震災後、被災者の安全や住居が確保されたあと、まず考えなければならないのは、被災者の今後の仕事だと思います。
今回の震災で仕事を失った人の中には、農業や漁業の人もいるでしょうし、勤め人や公務員だった人もいるでしょうし、その街で自分で会社や店を経営していた人もいるでしょう。多様な職業の人に仕事を確保するのに通り一遍の方法ではできません。当面は、周辺の地域が協力して、個々の状況に合った雇用先を生み出していくほかはありません。
しかし、現在の日本は、経済全体が低迷して、大規模な雇用を生む活力に欠けています。当面、震災からの復興の需要があるでしょうが、少なくともこの復興の事業は、日本の企業中心に行う必要があります。また、米国に借金として貸し付けた形になっている米国債も、米国の事情もあるにせよ部分的にはただちに日本に返済することを要求していくべきだと思います。こういうことが正々堂々とできてこそ、日本の政治がリーダーシップを発揮したことになります。
ところで、長期的に考えると、今後、日本経済は新しい産業を生み出さないかぎり今の衰退を抜け出せません。
その新しい産業は、製造業ではありません。製造業は、今の新興国の追い上げに見られるように、低賃金の労働力が確保できるかどうかが優位性の差になっています。しかし、労働力に依存しない高度化した製造業は、逆に雇用吸収力がありません。多くの雇用を生み出すような製造業は、日本ではもはや成り立たないのです。
しかし、新しい産業は、サービス業の中にもありません。サービス業は、人間がサービスの主体になることが多いので、雇用を生み出す力はありますが、今のコンビニや飲食業のアルバイト店員の賃金に見られるように、傾向的に低賃金化していきます。サービス業は、マニュアルによってサービスの差がなくなれば、やはり低価格の競争にならざるを得ないのです。また、もっと大きな問題は、マニュアル化されたサービス業は、その仕事に携わる人に技術の蓄積を生み出さないということです。サービス業は、何十年勤めてもベテランにはならないのです。
このように考えると、日本は、新しい産業を生み出す方向でしか発展する道はありません。
現在は、多くの人が先の展望が見えない中で、とりあえず将来の安定した収入を確保するために学力を身につけておくという選択をしています。しかし、日本経済全体が衰退していく中では、学力や学歴も決して将来の保証にはなりません。
新しい産業を作り出し、日本を再び経済的に発展させることができるのは、当面はやはり政治の力によるしかないのです。(つづく)
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今回、インターネットのさまざまなサイトで、貴重な情報を得ることができました。その中の二つのサイトを紹介します。(既にご存知の方も多いと思いますが)
●副島隆彦の学問道場(広報ページの1202番に現場の記事が載っています)
●武田邦彦さんのページ(科学的な裏づけのあるデータが載っています)
また、地域で言葉を交わした何人かの方から、自分たちにできることは祈ることだから心を込めて祈っているという話を聞きました。世界中の心ある人たちが同じように、日本のために祈っていてくれたようです。この人間の想念の力も、現地で給水作業に従事していた人たちと同じように、大きな力を発揮したと思います。
今回の地震原発の事故を通して私があらためて知ったのは、日本には、みんなを守るために自分の生命を投げ出す覚悟を持った人たちが多数いたということでした。最初は少し驚きましたが、すぐに、やはりそうだったのだと納得しました。
これからも困難な状況は続くかもしれませんが、私たちひとりひとりがこの勇気と愛を持ち続けるかぎり、日本は決して滅びないと確信しました。
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今回の事故で、最も頼りになったのは、在野で専門的な知識を持ち、国家的な志を持っている人たちの提供する情報でした。
これを、今後の日本の情報環境の再構築に大きく生かすことができます。
第一は、だれでも自由に投稿できる専門分野別の掲示板を設置することです。
第二は、その掲示板の管理者が議論を整理し、わかりやすく専門外の人に伝えることです。
第三は、その管理者は、参加者の民主的な投票によって選出されることです。
このようにすれば、在野の優れた知識を集め、天下り的な情報コントロールのない、自由で知性的な議論が提供できると思います。
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3月20日、21日は、前線の通過に伴い、全国的に雨が予想されます。
福島原発の周辺も雨になるはずですから、この雨水を原発の冷却として利用することができます。
雨水を有効に生かすために、原発周辺の下水管を閉鎖し、水はけの悪い状態を意図的に作っておく必要があります。
既に似たようなことは考えられていると思いますが、もしまだなら、現場で具体策を検討していただきたいと思います。
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個人的なことを言えば、3月11日からこの1週間は、私はかなり絶望的な気持ちでした。日を追うごとに、事故が質的にも量的にも悪化していたからです。
しかし、昨日、東日本を放棄して新しくやり直せばいいと思ってから気持ちが切り替わりました。ちなみに、東日本は、私の住んでいるこの横浜も入ります。
事故は、まだ何の収束の見通しもありません。これから更に大きな事故に発展する可能性もあります。
しかし、いずれにしても最悪の地点を出発点にして、これから新しい日本を作っていけばいいのです。日本人全体の勇気と知性と愛をもってすれば、不可能なことは何もないと思います。
さて、情勢は流動的なので、そのつど客観的に判断していく必要があります。
まず、福島県周辺の地域の住民は、もっと広範囲に避難する必要があります。放射能をふくんだちりが、公式な説明やテレビの報道以上に拡散している可能性があるからです。
関東地方の東京や神奈川などには、まだ大きな影響は出ていません。しかし、北風の日や雨の日には外出しないというのが原則です。
このあと、北東の風が吹けば、関東地方は放射能汚染地域になりますが、その可能性は低いと思われます。しかし、いずれにしても天候次第の綱渡り状態が続きます。
20日、21日の連休に、日本列島は前線におおわれ、東北地方も含めて全国的な雨になります。私は、この天候が原発の冷却と事故の収束に結びつくと期待しています。
いずれにしても事故が収束に向かったあとの今後の対策を考えておく必要があります。
第一は、被災地(の範囲がどこまでになるかは未定ですが)の人々を、全国民の協力で助けていくことです。この点については、日本人の国民性を考えるかぎり全く問題はないと思います。日本の復興のためには、今、日本が持っている使われていない膨大な資産を大規模に投入する必要があります。
第二は、放射能の無害化についての研究を進めることです。このためには、現在の科学ではまだ発見されていない新しい理論と方法が必要になります。放射能無害化の本質は、元素転換です。動植物の体内では、常に、ある元素からほかの元素への転換が行われています。そのために、植物は水と光と空気だけで、葉を茂らせ花を咲かせ実を実らせることができます。ゾウやキリンは、その植物を食べるだけで、あの巨体を成長させています。この原理を人間がコントロールできるようになれば、放射能物質を無害な元素に転換することはできると思います。
第三は、全く新しいエネルギー源の開発を進めることです。かつて日本が戦争に巻き込まれたのも、大きく見ればエネルギーが国内で自給できなかったためです。日本は、今後、石油、原子力にとってかわる安全で自給可能なエネルギー源を開発していく必要があります。そして、それは今の段階でも既に見通しがあります。新しい画期的なエネルギーの開発が進まなかったのは、石油や原子力への依存が大きすぎたためです。国民の総意が新エネルギーの開発に向かうならば、これはかなり早い時期に実現に向かうと思います。
第四は、政治の一元化です。今回の事故とその後の対応を見ても、関係者各人の必死の努力があったことは認めますが、統一的なリーダーシップがやはり不足していたように思えます。リーダーが大局的な立場から方針を出し、組織全体がその方針で動くというのではなく、リーダーが大衆と同じレベルで情勢へのその場の対応に追われているという感じがしたのです。また、国民(というかマスコミ)が、リーダーに、大局的で理性的な方針よりも、感覚的な真剣さととりあえずの行動を求めていたことにも大きな問題があると思います。マスコミの目のつけどころの低さが、日本人全体の知性の低下を生み出しているのです。日本の政治は、軍国主義の復活を予防するという名目で何重にもわたって手かせ足かせをはめられてきました。しかし、今、政治に求められているのは、統一した行動力です。そして、強力な政治と民主主義の両立は、少しの工夫をすれば十分に可能なことなのです
以上、この、災害からの復旧、放射能の無害化、新エネルギーの開発、政治の一元化を、国民の総意として進めていく必要があると思います。
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