ゲストさん ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1052番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/5/18
日本の未来の見取り図(3)―フリーエージェント社会 as/1052.html
森川林 2010/10/23 05:43 


 日本の社会がこれから創造する内需の中身のひとつは修行(自己の向上)でした。もうひとつは、起業です。

 アメリカは今では自由なベンチャービジネスの社会だと思われていますが、1980年に入るまでは、律儀なオーガニゼーション・マン(組織的人間)の時代でした。

 会社は従業員の雇用を保証し、従業員は会社に忠誠を誓い、毎日定時に出社し、退屈な仕事をきちんとこなし、同じ会社に何十年も勤めることによって、次第に安定した豊かな生活を送れるようになる、という価値観の時代でした。

 日本はアメリカよりも10年遅れていると言われますが、2000年代、小泉政権時代の自由競争主義の導入前は、やはりオーガニゼーション・マンの時代でした。

 アメリカは、企業がそれまでの温情主義を捨てて、従業員のレイオフに踏み出した1980年代は、IT産業が花開いた時期であり、その後に続く金融工学革命の幕開けの時期でもありました。そのため、アメリカは大企業中心の社会からベンチャービジネスの可能性のある社会に進化しました。

 一方、日本は自由競争社会の道を開いたものの、新しい産業という受け皿がなかったために自由競争は、大多数の日本人にとって雇用の不安定化と生活の破壊を生み出しました。日本は、アメリカのようなITや金融という新しい産業がない中で自由競争に踏み出したため、その自由化は少数の富裕者と多数の貧困層のますます広がる格差を生み出すことになったのです。

 しかし、大企業中心の組織的人間の時代はもう戻ってきません。それは経済の性質が変わってしまったためです。

 つまり、先進国では大量の工業製品を需要する、豊かさを目指す社会が終わりを告げたために、その需要に対応していた大企業中心の組織的な大量生産の時代が終わったということです。

 現在、そういう豊かさを目指しているのは、中国、ブラジル、インドなどの成長途上国で、これらの途上国の人口が著しく多いために、経済の覇権が移りつつあるかのような印象を受けますがそれは錯覚です。

 これらの国では経済の拡大が進んでいるので、動いているマネーば巨額ですが、それはアメリカや日本で既に終わった過去の祭りがただ規模の大きくなった人口で繰り返されているだけです。そこには、新しい時代の指針となるような創造性はありません。

 これを象徴する一つが万博です。1970年の大阪万博の入場者は6400万人でした。2010年の上海万博の入場者は、7千万人から8千万人になると言われています。しかし、これは量で比較する性質のものではありません。万博の社会に対する影響力の質が既に違ってきているのです。

 一方で古い形の経済発展を始めようとする巨大な新興途上国、他方で古い経済発展が終わったものの新しい産業が見出せない老いた先進国、という二つの世界が併存しているのが現代の構図です。

 しかし、老いた先進国にも新しい産業の芽は育ちつつあります。それがフリーエージェントの社会です。(つづく)


 日本の社会がこれから創造する内需の中身のひとつは修行(自己の向上)でした。もうひとつは、起業です。

 アメリカは今では自由なベンチャービジネスの社会だと思われていますが、1980年に入るまでは、律儀なオーガニゼーション・マン(組織的人間)の時代でした。

 会社は従業員の雇用を保証し、従業員は会社に忠誠を誓い、毎日定時に出社し、退屈な仕事をきちんとこなし、同じ会社に何十年も勤めることによって、次第に安定した豊かな生活を送れるようになる、という価値観の時代でした。

 日本はアメリカよりも10年遅れていると言われますが、2000年代、小泉政権時代の自由競争主義の導入前は、やはりオーガニゼーション・マンの時代でした。

 アメリカは、企業がそれまでの温情主義を捨てて、従業員のレイオフに踏み出した1980年代は、IT産業が花開いた時期であり、その後に続く金融工学革命の幕開けの時期でもありました。そのため、アメリカは大企業中心の社会からベンチャービジネスの可能性のある社会に進化しました。

 一方、日本は自由競争社会の道を開いたものの、新しい産業という受け皿がなかったために自由競争は、大多数の日本人にとって雇用の不安定化と生活の破壊を生み出しました。日本は、アメリカのようなITや金融という新しい産業がない中で自由競争に踏み出したため、その自由化は少数の富裕者と多数の貧困層のますます広がる格差を生み出すことになったのです。

 しかし、大企業中心の組織的人間の時代はもう戻ってきません。それは経済の性質が変わってしまったためです。

 つまり、先進国では大量の工業製品を需要する、豊かさを目指す社会が終わりを告げたために、その需要に対応していた大企業中心の組織的な大量生産の時代が終わったということです。

 現在、そういう豊かさを目指しているのは、中国、ブラジル、インドなどの成長途上国で、これらの途上国の人口が著しく多いために、経済の覇権が移りつつあるかのような印象を受けますがそれは錯覚です。

 これらの国では経済の拡大が進んでいるので、動いているマネーば巨額ですが、それはアメリカや日本で既に終わった過去の祭りがただ規模の大きくなった人口で繰り返されているだけです。そこには、新しい時代の指針となるような創造性はありません。

 これを象徴する一つが万博です。1970年の大阪万博の入場者は6400万人でした。2010年の上海万博の入場者は、7千万人から8千万人になると言われています。しかし、これは量で比較する性質のものではありません。万博の社会に対する影響力の質が既に違ってきているのです。

 一方で古い形の経済発展を始めようとする巨大な新興途上国、他方で古い経済発展が終わったものの新しい産業が見出せない老いた先進国、という二つの世界が併存しているのが現代の構図です。

 しかし、老いた先進国にも新しい産業の芽は育ちつつあります。それがフリーエージェントの社会です。(つづく)


 低学年から学力の基礎を作る
幼長、小1、小2、小3の基礎学力をひとつの講座で学ぶ。
読書の習慣、国語算数の勉強、暗唱の学習、創造発表の練習をオンラインで。


コメント欄

コメントフォーム
日本の未来の見取り図(3)―フリーエージェント社会 森川林 20101023 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
やゆよら (スパム投稿を防ぐために五十音表の「やゆよら」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
政治経済社会(63) 教育論文化論(255) 
コメント1~10件
優しい母が減っ 森川林
 娘さんの友達から怖がられているというお母さん、コメントあり 5/8
優しい母が減っ 娘の友達
娘は中3。私は自称甘い母親です。世の中の厳しい先輩ママたちか 5/7
学習グラフのペ 森川林
言葉の森の今後の方針は、デジタルなデータをアナログで送信する 5/6
森リンベストの 森川林
じすけ君、ありがとう。 統合失調症のような、また似たような 4/21
森リンベストの じすけ
こわばんは 今日は元気一杯、体験発表をさせて頂きます。 4/20
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
テスト送信 森川林
中学受験作文、高校推薦入試作文、大学入試小論文なら、志望校別 5/18
言葉の森のYo 森川林
言葉の森のYouTubeチャンネルの登録者数が、1000人を 5/17
通学が普通、通 森川林
通学が普通、通信はおまけ、 オンラインは特殊な例外(笑)と 5/15
ブンブンドリム 森川林
 ブンブンドリムが、「31年の実績」と書いていたので、   5/15
基礎学力、総合 森川林
 勉強は、家庭学習で十分。  しかし、勉強の進捗状況をチェ 5/13
Re: 読解検 森川林
 ご質問ありがとうございます。  こういう質問ができる 5/10
男は、というか 森川林
男は、というか、自分は、あれこれ説明はしない。 聞かれれば 5/10
大事なのは理念 森川林
大事なのは理念だ。 損得や利害ではない。 遠くの星を目指 5/10
読解検定4月中 あうせれ
問3のAが×だと思いました。←「小学校低学年らしい男の子」と 5/8
マスクしない、 森川林
マスクしない、ワクチン打たない、消毒しない。 人類は、何十 5/7

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習