東京都教育委員会は1月9日、平成30年度の都立中高一貫校の入試について、海外帰国生徒枠の応募状況を発表しました。
最終応募倍率は、白鴎高附属中が募集人員24名で2.04倍、立川国際中が募集人員30名で1.93倍でした。
受験できる条件は、海外に2年間以上在住し、日本国内に戻って2年以内となっていますから、かなり限られてきます。
しかし、一般枠の受験の例年の倍率は、白鴎高附属中が約7倍、立川国際中が男子約5倍、女子約6倍ですから、倍率の面だけから考えてもかなり有利な条件になっています。
しかも、試験の内容は、一般枠の受験が全教科で難度の高いものであるのに対して、海外帰国子女枠の試験は、作文(45分600点)、面接(20分400点)の二つだけですから、無理な受験勉強をする必要は全くないと言っていいと思います。
海外帰国子女枠の入試は、この都立中高一貫校以外にも、全国の多くの公立・私立中学校で行われています。(資料参照)
また、中学入試だけでなく、高校入試も、大学入試も海外帰国子女を対象とした入試は増えています。
以上のことから考えると、条件さえ合えば、海外帰国子女枠の受験は、言葉の森の勉強と一致する点が多いと思いました。
その理由は、第一に、無理な受験勉強をしなくて済むことです。
今の受験は、小学生の貴重な読書や経験などの時間を犠牲にして、難問の解き方を身につけるという無理なところがあります。
そういう受験勉強に疑問を持つ家庭にとっては、帰国子女枠の受験は、生徒本人の実力を素のまま生かせる理想的な受験になると思います。
第二は、言葉の森の作文指導が、小1から高3までの一貫した勉強で、自然に小論文の学習に進むカリキュラムになっていることです。
受験などまだ意識しない小学校低学年のうちから楽しく作文を書くことが、そのまま中学入試や高校入試、更には大学入試の作文小論文試験の勉強につながっています。
そして、このようにして身につけた文章表現力は、大学入試で終わるわけではなく一生使える力になっています。
第三は、言葉の森が今行っているオンラインの学習が、海外在住の生徒にとっては、貴重な勉強の機会になることです。
海外に暮らしていると、子供の学習環境は、周囲の子供たちの影響で、どうしても日本語力を伸ばしにくいものになってきます。
ところが、言葉の森で、毎週1回、同学年の子供たち5、6名で、作文の構想図を発表し合ったり、自分の研究成果を発表し合ったりする機会があれば、日本語力や作文力だけでなく面接対応力も十分に育ちます。
ただし、言葉の森の海外の生徒の作文指導は、今は時差の関係で教える先生がまだ少ないのが現状です。
そこで、当面は、時差が少ないアジア在住の日本の子供たちを中心に、オンラインの学習指導を広げていくことを考えました。
また、言葉の森では現在、作文講師資格講座の森林プロジェクトを広げていますが、この森林プロジェクトの海外の講師がオンラインの思考発表クラブを担当すれば、同じタイムゾーンの時差の問題はなくなります。
そこで、今後は、アジア在住の教育に関心のある方を対象に、森林プロジェクトの作文講師資格講座を広げていきたいと思っています。
【関連URL】
【中学受験2018】都立中高一貫校の最終応募状況…帰国在京枠は白鴎2.04倍・立川国際1.93倍
https://resemom.jp/article/2018/01/10/42176.html
<都立中高一貫校>特別枠、海外帰国・在京外国人生徒枠募集
http://toritsu-chugaku.com/tokubetsuwaku/
帰国子女枠中学受験の学校情報・入試対策方法|海外子女向けオンライン ...
http://www.edubal.net/eduexaminfo_cat/jse/
帰国子女受入校 | 海外子女教育振興財団コーポレートサイト
http://www.joes.or.jp/g-kokunai
平成30年度 東京都立白?高等学校附属中学校 募集要項
http://hakuo.ed.jp/web/pdf/EntranceExam-J/30AdmissionOutline.pdf
都立立川国際中等教育学校平成30年度 海外帰国・在京外国人生徒枠募集について
http://www.tachikawachuto-e.metro.tokyo.jp/site/zen/page_0000000_00174.html
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最初のころの公立中高一貫校の入試は、理想的な内容でした。
小学6年生の向上心のある生徒が、無理な詰め込み勉強をせずに自然体で受験できる入試だったからです。
しかし、その後急速に難化が進み、今では私立中学の受験と同じように、早期から長時間の難問対応のテクニックを身につけないと対応できないものになっています。
ところが、今回の都立中高一貫校の海外帰国子女枠の受験については、条件さえ許せば特に受験勉強などせずに実力のままで取り組めるものになっています。
試験科目は、作文と面接だけですから、言葉の森のウェブ会議を使ったオンライン学習で、作文力と発表力を身につけておけば万全です。
当面、日本と時差の少ないアジア在住の小学1年生からがオンライン学習の対象になると思います。
日本では、Facebookの利用人口は約2400万人(21%)ですが、東南アジアではシンガポールの約3800万人、インドネシアの約3500万人など、70%から80%、中には90%近くの人が利用しています。
Facebookでコミュニケーションを取りながら、Zoomでリアルなオンライン学習を受ければ、理想的な学習環境ができます。
時差の少ないアジアにいる日本人の子供たちを対象にしたオンライン作文学習は、帰国子女枠の受験だけでなく、日本語能力の維持や向上にも役立つと思います。
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年末年始の休みも終わり、9日から作文も自主学習クラスも思考発表クラブも一斉にスタートしました。
19時から授業のあった思考発表クラブの小学4~6年生の発表は、休みの期間が長かったせいもありとても充実した内容で、一人ひとりの発表がまるで専門家の講義のような感じでした(笑)。
こういう発表が、誰に言われるわけでもなく、ただ友達の前で自分が調べたり考えたりしたことを発表したいという健全な動機で行われているところにとても感心し感動しました。
こういう勉強の様子を見ていると、人間には本来向上心があり、自然に任せておけば自分の意思でどんどん前に進もうとするものだと思いました。
それが今、勉強という言葉を聞くとなぜ嫌いという言葉が連想されるかというと、そこに点数を上げるための強制という無理な要素が働くからだと思います。
小中学校の勉強は学力の基礎ですから、本来難しいものではありません。
誰でもすぐに百パーセント理解して使えるようになるはずのものなのに、点数で差をつけることが目的となっている勉強の仕組みのために、不必要に難しいことをやらなければならなくなっているのです。
もちろん、勉強には難しい面があるのは当然です。
しかし、それは本来の自然を理解することの難しさであるべきであって、人工的に作られた難問の難しさである必要はありません。
小中学校で普通の学力をつけ、それで余裕ができた時間に、自分が本当に興味を持ったことを自分自身の好奇心から学ぶというような理想の勉強スタイルが、多分これからはできる時代になってくるのだと思います。
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思考発表クラブの約1時間の勉強の様子は、そのクラスの4、5人で共有しているだけではもったいないので、いつか差し支えない範囲で録画して、同じぐらいの学年の子供たちに見せたいと思っています。
こういう自主的な勉強の様子を見ていると、子供たちの成長に本当に必要なのは、いい友達と家庭環境なのだということがよくわかります。
今年は、日本語の環境が乏しい海外に住む日本の子供たちに、思考発表クラブのようなオンライン学習の機会を作っていきたいと思っています。
当面は、時差の少ない東南アジアにいる日本の子供たちですが、教える先生が海外に増えればヨーロッパの子供たちも対象になります。
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国学院大学栃木中学校 A.Uさん
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先日、ホームページの記事で、仮想通貨のことについて書きました。
今、仮想通貨の取引所の新規登録がかなり混み合っているようなので、仮想通貨はすでに多くの人の認識の上では市民権を得ています。
そして今年は、実経済の中でも、法定通貨の現金や預金と同じような存在感を得るようになるのだと思います。
もちろん、仮想通貨にはビットコイン以外にいろいろなものが出ていますから、ブロックチェーンの仕組みそのものが本質的に信頼できるものになるという意味です。
こういう時代に何が起きるかというと、先日の「仮想通貨のあとに来るもの」の記事でも書いたように、世の中の経済的な価値を各人が作れるような時代が来るということです。
昨年の2月に、NHKクローズアップ現代で、「稼げる大人になる」という教育に関する企画がありました。
しかし、この「稼げる大人」の前提となっているものは、今の社会における「稼げる」という基準です。
これからの時代に登場するのは、今の社会を前提にした稼げる力ではなく、新しく来る時代で稼げる力なのです。
それは何かと言えば、稼ぐことではなく仕事を作ることです。
しかし、今の大人はもちろん子供も、仕事を作るという観点からの教育を受けていません。
だから、多くの人が、仕事を作るというと、これまでの経済の中心であった工業製品やあるいは工業的なソフトを作るというようなことで考えてしまうために、そのようなことは一部の人にしかできることではないと思ってしまうのです。
ところが、これから来る時代は、多数の消費者兼労働者と少数の生産者に分離した社会ではなく、すべての人が消費者でありかつ生産者であるような社会です。
それは、社会における消費の中心が、物財やサービスの消費ではなく、自分自身の向上や創造という教育と文化の消費になるからです。
この教育と文化における消費と生産の多様性は、物財やサービスの多様性の比ではありません。
本人が心から好きなものというのは、ある意味ですべての人がそれぞれに違うほど微妙に異なっているからです。
例えば、スマホの多様性でどれが好きかという選択はせいぜい数十種類ですが、自分がどういう人間になりたいかとか、どういうことが本当に好きかという多様性は、文字どおり一人ひとり違います。
その個性のロングテールをもとにして生まれるのが、消費と生産がともに一人の人間の中に存在するような社会なのです。
そして、その多様性を生かすために、今の勉強の中心となっている学力ももちろん必要になるということです。
学力は、いい学校に入り、いい会社に入るために必要なのではなく、自分の手でいい仕事を作るために必要なものになるのです。
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これからの教育に必要になるのは、個性を育てることです。
しかも、それは受け身の個性ではなく、創造する個性です。
ところが、創造する個性は、受け身の個性よりもずっと時間がかかります。
だから、はたからみると、それは無駄なことをしているように見えるのです。
その無駄を許容することが、これからの教育に求められてくると思います。
仮想通貨に投資することは、長期的に見れば、銀行に預金することよりもずっとよいと思います。
しかし、もっとよいのは、そのお金を(もしあれば)使うことです。
お金を価値あるものを育てるために使うというのが、お金の本当の使い方です。
その第一は、自分に対する投資です。
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日曜日、教室で仕事をしていると、玄関でチャイムの音が鳴りました。
配達の人かと思って出てみると、30代半ばの女性が一人いました。
「どなた様ですか」
と聞くと、
「あ、やっぱり先生。こんにちは。○浦真由美です」
名前を聞いてすぐに、ああと思い出しました。
20年ぐらい前に、教室で教えていた小学生の子でした。(もう子ではありませんが)
近くを通ったとき、言葉の森の看板を見て懐かしくなり、教室のある3階まで上がってきたそうです。
名前を聞くと、昔のことを自然に思い出しました。
その子が小学6年生のころに書いていた作文に、お父さんの話があったことを思い出し、そのことを話すと、
「先生、そんなことよく覚えていますね」
と笑っていました。
作文を教えている先生は、共通の経験があると思いますが、子供の書いた作文は結構細部まで覚えているものなのです。
もちろん、子供も、自分の書いたものをよく覚えています。
しばらく話をしたあと、
「それじゃあ、今度Facebookページに来たらいいよ」
と言うと、そうしますと言って帰っていきました。
自分は、当時、決してよい先生の役を果たしていなかったと思うのですが(今も)、このように懐かしく思って訪ねて来てくれる人を見ると、感謝をしたい気持ちでした。
言葉の森には、最近、昔の生徒のお母さんが、子供を習わせに来るようになりました。
人によっては、そろそろ孫が登場するころかもしれません。
今度、Zoomか合宿所で同窓会を開き開きたいと思っています。
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20年ぶりの昔の生徒というと、顔を見ただけではわかりません。
しかし、名前を聞くと、思い出します。
たぶん、道を歩いているときも、そういう生徒が結構いるのでしょう。
そういう生徒が、森プロのメンバーになって、いろいろ一緒にやっていけたら面白いと思います。
とりあえず、今年はもっと交流や研修に力を入れていく予定です。
作文に、子供はときどき自分の内面的なことを書きます。
作文の先生は、いいところを見る指導をしているので、そういう微妙なことも肯定的に受け止めます。
子供にとっては、それが信頼のきずなになるようなのです。
だから、作文を教える人は、冷たく表記のミスなどばかり注意していたらダメなのです(笑)。
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