ゲストさん ログイン ログアウト 登録
 日本的なシェア文化で作る新しい作文教育 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1286番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/27
日本的なシェア文化で作る新しい作文教育 as/1286.html
森川林 2011/07/04 19:09 



 シェアという概念が広がっています。所有から共有へという考えは以前からありました。しかし、それが社会生活のさまざまな分野に広がり、新しい経済活動を生み出すまでになったというのが現代の特徴です。

 シェアのひとつの例として挙げられるのが、カー・シェアリングです。カー・シェアリングは、当初の予想に反して、アメリカで急速に広がりました。



 ところで、これまでのシェアの概念は、個人の所有に基づいた共有の概念で、一種のギブ・アンド・テイクでした。

 これに対して、日本に昔からあったシェアの概念は、お裾分けという言葉で表されるもので、テイクを期待しないギブでした。それは、譲り合い、分かち合い、助け合いという考えに近いもので、英語ではそれに該当する言葉はありませんでした。お裾分けを漢語で言い換えると、譲与になりますが、この譲与も、英語にはぴったり該当する言葉がありませんでした。



 では、共有と譲与は、どこが違うのでしょうか。

 譲与の前提になっているものは、私的所有ではなく余剰です。(ダジャレのようですが)。つまり、譲与とは、自分のところに、誰かからもらいすぎたか、何かが取れすぎたかしために、ありあまっているものがあるので、それを周囲の人に分け与えるという言葉です。

 共有の前提になっているものが私的所有で、譲与の前提になっているものが余剰だとすると、その余剰を生み出しているものは創造です。「畑でトマトがたくさん取れすぎたから、近所の人にお裾分けする」。これが、日本的な感覚のシェアです。



 資本主義は、私的所有に基づいて富を奪い合うシステムでした。資本主義の発展期には、この奪い合うことが動機となって、科学技術も経済も発展しました。しかし、今、それが環境の面でも、金融システムの面でも、行き詰まりつつあります。奪い合うことでは、これ以上豊かにならないということがわかってきたのです。

 共有というシェアの考え方が、この資本主義の枠内で資本主義に改良を加えていく考えだとすれば、譲与というシェアの考え方は、資本主義の先にある、資本主義を超えた考えだと言っていいでしょう。資本主義の先にある社会は、創造に基づいて富を与え合うシステムです。



 創造というものの最もわかりやすい形は、農業生産です。トマトは、太陽と水と空気だけで食べられる赤い実をつけます。農業の本質は、植物の持つ創造性の利用です。

 では、工業の本質とは何でしょうか。工業は、例えば、これまで人間が手作業で丸一日かかって織っていた布を、機械の力で数分で織ってしまうということです。それは、科学技術という方法が持つ創造性を利用したものです。

 工業と農業に共通するものは、この「方法」です。トマトの創造性とは、トマトが太陽と水と空気で光合成をして実をつけるという方法だからです。

 なぜ、人類が過去から未来に向けて、たえず豊かになってきたかというと、方法は、作り上げるまではコストがかかるが、いったんできてしまえば永久に無料で利用できるという性質を持っていたからです。

 そして、この方法が、農業、工業から、人間に向けて作られつつあるのが、これからの社会です。人間の持つ創造性を発揮させる方法が教育であり、その新しい教育が、これから日本的なシェア文化の中で作られつつあるのです。



 言葉の森では、今、次のような計画を考えています。それは、教材をオープンソースで作ってシェアし、課題や解説や指導法をシェアし、発表や交流をシェアするというシステムです。この場合のシェアは、もちろん所有を共有し合うことでではなく、創造を譲与し合うことです。

 言葉の森では、これらの新しいシェアをfacebookの中で作るとともに、それを地域社会の中にリアルに広げる仕組みを作っていきたいと考えています。



 国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
作文教育(134) facebook(29) 

コメント欄

コメントフォーム
日本的なシェア文化で作る新しい作文教育 森川林 20110704 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
おかきく (スパム投稿を防ぐために五十音表の「おかきく」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
作文教育(134) facebook(29) 
コメント1~10件
森リンベストの 森川林
じすけ君、ありがとう。 統合失調症のような、また似たような 4/21
森リンベストの じすけ
こわばんは 今日は元気一杯、体験発表をさせて頂きます。 4/20
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
【合格速報】栃 森川林
 おめでとう!  受験勉強中も、硬い説明文の本をばりばり読 3/13
受験作文と入試 森川林
将来の作文入試は、デジタル入力になり、AIで自動採点するよう 3/13
大学入試が終わ 森川林
大学生になっていちばん大事なことは学問に志すこと。 18歳 3/12
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
近所のローソン 森川林
毎日新聞を見たけど、記事はまだ載っていまでした。 4/25
毎日新聞に言葉 森川林
 しばらく前に、毎日新聞の人が取材に来ました。  そのとき 4/24
テスト送信 森川林
https://www.mori7.com/za2024d0 4/24
4月保護者懇談 森川林
シラン ●今後の「森からゆうびん」の学習デ 4/22
マスクにしても 森川林
マスクにしても、ワクチンにしても、消毒にしても、 自分たち 4/21
イエスも釈迦も 森川林
イエスも釈迦も、理想の社会を築きたいと思っていた。 しかし 4/21
日本復活の道筋 森川林
 工業製品を経済発展の原動力をした資本主義は終わりつつある。 4/17
メモ 森川林
https://www.mori7.com/za2024a0 4/16
単なる作業 森川林
勝海舟は、辞書を買うお金がなかったので、ある人から夜中だけ辞 4/8
勉強は、人に教 森川林
勉強は、人に教えてもらうのではなく、 自分で学べばよい。 4/7

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習