先日の保護者懇談会で、「思考力とは何か」という質問が出ました。
今、書店では、子供向けの算数クイズのような思考力を育てる問題の本がいくつか出ています。
いずれも頭を使って考える面があるので、大人にとっても面白い問題です。
そういう算数クイズのような本で、思考力を育てるのはどうかという意見があったのです。
こういう算数・数学の問題で、確かに思考力はつきます。
しかし、それは算数・数学の狭い分野に限定された思考力です。
世の中に出て遭遇するさまざまな問題にその思考力が適用できるかというと、そういうことはかなり限られています。
日本のロケット開発の父とも言われる糸川英夫氏は、その著書の中で、「数学が、考える力をつけるわけではない。それは大学教授会の数学科の先生の発言を聞いていればよくわかる」と皮肉を書いていたことがありました。
数学の思考力というものは、確かにありますが、それは一般の思考力と混同され過大評価されている面があるのです。
では、思考力を育てるものは何かと言えば、それは困難な課題への挑戦と、難しい本の読書だと思います。
なぜかというと、困難な挑戦や読書によって、人間が普通に平面的に考えるところから、一歩進んで立体的に考えることができるようになるからです。
そういう立体思考は、ほかのところにも応用できます。
だから、子供の思考力を育てるためには、難しい本を読ませたり、難しいことに挑戦させたりすることです。
しかし、「させる」という面が強くなると、子供の自主性を育てる面ではかえってマイナスになります。
いちばんいいのは、説明的な文章の面白さに気づかせることと、小さな挑戦であっても子供が独自にやろうとしたことをいつも評価してあげることです。
そして、親自身が、子供との対話の中で、知識ではなく思考を使って話をするように心がけることなのです。
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子供たちの得意だと考える勉強の第一位は算数でしたが、同時に、子供たちが苦手と考える勉強の第一位も算数でした。
これはどういうことかというと、算数は考える力が問われる勉強だと思われていると同時に、実は本質は知識の勉強だということなのです。
ただし、その知識の量と組み合わせ方が多く、他の知識の勉強のようにすぐには成果が出てこないので、頭のよさに左右される勉強だと考えられているということなのです。
よく、「知識よりも思考力」などと言いますが、その思考力という概念は実はかなり曖昧なものです。
というのは、誰でもいつも何らかの形で思考しているので、思考するということがかえってとらえにくいからです。
そこで、思考力というものがわかりやすく形として見える気がする、算数のクイズや、慣用句の知識などに人気が出ているのだと思います。
しかし、現実の生活に適用できる本当の思考力は、読書と対話の中で育つのです。
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保護者懇談会で、小学4、5年生の生徒の保護者からよく出された質問が受験に関することでした。
公立中高一貫校を受験したいという人は多いのですが、現在の公立中高一貫校の試験問題は、私立の中学受験で同じように、訓練をしないと解けない問題になっています。
ですから、実力で合否が決まるのではなく、問題の選び方やそのときの運で合否が決まる面がかなりあります。
小学校6年生の子供にとって、受験というのはほぼ初めての機会ですから、合格する可能性が少ないということはあまり考えません。
そして、よくできる子であれば、親も子も合格するつもりで受験に臨みます。
ところが、実際には倍率はかなり高いので、不合格になる子の方が圧倒的に多いのです。
そのときに、親が長期的な視野を持っていて、受験勉強はひとつの経験であって、合格不合格に関係なく勉強してチャレンジしたことに意味があるという捉え方をすることができればいいのです。
ところが、子供と一緒に、合否の結果に一喜一憂してしまう人が多いのです。
それは、やむを得ない面もありますが、やはり親は落ちても受かっても、普通にどっしりしている必要があります。
また、受験のために長期間苦しい勉強していると、その勉強を無駄にしたくない気持ちが働いて、私立中学も滑り止めに受けるようなことも出てきます。
私立中学でも、トップ校に行けば、周りの人の雰囲気に引っ張られて勉強が進む面もあります。
しかし、ほどほどのところに行けば、やはり周りの人に影響されて、ほどほど勉強しかしなくなります。
それぐらいであれば、公立の中学に進んで、多様な生徒のいる中で自分のペースで勉強を進めでいった方がずっといいと思います。
人間が、自分の人生という自覚を持って勉強を始められるのは中学3年生ぐらいからです。
その頃に取り組む勉強は、自分の意思でやるものですから、どんなに頑張っても無理はありません。
しかし、小学校6年生のころは、自分の意思で取り組むとは言っても、本当のところはまだ勉強の自覚が育っているわけではありません。
だから、無理をして勉強をさせると、その反動として勉強に対する面白さを感じなくなってしまう可能性もあります。
小学生で中学受験をする場合には、保護者は子供の人生という長期的な視野を持って取り組むことが大事です。
例えば、勉強が忙しいときでも、読書をしたり対話をしたりというような機会を少しでも続けていくようにすることが^大切なのです。
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