子供の読書習慣は、大人の働きかけによってすぐに変わります。学校で読書の時間が設けられれば、すぐに子供たちの本を読む冊数が増加します。
そして、いったん読書が日常生活に定着してくると、子供は自分の好みに応じで、読書の傾向をはっきりさせていきます。
しかし、どのジャンルも読める本は豊富なので、高校生になると、読みやすい本に留まる人と、難しい本に進む人に分かれてくるようです。
読みやすい本は、一般に物語文の本で、難しい本は、主に論説文の本です。
読書は、楽しむために読む面もありますが、自分自身の向上のために読む面もあります。
高校生以上の人にすすめたいのは、論説文の難しい本です。こういう本を高校生時代に読んでいれば、その読書は大学生になっても発展していきます。
そして、大学生になったら、さまざまな分野の古典と言われる本を読んでいくといいのです。
少し古い資料になりますが、内田保男さんが高校生向けの小論文の参考書の中で推薦した本の中から、参考までに主な著者を挙げておきます。(順不同)
福沢諭吉
湯川秀樹
土居健郎
中根千枝
梅棹忠夫
丸山真男
木村尚三郎
鈴木孝夫
桑原武夫
星野芳郎
石井威望
森嶋通夫
中野孝次
木下是雄
今西錦司
富山和子
時実利彦
子供が小学校高学年になると、本人が塾に行きたがるようになります。それは、必ずしも受験のためばかりではなく、自分だけ勉強が遅れるのが嫌だからという心理が働くからです。
また、親の方も、子供が家でのんびり過ごしているのを見ると、その時間をもっと役に立つ勉強の時間がで埋めたいと思うようになります。
これは、もちろんこれでいいことなのです。子供の仕事は勉強ですから、勉強の時間を優先していくというのは大事なことです。しかし、問題があるのは、大事なものが勉強だけになってしまうことです。
よく、家庭学習で集中力なくだらだらと長時間勉強する子がいます。子供は、本当はそういうだらだらした勉強をすることは嫌いなのです。
しかし、なぜだらだらするのかというと、勉強が早く終わったときに、次の勉強が課されるという家庭が多いからです。それはつまり、親に、勉強以外の大事なものが見えていないからです。
勉強以外の大事なものとは、個性です。これからの世の中は、自分の個性を生かして生きていく時代になります。
これまでの社会では、仕事をしっかり済ませて、その余暇に自分の個性を生かすという生き方が主流でした。しかし、これからは、自分の個性を生かすこと自体が仕事になるという時代になります。
今の大人で個性を生かして仕事をしている人は、ごく少数です。ほとんどの人は、与えられた仕事をこなすことに自分の時間の大半を使っています。これまでは、そういう仕事の仕方でなければ生活できない社会だったからです。
しかし、今の子供たちが大人になる時代には、社会はもっと豊かになっています。豊かな時代の仕事の中心は、自分の個性を生かした仕事になります。
ところが、個性というものは、生まれつき誰にでもあるとは言っても、それが社会の中で個性として認識されるためには、時間をかけて育まなければならないものなのです。その個性を育てることが、勉強の次に来る子育ての重要な目標です。
そうすると、子供への接し方も当然変わってきます。必要な勉強はできるだけ早く能率よく終わらせて、あとは個性を育てるための時間を確保するというのは、子供の生活のあるべき姿になってきます。
また、勉強は学校できちんと済ませておけば、それ以上塾で勉強を追加するようなことはせずに、勉強以外の個性を育てることに時間を使うというようになってきます。
しかし、勉強は学校でと割りきって生活をするためには、今の学校教育は力不足なところがあります。だから、勉強は、学校プラス家庭学習で、そして必要な勉強を済ませたら、その上にそれ以上の勉強を果てしなく続けるのではなく、個性を育てる生活に切り換えていくのです。
もちろん、その個性の中には、もっと勉強を深めて学者や研究者になるような個性もあるでしょう。しかし、ほとんどの人は、実際的な仕事をして生活していきます。
ただし、未来の実際的な仕事は、今の社会ではまだ存在していないものが大部分です。
今既にあるような仕事は、既に誰かが始めたものですから、今は個性的に見えても、すぐに参入者が増え、レッドオーシャンになっていきます。
しかし、自分が最初に始めた個性的な仕事であれば、次々と新しい創造を付け加えていけばいいのですから、いつまでも個性を保って続けられます。
これを、不安定な仕事の仕方だと思うのは、旧時代の社会観です。自ら変化を作り出すのが、これからは最も安定した仕事の仕方になります。
逆に今、堅い安定した仕事だと思われているようなものは、これからは科学技術の発展によって急速に不安定な仕事になっていきます。
これは、仕事に限らず、スポーツにも、音楽にも、芸術活動にも、さまざまな趣味の分野にもすべてあてはまります。
個性を生かすことが、これからは最も楽しく安定した人生の過ごし方になります。
そして、こういう未来の個性的な人生を楽しむために、今の子供時代の教育があるのです。