反抗期があるのは先進国だけ 記述式問題の家庭での対策 作文の苦手な子には、まずやって見せてあげる――すべての勉強には見本が必要 勉強はひとりでやるものだが、みんながいるから面白い 条件反射的な勉強よりも、創意工夫のある遊びを

記事 2662番  最新の記事 <一つ前の記事 一つ後の記事> 2017/8/19 
森の学校オンエア構想――地方創生と教育改革を同時に実現する
森川林 2016/09/11 07:27 


 先日、岐阜県の位山というところに行ってきました。ちょうど熱帯低気圧が来ているときで、山頂まで歩いて数時間で往復してきましたが、その間誰ひとり会わないぐらいの大雨と大風でした。(そんなときに行くなって)

 それはそれでいいのですが、その位山までに行く道路を運転しているときに、ただ長時間運転しているだけで暇なので、いろいろ考えました。
 まず左右に広がる田んぼや畑とまばらに点在する人家です。

 私は、普段あまり外出することはしませんが、横浜のはずれの港南台周辺を歩いていると、人も家も隙間なく並んでいます。混雑しているということはありませんが、どこに行っても人がいて、家があり、お店があるという感じです。
 そういう環境から比べると、この田舎の(岐阜県の中津川市は私の父の実家で、時どき行ったことがあるので親しみを感じる街です)風景は、いかにも人口密度が少ないように感じられたのです。

 今住んでいる港南台は、飲食店が結構あり、それぞれ活発な競争をしているようですが、それはそこに需要があるからです。しかし、人口密度の少ないところでは、顧客を獲得する競争以前に、顧客がたぶん一定数しかいないので、店と顧客が親しい間柄で共存しているのだと思います。

 こういうところで、若い人が何か新しいベンチャー的な仕事を始めようと思っても無理があります。それは、今の仕事が工業的なものからサービス的なものに移り変わっているために、人口密度が低いとサービスそのものが成り立たないからです。
 港南台には、ヒーリングとか健康とかマッサージとかを提供する店があり、いろいろな人が利用しているようですが、これも人口密度がある程度あるから成り立っているサービスであり、田舎では単独では成り立たないのではないかと思います。

 昔は、こういう田舎でも仕事を作ることができました。それは、工業生産が主流だった時代です。工業製品という物は、運ぶことができますから、田舎で立地して生産をしても成り立ったのです。
 しかし、工業生産は、人件費の低い新興国に移ってしまったので、日本ではもう新しい雇用を生み出すことはできなくなっています。日本の工業生産は、今後人に頼らずロボット化されていくので、生産が成り立っても雇用を生み出すような生産ではなくなっていくのです。

 工業は新興国に奪われ、サービス業は人口密度が低いために成り立たないとなると、田舎では基盤になる産業が生み出せないことになります。
 だから、いったん過疎化が進行すると、その過疎化は更なる過疎化を生み、中には人が住まなくなるような田舎も出てきます。
 日本の少子化は、平均的に進むのではなく、人口密度の低いところでは更に加速して進んでいるのだと思います。

 しかし、田んぼが広がり、人家が点在する田舎の光景は、日本人の田舎の原風景です。
 この田舎でも成り立つような新しい仕事があるかどうかと考えて、ネットを利用したサービス業の可能性ということを考えました。

 ここからが本題です。
 言葉の森では、現在、オンエア講座や寺子屋オンエアやオンエア作文というネットを使ったオンラインの教育を行っています。
 ネットを利用した教育というと、MOOCやスタディサプリに見られるように、良質の授業を無料又は低価格で広範に提供するサービスが脚光を浴びていますが、その教育サービスは、マスメディア的なものです。

 低価格で大量に良質なものをというと、昔のダイエーの「よりよい品をより安く」というキャッチフレーズを思い浮かべます。また、昔の製造業も、便利な家電製品を水道のように低価格で豊富に使えることを目標にしていました。
 この低価格で大量にというのは、生活のインフラ作りという点では、最初に必要とされるものです。

 しかし、消費者は、やがてそういう大量生産に飽きてきます。
 人間の喜びは、豊かな生活ができることだけでは満足できず、そこに更に、自分なりの個性的な関わりを求めるようになるのです。

 今、街の書店は、ネットの書店に押されて、年々縮小されています。確かに、便利さだけから考えれば、ネット書店を利用した方が、本も見つけやすいし、自宅でいながらにして購入できるので便利です。
 しかし、人間には、ふらっと近所の書店に立ち寄って、新しい本との出会いを経験したり、本屋を待ち合わせの場所に指定したり、人を待っている間に立ち読みをしたり知人に出会ったリというような、ほっとする感覚を求める気持ちもあります。
 だから、街に書店があるということは、そこがひとつの明るい開かれた空間となっているような感覚があるのです。

 こういう人間の関わりが、これからのサービス業には必要とされるようになります。
 教育の分野についても、ただ優れた教材が低価格で利用できるだけでなく、そこに友達や先生との個人的な関わりが必要とされるようになってくるのです。

 しかし、今skypeで行われているようなマンツーマンの授業では、深い関わりの対価として高額な受講料が必要となります。
 英会話のオンライン授業では、その価格を抑えるために、人件費の低いところの先生が教えるような工夫がされていますが、それは英語だからできることであって、そのほかの教科では、マンツーマン指導は高額にならざるを得ません。

 ネット利用の低価格なマスサービスと、同じくネット利用の高額なマンツーマンサービスとの中間にあるのは、これまでは地域の教室でした。少人数の教室に生徒が実際に通うことによって成り立つようなリアルな教室や、あるいは学校が、教育の中核部分を担っていたのです。

 ところが、リアルな教室は、今行き詰っています。
 それは、生徒の多様化と一斉指導という方式が結びつかなくなってきたからです。

 そのリアルな数人から十数人の生徒を、多様性を生かしながら個別に指導し、しかも生徒どうしの交流や先生との人間的な関わりを実現するのが、言葉の森の考えているオンエア講座などのネット利用の教育です。

 ネットを利用して数人から十数人の生徒を一人の先生が教えるという授業形態であれば、この教育は、田舎のような人口密度の低いところでも成り立ちます。
 例えば、過疎化の進んでいる村で、小学1年生の子供が一人しかいないような場合でも、その子はネットの授業で、全国の同じ小学1年生の子と机を並べて、というかパソコンの画面を並べて、一緒に勉強することができます。担任の先生がいる固定したクラス制なので、席替えやクラス替えはありますが、長期間同じ友達や先生と一緒に勉強ができるので、人間的な関わりも持てるようになります。

 しかも、そのネット授業を行う教室が田舎の場合、そこには自然が豊富にありますから、年に数回、生徒の合宿を行い、リアルな交流を深めるということもできます。
 年に数回というのは、距離がかなり遠い場合ですが、もしこれが電車やバスで30分から1時間程度の距離にある教室であれば、週に1回合宿教室に参加するという形もとれます。こういう実際の交流があれば、それはそのままネットでの交流にもつながるので、ネット上の教育も自然に活性化します。
 日常的には、自宅でネットを利用した能率のよい教育を受け、週に1回は合宿のようなリアルな深い交流を豊かな自然のある場所で行うということができれば、こういうサービスは田舎でも十分に成り立つとともに、日本中の子供たちが利用できるものになるのです。

 以上のようなことを、車で数時間運転している間に考え、それを実現するために今いろいろ工夫をしているところです。
 言葉の森では、既に森林プロジェクトという、作文指導の講師を養成する講座があります。この作文指導というのは、実はかなり奥が深いので、言葉の森のように30年以上の指導の実績がなければできないものだと思います。
 その作文指導の資格講座に加えて、今後は寺子屋オンエアやオンエア講座の講師養成講座も行っていきたいと思います。

 現在行っているオンエア講座の中でも、小学1年生から3年生対象の読書実験クラブは、教わる生徒も教える先生もすぐに楽しくできるという見通しがあります。
 小学4年生から6年生対象の思考国算講座は、指導内容が高度で、まだ教える側の負担が大きいため、今後これを改善していく予定です。
 同じく中学1年生から3年生対象の先行国数講座も、指導内容が高度で教える側の負担がまだ大きいので、これも今後改善していく予定です。

 いずれにしても、将来は、全国の志ある先生が自宅でネット教育を行い、全国の子供たちがネットとリアルの両方でその教育に参加できるという仕組みを作っていきたいと思っています。
 このやり方ができれば、海外にいる邦人子弟も、このネット教育に参加できます。海外の生徒の教育が、日本国内の生徒の教育と違うのは、時差の問題だけですから、教える先生が例えば日本で早朝に教えるような体制を作れれば、日本の先生がヨーロッパにいる生徒の授業を行うなどということも十分にできるのです。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
オンエア講座(41) 森の学校オンエア(2) 寺子屋オンエア(101) オンエア作文(2) 言葉の森のビジョン(51) 森林プロジェクト(50) 

コメント欄

コメントフォーム
森の学校オンエア構想――地方創生と教育改革を同時に実現する 森川林 20160911 に対するコメント

▽コメントはここにお書きください。
 ハンドルネーム又はコード:

(za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
メルマガの配信
▼バックナンバー
○一般用 ダイジェスト版
○生徒用 完全版

Facebookページ
言葉の森作文ネットワーク
いいね! 15,983件
新着コメント1~10件
読書指導のもう nane
 高校生で本を読まない子は、大学生になっ 6:13
読書指導のもう 森川林
 小学生の読書時間は、10年前とほぼ同水 6:10
子供の教育にお nane
 ときどき、「どの本がいいですか」とか、 8/18
子供の教育にお 森川林
 よい教材というのは、確かにあります。 8/18
将来の作文教育 森川林
 OCRの機能が向上しているので、たぶん 8/17
子供によい本を nane
 お母さんの好きな本は物語文になる傾向が 8/17
子供によい本を 森川林
 読書好きな子に共通しているのは、お父さ 8/17
作文自動採点ソ 森川林
 森リンの自動採点が停止状態ですみません 8/16
子供がyout nane
 子供に尊敬されるお父さんやお母さんにな 8/16
子供がyout 森川林
 子供には、憧れの対象が必要です。   8/16
……次のコメント

オープン教育 1~10件
オープンの川
過去の記事

過去の1~30件目を表示
■反抗期があるのは先進国だけ 9月10日
■記述式問題の家庭での対策 9月10日
■作文の苦手な子には、まずやって見せてあげる――すべての勉強には見本が必要 9月9日
■勉強はひとりでやるものだが、みんながいるから面白い 9月8日
■条件反射的な勉強よりも、創意工夫のある遊びを 9月7日
■子供たちに、本を読み、家族と対話し、経験を発表する交流の場を 9月7日
■人のせいにせず自分のせいにする人が伸びる――毎日の読書は環境があれば自然にできるようになる 9月6日
■テーマ別のFacebookグループの紹介 9月6日
■勉強は毎日平凡なことを単純に続けるのが大事――暗唱検定に合格する子の勉強法 9月5日
■勉強しなさすぎの弊害よりも、勉強しすぎの弊害を考える――勉強は短い時間にとどめ、あとはたっぷり遊ぶのが大事 9月4日
■子育ての上手な人は、なぜか教育論をぶたない 9月3日
■受験作文のコツ――実例と表現に個性を生かす 9月2日
■国語の選択問題は、合っているものを選ぶのではなく、合っていないものを選ばない 9月1日
■新しい勉強のスタイル(3)――家庭で行う国語と算数数学の勉強法 9月1日
■読書実験クラブ0826のあとの雑談 8月31日
■新しい勉強のスタイル(2)――成績急上昇は自学自習から 8月31日
■新しい勉強のスタイル――受験よりももっと楽で価値ある選択肢 8月30日
■小学校低学年のときほど長続きする作文の勉強を 8月29日
■小1~小3の読書実験クラブの読み聞かせの動画の例「肌の色の違い」 8月28日
■日本の若い世代に新しい文盲が生まれているのではないかと、ふと 8月28日
■頭をよくする作文の勉強法(その5)――家族で盛り上がる小1の親子作文 8月27日
■ご質問やご相談は掲示板で自由に。分野別の貴重な情報も掲載 8月27日
■頭をよくする作文の勉強法(その4)――親子で作文の話題作りを楽しむ 8月25日
■頭をよくする作文の勉強法(その3)――玉子焼き作りを題材にした低学年の作文の例 8月24日
■頭をよくする作文の勉強法(その2)――作文をきっかけにした親子の対話作り 8月23日
■頭をよくする作文の勉強法――最初の目標は、書くことが苦にならなくなることだが 8月22日
■公立中高一貫校向けの受験作文コースがスタートします 8月21日
■「まず感想文コンクールありき」の宿題ではなく、子供のことを考えた宿題を 8月20日
■オープン教育掲示板の紹介――Facebookグループ、Google+コミュニティとも連動 8月19日
■寺子屋オンエアで毎日の自学自習の習慣を 8月5日
……前の30件
HPの記事検索
ホームページの全記事

 言葉の森新聞

Google+ページ
言葉の森作文オンエア

Twitter
言葉の森@kotomori

RSS
RSSリーダー

代表プロフィール
森川林(本名中根克明)

講師ブログ
言葉の森の講師のブログ

算数の通信教育
できた君の算数クラブ

カテゴリー
全カテゴリー
ICT教育(1)
遊び(6)
新しい産業(23)
暗唱(121)
生き方(41)
息抜き(19)
いじめ(1)
インターネット(25)
英語教育(10)
オープン教育(24)
親子作文コース(9)
オンエア講座(41)
オンエア作文(2)
音声入力(10)
音読(22)
外国人と日本語(4)
科学(5)
学問コース(1)
学力テスト(2)
合宿(14)
家庭学習(92)
家庭で教える作文(55)
漢字(17)
帰国子女(12)
教育技術(5)
教育論文化論(255)
教室の話題(26)
行事と文化(1)
ゲーム的教育(4)
合格情報(27)
高校入試作文小論文(10)
構成図(25)
公立中高一貫校(63)
国語問題(15)
国語力読解力(155)
子育て(117)
言の葉クラブ(2)
言葉の森サイト(41)
言葉の森の特徴(83)
言葉の森のビジョン(51)
子供たちの作文(59)
作文教育(134)
作文検定試験(4)
作文の書き方(108)
算数・数学(22)
自習検定試験(10)
自習表(5)
自然災害(1)
実行課題(9)
質問と意見(39)
受験作文小論文(89)
小学校低学年(79)
森林プロジェクト(50)
政治経済(63)
生徒父母向け記事(61)
生徒父母連絡(78)
全教科指導(2)
センター試験(7)
創造が価値の源泉となる社会(9)
大学入試(14)
対話(45)
他の教室との違い(22)
知のパラダイム(15)
中学生の勉强(21)
中高一貫校(11)
寺子屋オンエア(101)
読書(95)
読書感想文(19)
読書実験クラブ(9)
友達サイト(7)
日本(39)
日本語脳(15)
発達障害(1)
東日本大震災(15)
facebook(29)
facebookの記事(165)
プレゼン作文発表会(20)
プログラミング教育(5)
勉強の仕方(119)
未来の教育(31)
MOOC(2)
無の文化(9)
メディア(8)
森の学校オンエア(2)
森リン(103)
問題集読書(33)
読み物(1)
四行詩(13)
未分類(378)

QRコード






 
小学生、中学生、高校生の作文(2007年4月まで)
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。