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満ち潮の時代の多数派、引き潮の時代の少数派
森川林 2017/10/09 07:22 


 かつての日本の社会は、高度経済成長に見られるように満ち潮の時代でした。
 この時期には、多数派に属することが有利な選択でした。
 なぜなら、自分が先に進めば後からついてくる人が次々と現れるという状況だったからです。

 この満ち潮の時代の価値観に、まだ多くの大人の人は影響されています。
 「寄らば大樹の陰」というのは、周りにも多くの樹木が生まれてくる時期には正しい選択だったのです。

 就職でも、大きい企業に入ることは、社会と企業の成長に伴って自分も成長することでした。
 ところが、現在は、日本の社会は引き潮の時代に入っています。

 その原因は、日本の社会で新たに消費するものがなくなってきているからです。
 その結果、社会が停滞し、その影響で少子化が進んでいるのです。

 こういう社会では、多数派に属しているほど、社会の停滞に伴って、自分の位置は下降していきます。
 しかし、少数派に属していれば、社会の停滞にも関わらず、自分の位置は固定してます。
 それどころか、かえってそこに新たな個性を求める人が集まってくる可能性があるのです。

 そして、実は、その個性の中から、次の時代の新しい需要が創造され、それがやがて新しい満ち潮の時代を生み出すのです。

 比喩的に言うと、満ち潮の時代には、狭い入り江から広い海洋に出た方が可能性が広がりました。
 しかし、引き潮の時期には、狭い入江に戻っていく方が、そこで安定した新しい生き方ができる可能性が生まれます。

 満ち潮の時代は、多くの人に共通する正解がある時代でした。
 大きな海に出ることが、ほとんどの人にとっての正解だったからです。

 引き潮の時代は、それぞれの人が自分の個性に合わせて正解を見つけ出さなければなりません。
 だから逆に、個人の可能性がさらに広がっている時代だとも言えるのです。


 これを具体的に子供の生活にあてはめると、次のようなことが言えると思います。

 例えば、これからの社会では、スポーツや音楽などの趣味の世界で、みんなと同じことをやっても先は見えています。
 その世界でプロになったり一流になったりすることは、市場そのものが小さくなる中で、今後ますます難しくなってきます。

 これが、もし市場が年々拡大する時代であれば、コーチングプロのような形でも、自分の技術を生かす道はあったでしょう。
 しかし、引き潮の時代には、一番になるか一番に近い位置のものしか自分の技術を生かすことができなくなります。

 このことを多くの人が感じるようになれば、社会の関心は次第に自分の個性を生かすという方向に進んでいきます。
 そのときに、ある一つの個性で先に進んでいる人が、あとから来る人の目標となります。

 新しい目標になるということは、そこで新しい需要が生まれるということです。
 最近よく話題として登場する「さかなクン」の誕生には、そういう現代の状況を象徴する意味があります。

 同じことは、勉強の世界についても言えます。
 満ち潮の時代には、主要教科というものに代表される多数派の教科に力を入れることが生き残る道でした。

 その分野で上位につけば、それを教える仕事も数多くあったからです。
 しかし、ここでも、引き潮の時代には、一番に近いものしか生き残ることができなくなります。

 ところが、自分の得意なある分野に限定された学習に取り組んでいれば、その分野で第一人者になることは、多数派の教科で第一人者になるよりもずっと容易です。

 個性というものは、持って生まれたものはごくわずかで、その個性を育てるものは、ひとことで言えばその個性にかけた時間です。

 ある分野で、人よりも先に長い時間をかけていれば、それ以上の時間をかけられる人は理論的には出てきません。
 後の人がいくら時間をかけても、先の人はそれと同じ時間をかけることができるからです。

 だから、できるだけ早く自分の個性を見つけ、それに時間をかけられるようにしておくといいのです。

 これからの時代の舵取りは、難しくなってきます。
 みんなと同じことをしないことが正解になってくるからです。
 しかし、その分、自分の個性を生かせる面白い時代になっているとも言えるのです。


 言葉の森の作文指導や思考発表クラブも、実はそういう観点で取り組んでいます。
 そして、個性を支える基礎学力は、自主学習クラスの自学自習で確保し、個性を実際の自然や人間との関わりの中で生かす機会は、自然寺子屋合宿で作り、それらを運営する主体は、森林プロジェクトで募集するという教育モデルを考えているのです。

コメント欄

森川林 2017年10月9日 7時36分 1 
 現代は、恐竜の時代から哺乳類の時代に移行する時期です。
 この時期に大切なことは、過去の蓄積を守ることではなく、新しい未来の可能性を試してみることです。
 そして、それを大変だと思うのではなく、面白いと思うことです。


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