公立中高一貫校の入試問題は、年々難化しています。
志望者が多いことに加えて、記述式の採点に時間がかかるので、難度を高くして受験を希望する生徒を減らす方向に進んでいるのだと思います。
その結果、小学6年生の生徒が普通に受験したのでは、到底受からないような試験内容になりつつあります。
解き方のコツを身につけなければ、短時間で対応できないような問題が増えているのです。
それは、ちょうど私立中学の入試問題と同じで、塾で受験対策をしなければ、実力だけで合格することは難しいというかほぼ不可能というレベルになっているのです。
受験勉強のマイナス面は、解き方のコツを詰め込むことが中心になることです。演習問題を大量にこなすことによって、短時間で解答できるような訓練をする勉強になっているので、その勉強に対応するためには、勉強以外のほかの時間を削らなければなりません。
小学校高学年という、読書も経験も多様にできる時期に、受験勉強の単調な生活をしなければならなくなるのがいちばんの大きな問題です。
確かに、子供はそれなりに、その受験勉強に適応します。一緒に勉強する友達がいて、両親が応援していれば、その生活に疑問を感じることなく、成績や点数の上がり下がりをゲームのような感覚で受け止めるようになります。
ところが、この受験勉強のためにつけた学力は、その後の中学、高校の勉強に生きてくるわけではありません。受験勉強は、パズルの解き方を身につけるような勉強ですから、受験に役立つだけで、その後の学力には結びつかないのです。
受験勉強が子供の役に立つのは、高校受験や大学受験の段階になってからです。中学3年生になれば、子供は自分の意志で受験勉強に取り組みます。だから、志望校に合格できてもできなくても、いずれの場合もその経験がプラスになります。
大学受験の場合は、それに加えて、高校までに学んだ知識を確実に身につけ直すという役割が受験勉強にはあります。だから、本当はAO入試のような方向に行かずに、しっかり受験する方が本人のためにはいいのです。
ところが、中学受験はそうではありません。自分の意志ではなく詰め込み勉強をした子供の中には、勉強とは人に言われたことをただ詰め込むものだという考えになってしまう子も多いのです。
すると、学年が上がるにつれて、勉強というものに飽きてきます。
本当は、高校生、大学生になって、考える勉強の楽しさに目覚めていかなければならないのに、大学での勉強もただ単位を取るためだけの勉強になってしまうのです。
では、なぜ中学受験をするのでしょうか。
それは、中高一貫の教育によって、効率のよい学習ができるからです。
中学生の間に高校の授業の先取りをし、高校2年生までに高校の全課程を終わらせれば、高校3年生では、大学受験に対応した勉強に専念することができます。
受験勉強は、1年かければ十分ですから、高校3年生で受験勉強だけする生徒と、高校3年生で高校3年生用の勉強をする生徒とでは、大きな差がつきます。
だから、多くの親は、小学校時代の詰め込み勉強のマイナス面を理解しつつも、中学受験を選択するのです。
しかし、私はこういうジレンマを脱却する、もっといい方法があると思っています。(つづく)
作文の勉強というものは、子供が小学校低学年の間は誰でもそれなりに教えることができます。
それは第一に、低学年のころは、その日にあったことがそのまま作文の題材になるからです。題材選びが簡単にできるのです。
子供たちは、毎回「今日のこと」というような題名で書いても飽きません。毎日が楽しい生活で、その生活自体が価値ある題材に思えるからです。
これが学年が上がり、小学4年生ぐらいになると、子供なりに他の人に読まれて価値あるものと思われるような題材を選びたいという気持ちが出てきます。すると、「書くことがない」という場合も出てくるのです。
言葉の森での作文課題は、小学2年生までは自由な題名、小学3年生以上は題名課題と感想文課題になっています。これは、それぞれの学年の子供たちの実態に合わせたものです。
低学年の子どもたちの作文指導がしやすい第二の理由は、このころの子供たちは、直すことがたくさんあるからです。
書かせて、間違いを直せば、それがそのまま指導のようなものになります。
しかし、これは作文の指導というよりも、原稿用紙の使い方と日本語の表記の仕方の指導にすぎません。
子供たちの作文指導が難しくなり始めるのが小学3、4年生ごろからで、本格的な作文指導になるのが小学5、6年生からです。
子供が5年生になると、考える力がついてくるので、子供自身よりよいものを書こうと思うようになります。すると、作文を書くことが急に難しく感じるようになってくるのです。
子供たちに自由に作文を書かせると、学年に応じて字数はどんどん伸びていきます。しかし、字数の伸びは小学4、5年生までで止まり、6年生になると、今度は字数が下がってきます。
それは、書く課題が難しくなるということもありますが、それ以上に、子供たちがよりよいものを書こうとして考える作文になるので、長く書けなくなるということなのです。
だから、小学1年生の作文は、この小学6年生の考える作文につながる形で指導されなければなりません。
言葉の森の作文指導では、小学1年生から勉強を始めた生徒が、高学年になり、更には中学生になり、高校生になるまで同じ先生のもとで勉強を続けることができます。
だから、最初は書くことが苦手だった子が、やがて楽に書けるようになり、考える力もついていくのです。
ところが、こういう先の流れまで意識しながら作文指導をしている教室はあまりないと思います。
小学生の作文教室は、小学生までで終了です。中学生までカリキュラムがあるとしても、実際には中学生まで続ける子は多くありません。まして、高校生まで指導できるカリキュラムがあり実際に高校生も指導しているという教室はほとんどないと思います。
小学1年生から3年生のころは、誰が教えてもそれなりに面白い作文が書けるので、それで問題がないように思ってしまうのです。
問題が出てくるのは、小学5年生で感想文の難しい課題が出てくるころです。
更に、公立中高一貫校の入試に出てくるような課題に取り組むようになると、書ける子と書けない子の差がはっきり出てきます。
学習塾などでは、このときの作文が書けない子に対する指導は、たぶんないと思います。もちろん、よく書ける子に対する指導もありません。
作文を書かせて、よく書けた作文とあまりよく書けていない作文を並べて、それぞれの生徒の努力でよく書けるようになれというような指導になってしまうことが多いと思います。
作文は、低学年のときは誰でも教えられます。しかし、高学年になると同じようには教えられません。
だから、学校でも、作文指導は低学年のときはよく行われますが、高学年になるとだんだん教えられなくなり、中学生や高校生になると、ほとんどの学校では全く作文の指導というものはなくなってしまうのです。
本当は、学年が上がるほど作文指導は大事になってきますが、実際は学年が上がるほど作文指導というものがなくなっていくのです。
習い事は6歳からという言葉があります。6歳のころから始めた習い事は、一生続けられるものになります。
だから、この小学校低学年の時期の習い事の選び方は、先まで続ける展望で選ぶことが大事です。
ただ小学1年生の子供を教えるのではなく、その子が小学校高学年になり、更には、中学生、高校生になったときのことも考えて教えていく必要があるのです。