作文指導をしていると、保護者の方からよく聞かれる相談の中に、もっと上手にするにはどうすればいいのかということがあります。
作文を見てそれをより上手になるように直す、という添削の方法によって上手にできる範囲は限られています。
作文を上達させるためには、直すよりも先に作文力を伸ばす必要があるのです。
伸ばす前に直していくと、そのときは多少よくなったように見えても、そのまま直し続けて上達するわけではありません。
それよりも、自分の書いたものが直されるというストレスで、子供は作文を書くことがだんだん負担になってくるのです。
直すよりも先に伸ばすことを考えるというのが、作文の勉強の基本方針です。
しかし、そういう考え方で作文指導を行っているところは、学校や塾も含めてほとんどありません。
では、伸ばすためにはどうしたらいいかと言うと、それは準備をすることなのです。
その準備とは、第一に題材の準備です。
あるテーマについて、子供の考えた実例だけでなく、お父さんやお母さんの体験談も話してあげるのです。
また、自分で調べる力がある子供であれば、そのテーマに関連する資料をデータが入るような形で調べるのです。
第二に、そのテーマについて親子で話し合うことです。
大人の視点を知ることで、子供は、感想をより深めて書いていくことができます。
題材をふくらませていくことと主題を深めていくことが作文の準備で、その準備ができた上で書いた作文の表現を工夫して行くという形で作文を上達させていきます。
その表現の工夫とは、低中学年であれば個性的なたとえ、高学年や中高生であれば(言葉の森で自作名言と呼んでいる)光る表現などです。
書き終えたあとの作文については、その作文のよく書けたところを褒めるだけというのが基本です。
作文は、直して上達させるのではなく伸ばして上達させるという基本を忘れないように子供の作文を見ていってください。
保護者懇談会でよく出る質問が、いろいろな教科の勉強の仕方です。
勉強の基本は、ごく簡単で、1冊の参考書を繰り返し読むか、1冊の問題集を解けない問題がなくなるまで繰り返し解くかということだけです。
繰り返しの回数は、4、5回です。
どんなに難しい問題も、4回もやればほとんどができるようになります。
成績が上がらないのは、いろいろなことをまばらにやっているからです。
例えば、塾からもらったプリントもやって、学校から出された宿題もやって、通信教育の課題もやって、市販の問題集もやってというような、いろいろな勉強を1回だけやるようなことを増やしているから、時間ばかりがかかって力がつかないのです。
ところが、そういうことを話しているうちに、ふと、勉強よりも大事なことがあるのを多くの人が忘れがちなのではないかと思いました。
勉強よりも大事なものは、読書です。
成績は、勉強をすれば誰でも上がるようになっています。
しかし、本を読んで考える力は、すぐにはつきません。
表面に見える成績の差よりも、この読書力の差の方がずっと大きいのです。
毎日本を1時間読んでいる子と、毎日本を10分しか読まない子の読書量の差は、数年たてばかなり大きなものになります。
しかし、その差は表面には出てきません。
この表面に出てこないところに、本当の実力があるのです。
作文も読書と同じです。
毎週1回作文を書く子と、学校の宿題が出たときだけ作文を書く子との、考える力の差は数年立てばかなり大きなものになります。
その考える力とは、その子の内面を豊かにする力のことです。
読書や作文と並んでもう一つ大事なことは、自分で主体的にやってみることと、何かに熱中する経験です。
与えられたことを与えられたとおりにやるのは、時間がかかりません。だから、能率よく見えます。
勉強の多くは、こういう能率のよいやり方で組み立てられています。
これに対して、子供が何かに興味を持ち自分から進んでやろうとすることは、無駄が多く、遠回りのことばかりやっているように見えます。
しかし、この経験があとで生きてくる本当の実力になるのです。
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「勉強をコントールする力をつける――そのための親の勉強観」
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今、子供たちの身の回りには、さまざまなやらなければならないことが押し寄せています。
それは、大人も同様です。
最近、時間が不足するという人が増えているのは、生活の本質に関係のないような雑事があまりにも増えてきたためです。
大人の場合は、それでも自分で計画を立てて自分の生活をコントロールすることができます。
しかし、子供はこれからそういうことを学ぶ時期にいるのですから、自分で生活をコントロールすることはまだできません。
だから、親が子供に、大事なことで継続することと、大事でないことで適度に抑制することを教えてあげる必要があります。
それは食べ物の好みのコントロールと同じで、子供が好きな甘いものばかり食べさせるのではなく、野菜などもきちんととることをすすめることと共通しています。
子供の時間のコントールを考えるときに、大事になってくるのが、親の勉強観です。
学校や塾で言われたとおりにやっていると、子供の勉強時間はどんどん長くなります。
どの先生も、自分の教えていることが大事だと思っているからです。
その結果、誰からも何も言われない読書の時間が削られてしまう子も多いのです。
小学生のころは、長い目で見れば、勉強よりも読書の方が大事です。
今の成績をよくすることに追われて、読書を後回しにしている子は、かえってあとで伸びなくなります。
例えば、漢字の書き取りテストなどをすれば、出来不出来の結果がすぐに出ます。
結果が出るものは、誰でもつい優先してしまいます。
しかし、読書はしてもしなくても、結果として出てくるものはありません。
だから、読書は置いておいて、まず漢字の勉強をということになってしまいがちなのです。
両方できるのがもちろんいいのですが、どちらが大事かと言えば、明日の漢字のテストより今日の読書の方です。
これは、異論のある方も多いと思いますが、これまでいろいろな子供たちを見ているとそういうことがわかるのです。
だから、親は、できるだけ長期的な視野で子供の成長を考え、子供の生活時間を考えていく必要があります。
思考発表クラブでは、毎週、子供たちに今読んでいる本を紹介してもらいます。
互いの本の紹介が刺激になるのか、どの子もいい本を選んできます。
こういう読書を柱とする勉強をしていくことが、将来の子供たちの大きな力になっていくと思います。
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