小学生の作文をチェックする場合、大切なことはチェックつまり評価と、指導を対応させることです。作文指導では多くの場合、事前にどのように作文を書いたらいいかという指導がなく、書かれたものを事後的に評価する形になっています。事前指導なしの事後評価だけでは、褒められても子供はなぜ褒められたのかはわからないので進歩しません。また、直すところを指摘されても、自分がいいと思って書いたことを注意されるのですから、がっかりしてしまうだけです。事前の指導があることによって、褒めることと注意することが生きてくるのです。
では、どういうところをポイントに事前の指導していたらいいのでしょうか。
まずいちばんわかりやすいのは、字数です。大体1時間から1時間半を目安にします。小学生は、学年の100倍から200倍の字数を書く力があります。例えば、1年生は100字から200字、2年生は200字から400字、そして6年生は600字から1200字です。中学生、高校生も600字から1200字を1時間から1時間半かけて書くこと目標にするといいでしょう。
小学校1、2年生の作文の目標は、書く習慣をつけること正しい表記を身につけることです。この時期は作文の指導として、わかりやすい項目を指示していくといいでしょう。例えば、会話を思い出して書く、名前や数字を思い出して書く、自分の思ったことを書く、というような項目です。
小学校3、4年生は、表現を工夫して面白い作文を書くことを目標にしていきます。この時期は、「まるで……のよう」というたとえの表現を工夫させると子供は喜んで取り組みます。さらに、書き出しを会話や景色の様子で工夫したり、似た話を家族に取材して書いたりするというような書き方もしていきます。
小学校5、6年生は、構成を考えて書く力のついていく時期です。作文の大まかな構成として、最初の段落に説明、2番目の段落に出来事、3番目の段落に似た話や取材した話の出来事を書いて立体的にし、最後の4番目の段落で感想を書く、というような大きな流れを指示していくといいでしょう。またこの時期は感想をできるだけ自分らしく書く、または人間や社会の問題に視野を広げて書く、などということも目標にしていきます。似た話や取材した話は、身近な人に聞くだけでなく、資料を調べて書くというようなことも工夫していける時期です。
しかし、作文の指導をする場合、大事なことは、書く指導するだけで上手になるのではないということです。文章表現力は、読む力によって伸びます。従って、読書や暗唱に力を入れていくということが勉強の基本になります。
本日から何回かに分けて、作文と国語に対する質問に答えていきます。
今回は、作文の苦手な子の共通点についてです。
作文の苦手の子といった場合、二つのケースが考えられます。一つは、本人が苦手と思っているケースです。もう一つは本当に苦手なケースです。自分が苦手と思っていることと実際に苦手なこととは、作文では実は一致しないことの方が多いのです。
まず、本人が苦手と思っているケースです。
体験学習で教室に来た生徒に、最初、先生が聞きます。「作文は好き?」。すると、子供又は親の答えは、三通りに分かれます。
第一は、大好きという子です。こういう子は、実は苦手なことが多いのです。なぜ好きだと思っているかというと、学校などでこれまで作文を書く機会があまりなかったので、漠然と作文が好きで得意だと思っている、ということです。
第二は、普通と答える子です。この「普通」と答える生徒は、かなり得意なことが多いのです。つまり、自分の実力がよく分かっているということで、それぐらい書く力があるということだからです。
第三は、苦手という子です。この苦手という子は、大体が普通か得意な子で、実際に苦手なことは、あまりありません。
なぜ普通や苦手と思っている子が得意なことが多いかというと、学校で熱心に作文を教える先生にあたると、苦手な子が増えるという事情があるからです。
これは他の教科でも同じです。これまで教えてきた生徒の作文の中で実際にあったケースです。社会科の熱心な先生に教わって、社会が大嫌いになったという話がありました。同じように、算数が好きで算数の熱心な先生に教わっている子が、算数が嫌いで苦手になるということがありました。
これはどういうことかというと、先生がその教科が好きで熱心であると、つい生徒の欠点が目につくので、その欠点を直してしまおうと思うからです。そのために、子供はその教科が苦手だと思うようになるということです。
作文はこの度合いがほかの教科よりも強く出やすい分野です。ですから、作文を教える場合は、欠点をなるべく指摘しないことが大事です。少なくとも先生と生徒の間に信頼関係ができるまでは、一言も注意をしないというぐらいの決心が必要です。また、先生と生徒の間に信頼関係ができたとしても、二つ褒めて、一つたまたま注意するところが見つかったというような注意の仕方をすることが大切です。
作文はメンタルなもので、子供は自分の全人格をかけて文章書いているというような感じがあります。これは、計算問題や漢字書き取りの勉強とは質が違います。子供は自分の全精神を集中して作文を書きます。先生は、その作文の欠点が目についた場合、その欠点を軽い気持ちで直そうとします。ここに大きなギャップが出てきます。
例えば、こういう例がありました。小学校1年生のよくできる子が体験学習に来ました。先生の説明のとおり作文を書き上げました。とても上手にかけているので、褒めるところばかりで、直すところがほとんどありません。そこで、先生がたくさん褒めたあと、ついでに一言、「実は数字は、縦書きのときは漢字で書く方がいいよ」と言うと、その子は突然泣き出しました。それぐらい作文の指導というのは微妙だということです。
また、次のような例もありました。高校3年生を卒業して浪人になったばかりの生徒が体験学習にきました。大学入試までの1年間の時間があるので、苦手な作文を勉強しようと思って来たということです。普通の教科はよくできますが、作文は、「超」がつくほど苦手で、小学校高学年から中学生高校生まで、学校から作文の宿題が出たときは、実は親が代わりに書いてあげざるを得ないほど苦手だったということです。これは、結局、小学校低学年のころ、作文の欠点を指摘されたというトラウマが残っていたのだと思います。
言葉の森は、「事前の指導」プラス「事後は褒めること中心の評価」という勉強の仕方ですから、1週目からすぐ書けるようになり、親子とも驚いていました。その後、その子はぐんぐん上達して、翌年大学に合格したので卒業しました。
これらの例でもわかるように、小学校低中学年のころの作文の指導というのは、褒めることが非常に大事だということです。
次に、実際に苦手な子の場合です。
苦手な子の原因は、一言でいうと読む量が不足していることです。なぜ読む量が不足しているかというと、生活の時間帯の中で、本を読む時間が取れていないということです。
この理由はいくつかありますが、一つは、スポーツが好きで表で遊んでばかりいるので、家に帰ると食事をしてあとは寝るだけという形で生活している子です。もう一つはテレビやゲームが好きなので、本を読まないという子です。
本を読まない子は、活字が苦手なので、漫画すらも読まないということがあります。こういう子供に対しては、その子のレベルに応じて、つまりどんなにやさしい本でもいいから、一日50ページ以上好きな本を読むという時間を確保していくことが大切です。読む時間を毎日確保できれば、本にはもともと子供を引きつける力がありますから、必ず読書好きなっていきます。これはすべて子供の問題ではなく親の問題で、親が、読書時間を確保してあげられるかどうかということにかかっています。
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)
マインドマップ風構成図
記事のもととなった構成図です。
(急いで書いたのでうまくありません)