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作文の書き出しの工夫は、情景の書き出しで
森川林 2019/01/02 07:34 

「燃えるような夕焼けが空と海を一杯にしていた。今しも水平線に沈む太陽を右に、船は南へ南へと進んでいた。」(「九つの空」(團伊玖磨著)より)

 作文の長さは、600字から1200字ぐらいのことが多いので、書き出しや結びの書き方が重要になってきます。
 書き出しや結びによって、全体がまとまった印象になったり、そうならなかったりします。

 書き出しで大事なことは、読み手が読んでみたくなるような、すぐにクライマックスに入るような書き方をすることです。
 その工夫のあとで、「いつ、どこで、何をしたか」という説明に入っていくのです。

 その書き出しの工夫として、会話で始めたり、情景で始めたり、名言で始めたりという練習があります。
 この中で、最も簡単なのは、会話の書き出しですが、これは誰でもすぐにできる分、かえって印象に残らない書き出しになってしまうことがあります。
 もちろん、小学校中学年の最初の練習のころは、会話の書き出しに慣れていくだけでいいのです。

 しかし、学年が上がって、小学校高学年や中学生になっても、いつも同じように会話の書き出しで始めてしまうと、それはかえって工夫のない書き出しになってしまいます。

 では、どうしたらよいかというと、そのときの情景で書き出しを始めるのです。
 以前、同じようなことを書いたと思って、「言葉の森新聞」を調べてみるとありました。

 小学校高学年以上の生徒のみなさんは、また、小学校中学年でも表現をもっと工夫したいと思うみなさんは、情景の書き出しの練習をしてみてください。

▽言葉の森新聞 第922号より
■書き出しの工夫
 先日、高校生の生徒から、「会話の書き出しってよくないんですか」と質問されました。
 朝日新聞の「炎の作文塾」というコラムで、「会話文から始めないで」という記事があったそうです。その記事では、「文章講座の講師の中に、『文章は会話文から始めなさい』と教える人がいるらしい。そういう講師を信用してはいけない。」「会話文で始めると、独りよがりの文章になりがちだ。文章によほど習熟してくれば別だが、会話文で始めるのは、やめた方がいい。」「○○さんはヘンな講師に習ったのだろうか。」などと書いてあったそうです。思わず、本多勝一氏の「中学生の作文技術」を連想してしまいました。(笑)こういう記事を書く人の視野の狭さは、読み手にも伝染するようで、このようなコラムを読んでいるとつい、「○○をしてはいけない」「○○しかない」という発想をしてしまいがちです。

 文章でいちばん大事なものは中身です。表現は、中身をスムーズに伝えるためにあります。
 私がこれまでに読んだ本で最も難しかったものは、ヘーゲルの「精神現象学」と「大論理学」でした。それは、訳者の訳し方にもよりますが、すべて文末が「である。」で終わっていました。しかも、それぞれの一文が長く、「……である。……である。……である。」という感じで延々と最後まで書かれていました。しかし、中身があるので、その文末の単調さは決して欠点のようには見えませんでした。表現よりも中身が大事という考え方の見本がここにあります。
 ですから、本当は、書き出しの工夫は二次的なことなのです。しかし、もし同じ中身の文章があった場合、読みやすい面白い表現と単調で堅苦しい表現とでは、もちろん読みやすく面白い方に価値があります。特に、現代のように、多くの人が文章を書く時代では、表現の工夫は文章の重要な要素となります。

 表現の工夫の一つとして、書き出しの工夫があります。
 私が、書き出しの工夫として参考としたいと思っているものに、團伊玖磨(だんいくま)氏のエッセイがあります。「九つの空」(朝日新聞社)からいくつか引用してみると、こういう書き出しです。
 「燃えるような夕焼けが空と海を一杯にしていた。今しも水平線に沈む太陽を右に、船は南へ南へと進んでいた。」
 「黄昏(たそがれ)の銀座通りには、一日の勤めを終った人の波が流れていた。夏の残照が、僅かに暮れ残っている天頂近くの数片の鰯雲を紅に染めていて……」
 「夏だと言うのに何処迄も続く鉛色の空を、十五世紀に出来た古い大学の塔が黒い針のように突き刺していて、その針の先だけが……」
 エッセイなのでこういう工夫がしやすいとも言えますが、実は小論文でもこのような書き出しをすることができるのです。
 高校生に書き出しの工夫を説明すると、実力のある生徒は、内容もあり書き出しの表現も工夫した文章を書いてきます。中身と表現を兼ね備えた文章を書くことが小論文指導の一つの目標です。

 しかし、書き出しの工夫には、書きにくいものと書きやすいものとがあります。情景の書き出しなどは、比較的書きにくい書き出しです。情景の書き出しがしにくい場合は、会話の書き出しなどで書きやすく工夫することがあります。
 ところが、表現の工夫には両刃の剣の面があり、ありきたりの工夫では、かえってしない方がいい場合も出てきます。会話の書き出しなどは、特にありきたりになりやすいので、かえって工夫が逆効果になることもあります。
 そこで、その工夫を批判するのは批評家です。教育の観点からは、不充分な工夫であってもその将来の可能性を生かす方向に指導していくのが正しいやり方です。
 今、小中学生で会話の書き出しを練習している人は、この工夫が終点ではなく、今後の工夫の準備であると考えて練習していってください。



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森川林 2019年1月2日 7時45分  
 作文で大事なのは、内容の創造性です。
 しかし、作文の評価をする人の多くは、内容よりも表現の見た目を重視します。
 例えば、「字がへただ」「漢字を使っていない」「字の間違いがある」などなど。
 同じような批評に、「会話の書き出しがパターン化している」というのもあります。
 会話の書き出しは、書きやすい分だけ、かえってありきたりの表現になりがちなのです。
 では、書き出しの工夫をどうしたらいいかというと、そのひとつが情景の書き出しです。
 しかし、本当は、書き出しよりも中身の方が大事なのです。

nane 2019年1月2日 7時53分  
 小学校低学年の子が会話の書き出しを使えば、それは書き出しの工夫です。
 しかし、高学年の子がいつまでも同じ会話の書き出しをしていたらそれは工夫の不足です。
 同じように、高学年の子がことわざの引用をしたら、それは工夫です。
 しかし、高校生の子が、あいかわらずことわざの引用だけで済ませていたらそれは工夫の不足です。
 高校生は、ことわざを加工して引用するところまで要求されるのです。


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