ログイン ログアウト 登録
 学力と実力。知識力と創造力 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1540番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/12/15
学力と実力。知識力と創造力 as/1540.html
森川林 2012/05/12 20:31 



 勉強のよくできる子というのはいます。そういう子に共通することは、ひとつには、吸収力があることです。吸収の速さと言ってもいいでしょう。長文の暗唱などでも、ほかの人よりも短い時間や回数でできるようになります。

 もうひとつは、吸収する勉強に飽きないことです。人間は普通、人の話を聞くよりも、自分で話す方が楽しいことが多いものですが、勉強の好きな子は、聞くとか読むとかいう受け身で取り組む勉強にもすぐに適応できます。しかし、これにはマイナス面あります。吸収することが得意な子は、自分から何かを創造することが苦手になることも多いのです。

 長時間飽きずに勉強できるので学校の成績はよく、受験でも成果を上げますが、そういう子が社会に出てからどういう仕事に向くかというと、大量の知識や書類を整理したりまとめたりする仕事までであることも多いのです。本当は、多くの知識をもとに自分なりのオリジナルな世界を創造できればいいのですが、創造力は、知識の吸収力とは別のものですから、勉強のよくできる子が必ずしも創造性を持っているわけではありません。逆に、知識を吸収することに適応しすぎると、本来持っていた創造性も表れにくくなるようなのです。

 私は、教育関係の本をよく読みますが、同じようなテーマを取り上げた本でも、傾向が大きく二つに分かれるように思います。ひとつは、参考文献などを多数網羅し、幅広く知識を整理していながら筆者の独自の考えの乏しい本です。教科書や参考書のような本と言っていいでしょう。もうひとつは、筆者の独自の考えと実例で話をぐいぐい進めていくような本です。思い込みで書いていることも多いので客観的な資料としてはあまり使えませんが、いろいろな面で参考になる本です。

 そして、これはあくまでも印象ですが、知識を網羅し整理するだけの文章を書く人は、学歴の高いことが多く、そういう傾向の人が日本の社会で次第に増えているような感じを受けるのです。今の日本の政治や学問に携わる人は、かなり強固な学歴社会の階層の中にいます。学力の中身よりも、肩書としての学歴でポジションが決まるような位置にいるのです。これが、実際に日々の仕事の工夫をしなければ生きていけない普通の庶民の生活とは違うところです。実力よりも肩書きが物を言う仕組みは、かつての中国の科挙の仕組みと似ています。全国から集まった最優秀な官僚によって運営されているはずの清という国家は、新しい時代の変化に対応できず西洋列強の侵略にほとんど何の有効な対策も打てませんでした。それに対して、学歴や肩書ではなく、下級武士の実力によって作られた明治政府は、短期間で日本の近代化を成し遂げました。

 これからの日本の社会に求められるのは、学力とともに実力のある人材です。それは、知識力だけでなく創造力もある人材だと言ってもいいでしょう。今の受験体制の中では、知識の吸収力以外の能力はほとんど評価されません。それは、試験制度というものがもともとそういう形でしか客観的な評価ができないからです。しかし、実際に接してみれば、実力のある人や創造力のある人というのは、自然にわかってきます。ペーパー試験ではわからないことが、実際にいろいろな仕事をする中でわかってくるのです。

 同じことが家庭でも言えます。お父さんやお母さんは、子供のテストの成績だけに目を向けるのではなく、その子が将来、独自の考えを持つ創造力のある人間になるかどうかということに目を向ける必要があります。これからは、いい学校に入ったから一生安心だという時代ではなくなります。学歴や資格が物を言うのはわずかの間で、その後の長い時間を本人の実力で生きていくような時代になっていきます。子供を見るときに、数年先の受験がうまく行くかどうかという目で見るのではなく、数十年後に社会で自分らしい活躍ができるかどうかという目で見ていく必要があります。勉強はできて当然だが、ペーパーテストで測られる勉強以外の力がどのくらいあるかを見ていくことが大事なのです。



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
子育て(117) 教育論文化論(255) 

コメント欄

コメントフォーム
学力と実力。知識力と創造力 森川林 20120512 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
ひふへほ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「ひふへほ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
子育て(117) 教育論文化論(255) 
コメント1~10件
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
子どもの文章力 森川林
今の受験は知識の詰め込みの勉強になっています。 考える問題 12/8
記事 5392番
作検研究。森リ 森川林
作文は、褒められても注意されても、そこに客観的な基準がなけれ 12/7
記事 5391番
「作文検定」「 森川林
 今は、AI社会の前夜。  昔は新聞やテレビが中心だった。 12/7
記事 5390番
AI時代に子ど 森川林
AI時代には、先生の役割は「教えること」ではなくなります。 12/6
記事 5389番
【合格速報】順 森川林
Rさん、合格おめでとう!! よくがんばりましたね。 受験 12/4
記事 5387番
森リン大賞9月 森川林
 従来の作文評価は、小学校低学年では「正しい表記ができている 11/9
記事 5382番
作文の学習で大 森川林
 「何でも自由に書いてごらん。いつでも褒めてあげるから」とい 11/7
記事 5381番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
「給与の決め方 佐藤隆
経営者・経営層の皆さまへ 突然ですが、御社の人件費?? 12/12
森の掲示板
3I/atla 森川林
日本にはかつて穏やかに何万年も続いた縄文文明があった。そのよ 12/12
森川林日記
Re: 11月 森川林
 これは、解き方の問題ではなく、読む力の問題です。  読解 12/5
国語読解掲示板
Re: ICレ 森川林
 ChatGPT、あまり文章うまくないなあ(笑)。  音声 12/5
森川林日記
ICレコーダと 森川林
AI時代に子どもが伸びる――全科学力クラスという新し 12/5
森川林日記
noteのペー 森川林
https://note.com/shine007 12/4
森川林日記
11月分 4  あういと
問題7と問題8が分かりません。 キーワードはわかるのですが 12/3
国語読解掲示板
Re: 森川林
 字がきれいだったのは、そのあとの日記の内容を見ると、弟が葛 11/30
国語読解掲示板
Re: 11月 森川林
 お返事遅れて失礼しました。  易しい国語問題は、「同じ言 11/30
国語読解掲示板
ともとも
小5の11月の読解検定のBの問題が誕生日だから字が綺麗だと思 11/28
国語読解掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習