ときどき、「国語の成績が悪かった」という相談を受けることがあります。
対策は簡単です。そのテストを持ってきてもらい、問題と解答とその生徒の答えを見るのです。すると、おのずから成績の悪かった原因がわかってきます。
しかし、これは一人ひとりの対応が必要で時間がかかるので、すぐにできるわけではありません。基本は、家庭でお父さんやお母さんがやっていくといいのです。
国語に限らず、算数数学でも、英語でも、小中学生の勉強は、基本的に難しいものは何もありません。もちろん、高校生の勉強も同じです。
答えがあり解法があるものは、本来できるようにできているものです。確かに、受験用の問題は点数に差をつける必要があるため、難しく作り込んであるものもあります。それでも、途方に暮れるほど難しいものはありません。そして、途方に暮れるような問題は、もともとできなくても合否には影響しないのです。
テストを持ってきてもらうと、いろいろなことがわかります。
中学生の国語の問題で漢字ができていない場合、それが出題範囲の決まった問題であれば、単なる勉強不足です。対策も何もありません。テストの1週間か10日前から、いつどの教科の勉強をするか決めておき、そのとおりやっていればいいのです。
しかし、中学生は、そういう予定を立てて勉強をするということに慣れていません。最初は、親が手順を示してあげる必要があります。何の手助けのせずに、「もう中学生なんだから自分でやりなさい」では、やはり中学生ではできない子の方が圧倒的に多いのです。
親が手順を示すといっても、模範的な手順を示すのではありません。もし、親が自分でテストを受けるとすれば、こういう日程で勉強するだろうという主観的なものでいいのです。
大事なことは、子供が、勉強には計画が必要だということをわからせることです。
国語の勉強で文法問題ができていない場合は、教材が不足しています。薄いものでよいので、国文法の参考書・問題集を購入しておく必要があります。
試験前に、出題範囲を5回読んでおけばいいのです。
国語の読解問題ができていない場合は、理詰めに解くという解き方のコツを知ることです。それは、言葉の森のページに出ています。
これは、やればすぐに成績の上がる方法ですが、やっていない生徒がほとんどです。
記述の問題ができていない場合は、必要字数でまとめるのに慣れていないのがいちばんの原因です。
読解長文をもとに、要約や感想を書く練習を毎日していくことです。正解を目指すのではなく、毎日書き慣れる練習をしていきます。
塾に行っているのに成績が悪いという場合は、家庭で宿題に取り組むような時間がないことが原因です。
勉強の時間というのは、塾で先生の話を聞いている時間ではありません。家庭で自分で勉強をしている時間です。
そして、家庭で自分で勉強する時間があれば、塾に行く必要はもともとありません。塾の時間はほどほどにして、家庭での学習時間を充実させていくことが大切です。
しかし、もっと大事なことを言えば、実は成績などどうでもいいのです(笑)。
受験期になれば、どの子も何も言わなくても真剣に勉強に取り組むようになります。
そのときにぐんぐん力をつけていく子は、それまでにいろいろな本を読んだり、自分で考えたりしていた子です。そして、受験期の半年か1年で大幅な大逆転をしていくのです。
勉強だけしていて成績のよかった子は、受験期には逆に伸び悩みます。
だから、いちばん大事なことは、成績にとらわれず、しかし毎日の実力のつく勉強をすることです。
その代表的なものが、読書と問題集読書です。
その問題集読書を、言葉の森では、今後もっと取り組みやすいものにして、小学校低学年から家庭学習としてできるものにしていきたいと思っています。
10.4週の言葉の森新聞に、森リン復活の記事を載せました。
====引用ここから。
■森リン大賞が復活しました
サーバー移転のため、7月と8月は森リン大賞を表示していませんでしたが、この9月4週から再び表示できるようになりました。
長い間、お待たせして申し訳ありませんでした。
今後は、この森リン点を使って、作文の進歩のあとが客観的にわかるようにしていきたいと思っています。
https://www.mori7.com/oka/moririn_seisyo.php
====引用ここまで
森リンは、小論文の力を測定するソフトです。
1200字の文章を基準としているので、それよりも短い字数では、正確な点数は出ません。文章が短ければ、誤差が大きくなってしまうのです。
1200字ぐらいの文章だと、その文章を書いた人の語彙力がかなりはっきり出てきます。森リン点で、86点以上取れると、かなり実力があります。
上記の「森リンの丘」という清書のページで見てみると、9.4週の作文が86点以上の生徒は、
・小学6年生……0名(0%)
・中学1年生……1名(1%)
・中学2年生……0名(0%)
・中学3年生……2名(5%)
・高校生…………3名(2%)
となっています。
9月までの作文の目標字数が、小6以上は800字となっていたので、800字ぐらいまでしか書いていない人が多く、全体に点数が低くなったのだと思います。
しかし、そういう課題の目標字数とは関係なく、自分のペースでいつも1200字以上書いている生徒もいます。そういう生徒は、書くことが好きで実力のある生徒です。
文章力というと、表現力のように考える人も多いと思いますが、本当の文章力は思考力です。
特に森リン点で高得点を取るような生徒は、物事をよく考えています。だから、大学入試の小論文でももちろんよく書けますが、小論文以外のどの教科も成績がよいこと多いのです。
コンスタントに86点前後を取り、たまに90点台を取るような生徒は、東大レベルです。
しかし、森リン点は、長文の要約が1段落あり、その後に自分の文章を展開する書き方をすると、その最初の要約の部分は点数が高くなることが多いので、実力はあまり正確にはでません。
要約の元の文章は、プロの評論家や学者が書いていることが多いので、その文章を要約した部分は、自然に森リン点が高くなってしまうのです。
サーバーの引っ越しが終わり、森リン点などの集計をしやすくなったので、今後、こういう客観的な文章評価をもっとわかりやすく表示していきたいと思っています。
言葉の森は、設立当初は、受験とか成績ということをあまり意識せずにずっと作文の勉強を教えてきました。
だから、最初のころ言葉の森に参加した生徒は、みんな受験や成績にあまり関係のない子たちでした。勉強のよくできる子や、、小中高一貫校に通っていて受験の心配のない子が多かったのです。
その傾向は今でもあります。特に小学校低学年の子は、何か必要に迫られて作文の勉強をするというよりも、書くことが好きだから、又は面白そうだからという動機で作文の勉強を始める人が多いようです。
しかし、そういう子供たちも大きくなれば、みんな入試に直面します。
小学生のころ教えていた生徒が、中学生や高校生になると、時どき入試の相談を受けるようになりした。
最初は、大学入試に小論文があるという生徒に、その大学の入試傾向に対応した文章の書き方を説明するようにしていました。
言葉の森は、もともとは、大学生の作文指導からスタートした教室なので、受験小論文のノウハウは豊富だったのです。
ところが、そのうち、国語の読解力をつけたいという生徒が増えてきました。
実は、国語の得意な生徒は、国語の勉強をしたから得意になったというのではありません。国語力は教わってつくものではなく、国語的な生活環境や生活習慣の中でつくのです。
だから、国語の勉強を教えるとしたら、それは授業で教えるのではなく、家庭での自習として教えることが中心になります。
ところが、国語の苦手な生徒は、家庭で国語的な生活習慣がなかったから苦手になったということも多いので、国語の自習を続けること自体が難しいということもわかってきました。
国語の苦手な生徒は、毎日の読書だけで成績が上がります。普通の生徒は、毎日の音読だけで成績が上がります。得意な生徒は、毎日の問題集読書だけで成績が上がります。しかし、こういう形の残らない勉強は、毎日続けること自体が難しいのです。
毎日続けるということは、これまでの習慣の代わりに新しい習慣をつけるということですから、年齢が上がるほど難しくなります。週に1、2回やることと、毎日やることとは、日数の違いではなく質の違いになるのです。
そこで考えたのが別の方法です。(つづく)