個人的な話になりますが、私(森川林)は子供のころ、電気屋さんごっこという遊びが好きでした。狭い建物の天井の上に入って、そこでいろいろな配線をするという設定の遊びです。一緒に遊んでいた友達はすぐ飽きてしまいましたが、私はその遊びをいつまでもやっていたいと思ったものです。
もうひとつ心に残っているのは、漫画の画面で、鉄人28号が恐竜と対戦する場面です。その恐竜は実はロボットで、恐竜が炎に包まれると、表面の皮膚が燃えて、中の金属の機械的な仕組みが現れるのです。それを見たときに、この「美しい表面の内部にある機械的な精巧な仕組み」というものに少し感動した覚えがあります。
どうしてこういうことを思い出したかというと、今の自分の仕事をふりかえったとき、やはりそういう裏方の仕事が好きだということに気づいたことがあったからです。きれいな表面の背後にある裏の複雑な配線や機械的な仕組みということに関心があるのです。
プログラミングの初歩的な勉強をしているとき、for構文を2つ組み合わせてわずか数行で、例えば1から100までのマトリックスが作れることを知ったときも、やはり同じような感動を覚えました。
だから、中学の技術家庭でプログラミングを教えるようになると、この勉強に熱中する子も多いだろうと思ったのです。しかし、学校ではまだあまりそういうことはやっていないようですが。
さて、このような人間の何かに対する性向は、持って生まれたものではないかと思います。
その本来の性質を伸ばす形で仕事ができれば、その人の人生が充実するとともに、社会全体も豊かな多様性を持つようになります。
この本来持っている個性を発見し育てるものが、さまざまな遊びです。
そのためには、遊びにも、新しいものに挑戦するという要素が必要です。いつも同じ遊び方をしているだけでは、その子の新しい個性はなかなか見つかりません。
そして、新しい遊びへの挑戦というものは、ある程度親が道を作ってやらなければ、子供だけで見つけるのは難しいのです。
それは例えば、何かの工場見学に行かせたり、工作キットや科学実験キットで遊ばせたり、小動物を飼ったり、野外で生活する経験をさせたりというようなことです。
親は、普通自分が経験した範囲のことしか考えつきませんから、他の家族との交流の中で、新しい遊びを開発していくことも必要になります。
言葉の森では、そういう情報交換のひとつの場として、facebookグループの「親子で遊ぼうワンワンワン」を作っています。
勉強は答えのある世界ですから、正しい勉強法と一定の勉強量で、誰でも同じように必要な学力をつけることができます。
今は、正しい勉強の仕方と、必要な勉強量が確保できていない場合も多いので、ここでも親の工夫が必要になりますが、遊びによる個性の発見は、答えのない世界ですから、更に親の工夫が必要になります。
また、現代では、遊びの世界も、例えばスポーツや音楽に見られるように、その一つの分野だけで試合やコンクールが目標になり、子供の生活のバランスを崩す場合もありますから、ここでも親のコントロールが必要になります。
この勉強による学力の向上と、遊びによる個性の発見が、子供の人生の両輪で、そのバランスを取っていくのが親の役割になると思います。
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漢字の書き取りの勉強は、意外と時間がかかります。
大人は、自分が子供だったころやはり時間をかけて身につけたことを忘れているので、子供が漢字を正しく書けないと、つい書き取りの勉強をさせれば何とかなると思いがちです。
しかし、漢字の書き取りの勉強は、子供にとってはやる意味が感じられないので続けるのが難しいものなのです。
そのときに役に立つのが作文です。
生活の中で使う漢字は、常用漢字約2000字のすべてではありません。養蚕や炉端や象牙や籠城などは、日常生活で使う場面がほとんどありません。そのかわり、新しく常用漢字表に入った挨拶や曖昧は、意外とよく使います。
漢字の書き取りは、自分がよく使う漢字についてだけ手で書けるようにしておき、あとは必要に応じてパソコンの漢字変換で正しく選べるようにしておけばよいのです。正しく選ぶためには、書くよりも読む力をつけておくことです。
自分がよく使う漢字は、自分の書く作文の中に出てきます。
作文を書いていて、その文章の中で漢字にできるもの、あるいは書き間違えたものを、1文字について40回書いて覚えるのです。40回というのは、1行20字の原稿用紙で2行分できりがいいからです。
漢字は熟語で覚えるものですが、書き取りのときはその間違えた1文字だけを取り上げて繰り返し書いて覚えます。
ところで、漢字の書き間違いは、本人が自分で気がつくことはありません。間違えて覚えているから、自分ではわからないのです。
これは大人でも同じです。本人は正しいと思って書き間違えているのですから、第三者の目が必要になります。
高校生で成績はよいのに、小学校4、5年生で習う漢字を間違えて覚えているという人が結構います。
中学や高校での漢字のテストは、中学や高校で勉強するものが中心で、小学生のころの漢字は滅多に出てきません。
今はよくできる高校生でも、小学生のころは勉強などあまりせずにのびのびと遊んでいたということが多いので、そのころ習う漢字が身についていないことがあるのです。
しかし、高校生になって改めて小学校の漢字から勉強し直すということはなかなかできません。
だから、毎週作文を書く練習をしている人は、その自分の書いた作文の中で間違えた漢字だけを直していくという勉強法でやっていけばいいのです。
これは、帰国子女の漢字の勉強の場合に、特によくあてはまることだと思います。
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日常的には使わない漢字の学習、海外に暮らす日本人親の共通の悩みだと思います。読みは読書で、書きは作文で、少しずつでも伸ばしてあげたいと思います。
帰国子女にとって漢字は一番のハードルです。書くことで間違いを発見しするのは、効率的ですね。
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日本語は、読み書きになると漢字などがあって難しくなりますが、聞き話すことに関しては、他の言語よりもずっと簡単です。
「日本語が世界を平和にするこれだけの理由」の著者である金谷武洋さんによると、日本語が簡単なのは、第一に文法が簡単だからです。
例えば、名詞の性別がなく、冠詞もありません。
動詞は、主語によって形が変わりません。例えば、be動詞が、I am、You are、He is……などと変化することがないのです。
第二に、発音が簡単だからです。
日本語の音素数は、あいうえおの母音と、KSTNHMYRWの子音、濁音のGZDBP、拗音の小さい「ゃゅょ」、撥音の「ん」、促音の小さい「っ」など、合計22ぐらいです。
これに対して、英語は45もあります。
だから、日本語は同音異義語が多く、ダジャレなども作りやすいのです。
このように簡単な日本語でありながら、世界中の書物が次々と翻訳され、日本語だけで学問の世界がカバーできます。
しかも、金谷さんによると、外国人が日本語を学び、日本で生活していると、本人が気づかないうちに優しい性格になり、話し方も穏やかになるというのです。
また、日本を訪れる外国人の多くが日本を好きになります。
このような日本と日本語のよさが、これから更に世界に広がっていくと思います。
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