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これからの世の中と子供の教育 その2 as/2396.html
森川林 2015/08/06 18:05 


●大きな船に乗る時代は過去のものに

 競争の価値観が後退し、共感の価値観が前面に出てくる時代に、社会はかつての縄文時代や江戸時代のように長い停滞期に入るのでしょうか。そうではありません。今度来る新しい共感の時代は、単なる共感だけではなく創造を伴った共感の時代になるからです。
 子供の教育を考える場合、その子が大きくなったときの社会がどのようになっているかを考える必要があります。
 競争の時代には、小さい船からより大きい船に乗り移ることが勝利で、そのために同じ大きな船を目指す他人と競争をしなければなりませんでした。
 大きい船を例えば大企業とか、難しい資格とか、高い地位とか、人気や名声などと考えると、これからはその魅力が相対的に低下していく時代です。
 これまで大きな船に魅力があったのは、いったんその船に乗りさえすれば、小さい船に追い越されることはまずなかったからです。これまでは、大きい船に乗りさえすれば、大きい船はますます大きくなり、小さい船は相対的にますます小さくなるという厳然たる傾向がありました。それが、限られた資本と、資本に支えられた工業生産というこれまでの社会の特徴でした。
 これからの時代はそうではありません。資本は既にあり余っています。だから、何も生産しない金融ゲームにまでお金が回っています。工業生産物は既に人々の生活に深く入り込んでいて、多くの人がその性能に満足しています。だから、もはや小さな改良しか工夫する余地がないものが増えているのです。

●生き残りのための競争

 これまでは大きな船に乗れば、ほぼ一生安泰でした。これからは、大きな船に乗っていると、強いニーズに支えられた新しい技術革新がない中で、その船全体がグローバルなコスト競争に巻き込まれていきます。すると、競争は、ブルーオーシャンを切り開く競争から、レッドオーシャンで生き残る競争へと変化していきます。そうすると、個性的な知識や技能を持っている人以外は、機械化やIT化やより低賃金の労働力への代替によって、常にリストラの圧力にさらされるようになります。
 これまで、大きな船は安定の象徴でした。これからは、大きな船は、リストラの風雨をまともに受ける競争と淘汰の象徴になっていきます。それはちょうど巨大な恐竜が、小さな哺乳類に取って代わられたような、あるいは、戦艦巨砲主義が小さな飛行機の機動戦に取って代わられたような歴史の大きな曲がり角に現代の私達が到達しているからなのです。

●物の幸福から物以外の幸福へ

 生産は消費の影に過ぎません。物が作られるのは、それが売れるからで、それが売れるのはそれを買いたい人がいるからです。つまり、「欲しい」という欲望が世の中の動因となっています。
 今、供給の側の巨大化、効率化が行き詰まってきているのは、人々のニーズつまり欲望が物の所有という点でほぼ満足の限界にまで来ているからです。
 確かに、物に対するニーズはまだいくらかは残っています。広い家、別荘、自家用の船舶やジェット機などのような夢なら、誰でも思いつくことができるでしょう。また、世界中の砂漠の緑化、海洋開発なども人類全体の大きな目標になっています。しかし、先進国で物の豊かさをそれなりに実感してきた人は、それらの物の豊かさの先に本当の幸福はないとわかっているのです。
 物の所有はほどほどでよいと多くの人が考えるようになっています。食べ物を安全でありさえすればよく、安全と低価格と両立させるために自家菜園を行う人も増えています。家電製品は、機能がシンプルで使いやすく壊れにくいものでありさえすればよく、必要以上の飾りや付加価値に目を奪われる人はもういません。
 人間の幸福の焦点は、物の所有から、自分自身の経験、交流、向上、貢献、創造へと移ってきているのです。

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これからの世の中と子供の教育 その1 as/2395.html
森川林 2015/08/06 07:41 


●「子ども」か「子供」か

 9月号の「致知」という月刊誌の記事の中に、「子ども」か「子供」かという話が載っていました。これはたまに話題になることなので一言。
 「子ども」と書く人が多いのは、「供」には「お供」のように人を見下す意味があるからだそうです。その説自体も不確かなものですが、私はたとえその語源がどういうものであろうと、言葉の使い方を論じる際に、その中身ではなくニュアンスを前面に出すのは、思考を中断し、話を混乱させる原因になると思います。ニュアンスは各人の好みに任せるもので、共通の基準にするものではありません。ですから、普通の書き方は「子供」でいいと思います。

●競争に勝つことを目的にする時代は終わりつつある

 これまでの時代は競争の時代でした。競争には勝者と敗者がいます。敗者が遅れた者、劣った者、弱い者であり、勝者がその敗者を倒し敗者を支配することで世の中が急速に進歩してきました。
 これはあたりまえのことように思われるかもしれませんが、日本で一万数千年続いた縄文時代は、たぶん競争も勝者も敗者もない時代でした。江戸時代の庶民の生活も、同じように競争も勝者も敗者もきわめて希薄な生活だったでしょう。少なくとも競争に勝つことが人間の価値観の中心である社会ではなかったのです。
 では、競争ではなく、何が社会の中心になっていたかというと、それは助け合いです。強い者と弱い者がいた場合、強い者が弱い者を助ける社会だったのです。
 競争社会の喜びは勝利です。助け合い社会の喜びは共感です。相互の助け合いと相互の共感が、社会の絆となっていたのです。

●競争という価値観がこれからなぜ後退していくか

 競争が善だという価値観は、主に近代の欧米から世界に広がりました。その競争文化のひとつがスポーツで、そのひとつの象徴がオリンピックです。
 2020年に日本で開かれるオリンピックは、お祭りとしては多くの人に歓迎されていますが、いずれ今のように人と人とが競い合うことに激しく熱中する人は少なくなってくるでしょう。それは、野球でも、サッカーでも、ゴルフでも、すべて同じです。競争に勝つとか負けるとかいうことを、今のように大きな問題とは考えない人が増えてくるのです。
 では、なぜ競争という価値観が、これからは社会では後退していくのでしょうか。それは、単に人間の意識が変化するからではありません。その社会の特に経済の仕組みの根幹が、競争よりも助け合いの方に傾くからです。つまり、競争によって豊かになる時代は過去のものとなり、これからは助け合いによって豊かになる時代に移行していくからです。
 矛と盾が競い合い互いにより強い矛と盾になるという時代から、矛と盾が共存しさまざまな矛と盾のセットが生まれる時代へと変化していくのです。

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