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日本発の未来の教育――オンエア特別講座、寺子屋オンエア、オンライン作文、森林プロジェクト(3)
森川林 2016/03/08 19:38 


 次は、バランスのよい学力を育てることについてです。
 今、学校や塾で行われている勉強の多くは、受験を目的としています。受験が勉強の目的にならざるを得ないのは、合格者の人数に制限があるからです。なぜ合格者の人数に制限があるかというと、教える先生の数が限られていて、教室の机の数が限られているからです。だから、試験をして、その学校の定員の中に入れる人を選ぶ必要があるのです。

 しかし、このごく当然のように見える前提が大きく崩れつつあります。そのひとつはMOOCなどに見られるようなネットを利用した教育によってです。近い将来、受験はもっと緩やかなものになり、誰でも好きなところに入れるが、そこで勉強して卒業するにはそれなりの努力が必要になるという形に変わるでしょう。そうなると、勉強は受験に勝つためのものではなく、実力をつけるためのものになっていきます。
 受験の価値が薄くなるもうひとつの理由は、少子化による大学の経営難の結果、安易な推薦入試が増え学歴と実力が相関しない例が増えているからです。また、受験のテクニックが高度化した結果、実力がなくても点数は高いというケースも増えてきたからです。
 読書や思索や幅広い経験の時間を持たずに、ただ素直に勉強だけしてきた生徒の点数がいくら高くても、その点数が実力だとは言えません。そういう、まるで科挙の時代の末期のような、受験勉強の末期状態が今生まれつつあります。

 現在のような受験が目的となる勉強のもとでは、勉強の重点は、人生や社会に役立つ大事なことにではなく、受験で差がつきやすいところで点数を取るということに置かれます。
 昔は、受験勉強は、実力を伸ばすひとつのきっかけとして有用なものでした。今でも、もちろんそういう面はあります。だから、受験の1年間で学力が飛躍的に伸びるのも事実です。しかし、その受験勉強が先取りによって行き過ぎたものになると、逆に受験のための勉強に特化することによって、かえって学力が低下していくのです。点数は上がるが、本当の学力は低下するというのが、今の受験勉強が持っているマイナスの一面です。

 受験勉強の弊害は、二つの面で出ています。ひとつは、受験勉強の先取りのし過ぎです。例えば、ある作者とその作者が書いた作品を結びつけるという国語の問題があった場合、本当の実力とは、その作者の書いたその作品を読んでいて自然にわかるというものです。しかし、その作者と作品をただ知識として記憶しただけの子も、同じ点数が取れます。そして、多くの本を読んで自然に身につけている実力のある子よりも、本を読む時間を省略してただ多くの作者と作品の結びつきを覚えた生徒の方が一般に点数はよいのです。
 もちろん、こういう一夜漬けに近い勉強が必要な場面は、社会生活でもあるので、決して無駄ではありません。しかし、それはせいぜい受験の最後の半年か一年で集中してやればよいことです。何年も前からそういう条件反射的な勉強の仕方をすることは、かえってその子の学力を低下させることになるのです。

 受験勉強のもうひとつの弊害は、勉強の苦手な子を多数生み出していることです。人生に役立つ本当の学力をつけることを目的にした勉強であれば、誰もが満点を取れることが目標になります。江戸時代の寺子屋で行われていた読み書き算盤は、そういう勉強でした。寺子屋で学ぶ子供たちの中には,よくできる子も、あまりできない子もいたでしょう。しかし、誰もが自分のペースで必要なことを学んでいきました。この誰もが満点を取れるようになるというのが、教育の本来の目標なのです。

 しかし、受験が目的になっている勉強のもとでは、教える先生は、受験で差がつきやすい難しいところでいかに得点するかということに勉強の重点を置きがちです。解き方を訓練していないと時間内には解けない算数数学の問題、合っているものを選ぶのではなく、間違ったものを選ばないという国語の問題は、こういう事情で生まれてきています。そして、受験勉強の重点が点数の差のつきやすいものに置かれると、それに対抗するかのように受験問題は新たに点数の差のつきやすいものに進化(というか退化)していきます。このようにして、重箱の隅をつつき合うような受験勉強と受験問題の結果、多くの子が落ちこぼれていくのです。その落ちこぼれを救う方法は、差のつきやすい難問の解き方をていねいに教えることではありません。本当に必要な勉強を教えることなのです。そして、その本当に必要な勉強を学ぶことであれば、それは教科書レベルの教材と、自学自習の仕組みと、質問に答えられる体制さえあれば十分なのです。(今の教科書は解説があまり詳しくないので、教科書レベルの教材に詳しい解説が加わった市販の参考書や問題集の方がいいのですが。)(つづく)

※次回は、「自学自習の仕方について」です。


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