ゲストさん ログイン ログアウト 登録
 作文を書く前に構想図をどう書くか Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 2733番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/27
作文を書く前に構想図をどう書くか as/2733.html
森川林 2016/11/02 07:10 


 先日のワークショップの際に、構想図を書く練習をしました。
 これは、言葉の森の作文指導で、「構成図」と呼んでいるものと同じです。「構成図」という言葉だと、学校の作文指導などでよく行われている構成メモのような感じに受け止めて、自分が作文に書こうと思うことをメモするだけに書くものと考えてしまう人が多かったようなので、今後「構想図」という呼び方も使うようにしました。内容は同じです。

 構想図がなぜ構成メモのようなものと違うかというと、作文を書く準備という点では同じですが、書くよりも、考える過程を重視しているからです。
 だから、考える途中の過程で、作文に書かないようなことも出てきます。脱線する話も出てきます。そして、構想図に書いたもののうち、作文に書かないものもたくさん出てきます。
 書く直前の準備というよりも、書くずっと前のウォーミングアップのような準備が構想図なのです。

 したがって、作文に書くことが既にすっかりわかっている場合は、構想図を書く必要はあまりありません。
 小学生の作文、特に低中学年の作文はこのような書くことがすっかりわかっているものが多いと思います。何を書くかわかっているのに、わざわざウォーミングアップをするようなことは必要ありません。

 学校などで行われる、構成メモを書いてから作文を書くという指導でも、ほとんどの子は、構成メモを書くのがいちばん難しく、それよりも作文を直接書いた方がずっと楽だと感じると思います。
 書くことがわかっているときに、わざわざ構成メモを書くのは、まっすぐ行けばすぐに行けるところを遠回りして、しかも通りにくい道を通って行くようなものだからです。

 構想図を書くのが必要なのは、書くことが漠然としている場合や、何を書いていいかわからないという課題の場合です。
 そのときに、自分の頭に浮かんだことを次々に思いついたままに書き出していくと、書く内容がだんだんと輪郭を持ってくるのです。
 だから、作文は「書く」過程で、構想図は「考える」過程で、両者は別のものと考えておくといいのです。

 考える過程ですから、話がところどころ脱線する場合もあります。作文に書かないような話をついでに考えるということもあります。
 むしろ、そういう自由度を持っておかないと、考えはなかなか進みません。

 10月に横浜で行ったワークショップでは、二人の組で、取材される子供役と取材する親又は先生役と役割を分担して、作文の題材を構想図に書き出す練習をしました。
 10分間の時間でしたが、A4用紙1枚にびっしり書いた人もいましたし、中には裏まで書いた人もいました。
 構想図を書くのに慣れてくると、どういうテーマのときも、10分でA4用紙がほぼ1枚埋まるようになります。
 すると、ここ構想図で書いたことがそのまま作文の材料になります。

 作文を書くのが苦手な子や、課題が難しくてどう書いていいかわからない子にアドバイスするときに、この二人で書く構想図を使うと、10分で子供に的確な指導ができるようになります。
 二人で書いた構想図を子供に見せれば、その子はすぐにその構想図をもとに作文を書き出すことができるのです。

 普通は、この構想図は一人で書きます。
 課題が難しいとき、又は、何を書いていいかわからないとき、まず自分の頭に浮かんだことを一文でいいので書き出してみます。
 そして、その文から矢印を出すと、その書き出した一文に関連して、次の一文が出てきます。そこからまた矢印を出すと、また新たな一文が出てきます。
 思いついたことを自由に書くことが大事ですから、書いたことが作文の中身につながらないようなことでもいいのです。
 何しろまず書いてみるということが大事です。

 これは、算数や数学の文章題の問題を解くとき、まず手で書いてみるということに似ています。
 図形の問題や、難しい計算の問題のときも同じです。
 問題をただ眺めて頭の中で考えるよりも、手で書き出して考えてみる方が問題の焦点が絞られてくるのです。

 ところが、このまず手で書いてみるということをなかなかしようとしない子がいます。それは、「まず手で書いてみる」ということに慣れていないからです。
 作文を書くときも同じです。書くのが苦手な子は、作文用紙を前にしてずっと何もせずに考えていることがよくあります。
 手を動かさないで考えると、考えはなかなか進みません。
 作文の中身にあまり関係がないように思われることでもいいから、何しろまず自分の頭に浮かんだことを手で書いてみるという動作が必要なのです。それが構想図です。
 作文用紙に書くよりも、構想図に書くから、自由に書き出せるのです。

 だから、小学校低中学年の構想図は、この何しろまず手で書いてみるということの練習としてやっています。
 構想図を書くことに慣れる練習としてやっているのです。

 お母さん方の中には、構成メモのような感覚で構想図を考える人が多いので、構想図と作文をしっかり結びつけなければいけないと思いがちですが、そういう前提があると、構想図はかえって書き出せなくなります。
 思いついたことを何しろ自由に書き出してみて、そこから自分の考えをふくらませていくことが大事です。
 そして、考えがふくらんだら、その構想図とはある程度独立して作文を書いていくのです。

 構想図を作文にしっかり使うという方法もあります。
 構想図の中で作文の材料に使えそうなことを見つけて丸などで囲み、書く順番に番号をつけて作文に書くという方法です。
 しかし、いつもそういうことをやっていると、構想図を書き、作文を書くという作業がわずらわしくなってくると思います。
 構想図は考えるためのもの、作文は書くためのもの、両者は結びつかなくていいと考えておく方が続けやすいと思います。

 ところで、構想図は、作文の課題をあとでほかの人に取材するときに役立ちます。
 小学校高学年になると、作文の課題が抽象的になってくるので、子供自身の体験だけでは話題が広がらなくなってきます。
 そのときに、作文の課題に関連した話を両親に取材することが大事になってきます。
 特に、普段あまりそういう話をすることのない父親に取材することが、子供の語彙力や題材力や思考力を育てます。
 そのときに、その子があらかじめ書いた構想図を使うのです。

 例えば、日曜日などの時間があるときに、父親に、子供が自分の書いた構想図を見ながら、作文の課題について説明します。
 構想図を見て説明するので、説明は自然にくわしくなりますし、その子供が課題をどう受け止めているかが聞いている父親にもわかります。
 課題を直接説明するよりも、子供が自分で書いた構想図をもとにしながら説明する方が、聞いている方も、どういうことが課題になっているかよくわかるのです。

 そして、父親、又は母親に取材したことを、その構想図の空いているところに、追加してメモとして書き込んでおきます。
 このようにすれば、作文を書く前の準備はしっかりできあがります。

 この取材の際に、親は必ず具体的な自分の体験に基づいた話をしてあげる必要があります。
 たまに、「そんなのはない」とか「わからない」とか言って、子供の取材にきちんと答えない親がいますが、それは親の努力不足です(笑)。
 どういうことを聞かれても、子供の取材に、親は自分なりに具体的に答えてあげなければいけないのです。
 子供の学力は家庭で決まります。学校や塾で教えてもらって学力が伸びるのではありません。家庭での読書生活と、家庭での親の対応の仕方がほとんどすべてなのです。

 参考までに、この文章を書くときに書いた構想図を末尾に載せます。
 初めは何を書くか決まっていませんでした。
 構想図の話でも書こうと思い、約10分その構想図を書いてみると、書きたい内容がほぼ決まってきました。
 その構想図をもとに、それを約1時間で文章として書き上げたということです。

 普通、子供たちが作文を書くのには、1時間から1時間半かかります。
 構想図を書かずに、作文を直接書くと、その1時間なら1時間が経ってみないと、自分がどういうことを書こうとしたかということがわかりません。
 書いている途中に考えが深まることがありますから、作文の結末は1時間後でなければわからないのです。
 それが、構想図であれば、10分で最後まで行きつけます。これが構想図の効用です。
 短い時間で全体の結末までがわかるので、あとは時間をかけてその結末になるように文章を書いていけばいいのです。
 作文を書く時間がないときは、構想図だけ書いておけばそれで作文を書く勉強のいちばんの中心である考える過程は済んだことになります。
 構想図は、このように考えるためのものと考えておくといいのです。




 創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
構成図(25) 作文の書き方(108) 

コメント欄

森川林 2016年11月2日 7時17分 1 
 作文を書く前に構成メモを書かせると、子供はたいてい嫌がります。
 そんな面倒なことをするよりも、作文を直接書いた方がずっと楽だからです。
 構想図は、そういう構成メモとは違います。
 書く準備という点では似ていますが、作文を書くずっと手前の考える過程の練習だからです。
 だから、あまり勉強的にならないように、思ったことを自由に書いていくといいのです。


nane 2016年11月2日 7時32分 1 
 構想図は、最初のころは、誰でも縦か横にまっすぐに書くことが多いようです。
 書きやすいのは、用紙のやや上の方から、渦巻状に書くか枝分かれをしたように書く書き方です。しかし、そのあたりの書き方は自由です。
 よくマインドマップと間違えられますが、マインドマップとは全然関係ありません。たまたま外見が似たようなものになっているだけです。


kira 2016年11月2日 11時22分 52 
 楽しくやってみることが大事だということを、ついつい忘れてしまいます。真面目なお母さんほど、「構想図の書き方が下手で……。」と悩んでしまうようです。

namura 2016年11月3日 4時55分 10 
何を書いたらいいのか行き詰ったときは、構成図を書くとよさそうですね。

sizuku 2016年11月3日 9時37分 51 
構成図でなく構想図と呼び方を変えるだけで、書く側は少し自由になる気がします。

sizuku 2016年11月3日 10時26分 51 
構成図でなく構想図ですね。

サーサ母 2016年11月9日 10時23分  
詳しくありがとうございます!息子にも読ませてみます。

コメントフォーム
作文を書く前に構想図をどう書くか 森川林 20161102 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
いうえお (スパム投稿を防ぐために五十音表の「いうえお」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
構成図(25) 作文の書き方(108) 
コメント1~10件
森リンベストの 森川林
じすけ君、ありがとう。 統合失調症のような、また似たような 4/21
森リンベストの じすけ
こわばんは 今日は元気一杯、体験発表をさせて頂きます。 4/20
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
【合格速報】栃 森川林
 おめでとう!  受験勉強中も、硬い説明文の本をばりばり読 3/13
受験作文と入試 森川林
将来の作文入試は、デジタル入力になり、AIで自動採点するよう 3/13
大学入試が終わ 森川林
大学生になっていちばん大事なことは学問に志すこと。 18歳 3/12
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
近所のローソン 森川林
毎日新聞を見たけど、記事はまだ載っていまでした。 4/25
毎日新聞に言葉 森川林
 しばらく前に、毎日新聞の人が取材に来ました。  そのとき 4/24
テスト送信 森川林
https://www.mori7.com/za2024d0 4/24
4月保護者懇談 森川林
シラン ●今後の「森からゆうびん」の学習デ 4/22
マスクにしても 森川林
マスクにしても、ワクチンにしても、消毒にしても、 自分たち 4/21
イエスも釈迦も 森川林
イエスも釈迦も、理想の社会を築きたいと思っていた。 しかし 4/21
日本復活の道筋 森川林
 工業製品を経済発展の原動力をした資本主義は終わりつつある。 4/17
メモ 森川林
https://www.mori7.com/za2024a0 4/16
単なる作業 森川林
勝海舟は、辞書を買うお金がなかったので、ある人から夜中だけ辞 4/8
勉強は、人に教 森川林
勉強は、人に教えてもらうのではなく、 自分で学べばよい。 4/7

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習