昨日、教室がちょうど終わるころ、ファクスが届きました。
中学3年生で、高校入試の小論文の勉強を塾でしているが、そこで書いた文章がどうなのか、見てほしいというのです。
はいはい(笑)。
見ると、最初の意見から否定形で書かれています。
もとの課題文が、「○○は、必ずしも……ではないのではないだろうか」となっているので、それに合わせて、「私も、……でないと思う」という形で意見を始めています。
否定形というのは、範囲が漠然としすぎてしまうので、あとの展開が難しくなります。
だから、ここは、「(……ではない。だから)私は、……だと思う」という形でまとめていく方がいいのです。
そのほか、いろいろ直すところが見つかりましたが、文章全体はよく考えられているので、実力はある生徒です。
今の時期に直すところを指摘して自信をなくすのはかえってマイナスです。
だから、いちばん大事なことだけをいくつかアドバイスしておきました。
作文や小論文というのは答えのない世界です。
そのため、勘違いした書き方をしている生徒や、そういう教え方をしている先生(笑)も多いのです。
志望理由書などでも、ときどき、「私は、この学校で、たくさん友達を作って、自分の好きな音楽やスポーツをして、たっぷり遊びたい」というようなことを書いてくる生徒がいます。
学校は勉強をするところなので、志望理由書には、友達や部活のことよりも勉強のことをしっかり書かないといけないのです。
というようなことを言うと、「じゃあ、先生、うそを書いてもいいんですね」などと納得する子がいます。
そして、そういうことを教えている塾もあるようです。
小中学生の子供たちには、「うそを書いて合格するよりも、本当のことを書いて不合格になった方が尊い」ということもちゃんと教えておく必要があります。
受験の合否で人生が決まるのではなく、受験に向かうときの姿勢が、その子のその後の人生を決めていくのです。
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作文指導には、その子のことをよく知っていて、親身に指導できる先生が必要です。
言葉の森の電話通信指導は、担任の先生が毎週生徒に電話をして作文の勉強をするので、自然に生徒と先生の間で信頼関係が生まれます。
しかし、そういうシステムで作文指導を受けられる機会は、ほかにはほとんどありません。
そこで、考えられるのは、家庭でお父さんやお母さん、又はおじいちゃんやおばあちゃんが、子供や孫に作文を教えるという仕組みです。
言葉の森には、幼長から社会人までの生徒が学んでいます。そして、作文専門の指導は、30年間の実績があります。
作文の指導はベテランの先生でないとなかなかできないと言われていますが、言葉の森にはその指導のノウハウが充分に蓄積されているのです。
そこで、例えば、孫が小学1年生になるときに、おじいちゃんが自分も小学1年生の教材から、言葉の森の作文の通信の授業を受けてみるのです。すると、その教材と教え方をそのまま、孫にも伝えることができます。
自分自身も同じテーマで作文を書いているので、子供がどういうところで書きやすくなったり書きにくくなったりするかということが手に取るようにわかります。
そうして、孫の学年が上がるとともに、おじいちゃんの作文の学年も上がっていきます。おじいちゃんの学年は飛び級で先に上がっていってもいいでしょう。
勉強が軌道に乗れば、近所の同学年の子供たちを一緒に教えることもできます。子供は、家庭でひとりで勉強するよりも、数人で集まって勉強した方が意欲的に取り組むので、気の合った友達を呼んで家庭で作文の勉強を続けることもできます。この場合は、森林プロジェクトという仕組みに切り換えて家庭作文教室を開くこともできます。
しかし、そこまで本格的にならなくても、自分の家の子供や孫に教えるだけならすぐにできます。
作文の勉強という最も続けにくい学習が、家庭の対話の中で楽しく続けられるようになるのです。
言葉の森では、この春から、社会人が自分の選んだ学年で自由に学べる作文の電話通信指導を開始します。この通信指導を生かして、子供や孫に作文を教える機会を作っていただければと思います。
長年の風雪に耐えたおじいちゃん、おばあちゃんが教える作文は、きっと味のあるものになるでしょう。
▽参考ページ:「森林プロジェクト講師講座案内」
https://www.mori7.com/sikaku/
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もうぽつぽつと合格の知らせが届き始めました。
「練習したテーマと同じのが出たので、マス目いっぱいまで書けた!」というような喜びの声がある一方、「自分ではよくできたと思うが、やはりだめだった……」というような声もあります。
子供にとっては、初めての大きな成功体験であり、挫折体験でもあるのが受験です。
しかし、長年生きてきた大人は、この成功、失敗が、これから長く続く人生のほんのわずかな一歩だということを知っています。
だから、あまり苦労せずに合格できたような子は、かえって世の中を甘く見て、その後学力が低下するということがあります。
一方、真剣に努力したにも関わらず不合格になった子は、それをバネにして、その後大きく飛躍します。
(あまり努力もせずに不合格になった子は、特に大きな変化はありません。)
大事なのは、合否の結果ではなく、それをどう受け止めるかということです。
しかし、実際に不合格になったばかりの子に、そういうことを言ってもすぐに通じるわけではありません。
その子のその後の長い人生の中で、やはりそうだったということに自然に気づくのです。
しかし、大人は一歩高い立場で、合否の結果をその後に生かすことを静かに考えていくべきなのです。(べきなどというと、ちょっと堅いですが)
もうすぐ2月、そろそろ新しい学年の準備です。
言葉の森も、新しい年度に向けて、これからリニューアルです。
参考記事「本当の合否は、あとからわかる」
https://www.mori7.com/as/1167.html
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●小学校1、2年生から3年生に移るときに大きな変化
言葉の森でこれから勉強してきたみなさんが、新年度から新しい学年でどういう勉強をするかということを説明します。
まず、大きく変わるのが小学校3年生からです。小学校1、2年生の生徒は、これまで自由な題名で作文を書いていました。「きょうのこと」や「このまえのこと」という内容の作文が多かったと思います。
小学校1、2年生のときにテーマを決めた作文を書こうとすると、材料が見つからないことがあります。また、材料が見つかってもそれを長く書く力がまだありません。作文を書く練習の中には、文章を書くことと、何を書くか考えることの両方がありますが、小学校低学年では、その書くことを考えることを両方行うのは負担が大きいのです。だから、今日あったことなどのように、書くための材料がそのまま事実としてあることを、その事実の起こった順序で書いていくというのが1、2年生の練習です。
しかし、小学校3年生からは、自由な題名の作文ではなく、題名の課題が与えられた作文を書く練習をしていきます。これは、例えば、「がんばったこと」「いたかったこと」「ないしょの話」などという題名です。また、月に1回は、長文を読んで感想文を書く練習をしていきます。
小学校1、2年生の教材に、毎週の課題の長文がありますが、1、2年生のころはこの長文は特に使いませんでした。しかし、小学校3年生から、毎月第3週目に、この長文をもとに感想文を書く練習をしていきます。感想文を書くためには、長文を何度も読んで内容を消化している必要がありますが、3週だけ長文を読んでくるという形だと忘れてしまうことが多いので、感想文のある週も、題名課題だけの週も、毎日長文を音読する自習をしておくといいのです。
自由な題名から課題の題名に移ると、初めは急に書きにくくなったように感じます。「この題名では、書くことがない」という場合が出てくるのです。そして、毎年、何人もの生徒から、「1、2年生のころのような自由な題名で書きたい」という声が出てきます。
この場合の対策は、次のとおりです。
まず、作文の授業がある日までに、課題集を見て、次の週がどういう課題なのかを確かめておきます。次に、その題名に合わせて作文に書く材料を見つけます。課題の中には、「ひとりでお使いに行ったこと」などという題名もありますから、まだひとりでお使いに行ったことがないような人は、1週間の間にお使いに行く経験をしておくというのが材料の準備になります。そして、自分の経験だけでは、材料に限界があるので、お父さんやお母さんに似た話を取材するようにします。
似た話を取材するというのは、小学校1、2年生のころにしていた人もいると思いますが、自由な題名のときは、お父さんやお母さんも似た話のしようがないことが多かったと思います。ところが、小学校3年生の題名課題になると、お父さんやお母さんも、更におじいちゃんやおばあちゃんも、似た話の焦点が絞られるので話をしやすくなります。こうして、子供の作文の課題をもとに、家庭で楽しくお喋りをすることができるというのが作文の勉強の特長です。
小学校3、4年生のころに、家族で作文の課題をもとに毎週対話をする習慣を作っておくと、その習慣を小学校高学年の難しい作文課題になったときも延長して続けていくことができます。小学校3、4年生の課題では、子供が自分の経験だけで書くこともできますが、小学校5、6年生の難しい課題になると、子供の経験だけでは実例が見つからないということも増えてきます。
例えば、小学校5、6年生では、受験作文の課題に出てくるような抽象的なテーマが多くなります。「思いやり」「努力」「自立心」などというテーマになると、子供自身の経験だけでなく、親の経験談が作文の内容を深める役割を果たします。
しかし、家族で特に対話をする習慣のなかったような子供の場合は、小学校5、6年生になってから急にそういう話を切り出すことがなかなかできません。親子の対話が本当に必要になる高学年のころに、その対話の習慣を作るのでは間に合わないことも多いのです。そこで、小学校3、4年生のころから対話の習慣をつけておくことが大事になってきます。
自由な題名から、題名課題、感想文課題に上手に移行するためには、作文を書いたあとの対応も工夫していく必要があります。特に感想文課題のときは、これまで自由な題名で上手に長く書いていた生徒が、急に短くしか書けなくなってきます。その場合、子供本人がうまく書けなかったと自覚しているので、周囲のお父さんやお母さん、そして先生が、「感想文課題は難しいから、字数は短くてもいい」ということと、「こういう難しい勉強に取り組むことに意義がある」ということを子供にしっかり伝えていく必要があります。
そして、感想文課題のときも、お父さんやお母さんに似た話を取材できるように、毎週の長文を音読し、子供が自分なりにその長文の内容を把握しておくことが必要になります。授業の前に長文を1回だけ読んで、自分の経験の範囲だけで書くのでは、感想文課題はなかなか書けません。作文の勉強というのは、作文を書いている1時間の勉強だけではなく、そのために長文を読んで家族で対話を交わすという準備の時間も勉強に入ります。その準備のときに、作文を書く力がついてきます。そして、それは、やりがいのある楽しい準備なのです。
(つづく)
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