな日曜日。

 こういう日も、まず家の中で、お父さんかお母さんが率先して太陽のような笑顔を見せることです。

 子供は影響されやすいので、すぐに楽しい笑い声が広がります。

 どんな天気の日も、家の中だけは快晴にしていきましょう。
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森川林 20170307 1 
 子育ての最中は大変です。手のかかることばかりがあります。
 しかし、じきに子供は成長して、どの子も手がかからなくなります。
 すると、そのころになって、もっと小さいときに手をかけてやればよかったと思うのです。
 だから、お父さんは、日曜日はがんばって子供と遊んであげることです(笑)。


nane 20170307 1 
 親子の対話で大事なことは、親は、自分の体験したこと、自分の考えたことを話すようにすることです。
 自分の知っていることを話すという知識のやりとりは、結局答えのある話になってしまうからです。


namura 20170308 10 
成長につれ、子どもとの関わりも減りつつありますが、それでもなお、会話を通し、コミュニケーションを大切にしてきたいですね。

mae 20170309 9 
外がどんな嵐であろうとも、家の中はいつも快晴で! 心がけていきたいです。

touko 20170310 77 
家庭の日常生活が、子どもの成長に与える影響の大きさを、もう一度自分の中で自覚したい・・・お父様お母様に読んでいただきたい記事です。

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記事 2878番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/19
国語力をつけるために家庭で簡単にできること as/2878.html
森川林 2017/03/05 03:12 


 国語力をつけるために、特別の問題集をやったり、新聞のコラムを要約させたりする必要はありません。
 もっと簡単に、問題集の問題文を読ませて、それをもとに親子で対話をすればいいのです。

 その際に大事なことは、親子でともに対話を楽しむことです。
 その対話の文化を作るためには、子供がまだ小さいころから親子で、何かのテーマについて話し合う機会を作っておくといいのです。

 作文の課題は、ちょうどその話し合うきっかけになります。
 低学年のうちは、低学年らしい楽しい課題として実行課題集があります。
 高学年になると、入試レベルの作文に対応した考える感想文課題が出てきます。
 そのそれぞれの課題に合わせて、親子で話をする習慣を作っておくことが、国語力を育てる最も簡単で確実な方法なのです。

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「国語力をつけるための勉強としての要約と対話について」
https://www.mori7.com/index.php?e=1763

 要約という勉強は、それはそれなりにいいのですが、難点は時間のかかることと、評価する人がいないとできないように思われていることです。
 言葉の森では、以前から、解く勉強ではなく読む勉強、形の残る勉強ではなく形の残らない勉強ということを言っていますが、この場合も、それがあてはまります。

 要約に時間がかかるのは、形の残る勉強だからです。形を残すことにこだわるから、内容がかえっておろそかになりやすいのです。
 大事なことは、要約を書くことではなく、元の文章を読み取ることです。だから、読み取ったことがわかればいいのです。
 その方法が対話です。

 例えば、子供がある長文を読むとします。言葉の森の課題の長文は1600字程度のものが多いので数分で読めます。しかし、難しい内容のものは1回読んだだけではあまり理解できないので、何度も繰り返し読む必要があります。
 文章というものは、もともと理解できるようにできています。その理解の仕方は、ひとつひとつの単語の意味を調べて積み上げるような分析的な方法によってではなく、文章全体を繰り返し読むという総合的な方法によってです。

 文章の理解というものは、○と×がつけられるような平面的なものではありません。浅い理解から深い理解へと何層にも分けられるような性質のものです。繰り返し読むことによって、最初はわからなかったことがだんだんわかるようになるという読み方ができるのです。

 そして、その文章を読んで自分なりに理解できた範囲で、子供がその内容をお父さんやお母さんに説明します。これが対話の出発点です。
 お父さんやお母さんは、元の長文を読んでいる必要はありません(読んでいてももちろんいいのですが)。ただ、子供の説明を聞いて、その内容がわかればいいのです。

 もし、説明がわかりにくければ、質問をすればいいだけです。文章の内容を自分なりに理解している子なら、そういう質問にもそれなりに答えられます。
 ここから更に発展して、お父さんやお母さんが、その説明に関連した似た例を話したり、互いに感想を述べ合ったりすれば、文章の理解はより深まります。

 対話は、要約に比べると形の残らない勉強です。しかし、準備も要らなければ評価も要りません。ただ家族で楽しく話をするだけで、要約よりももっと深い文章理解の勉強ができるのです。

 しかし、この対話という勉強法は、それなりの工夫も必要です。それは、家庭における対話の文化を作っておくという工夫です。

 多くの家庭では、子供が親に長文の内容を説明して、それをもとに楽しい対話が始まるというような経験をしていません。子供もそういう話をすることに慣れていないし、親もそういう話を聞くことに慣れていません。

 だから、最初は、子供に長文の内容を説明させても、ぽつりぽつりとしか話せません。親も、それを聞いているうちにいらだって、説明の仕方を注意するようになりがちです。それでは、楽しい対話ではなく、厳しい詰問になってしまいます。

 また、親が似た例を話すときも、本当は自分の体験に根ざしたことを話すのが大事なのですが、親の体面上知っている知識を話すだけになってしまうことも多いのです。そうすると、これも楽しい対話ではなく、つまらない講義を聞いているような話になってしまいます。

 では、楽しい対話をするためには、どうしたらいいのでしょうか。
 それは、子供が小学校低学年のまだ小さいころから、家族で楽しく真面目な話をする機会を作っておくことです。高学年になって難しい長文を読めるようになってからの対話では、うまく行かないことも多いのです。

 対話の第一の条件は、親が一切注意をしないということです。これは、作文にも、音読にも、暗唱にも共通します。

 よく子供が作文を見せてくれないという相談がありますが、それは作文を見て注意したことが何度かあったからです。同じように、音読を親の前でするのを嫌がるというのも、その音読の仕方を何度か注意したことがあったからです。子供が、親の前で長文の説明をするのを嫌がるとしたら、それは説明の仕方を注意したことがあったからです。

 言葉というものは、外から注意しなくても、繰り返すうちに自然によくなっていく性質があります。お父さんやお母さんが、今普通に文章を書いたり、読んだり、説明したりできるのは、だれかに注意されてできるようになったのではありません。長年、言葉の生活をする中で自然に身につけていったのです。
 だから、子供の作文や音読や説明も、自然に任せていれば自然にいいものになっていきます。

 それでは、なぜそれらの勉強をするかというと、機会を増やすことによってよりよいものになるからです。そして、機会を増やすためには、楽しく行うことが大事です。楽しく行うためには、小学校低学年(実はもっと小さい幼児)から、子供が文章を書いたり読んだり話したりすることを褒めて伸ばしてあげる必要があるのです。
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森川林 20170305 1 
 勉強は意欲によって身につきます。
 作文や対話がなぜいい勉強になるかというと、そこに伝えたい、話したい、聞きたいという動機が働くからです。
 その必要性によって考える力が向上するのです。

nane 20170305 1 
 対話というのは、知っている知識を伝達することではなく、それぞれのオリジナルな考えを述べ合うことです。
 そのために役に立つのが、親自身の子供のころの体験談です。
 テーマに合わせて、自分の小さいころの体験を思い出して子供に話すのが親子の対話の中心です。
 親の普段見られない小さいころのドジな体験を聞いて、子供は成長していくのです。


namura 20170305 10 
対話を楽しむ習慣があると、学年が上がっても同じように楽しむことができそうです。

namura 20170306 10 
躾も学習も、まずは家庭で行うことが大切ですね。

namura 20170307 10 
親子の対話は、楽しい上に、国語力がアップし、一石二鳥ですね。

mae 20170309 9 9 
特別なことをしなくても、家庭での楽しい会話が作文のヒントになっているのだなあと感じることがよくあります。講師もお子さんと楽しい対話を心がけ、作文のヒントを引き出していますが、やはりおうちでの対話に勝るものはないですね。

mae 20170309 9 
特別なことをしなくても、家庭での楽しい会話が作文のヒントになっているのだなあと感じることがよくあります。講師もお子さんと楽しい対話を心がけ、作文のヒントを引き出していますが、やはりおうちでの対話に勝るものはないですね。

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考える読書と対話が子供の思考力を育てる as/2877.html
森川林 2017/03/04 06:00 


 人間の能力は、必要によって開花します。
 思考力を育てるためには、思考力が必要な環境にする必要があります。
 それが、読書と対話です。
 内容を理解したいが、理解するためには考えないといけないというときに、考える力が伸びるのです。

 しかし、子供の周囲には、そういう考える読書の環境はあまりありません。
 それに応じて、家庭での対話も、日常的な話題に終始することが多くなりがちです。

 そこでおすすめしたいのが、問題集読書をもとにした親子の対話です。
 国語の入試問題には、一部に読み取りにくいだけのものもありますが、多くは考える内容を含んでいます。

 この問題集の問題の設問を解くのではありません。
 解く勉強は、解き方のコツとして短期間でできるのでそういうことに時間を使う必要はありません。
 そうではなく、ただ問題の文章を読むのです。
 それもただ読むのではなく、音読で、しかも1冊を読み終えたら最初に戻り繰り返し5回読むようにします。

 算数数学の問題集は、解けない問題が一問もなくなるまで解くことによって力がつきます。
 国語の問題集は、1冊を繰り返し読むことによって力がつきます。

 そして、家庭で対話の時間をとり、それまでに読んだ問題文の中から一つを選び、親子で話をします。
 この繰り返しの読書と、身近な人との対話によって語彙力がつき、理解力と表現力が伸びていきます。

 問題集読書を始めると、必ず国語の成績が上がります。
 国語力とは、結局読解力で、読解力とは思考力のことです。
 そして、思考力に必要な語彙力は辞典などで身につけるものではなく、読書と対話という必要に応じて自然に身につくものなのです。

 ただし、問題集読書は、実は家庭で続けるのはなかなか大変です。
 それは、読む力がついていないうちは、問題集の文章は難しいだけで面白くないからです。
 問題集の文章が面白くなるのは、読む力がついてからです。
 その読む力を最初につける練習が、今、自主学習クラスでやっている問題集読書のチェックです。
自主学習クラス( https://www.mori7.net/teraon/jiga/jiga.php

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「読解力、記述力のもとになる思考力を鍛える、国語問題集読書のあとの質問と対話」
https://www.mori7.com/index.php?e=2350

 子供の思考力を育てる最もよい方法は、考える読書と考える対話をすることです。

 寺子屋オンエアでは、国語問題集読書のあとに、生徒が50文字の感想を書きそれを発表します。そのあと、先生から生徒に簡単な質問があります。
 この質問にどう答えるかというのが、その生徒の読解力と思考力の指標になります。

 低中学年の読む文章は、内容を理解できているかということがわかりやすいのですが、高学年になると、どこまで深く読み取っているかという読みの深さの差が出てきます。

 従来の勉強の仕方は、先生が説明することを生徒が聞いて理解するという受け身のものでした。しかし、これでは表面的にわかったつもりになるだけの生徒も多かったのです。

 これからの勉強は、先生が説明するのではなく、生徒が説明するのを先生が聞くという形のものになります。これは、国語に限らず、算数数学の勉強でも同じです。自分ができなかった問題を解法を見て理解し、その理解したことを先生に説明するという勉強をすると、理解が確実に自分のものになります。

 読解力、記述力を鍛える勉強法は、これまではあまりありませんでした。これからは、問題集読書による難しい文章の復読、感想、質問と対話などが新しい勉強の方法になっていくと思います。
====

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森川林 20170304 1 
 思考力は、思考力をつける問題集を解いても身につきません。
 問題を解く勉強は、結局、解法を理解して覚える、記憶の勉強になってしまうからです。
 思考力は、思考を必要な環境に置かれることによって成長するのです。


nane 20170304 1 
 国語力をつける問題集などというものはありません。
 国語力は、教材によってつくのではなく、その教材の活用の仕方によってつくのです。
 その活用の仕方が、その教材を読むことと、その教材をもとにして対話をすることです。


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手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

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●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

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●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
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