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地に足のついた勉強を―「進学塾不要論」を読んで as/826.html
森川林 2010/03/16 04:58 



 「進学塾不要論」(水島酔著 ディスカヴァー)という本を読みました。以下は、その内容の紹介です。

 塾に通ってよくなる子は1割、残りの9割は何らかのかたちで悪くなる、と著者は述べています。大量の宿題によって、考えずに問題をこなすようになると、本来わかっていた勉強もわからなくなり、また、そのような間違った学習スタイルが身につくと、その後の勉強にも悪い影響を与えるというのです。

 なぜ塾が大量の難しい宿題を出すかというと、ひとつは、宿題についてはコストがかからないという営業上の理由からです。もうひとつは、大量の宿題と難問を出すことによって、生徒のふるい分けができるからです。

 なぜふるい分けをするかというと、成績のいい順に難関校を受験させて合格実績を上げるためです。このため、受験の直前になるまで過去問を解かせないという塾もかなりあります。本当に志望校の合格を考えるなら、早めに過去問をやるのが正解ですが、ふるい分けのための手段として考えるならば最後の仕上げとしてやることになるからです。

 そして、この合格実績というのも、結局、その塾に通うから合格するのではなく、もともと合格する力のある子を集めているだけというのが正直なところです。

 偏差値60までの受験は、学校の勉強がしっかりできていれば十分というのが著者の考えです。


 著者の水島氏は、自分でも学習塾を運営しているので、書かれている内容に説得力があります。著者のいう「よい塾」の条件は、「宣伝をしていない」「チェーン展開をしていない」「一科目でも受講が可能である」です。中でも、宣伝が多いか少ないかはわかりやすい指標になると思います。

 学習塾の実態にくわしい人は、このようなことを考えているのだということ前提にした上で、自分の子供にどういう教育をするかを考えていく必要があります。


 以上の予備知識をふまえた上で、学力別の勉強の仕方を説明します。

 まず、実力の高い子は、塾に行ってもとりあえず問題なく勉強を進めています。これらの子供たちは、大学合格を目標とするのではなく、合格後の将来の社会生活の目標を普段から考えさせていくとよいと思います。そのためには、ハングリー精神を持たせることです。将来、安定した高収入の仕事につけばいいというのではなく、日本のリーダーとなる気概を持って創造的な仕事をすることを子供のころから求めていくことです。

 次に、実力の普通な子は、学習塾のペースに乗せて勉強をあおらないことです。大量の宿題をやらせて考える力をなくすのではなく、読書の時間を確保して自分なりに考える習慣を育てていくことです。小中学生のころは、まだ人に言われてやる勉強ですが、いずれ必ず本人が自覚して勉強するようになる時期が来ます。その足固めのための学力をつけておくというのが、小中学校時代の勉強の位置づけです。成績を上げることにとらわれるのではなく、実力をつける勉強に取り組んでいってください。

 最後に、勉強の苦手な子は、塾には頼らず、家庭で力をつけていくのが基本になります。苦手な子についても、勉強の方法はシンプルです。国語については読書です。英語は、教科書の音読と暗唱です。算数数学は、1冊の問題集を100%できるようになるまで繰り返すことです。

 いずれの場合も大事なことは、学習塾の方針を鵜呑みにするのではなく、親が自分の目で見て子供を育てていくことです。これは、何度言っても言いすぎにならないことですが、子供がテストを持って帰ってきたとき、点数だけを見て一喜一憂する親が多すぎます。ほとんど子供と同じレベルです(笑)。点数を見たあとに、必ず問題の内容を見て、子供がどこができなかったのかを知ることが大事です。そして、できれば、お母さんやお父さんが一緒にその問題を解いてみて、子供がどうしてできなかったのかを理解することです。そうすれば、勉強は、もっと地に足のついたものになっていくと思います。

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おはろ母 20100316  
水島先生は次のようなことも述べておいでます。書くことや読書がきらいになる弊害をきたすくらいなら、子供に作文や読書感想文を強要しないほうがよい、読解力さえあれば高校生くらいになれば自然に書けるようになる、と。しかしたとえ小学生であっても、自分の体験したことを、下手でも記録に残すことは意味あるように思うのですが。無理強いしないことが大事ということでしょうか。

森川林 20100316  
 方法論なしに作文や読書感想文を教えたら、作文も読書も嫌いになる可能性が高いです。だから、一般的にはそう言えます。特に、家庭で親が子に作文を教えるのは難しいと思います。

 言葉の森の場合は、長年の蓄積に基づいた方法論があるので、小1から高3まで続けても大丈夫です。
 ただし、読む力をつけないと作文がマンネリ化するので、暗唱+読書+作文ということでやっていくのが大事です。

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森川林 2010/03/15 17:33 

 通信で授業を受けている言葉の森の月・火・水の生徒のみなさんにご連絡します。

 3.4週の読解問題は、課題フォルダに載っていないので、3.3週と3.4週の「山のたより」に載せます。
 しかし、月・火・水の生徒のみなさんには、3.3週の山のたよりに、2月の読解問題を載せてしまいました。
 3.4週の山のたよりに、正しい3月の読解問題を載せますので、3.4週の「山のたより」を見て3月の読解問題をやってください。


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森川林 2010/03/15 05:12 



 言葉の森で勉強をしていた子が、大きくなってから教室に相談に来ることがあります。担当の先生のところにも、やめたあとに近況を時々連絡をしている子がいます。

 作文の勉強は、心の交流という面があるので、先生と生徒の間に信頼関係を作りやすいようです。未来の教育のあり方も、ここから考えることができます。

 子供は、勉強をするとき、勉強を通して大人の生き方を学びます。その大人は、必ずしも先生である必要はありません。昔だったら丁稚奉公先の主人、現代なら勤め先の上司や先輩がその役割を果たすこともあります。また、子供たちの周囲に、大人はたくさんいます。しかし、先生という役割は、子供と最も容易に接することができる立場です。

 この場合、先生が必ずしも立派な人格者である必要はありません。それは、親が必ずしもそうでないのと同様です。しかし、先生や親は、子供にとって立派であろうという意識があります。それが大事なのです。子供が何かに困っていたら、力になりたいという意識を自然に持つことのできる大人、これが親であり先生であるのです。

 しかし、今の学校や塾の体制の中では、先生は生徒にとっての先生である前に、勤務先にとっての勤務者です。何年かたって転勤になったり転職したりすれば連絡もとれなくなり、信頼関係はなかなか築けません。

 また、学校や塾の先生は、勉強を能率よく教えるという技術面を主に提供することが求められています。生徒との人格的な触れ合いは、親からも生徒からももともと求められていません。だから、生徒の方も、「あの先生の授業はおもしろい」「つまらない」というところで接するだけで、困ったことがあったら相談したいという気持ちは出てきません。

 そこで出てくるのが、地域に根ざした教育です。先生が、学校や塾というゲゼルシャフト(利益共同体)ではなく、地域というゲマインシャフト(地縁共同体)に属していれば、生徒との関係はもっと永続的になります。小学校低学年のころからその先生に教わった子は、中学生になっても、高校生になっても、大人になっても、いつでも生徒と先生という関係で話ができるようになります。

 この場合、先生が生徒よりも能力的に上であり続ける必要はありません。それは、親が子供に対してそうであるのと同様です。しかし、成長した子供に対して、親や先生という立場で話すことができる人がいるということが大事です。ある年齢を超えると面と向かって注意してくれる人は社会にはいなくなります。しかし、親や先生ならそれができます。少なくとも、そういう役割を持てる人がいるということが重要なのです。

 未来の教育は、グローバリズムの対極にあるローカリズムの教育になるでしょう。グローバリズムの教育の典型は、放送授業のようなものです。人気のある講師の授業が、テレビで自宅にいながらにして見られるというのは能率的ですが、それはテレビを使った教育ではなく、ただのテレビです。勉強の技術的な能率だけを考えたもので、先生と生徒の接触というものはありません。

 ローカリズムの教育とは、昔の寺子屋教育のようなものです。また、インディアンの社会で言えば、長老が子供たちに行う教育のようなものです。

 今後、小中学生の教育は、学校や塾が行うものではなく、地域が行うものになっていくでしょう。教材は、グローバルなものを生かしつつ、先生という人間はあくまでもローカルなものにとどまるということが、子供たちの成長にとっていちばんよいことだからです。

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